●ジャックの正体とは……
愛知県名古屋市。
この地で密かに囁かれている噂話がある。
曰く、『日本に切り裂きジャックが現れた……』と。
その噂話について、フリージャーナストである保志・みゆきは、別の仕事のついでで名古屋に滞在し、折を見て調査を進めている。
昼間は別仕事のクライアントとの接触、インタビューなどがある為、ジャックについて調べるのはほぼ夜となっていた。彼女は噂話のあった場所を1つずつ回り、さらに道行く人からもその噂話について聞いて回る。
しかしながら、これといった情報は得られない。このご時世ならば、デウスエクスがやったと考える方がまだ自然というものだが。
「……まあ、存在してもらったほうがこちらとしては嬉しいわね」
その存在の有無はともあれ、何かかしらの原因がつかめれば、記事にはなる。ただ、存在しているのであれば、スクープとして出版社や新聞社に高い値段で売り込むことができる。
考えを切り替え、彼女が調査を再開しようしたその時。彼女は背後から鍵のようなものを突き刺されていた。
「え……?」
最初、保志はジャックに襲われたのだと思った。しかし、薄れ行く意識の中、彼女が見たものは魔女のような姿をした人影だった。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『興味』にとても興味があります」
そう告げたのは、淡いモザイクに包まれた触手を蠢かすボロボロのフードと衣装を纏ったドリームイーター。第五の魔女・アウゲイアスだ。
その魔女によって、胸を貫かれたはずの保志。しかし、その胸には傷すら残されてはいない。
やがて、倒れる彼女のそばから現れたのは……シルクハットを被り、全身を黒い装束を纏ったすらりとした体型の紳士に見える。だが、その顔はモザイクで覆われていた。
「私は一体……?」
そいつは、当てもなく裏通りを歩き始める。それを見届けたアウゲイアスもまた、姿を消したのだった。
ある晴れた春の夜のこと。
「切り裂きジャックが日本に現れたって噂があるようだね」
ビル屋上へとやってきた月島・彩希(未熟な拳士・e30745)がそんな話を持ちかけてくる。
「うん、丁度その話をしようとしていたところだよ」
すでに、ケルベロスが集まっており、リーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)もまた説明を始めるところだった。
事件は魔女の姿をしたドリームイーターによって、フリーのジャーナリストが襲われるところから始まる。
巷で出回っている根も葉もない噂の真相を追い求めるうち、そのジャーナリストはドリームイーターによってその『興味』を奪われてしまう。それを元にした怪人型ドリームイーターが実在化しており、それが切り裂きジャックを思わせる姿をしているらしい。
「この怪人型ドリームイーターが事件を起こそうとしているよ」
『興味』を奪ったドリームイーターは姿を消している。今は新たな被害が出る前に、現れた怪人型ドリームイーター討伐を優先したい。このドリームイーターを倒す事ができれば、『興味』を奪われてしまった被害者も、目を覚ますはずだ。
「ドリームイーターに襲われるのは、フリージャーナリストの女性だね」
名前は、保志・みゆき。 夢喰いに襲われて『興味』を奪われた保志は名古屋の街中、裏通りに倒れており、昏睡状態にある。無事にドリームイーターを倒した後で介抱してあげたい。
「『興味』から生まれた怪人型ドリームイーターは、名古屋の街中の人通りが少ないところを彷徨っているようだね」
現れる怪人型ドリームイーターは1体だけで、配下などはいない。
シルクハットに正装といった、一見黒ずくめの紳士風の男だが、その顔はモザイクに包まれている為、すぐにドリームイーターだと分かるはずだ。
「ドリームイーターは、切り裂きジャックについての噂話についての発言があると、それを語る人の方へと引き寄せられる性質があるよ」
これを利用することで相手を誘い出し、有利に戦うこともできそうだ。
また、このドリームイーターは、人間を見つけると『自分が何者であるかを質問してくる』らしい。返答によっては、夢喰いは相手を殺そうとする傾向がある。
「だから、一般人にとっては危険な存在だね。でも、ケルベロスの皆としては、敵を引きつける手段ともなるかもしれないよ」
戦いとなれば、ドリームイーターは手にするナイフを操って攻撃を仕掛けてくる。殺傷力が高い相手なので、十分注意して討伐に当たりたい。
「パッチワークの魔女……だったかな。その所在は未だつかめていないね」
暗躍する魔女達を捉えられればいいのだが、今は目先の事件を解決するのが先だ。襲われた女性ジャーナリストも助けてあげたい。
「それでは行こうか。皆の力、頼りにしているよ」
彼女はにっこりと微笑み、ヘリオンの離陸準備に向かうのだった。
参加者 | |
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シィカ・セィカ(デッドオアライブ・e00612) |
ウォーグ・レイヘリオス(山吹の竜騎を継ぐもの・e01045) |
霧前・立葉(殺活・e03673) |
空飛・空牙(空望む流浪人・e03810) |
八岐・叢雲(静かな闘志・e06781) |
スミコ・メンドーサ(グラビティ兵器技術研究所・e09975) |
ランジ・シャト(舞い爆ぜる瞬炎・e15793) |
マルレーネ・ユングフラオ(純真無表情・e26685) |
●切り裂きジャックの集団……?
