●打倒ドラグナーの便利ゲート
「おー、集まったか。よっし、早速だが受け取ってくれよな」
レプス・リエヴルラパン(レプリカントのヘリオライダー・en0131)は軽く会釈をしてから、8人のケルベロス達に光り輝く小剣を1本ずつ手渡し始めた。
「この『グラディウス』が、普通の武器として使えない事は皆知ってるよな?」
デウスエクス達はこのグラディウスを土地に打ち込み、目的地への一方通行のゲート『強襲型魔空回廊』を開く為に使用している。
それだけでは無く、グラディウスを持っていると『強襲型魔空回廊』を視認し『攻撃によって破壊する』事もできるようになるのだ。
つまり。
グラディウスを使用する事で、デウスエクスたちの利用する強襲型魔空回廊――ひいては続々と増加するデウスエクスの侵略拠点『ミッション』を破壊する事ができると言う事だ。
「強襲型魔空回廊があるのはミッション地域の中枢だ。普通の方法じゃ辿りつくのは難しいが、俺達にはヘリオンが居るだろう?」
レプスは悪戯げに笑ってから、掌の上に画像を展開する。
それは周囲を半径30m程度のドーム型のバリアに囲まれた、強襲型魔空回廊のイメージだ。
「今回は護衛が手薄な上空から降下し、強襲型魔空回廊を攻撃する事が目的だ。このバリアも強襲型魔空回廊の一部だからなァ、グラディウスで攻撃を行えば強襲型魔空回廊ごと破壊ができるって訳だ」
8人のケルベロスがグラビティを極限まで高めた状態で攻撃を行えば、場合によっては一撃で強襲型魔空回廊を破壊する事すら可能かもしれないとレプスは付け足し、資料を切り替えた。
「ま、今回だけで破壊が出来なくとも、ダメージは蓄積して行く。流石に10回も作戦を重ねれば破壊できるだろうと予測されている」
あまり気負い過ぎなくても良いが、と彼は目を細め言葉を次ぐ。
「もちろん強襲型魔空回廊の周囲には強力な護衛戦力――精鋭部隊が存在しているが、どこから現れるか解らない相手の高空からの落下攻撃を防ぐ事は難しいだろう?」
その上グラディウスは攻撃時に雷光と爆炎を発生させ、この雷光と爆炎はグラディウスを所持している者以外に無差別に襲いかかる。
「その際に発生するスモークと混乱に紛れてお前達には撤退をして貰いたいと思っているぞ」
しかし完全に敵を無効化できる訳では無く、強力な敵との戦闘は免れないだろう。
幸いな事に混乱している敵は連携をとって攻撃をしてくる事は無い。
「素速かに眼の前に居る敵をぶっ倒して、速やかに離脱してくれ。あまり時間を掛けすぎて、敵の混乱が収まれば降伏するか、暴走してなんとか撤退するしか手が無くなっちまうかもしれないぞ」
貴重な武器であるグラディウスを持ち帰る事も大切だが、自身も大事にして欲しいとレプスは一度目を瞑った。
「さーてと。今回目標になっているのはドラグナー達のミッションだ。奴らの攻略可能なミッション地域はこの2つだな」
レプスが瞬きをすると資料が切り替わり、2つのウィンドウが開く。
一つ目のウィンドウには、富山県黒部市と長野県大町市にまたがる北アルプスの五龍嶽に巣食う黄金の影。『ゴールドグリード』。
二つ目のウィンドウは、東京都練馬区。インチキ商売を生き生きと行う『ドラグナージョ、ほねヤッキー、ぶたズラー』の三人組が映し出されている。
「グラディウスは一度使用すると、グラビティ・チェインを吸収して再使用できるまでにかなりの時間が掛かる。それも踏まえて何処に行くかよーく考えてくれよな」
レプスは印刷した資料をケルベロスたちに手渡し、肩を竦めて笑う。
「お前たちの頑張りでちょっとずつだが、開放されたミッション地域も増えてきている。今回もばっちり頑張って来てくれよな」
レプスがみんなを現場にお届けしまーす! と、最後におどけた彼の瞳にはケルベロスたちへの信頼の色が浮かんでいた。
参加者 | |
---|---|
ティアン・バ(千天の理・e00040) |
