技術に宿る信念を守れ

作者:粉月ナツメ

●2つの面
「あなた達に使命を与えるわ。この町のはずれに道場を開いている人間がいるわ。門下生を募って護身術を教えている人間よ。そいつの術を体得して殺してきなさい。グラビティ・チェインはどうでもいいわ。技を盗むのよ」
 暗い部屋に響くミス・バタフライの声。
 どこまでも、耳だけではなく身体全体に染み込み抗うことの出来ない澄んだ声。震えているのは鼓膜か、身体か。
「承知いたしました、ミス・バタフライ。我々には理解及ばぬ使命であろうと、巡り巡って、地球の支配権を大きく揺るがす事、心得ております。この怒りのままに必ずや遂行して見せます」
「悲しいなあ兄者、俺も理解できなくて悲しいけど必ずやってみせるよお」
 恭しく頭をたれる2人の姿。兄者と呼ばれた方の忍者はおおよそ忍者には似つかわしくないクラウンハットを被っている。
「期待しているわ」
 その言葉に2人は顔を上げ、短く了承の言葉を吐く。クラウンハットの忍者と、いかにも怪力そうな大柄のノースリーブの体操レオタードを着た忍者。
 螺旋模様のお面には怒りと悲しみの表情がペイントされていた。

●わくわく体験入門
「ミス・バタフライの配下が動き出したっす」
 緊張感の無い口調で黒瀬・ダンテ(オラトリオのヘリオライダー・en0004)が口を開いた。
 この事件、一見ただの襲撃事件なのだが、それを許してしまうと後に大きな影響があるかもしれないという物だった。
「珍しい……といえば珍しい職業っすね。道場主、格闘技とかのアレっすね。そこの道場の技術を体得して殺そうとするらしいっす」
 確かに門下生から月謝を取れば、それで生活が出来る。となればそれは職業と言えるのだろう。道場主、武道家、格闘家……呼び方はそれぞれあるが。
「救助対象は、護身術に棒術を教えている師範っすね。武術家っつーんすかね? 聞いたことくらいはあるでしょうけど」
 メジャーなスポーツとは違い、実際には殆どの人間が習ったことは無いだろう。
 武術家であれど、デウスエクスに狙われればひとたまりも無いのは明確である。
 後々、大きな影響があろうが無かろうが、脅威が迫る一般人を見過ごしては置けない。
「その人の保護の最優先と、ミス・バタフライ配下とその取り巻きの撃破をお願いするっす」
 口調とは裏腹に真剣な眼差しが事の重大さを物語っていた。
「接触方法っすけど、その人を警護してれば敵が勝手に現れるっす。事前に逃がすのは狙われる対象が変わるのでできないっすね」
 事前準備として可能なのは、攻撃対象をこちらに向けさせること。
 その為には、その対象が持つ技術をケルベロス達が会得すればいい。敵は技術を盗もうと狙ってくるのだから、会得者が多ければ敵の狙いも分散するだろう。
「対象者に接触できるのは3日くらいっすね。丁度道場だし、全員で門下生になればいいっす」
 それならば多数で押しかけても不自然ではないし、説明することもなく習うことが出来る。
「ただ、格闘技なんで素人が3日フルで練習しても良い運動、格闘技経験者とかならそこそこの腕にはなるかもっすけど、これの出来に関しては、結果に何の悪影響もねーっす」
 誰も会得できなくても敵が現れるのは確実であり、習った技術で戦うわけではないのであくまで救助対象との接触方法としての手段である。
「でも、棒状の物の持参を忘れると門下生になってもやる気なしって怒られて掃除とか料理させられるっすよ」
 運動が不得手であろうが役割はある、と言う事だろう。
「習得結果で悪影響はねーって言ったすけど、良い事はあるっす」
 螺旋忍軍が接触してきた際、2人以上、人並み以上の会得者がいれば、技術体験と称して敵を分断させて先制攻撃が可能となる。
 最低1人でも技術を身につけていれば、その人物が先制攻撃を仕掛けることができるのでアドバンテージになるだろう。
 敵の力はクラウンハットの忍者が兄者と呼ばれ、ノースリーブの体操レオタードを着た大柄の取り巻きが1体。
 実力として強いのはクラウンハットの方ですが、大柄忍者は攻撃に特化していて侮れません。
「なんか、1000の技の兄者と、1000キロパンチの弟で2000キラーズと名乗っているとかなんとか」
 そこはどうでもいいが、複数のバッドステータスを駆使する多彩な忍者と、攻撃に特化した2人のコンビネーション。敵のペースにハマってしまうのはリスクが高い。なるべく先手を打てるようにしたいところだ。
「あーあと道場主のおじさん、武道家だからめっちゃ戦おうと出てくるんで、説得するか退場させるかしたほうがいいっす」
 さらりと重要なことを口走るダンテだが、これで状況は全て把握できるだろう。
「ま、信じてるっすよ」
 自分はついていけないが、と悔しさを誤魔化すように前髪を弄りながらダンテは言う。
 口調は軽いが、その鋭い眼光はケルベロス達に確固たる信頼を寄せているのが見て取れた。