愛知県名古屋市。
「えー、わたくしスミコ・メンドーサは切り裂きジャックの正体を暴くべく、某所に来ております」
ハンディカメラで自身を撮りながら、レポーターに扮するスミコ・メンドーサ(グラビティ兵器技術研究所・e09975)はノリノリである。
そんな彼女を、おかっぱ髪のマルレーネ・ユングフラオ(純真無表情・e26685)がスタッフとしてマイクや反射板を使いつつサポートしていた。
その2人の様子は、『現代の斬り裂きジャックの真偽に迫る』みたいな動画でも作るノリである。
「……こうやって、都市伝説は生まれるのかしらね」
マルレーネは至ってクールな様子でそんなことを考えながら、悪ノリする仲間を見つめる。
「さあ、切り裂くジャックに会うことができるのでしょうか」
にこやかに街中へと駆けて行くスミコを追うマルレーネは、『斬り裂きジャックが出るという現場なう』とスマートフォンで呟くのだった。
その頃、街中の人気のない路地に、怪しげな一団が集まっていた。
近づく人がいないのは、集まるケルベロスが各自の思う切り裂きジャックのコスプレを行っていたことだけが影響しているわけではない。そこにいた1人、霧前・立葉(殺活・e03673)のつくった殺界によるものである。
「切り裂きジャック……。英語じゃ、ジャック・ザ・リッパーだったか」
それは、19世紀に実際あった事件の犯人の通称。話を切り出すのは、この場で唯一の男性、空飛・空牙(空望む流浪人・e03810)だ。
「切り裂きジャック……女性を狙う危険な殺人鬼ですね」
無表情な八岐・叢雲(静かな闘志・e06781)は目立たない黒いパーカー姿で、刃物を所持していた。コスプレが初めての叢雲は相当楽しみだったらしく、竜の尻尾や羽根を忙しなく動かす。
「んっんー、切り裂きジャックだか裂きイカしゃっくりだか知りませんが、ボクの方がロックデース!」
楽しそうにはしゃぐシィカ・セィカ(デッドオアライブ・e00612)は、普段着の上から羽織るボロい黒マントで身を包むが、その上からはしっかりと愛用のギターを担いでいる。
「くぅ~! たまんないわね、この都市伝説っぽさ!」
ランジ・シャト(舞い爆ぜる瞬炎・e15793)はチェスターコートにシルクハットという英国紳士スタイルをし、露骨に超有名探偵臭をかもし出していた。
申し訳程度にナイフを持つことでジャックを演じる彼女は、何かムズムズするような所作でこの状況を楽しんでいる。惜しむらくは最初から正体が割れてしまっているところか。
「いまだに正体不明の『実在した怪人』か……」
ゲームや音楽の題材にもなるその存在。興味が沸くのは分かるが、わざわざ面倒ごとに首をツッコんだ被害者に、空牙は小声で呆れて見せる。
「正体不明の、殺人鬼。……リッパー的に親近感を覚えるのデス」
空牙の言葉にテンションを高めるのは、立葉だ。やはり、紳士風の格好をした彼女は、ある意味で一番本物に近い雰囲気をかもし出しているかもしれない。
そうして、各自のジャック像を口にするメンバー達。
「切り裂きジャックデスかー? こういう所に居るとこんな風な格好でズバーッてしちゃうそうデスよ!」
「未逮捕の殺人鬼が長い時を経て日本に現れた……つまり、ヤツは元々幽霊なのよ! 間違いないわ!」
シィカは手にするナイフを掲げ、がおーっと仲間を脅かすような仕草をしてみせる。ランジも楽しそうに別の噂話を語って見せた。
「ジャックは何人も居たそうだと、リッパーは聞いた話を語るデス」
実は、切り裂きジャックの正体はケルベロスで、夜な夜なデウスエクスを探し回る様子を目撃された……などというトンデモ話まで立葉は展開してみせる。