アマルティア・ゾーリンゲン(リビングデッド・e00119) |
平坂・サヤ(こととい・e01301) |
罪咎・憂女(捧げる者・e03355) |
フィー・フリューア(赤い救急箱・e05301) |
白石・翌桧(追い縋る者・e20838) |
レピーダ・アタラクニフタ(窮鼠舌を噛む・e24744) |
ローデッド・クレメインス(灰は灰に・e27083) |
●
「見えてきましたねえ」
「ああ。相変わらずおおきいな」
ヘリオンの窓を覗き込んでいた平坂・サヤ(こととい・e01301)は言葉を零し、ティアン・バ(千天の理・e00040)が頷いた。
富山県黒部市と長野県大町市にまたがる、北アルプスの五龍嶽。
山岳に天に向かって伸びようとするかのように、そびえ立つ黒い塔。
ケルベロス達がこの土地にグラディウスを持ち、訪れるのは二度目となる。
「上手く事が進めば事件が起きる前に対処するのではなく、事件そのものを起こさなく出来る」
闘争を根幹にした生存競争と意識。相手を淘汰する事で、我らは先に進むことが出来る。
「――えぇ、頑張りましょう」
罪咎・憂女(捧げる者・e03355)の赤い瞳が覚悟に揺れ、グラディウスを握りしめる掌に力が篭もった。
「キュキュッ★ みんなの笑顔・営みを守ることは現在と未来のレピちゃんのファンを守ること! では、レピちゃんのファンの方もそーでない方も頑張っていきましょうね!」
キュッキュリーンとポーズを決めたレピーダ・アタラクニフタ(窮鼠舌を噛む・e24744)は皆にアイドルスマイルを向ける。
「んー。普段は屋上に降り立ってたが、バリアはあそこなんだな。なお俺はレピーダのファンではない」
「うん? 今どきの若者の流行か。すまない、そういうのには疎くてな……」
半分スルーした白石・翌桧(追い縋る者・e20838)はバリアの位置を伺い。
れぴちゃんのふぁん……? と首を傾げたアマルティア・ゾーリンゲン(リビングデッド・e00119)が申し訳なさそうに生真面目にレピーダを見る。
白いボクスドラゴンのパフも首を傾げ、同じように彼女を見つめる横でフィー・フリューア(赤い救急箱・e05301)が悪戯げな表情を浮かべた。
「じゃあ、破壊に成功したらレピちゃんのFC入っちゃおうかな!」
験担ぎに良さそうだよねと笑うフィーに、翌桧が声のトーンを落として呟く。
「この戦いが終わったら、レピータのファンクラブに入るんだ……」
「今回の任務があんなことになるだなんて、このときのサヤたちは思いもしなかったのですね……、あのう。レピーダのファンクラブがふらぐになっていますが、だいじょうぶです?」
「フィー、翌桧……死ぬのか?」
サヤによるモノローグが重ねられ、ローデッド・クレメインス(灰は灰に・e27083)は怪訝そうに眉根を寄せる。
「入ると験が悪そうなので、サヤもファン辞めますね……」
「何でもいいがフラグは程々に頼むぜ。……立てた分は自分でへし折れよ」
「ぬぅん!」
ファン辞めを許さない構えを取るレピーダ。
ローデッドは肩を竦めて、グラディウスを握り直した。
そんな仲間達の様子を見ながら、憂女は細く細く息を吐く。それは仲間に対する物では無く、これから敵を相手取るという覚悟の吐息だ。
「さあ。破砕の機会、きちんと成し遂げましょうか」
「――竜は」
仇だ。
噛み殺したティアンの小さな声。
それに従うドラグナー共も、ティアンの敵だ。
「ころしてやる、……かならずだ」
彼女の言葉にローデッドは右目も閉じ、野兎の耳を二度揺らした。
「奪おうってのなら奪われる覚悟はしてんだろう、情けなんざ期待してくれるなよ」
左目を焦がす地獄が静かに燻る。
「行くぞテメェら」
光る小剣を携えたケルベロスたちは高空へと、その身を曝け出す。
●
上空の暴風に身体を巻き上げられながらも、広げた大きな赤い翼は風をぐんぐんと飲み込む。