参加者
目面・真(たてよみマジメちゃん・e01011)
知識・狗雲(鈴霧・e02174)
市松・重臣(爺児・e03058)
櫂・叔牙(鋼翼骸牙・e25222)
大山・大地(弱冠七歳にしてメタボ予備軍・e26642)
葛之葉・咲耶(野に咲く藤の花のように・e32485)
龍造寺・隆也(邪神の器・e34017)
宮口・双牙(軍服を着た金狼・e35290)

■リプレイ

●磨きぬかれる技術
「はじめっ」
 低く野太い声が道場を揺らす。
 それとほぼ同時に動き出した2人が声の主の前で棒を巧みに操り、腕前を披露する。
 身長ほどもある長い棒をまるで手足のように操作しながら、攻撃と防御を交互に繰り広げる。
 知識・狗雲(鈴霧・e02174)と市松・重臣(爺児・e03058)がお手本となるような棒捌きで互いに組み合い、技を披露していく。その姿は3日前に門下生として入ったとは信じられないほどの卓越振りである。
 1番を目指すために懸命に取り組んだ狗雲、長年の経験から染み付いた鍬や箒捌きを磨き上げた重臣らは一番実践的である組み稽古の段階へと、わずか3日で到達したのだった。
 狗雲の構えから一瞬の隙もない高速の突き、重臣はそれを半身をずらし、最小限の動きで避けハネ上げた棒で弾く。そのまま懐に入り込むと同時に突きを返す。が、読んでいたのか狗雲も身を翻し避け、そのまま遠心力の乗った一撃を繰り出す。
 身に着けた技術、取り込んだ伝統の重みを2人はかみ締めるかのように互いの眼を見て微笑みあう。
 カンカンと棒のぶつかり合う音が響き目まぐるしく攻守の入れ替わる試合、アスナロと八雲もその姿見ながら2人で真似するようにじゃれあい始める。
 今皆が取り組んでいるのは、門下生としての3日間の修行の結果を師範の前で披露する、体験入門の最終段階である。狗雲と重臣がペアとなり代表として組み合いの腕前を披露した後、宮口・双牙(軍服を着た金狼・e35290)、龍造寺・隆也(邪神の器・e34017)、櫂・叔牙(鋼翼骸牙・e25222)の3名も同じように師範の前で棒術の型を流れるようにこなし、まるで演舞の様に披露した。
 道場主を守る為にと、攻撃よりも防御の型を重視して学んだ叔牙、「我流の戦闘術を貫いてきたが、こういった形式の技術を学ぶのも悪くない」と隆也、素手での喧嘩専門だが獲物を持った武術の立ち回りを覚えておくと双牙、それぞれ3人の思惑はしっかりとその実を結び立派な披露となった。
 あまり武術に馴染みのない大山・大地(弱冠七歳にしてメタボ予備軍・e26642)は武器を使うのが初めてということで使い慣れない棒の扱いに苦戦しながらも修行をやり遂げ、目面・真(たてよみマジメちゃん・e01011)もあまり使ったことがないので改めて教わるのは助かる、と持ち前の真面目さで修行に打ち込んだ。
 一方、「アタイは棒術の習得には不参加ぁ」と修練には加わらなかった葛之葉・咲耶(野に咲く藤の花のように・e32485)だが、積極的に道場の掃除や師範のサポートをすることにより、信頼を得ていた。
 初日には片付けも出来ていなかった埃臭い道場が、今ではすっかり整理整頓され、心地よい風が吹き込み、床は裸足で歩いても汚れない程に綺麗に掃除されている。隣人力と行動力ですっかり師範の一番のお気に入りとなっていた。
 道場での修行も先ほどの披露で全て完了という段階である。
「みんなぁ、オツカレちゃんねぇ」
 汗を流した狗雲、重臣に咲耶が柔軟剤の効いたタオルを差し入れしていく。
「いやぁ、3日間よくやってくれた。どうだ、このまま皆ウチに正式に来ないか?」
 道場主である師範が声をかける。皆の努力が認められたうれしい言葉に全員が笑みを漏らす。
「さぁ、ご飯だよぉ、アタイの差し入れもこれで食べ収めよぉ」
 タオルを配り終わった咲耶は大きなお盆を両手にこれでもかと料理を広げて声をかけた。