「『興味』を抱かせる存在として、『切り裂きジャック』は凄まじいものですね」
この噂話を流した大本がドリームイーターの策略かもしれない。そんな可能性もウォーグ・レイヘリオス(山吹の竜騎を継ぐもの・e01045)は示唆する。
ウォーグも仲間達に合わせる形で、日本刀を持った和風の切り裂きジャックを感じさせる衣装を纏う。……どことなく、辻斬りの侍を思わせるのは気のせいだろうか。
そんなウォーグが展開する持論としては。
未解決事件をいくつも残す切り裂きジャックは劇場型犯罪と呼ばれるタイプの元祖ともいえ、様々な憶測や流説が飛び交う――創作のモチーフとされることも多々ある。
「改めて調査すればするほど、霧やドリームイーターのモザイクが似合うくらい、捉え所がなく『興味』がつきないです」
「あ、あれはまさか! 切り裂きジャックさんではないでしょうか」
そこにやってきたインタビュアー、スミコ。
「切り裂きジャックはいたんだ! それもたくさん!」
1人で盛り上がる彼女は早速、やや芝居がかったノリで突撃取材を始め、この場のケルベロス達へとマイクを向ける。
「そりゃー、こんだけお膳立てしてあげてるワケだし? 主役が出てこないとかありえないっしょ」
「本当に斬り裂きジャックなんて、いるのかしらね?」
ランジがそれにノリノリで言葉を返すと、撮影を補佐するマルレーネが首を傾げる。
「いるのなら、とっとと出てこいだよね」
やや挑発を込め、マルレーネが敵をおびき寄せようすると。
程なくこの場へと姿を現したのは……、紳士然とした男性らしき男の姿。しかし、その顔はモザイクに包まれていて。
「出たわね、放送禁止顔面野郎」
現れた敵に、ランジが胸を張りながら身構える。
「ドーモ、切り裂きジャックサン。……ジャック・ザ・リッパーデス」
「私は一体、何者でしょう……?」
最初に立葉が声をかけたが、紳士は……いやドリームイーターは立葉が自身を正しく認識していると感じたらしく、事も無げに他メンバーへと問いかけてくる。
「ボクこそがジャック! 何故ならロックだから! デス!」
「いや、俺こそが本物だ」
シィカは自身ありげに、自分の方がジャックだと主張する。空牙もまたけらけらと笑いながら答えていた。
「日本版切り裂きジャック……になるかな? でも、切り裂くのは悪夢になりますね」
黒い長髪を揺らす叢雲は、日本刀を構える。
「日本には、切り裂きジャックはいない……。だから、貴方は偽物です」
「何ですと……?」
夢喰いもまた叢雲に対する形でナイフを取り出す。自身を否定されたことで、そいつは敵意を見せ始めている。
「あなた、本当に本物ですかぁ?」
「いい歳して、ジャックのコスプレ? 本物だと言うなら、証拠を見せなさいよね」
さらに、スミコがこれでもかと煽り、マルレーネが露骨に挑発する。
「分かりきったコトを聞くのね、お馬鹿さん。こんな手に引っかかるとか、ただの『マヌケ』以外ないじゃない?」
「ならば、そのマヌケに裂かれようとも、文句はありませぬな……?」
さらなるスミコの煽りに、夢喰いは手のナイフをケルベロス達へと突きつけてくる。
首から下げたヘッドホンを装着した空牙だけは変わらず、微笑んでいたが、皆、コスプレごっこやインタビューのノリから一転。夢喰いへの敵意を抱いて武器を手に取る。
叢雲は念の為に周囲を見回し、一般人がいないことを確認する。
「ドリームイーターの偽物だとしても放置は出来ない……ここで倒す」
日本刀を抜く叢雲。こいつを野放しにすれば、本当に新たな殺人事件が生まれかねない。