両手で強く握りしめたグラディウスの感触を確かめた憂女は、目の前に広がるバリアを睨め付ける。
未来の被害を抑える機会に感謝を。
過去の犠牲に報える機会に感謝を。
「さぁ、私達から奪った安寧を返していただこうか!」
普段の温和な穏やかさとは正反対の声質。
龍の咆哮。
光る刃に敬意を籠め、憂女はその刃を振りかざす。
ドラグナー、ドラゴンの忠実なる僕。――ドラゴンを召喚する為に何でもやらかす狂信者。
赤いケープと三つ編みが風に遊ぶ。
片手でフードを押さえ込んだフィー。
「こんな所に拠点なんか作ろうったって、そうはさせないよ。いずれいつの日か、僕らは君達の主人ドラゴンのゲートを破る」
黄緑色の瞳を揺らすのは追慕の色だろうか。
「人の命を」
一度言葉を切り息を飲むと、溢れるグラビティが大気を震わせる。
「居場所を、想い出を、好き勝手に奪うばかりの存在が二度と来れないように! その日を迎える為にも、先ずはこの回廊を破壊しなくちゃ、ねぇっ!」
一人として同じもののないヒトを、護る為に。
フードが風を孕む事も厭わず、彼女はグラディウスを両手に握り直した。
「――宝石に閉じ込められてたレピちゃんが、あの日みんなから貰った愛情」
アルティメットジャージに包まれた身体は、重力と風に晒されて尚不思議と温かい気がした。
それはグラビティの漲る感覚だけで無く、胸の奥から溢れる愛情という力なのかも知れない。
貰った愛情を、何倍にもして返せるように。
「笑顔を教えてもらった分、一人でも多くの人を笑顔にできるように!」
光の羽根が一層強く輝き、溢れる力が小剣に流れ込む。
「アイドルとしてではなく、ケルベロスとしてでもなく、この星に生きるひとつの命として……――此処に、反逆を成します!」
レピーダは刃を掲げる。その刃に自らの愛情を籠めて。
「こんな場所まで随分と勤勉なことですが、見逃してやるほど猟犬の鼻は甘くないのですよ」
自由落下に遊ばれた黒髪は、サヤの蒼い双眸を晒す。
「たかが数人、数匹、大勢に影響はないと侮ってます? ひとつひとつおまえたちを殺していけば、その屍を積み重ねれば、いつか星にも手が届く」
サヤは確かめるように翌桧と一瞬視線を交わし、喉を鳴らした。
サヤに恨みは無いが、恨む声は知っている。
「――サヤの目に留まったのがおまえの不運」
サヤのちからは、いまも地獄に身を置くあのひとのために。
「そのなかみを、知識を、洗いざらい吐いて死ね」
あなたがそれを望むなら。
一層輝きを増した刃をサヤは薙ぐ。
「……ずっと届かなかった」
流れる風の音は小さな声音をかき消すだろう。吐露するかのように小さく呟いた翌桧。
自分がケルベロスとしては、二流だと言う事は理解している。
「18年前のあの日から、俺の生きる意味は唯一つ。ただの一日も忘れる事なく、想い続けてきた」
今も左眼に映る、失ったはずの彼女は楔と化し。彼は贖いきれぬ罪をその瞳に狂気を籠めて想い続ける。
「俺は無力だ。だからこそ力を求めた。金と人脈、忠実な手駒……」
サヤと視線を交わした翌桧は、小剣の柄を強く強く握りしめる。
ありとあらゆる全ては復讐へと繋がっている。
強い手駒を集め、彼らの居心地の良い塒を作った。
人脈を集め、金を集め。それが自旅団、自らの復讐の為の私兵――個人師団だ。
「だがようやく、ほんの爪先だけ届くようになった、これは反撃の狼煙だ」
想いが力になると言うなら、俺はこの刃に憎しみを込めよう。
「てめぇらが奪ったモノの報い、必ず受けて貰う――地獄に堕ちろッ、デウスエクスッッ!!」
白い手袋に血が滲むほど強く握りしめられたグラディウスが、眩く煌めいた。
●
ローデッドの脳裏に過ぎるのは、奪われた大事な者。
「テメェらの目的だ信奉だなんだなんざ知った事か」
地獄は燃え、残った一匙の復讐心と飢え渇く衝動は腹の奥を煮え立たせるようだ。