●守るべきもの
「頼もう!」
 食事に手をつける間もなく、道場の前から声が響く。声の先を見ると2人の人影、異様に体躯の大きな男、そしてこの場にまるで不釣り合いなクラウンハットを被った男、二人の顔には螺旋を模した面がついており、巨体の男は泣き顔が、クラウンハットの仮面は般若のように怒りの文様が描かれていた。
 明らかに異質な存在、予知の螺旋忍軍である。
「先程からの演舞見せていただいた。素晴らしき技術お教え頂きたい」
 クラウンハットを被った怒りの面のデウスエクスは、礼を欠くことなく言葉を続ける。
 先ほどの立ち回り、型の披露を見て技術を持つのは自分達だと思われているらしい。ケルベロス達にとっては作戦通りの展開である。
「貴殿らも、入門希望か、では技術体験のち入門となる」
 2人の螺旋忍者がケルベロス達を道場関係者と信じている間はそれらしく振舞う叔牙。
 双牙もそれを察して指導者のふりに入る。
 明らかに異質な2人の訪問者に道場主が表に立とうとするが隆也がそれを制す。
「我々はケルベロス。デウスエクスは任せて頂きたい。教わった技術を以って打ち破って見せますので」
 螺旋忍者に聞こえないように道場主だけに静かに告げる。
「みんなを信じたげて、お師匠さぁん! きっと習得した棒術がデウスエクスにも通じるものだって、証明してくれるはずさぁ」
 咲耶も重ねて言葉をかける。それなら、と道場主は不安を残しながらも納得し距離を置く。
「では、その技術しかと体得させて頂くとしよう」
 クラウンハットの螺旋忍者達は仰々しく礼を行い叔牙らの言うがまま配置に付く。
「では基本からやりましょう、同じ動きをして下さいね」
 真と大地が螺旋忍者に棒を手渡し、師範に習った型を同じように披露する。何度か繰り返し修行の真似事をさせた後、狗雲と重臣が先ほどと同じように実践形式の立会いを見せる。
「じゃあ最後に実践としてこれをしてもらおう」
 隆也が指揮を執り、クラウンハットを叔牙、巨体の忍者を双牙とペアになるように振り分ける。
 十分に分断し有利な状況へ運ぶ、そして、一瞬の静寂を破る鬨の声。
「はじめっ」
 声が響く刹那、叔牙と双牙の先制攻撃が2人の螺旋忍者を吹き飛ばした。
「あぶないから少し離れて見守ってほしいですー」
 戦闘開始の合図を機に、大地が道場主を避難誘導する。
「此処は修行の成果を、弟子の力を信じて、任せて頂けぬか」
 重臣の言葉、もとい自身の技術を分け与えた弟子の頼りになる言葉、背中を見て道場主はその場から離れる。
「ナルホド、先に対象に接近し我らの目を欺くか……この怒り、貴様らただでは済まさぬ」
 吹き飛ばされた怒りの忍者がのそりと立ち上がり、怒りを露にする。その声に反応するように巨体の忍者も立ち上がる。
「悲しいなあ、必死に修行してこの程度なんて悲しいなあ」
 対照的な2人の螺旋忍者から明確な殺意が発せられた。
「まじめに生きている者を生半可な気持ちで弄るなど、いかなる理由があろうとも許してはおけない」
 前線に立つ真、それを援護するように煎兵衛も後衛につく。
「棒術も悪くは無い、が。やはり俺の武器は、俺自身、だな」
 先ほど鋭い一撃を与えた双牙、拳を手のひらにパンと叩きつけながらその手ごたえを確かめる。
「ミス・バタフライ様の障害となるケルベロス共、我ら兄弟の敵ではない。ゆくぞ弟よ!」
 怒りを存分に含んだ声、言い終わるが早いか、螺旋忍者が同時に跳んだ。