その阻止の為、ケルベロスは目の前の偽物の討伐に乗り出していく。
●ジャックを象った夢喰い
剣呑な雰囲気を持つドリームイーター。
いくら、ジャーナリストの抱いた『切り裂きジャック』への『興味』から生まれた存在だとはいえ、デウスエクスと成り果てたことで本当に危険な雰囲気を漂わせていて。
スミコは先んじて背に広げた偽翼をブーストさせて加速し、稲妻を纏わせたデモニックグレイブを突き出す。これらの兵器は、彼女が所長をしているグラビティ兵器技術研究所で開発したものだ。
敵がこちらの出方を窺っている隙にと、ランジも攻め入る。彼女は地獄の炎を纏わせたグリーフファングを夢喰いへと叩きつけて行く。
「そんじゃ、その存在狩らせてもらうぜ? 悪く思うなよ」
空牙がすかさず、異装旋棍【銃鬼】を砲撃形態に変えて弾丸を撃ち出す。その瞬間、敵が動き出したのを見て、マルレーネは地面を這わせた鎖で描いた魔法陣によって仲間を守護する。
敵はその守護を潜りぬけ、ケルベロス目掛けて手にするナイフを煌かしてくる。
刀身に移るは相手のトラウマ。それを、ボクスドラゴンのメルゥガがケルベロスの代わりとなって受け止め、反撃にブレスを吹き付けていく。主であるウォーグも、居合いによって夢喰いの体を切り伏せようとしていた。
「今回、リッパーはジャックデス。そして、ジャックはリッパーデス」
敵を注視していた立葉は相手と同じグラビティを使用しようと、立葉も惨殺ナイフを煌かす。
(「女性の『興味』、奪い返しませんと……」)
敵が虚空に視線をやったところで、体術を得意とする叢雲が敵の頭上へと飛び上がり、流星の蹴りを喰らわせる。
その一蹴で夢喰いがよろけるのを、シィカは見逃さない。
「これこそがー……ロック! パワー!」
シィカは力を込めた掛け声と共に、燃え上がる靴で夢喰いの体を激しく蹴りつけた。
だが、ドリームイーターはその身を焦がしながらもすぐに態勢を整え直し、一舐めしたナイフの刃を突き出してくるのである。
切り裂きジャックを象ったドリームイーター。
その手の刃は相手を確実に屠るべく振るわれ、ケルベロス達の身体を裂き、赤いものを飛び散らせる。
殺傷力の高い相手であることは間違いない。ランジやウォーグが盾となって受け止める中、回復に当たるマルレーネはそんな光景にも冷静に対処し、一度石化光線を撃ち放って相手の腕を石へと化していく。
そして、立葉もまたナイフを振りかざし、夢喰いの体を切り裂いた。そこから飛び散るはモザイクばかりだが、返り血の代わりとして十分に彼女の傷を癒す。
敵の刃を受け止めるウォーグは自身や仲間の傷が徐々に増えてきたのを見て、御旗を天に掲げる。それは、彼女の旅団のエンブレムが刻まれていて。
「今、盟友(とも)とこの星を護る為――顕現せよ、誇り高き竜騎の守護陣! キャメロット・オブ・ノブレス・トレーズ!!!」
ポニーテールを揺らすウォーグを中心に巨大な城のオーラが展開され、前線メンバーに癒しと守護の力を与えていく。
そんなウォーグに親戚の姉のような思慕を抱くシィカ。ケルベロスとしての使命感を強く持つ彼女もまたポニーテールをぶんぶん揺らし、ジグザグに変形させたナイフで夢喰いの体を傷つけていく。
ナイフでの攻撃は小回りが効くが、隙がないわけではない。まして、ケルベロスの攻撃で徐々に脚を鈍らせる夢喰い。叢雲は今回は剣術も駆使し、緩やかな弧を描いて日本刀で斬りかかった。
そればかりに気を取られてもいられない。後方からは光学迷彩を使ったスミコが忍び寄っていたのだ。
「悪いけど、もらった!」