「そこに居座られんのも邪魔なら、テメェらの都合で奪うなんざ以ての外腹立たしい」
あァ、憎らしい。憎らしい。憎らしい。
「奪い殺すヤツら程ぶん殴って打ちのめしてェ相手はいねェってもんだ! その妙ちきりんな塔もテメェらごとへし折って砕いて、まるっと地に落としてやらァ!!」
情けなど、過去に殺した、過去に燃やした。
野兎の夢は、まだ醒めはしない。
「堕ちやがれェッ!」
獣のように吠えたローデッドは小剣にありったけのグラビティを注ぎ籠め、振り上げた。
空を泳ぎながら、ティアンは黒い塔を茫洋と見やる。
この山岳はミッションの指令が出てから随分長い間、敵の拠点となっている。
「――これ以上維持されてたまるものか」
ドラゴニアの輩どもに、故郷や命を踏み躙られる者がもう出ないように。
誰も泣かなくていいように。
「……ァ」
竜は、仇だ。
「――ア、アアアアアァアアッッッ!」
痛む喉奥の傷からこの身が裂けても良い。ティアンは吠える。
全ての感情を籠めて喉奥を潰さんばかりに振り絞り。黝色の地獄が胸に燃え爆ぜる。
裂けろ、裂けろ、裂けろ。
奴らの息の音をのこらず止める、ゲートを壊す、一歩となるように。
地獄の炎が豪と燃え、小剣が燃えんばかりに輝きを増した。
「故郷も、家族も、命も、私は全て失った」
肩首に巻き付いたパフの温度を感じ、アマルティアは瞳を閉じる。
「だが、代わりにこの胸に燃える炎。お前たち、偽りの神への怒りだけは消させはしない」
地獄に燃える心臓がチリチリと火花を吐き出し、風に溶け消える。
「お前もまた、私たち人間に害を為すというのなら、私は悉くを焼き払ってやろう」
殺意こそが、自らを動かす熱と成る。
双眸を見開き、振り上げた光の小剣をアマルティアはバリアへと叩き込んだ。
「聞けよ、聞け。神々よ聞け! 我が呪いを――!」
ケルベロス達が同時に突き立てた小剣に、バリアは確かな手応えを返す。
吸い込まれるように刃が飲み込まれる感覚。
何かが爆ぜる音が響き、まばゆい光が一帯を飲み込んだ。
「もしかして……壊せ、た、の、かなぁ?」
地上に降り立ったフィーが塔を見上げ、呆然と呟いた。
光が収まると、無差別にグラディウスの所持者以外に襲い掛かり始める雷光と爆炎。
「バリアはもうみえない」
ティアンの言う通り、先程まで見えていたバリアは跡形もなく消えていた。
「ティアン!」
そこに微かに響いた風切り音に耳を立て、咆哢で身体を覆いながらティアンを抱き転げるローデッド。
同時に、未だスモーク収まらぬ塔から一直線に飛来した金色の影が地を裂いた。
「良くも、……良くもやってくれたな、ケルベロス! 我らが拠点を、よくも!」
黄金の竜と化したゴールドグリードは、巨大な体を震わせ赫怒の咆哮をあげる。
斯くして、戦端の幕は切って落とされた。
●
響く剣戟は幾度重なった物だろうか。
「サヤ。今だ、真っ直ぐ走ってぶちかませ!」
翌桧がサヤへと向けて光輪の加護を放つ。
ギリギリまで引き付けた爪を振り下ろされる事に、恐怖を感じた様子も無く彼の言葉通りサヤは駆け、懐へと潜り込む。
「――ようこそ」
あすなろは、恩人でご主人様だ。彼が居なければ自分も此処にはいない。
ならば、彼の言うことは絶対だ。
繊月に宿した死の可能性が、竜の体を貫き裂く。
重ねられた斬撃に体力の奪われた黄金竜は狂刃を避けきれず、氷に足をとられながら黄金の光を放つ。
「合わせろ、レピーダ!」
「合点です! ――大体、勝手に移住されちゃあ、お役所だってレピちゃんだって黙っていません!」
駆けながら貫くような光をStrafeで薙ぎ、レピーダを庇ったアマルティアは足を止める事無く敵へと距離を詰める。
駆ける、駆ける。
「聞け、この呪いを!」
地獄に燃える心臓が火の粉を散らし、パウが属性をアマルティアへとインストールし、加護とする。
「――燃えつきろッ!」