●歴史に宿る想い
 その巨体に似合わない速度で飛び掛る忍者の掌底をノムが飛び出して受け止める。
「修行の成果を見せてやる。はっ!」
 攻撃の隙を見逃さない真の棒術が弟を捕らえる。修行で得た流れるような棒捌きは、その切っ先を吸い込まれるように真っ直ぐに急所に打ち込む。煎兵衛も真にハートを飛ばし絆を深める。
「ただの飾りじゃないよ……!」
 狗雲が前衛を張る真らに力を与えると、武器に唐紅色の鎖が付与され一撃の重みが増す。
 飛び出してきた敵を逃さぬ様、大地の狙い済ました一撃と霊力の網が巨体を絡めとる。
「いくぞ」
「捕らえたぞ――」
 一瞬の隙を逃さぬ隆也と双牙の連携。隆也が背後に回りこみ、我流戦闘術――実践の中で身に着けた戦闘に特化した動き――でオーラを纏った拳を叩き込むと、挟み撃ちにするように双牙が地獄化した手で頭を掴み流れるように膝に叩きつける。その動きは狼が大口を開けて襲い掛かる様な残酷な一撃で確実な衝撃を残す。
 足止めは一瞬、その一瞬を逃さない2人の前後からの挟み撃ちに流石の巨体も揺らいだが、無数に飛んでくる手裏剣がそれ以上の連撃を許さない。
 仲間を庇い手裏剣の毒に侵される重臣だが咲耶の癒しのオーラで即座に回復が施される。
「端子展開、放電開始……Ready Impact!」
 攻撃を挟まれたが、螺旋忍者の分断は成功している。1体ずつ対処していけば問題ないと、接近させないように叔牙が怒る忍者を抑えに回る。両手で展開した電撃を掌底と共に叩き込み動きを制限する。
 重臣もそれにあわせ攻撃を与え、2人が連携するのを阻止する。
「くっ、弟よ、全員叩き潰せ!」
 兄の声に呼応して巨体が唸る。両手の手裏剣から発生した巨大な竜巻が大地に襲い掛かるがそれをノムが庇う。
 強烈な1撃をまともに庇い、ノムは地に伏せる。
「ノムー、……ごめんねー」
 自身を庇って力尽きた相棒を抱きしめて大地は償いの言葉を落とした。
 しかし、強烈な攻撃の後の隙は見逃さない。
 真がヌンチャクを振り回して十分に勢いの乗った攻撃を叩きつけ、咲耶が召喚した氷の騎士が巨体を瞬く間に凍りつかせ、その凍りついた部分を大地の音速拳が的確に打ち抜きダメージを倍化させた。
 分断が成功している間は連撃を重ね、重い反撃にはヒールと加護を重ね集中して攻撃を浴びせていく。
「いい加減にして貰うぞ!」
 怒りの忍者が鋭い回し蹴りを放ち、重臣を弾き飛ばしその隙に隊列を立て直す。
「こんな奴らに舐められてかなしいなあ」
 2人揃った事で本来のコンビネーションを取り戻すだろう、重い攻撃とバッドステータスの連撃に備えて身を引き締める。
 攻撃を受けた重臣は自身で気力を溜め傷を癒し、アスナロも加護属性でサポートを増やしていく。
 狗雲も分断役から合流した叔牙に手厚い回復で傷を癒した。
 そして、未だ冷めあらぬ怒りに震える忍者から放たれた螺旋の氷結、庇う咲耶が氷に覆われた瞬間、巨体から放たれた掌底が凍てついた肌を破壊し咲耶を盛大に弾き飛ばした。
 短い悲鳴を上げてその衝撃に意識を手放し地面に横たわる咲耶。
「か弱き女性を狙うとは許さんぞ」
 この数日の彼女のサポートに十分な恩を感じていた隆也が真っ先に飛び出した。
 勢いのまま更に踏み込み、目にも留まらぬ電光石火の足技を叩きつける。
 その姿に双牙も続き、獣化した拳にありったけの力をこめた連携攻撃を繰り出す。
「棒術も悪くは無い、が。やはり俺の武器は、俺自身、だな」
 棒術を習ったとはいえ、咄嗟に手足が出るのは素手喧嘩専門だからだろう、仲間を傷つけられた怒りはしっかりとお返しした。