スミコがデモニックグレイブを大きく振り抜くが、大きな手応えがない。敵は致命傷を逃れ、飛びのいていたのだ。
「捕まえたわ」
しかし、その先で待ち構えていたランジが、グラビティ・チェインを凝縮した掌で敵に触れ、一気に爆発させる。
またも夢喰いは少し身を退いていたが、その身体から零れるモザイクが、徐々に傷が深くなってきていることを示す。
「迷宮入りにするつもりはねぇんだ……逃がさねぇよ」
異装旋棍【斬刹】を操る空牙が追撃を行い、鋭い突きで打撃箇所を凍りつかせていく。
「……ならば、これで」
夢喰いは敵意を捨てていない。すかさず伸ばしナイフの刃は、前に出たウォーグの首を狙う。それを察した彼女だったが、首から鮮血が飛び散る。
マルレーネが淡々とオウガ粒子で仲間の支援と回復を行う中、シィカが愛用のギターをかき鳴らす。
「さぁ、ここからはボクのロックなステージデスヨー! みんな、ノリノリで聞いてくださいデース! イェーイ!!」
ロックを単純にすごい歌だと位置づけるシィカは、そのノリで歌い始め、ウォーグの傷を癒す。
ウォーグはそんなシィカに力をもらい、夢喰いの体に刃を食い込ませる。よろけた敵へ、立葉が刃を光らせて飛び込む。
「そういえば、ジャックは『地獄から来た』と称していたとも言うデス」
相手のグラビティをそのまま真似ていた立葉。ただ、首を狙う技を立葉は持ち合わせてはいない。
ジャックは地獄の悪魔だったとも言われていると、さらに続ける彼女は瞳を輝かせて。
「リッパーは地獄を操るのデス。つまり、リッパーがジャックなのデス」
ナイフの刃に地獄の炎を纏わせた彼女は、敵の首へと刃を振り切る。
「ぬ、うううっ……!」
その斬撃痕からモザイクが飛び散り……夢喰いの体を包み込む。
「本物だけが、此処に残るのデス」
我こそが『切り裂きジャック』。そう言わんばかりに立葉は消え行くドリームイーターへと言い放ったのだった。
●こうして、新たな噂話が……
程なくして。
「おはよ。どこか痛むトコとか無いかしら?」
ランジは倒れていた被害者、保志・みゆきの体を揺すり、顔の手前で手を振ると、彼女はゆっくりと目を覚ます。そして、ランジは保志の体調を確認しつつ、事情を説明した。
「興味持つのはいいけどなー。面倒事に首突っ込むのは程々にな?」
「危険な事はしたらダメ……自分を大事に、ね」
けらけらと笑う空牙が軽い口調で嗜め、全く表情を変えない叢雲も彼女なりに保志を気遣う。
「我々ケルベロスが必ず助けられるとは限りませんから、自衛もしっかりなさってください」
さらに、ウォーグも戦闘中と同じように巨大な城のオーラで展開し、保志を癒しながら告げる。彼女の職業と時世もあり、『興味』の追求によって再び事件に巻き込まれないとも言い切れないと。
「それと――あなたの『興味』が、誰かを傷つける方向性に向かわないことを、願っております」
「ご忠告ありがと。ケルベロス」
保志は立ち上がり、自身で帰れるからと手を振って去っていく。
そんな彼女がまた無茶をしないかと懸念を抱きながらも、ケルベロス達もこの場から撤収していった。
――余談だが。
その後、切り裂きジャックのような集団が路地に現れたという都市伝説が名古屋に住む人々の間で密かに出回ったという……。
作者:なちゅい |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年5月6日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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