「妖精八種族が光のヴァルキュリア……その輝きの真髄を、今! ……光明は此処に! 夢がある限り!!」
音速を超える拳を叩きつけたアマルティアに重ねるように、光の刃が竜を薙ぐ。
2人の在り方そのものを叩きつけるようなラッシュが黄金竜に蹈鞴を踏ませる。
「ロー」
連携攻撃を叩き込まれた竜を睨め、自らを再び庇った彼の名を呼ぶティアン。
彼の肩を馬跳びの要領で跳ね、一瞬だけ交わした視線は直ぐに敵へとむけられる。
甘えてしまいそうな事もあるけれど、もう大事な人の背を見送るのは御免だ。
ティアンだって、ローデッドと並んで戦える。
「……あァ、そうかよ!」
その視線の意味を理解し、本当に生意気なヤツだとローデッドは思う。
甘えるとこはきちんと甘えてりゃいいのに。
地を思い切り踏み込んだローデッドは、ティアンに合わせて跳ねる。
「バーカ」
「君の、首を、もらう」
ローデッドの振るったエクスカリバールが首筋の鱗を抉り、剥ぎ。一瞬で竜の頭上に転移したティアンの生み出した刃が釣瓶の如く落とされた。
「ケロベロ、ス!」
血泡を零し、猟犬達を見下ろした黄金竜は尚も歩を進める。
不敵に口端を持ち上げたフィーが、いつも下げているメディカルバスケットから一粒の種を取り出した。
「枝葉を伸ばし絡め取れ――」
生命力の籠められた種は一瞬で萌え伸び、茨めいた棘蔦が黄金竜の足を体を絡め取り、傷を刻む。
甘い花の香りは、終わりを告げる目印だ。
「……さぁ、終わりにしようか!」
「ああ」
フィーの背後より、地を割らんばかりに装甲靴で蹴り上げ、跳ねる憂女。
「――ォォオ!!」
咆哮に似た気合の声を上げた憂女は、足を取られた黄金竜の横っ面にその靴をめり込ませる。
「……ッ!」
強烈な一撃は竜の意思の光をその瞳より奪い去る。
そして黄金竜はそのまま動く事無く、地へと伏せ落ちた。
「存在が相容れなくとも……牙交えるそのときは余事などなくお互いこそすべて。正々堂々とはいかないが誠意はもって、純粋に刃を振るわせて頂いた」
護誓がその首を撥ね、赤い髪を揺らした憂女は細く細く息を吐く。
「……どうでもいいことですけど、少し友人に姿形が似ていたのですよね」
一息ついた憂女は、普段の口調で首を傾げた。
「大物も倒し、無事強襲型魔空回廊も壊せたようだ。――大手柄だな。さあ、新手が現れる前に急いで帰還しようか」
柔らかく笑んだアマルティアに、パウが小さく鳴いて頷く。
「……ちょーっと待って下さいっ!」
それを引き止めるレピーダ。
ケルベロスたちが首を傾ぐと、彼女はキュッキュリーンとポーズを決めた。
「キュッキュリーン★ これで皆さんレピちゃんのファンクラブ会員ですねっ!」
「……確かに。縁起がいいよねー」
フィーは同意し、笑う。
「今どきの若者の流行には疎いのだが……、後で教えてくれるか?」
首を傾げたアマルティアは眉根を寄せた。
「今はそれどころじゃ無いからその話はまた今度だな。先に脱出するぞ、動けるかサヤ」
「はい、だいじょうぶです」
翌桧は真っ先に踵を返し、サヤもぱたぱたとそれに追従する。
「ちょっと待ってくださいよ!!」
慌ててレピーダも駆け出し。
「行くぞ」
「……ああ」
バリアの消えた空を見上げていたティアンに、ローデッドは声を掛けた。
欠けた黒い塔と、青い空。
ケルベロス達の活躍により、ここにドラグナー達が送られてくる事は無くなったのだ。
作者:絲上ゆいこ |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年5月17日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 9/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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