●技術に生きる信念
「遊びはここまで。痛点はそこだっ!」
 真の高速演算によるピンポイント攻撃。いかに強力な攻撃連携が取れていようが、流石にダメージは隠し切れない巨体の忍者を押し返し、ついに膝を付かせる。
 動きの停止した悲面の忍者に大地が荒れ狂うオーラを放ちその身を噛み千切る。
 戦闘開始から十数分が経過したが、敵の連携による単体攻撃が集中しないように、しっかりと庇い、回復しダメージを分散するケルベロス。
 先ほど大きなダメージを負った咲耶も、煎兵衛、アスナロ2人の厚い加護に立ち上がる。
 ディフェンダーに分散したダメージを狗雲が薬液の雨で癒していく。
「どれ程戦闘に長けようとも、貴様等では真の会得は叶うまい」
 人の想い、技術に託されたそれを踏みにじるのは許さないと重臣は怒り、修行に使っていた棒を次々と拾い上げ破天荒なまでに叩きつけて行く。
「技術だけ、盗用して……殺そうとは、愚かな…!」
 この数日で得た、盗むだけでは決して得ることの出来ない何かを胸に、叔牙が燃え盛る蹴りを放つとついに巨体の忍者の身体は崩壊して消えた。
「我が弟をよくも……!」
「技術まで奪おうなんてぇ、螺旋忍者って貪欲だねぇ」
 それが仇となったといわんばかりに怪しげに口端を歪めて笑う咲耶、思い切りの1撃を与え、霊力の網で逃げ場を奪う。
 逃げ場を奪った怒面忍者との間合いを素早く詰め、黄金色のオーラを拳に纏い我流の必殺拳で追い込む隆也。
 回復の必要のなくなった状況に、狗雲も攻撃に参加する。師より受け継いだ電撃杖から魔力の雷を発生させ怒面を貫く。
「盗んだものばかりじゃ、役には立たないよ――ガルム・ブランディング!!」
 双牙も続き、電撃の残る怒面を力任せに掴み上げ、そのまま地面に叩きつける。
 ケルベロスの一斉攻撃に最早逃げることも適わなくなった怒面の忍者。
「空隙拡散。氷弾よ、大気を斬り裂け!」
 撃ち込まれる氷の弾丸、凍りつく大気に捕われ氷塊が砕けるように、断末魔が響くこともなく静かに螺旋忍者が崩れて消える。
 すっかり荒れてしまった周囲を見回して、安堵の溜息。そして――緊張の糸が切れたように座り込む大地。
「はじめての戦いー、ドキドキしましたー」
「こりゃぁまた掃除しないとねぇ」
 荒れた周囲を見渡して、咲耶も楽しげに笑う。
「そういえば、食事の途中であったな」
 八雲を撫でながら年齢にそぐわない無邪気さのまま重臣が言う。
「短い間、でしたが…貴重な技術、ご教授頂き。ありがとう、ございました」
「いろいろと勉強になりました」
 隠れていた道場主に礼を言う叔牙と隆也。戦闘で破損した箇所にヒールをいれ、他のケルベロス一同もそれぞれに礼を交わす。
 食べ損ねていた食事を全員で取り、受け継がれてきた技術だけでなく、想いもその身に、全員は道場を後にした。

作者:粉月ナツメ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年5月13日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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