ここはともに戦う仲間が集う場所

作者:宮内ゆう

●崩壊後
 ぼろぼろになった看板ががたりと揺れた。
 あちこちがかすれていて文字が読みづらくなっているが『イーダのさかば』と書かれているようだ。
 壁紙が剥がれ、無骨なコンクリートが姿を覗かせているが、本来は木目調のデザインで、カウンター席とテーブル席があり、床は石材のタイル。
 中世ヨーロッパの場末の酒場を思わせる作りになっていたことが見て取れる。であればここは飲食店だったのだろう。
「くぅ……がんばってきたのに、想いを込めたのに……なんだってこんな……」
 店の奥で男がうめくように呟いていた。
 こうすれば良かった、ああすればあるいは。そんな言葉を吐き続ける男の後ろに、いつの間にかひとつの人影があった。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『後悔』を奪わせてもらいましょう」
 鍵が男の背中を穿つ。
 何をされたのかも分からず男は崩れ落ち、そして、もうひとつの影が生まれた。

●仲間を求めて
 自分の店を持つという夢。
 それを叶えたというのに、潰れてしまって後悔の念に苛まれる人がドリームイーターに『後悔』を奪われ、新たなドリームイーターが生み出されるという事件。
「すでに発端のドリームーターは姿を消しているようですが……」
 新たに生み出された後悔のドリームイーターが事件を起こすというのなら、それは放っておけないとヘリオライダーの茶太は言う。
「このドリームイーターを倒せば、被害者の男性も目を覚ましますしね」
 そうして説明を続けることにした。
 もともとビルのテナントのひとつで、営業不振から件の店は廃業となったのだが、あれこれといろいろあり、今はビル自体が廃ビルとなっている。
 要するに、被害や人通りなど周囲に気を配る必要はないということ。現地に行ってただドリームイーターを倒せばすむという話だ。
「といっても、この手のドリームイーターにはある種の特性があります」
 すなわち、ドリームイーターの提供するサービスを受けて、それを心から楽しめば弱体化するというもの。撃破後も、被害者の後悔の気持ちが薄らぐという点も無視できない。
「どうするかは任せますが、気持ちよく解決してくれると嬉しいものです。どうかよろしくお願いします」
 そう言って茶太は頭を下げた。
 だいたい話が済んだところですすすーっとセティがやってきた。どうやら店について調べていたらしい。
「どうやら店主の名前は飯田さんで、イーダのさかばというカフェだったそうです」
 さかばとはいうが、お茶やコーヒー、軽食がメインだったらしい。
「職業を決めて店に入り、仲間を集めてダンジョンに挑み、魔王を倒すのだとか……」
 いわゆる中世ファンタジー世界のコンセプトカフェ。冒険者やモンスターを彷彿とさせるメニューが揃っていて、そういうのが好きな人にはウケがよさそう。
 また、メインはカフェだが追加料金でなぞなぞなんかのゲームが出来て、ちょっとしたRPGごっこが出来る、そんなイメージだ。
「……カフェとダンジョンとどっちがメインなんでしょうねぇ」
 なんとなく潰れた片鱗が分かる気もする。コンセプトは特化してこそコンセプトである。
「ええと、それから職業は自分で考えてOKで、スキルは用意されたものから3つ選択……スキルの数は全部で5万種……」
 しばし沈黙。
 セティはそっと本を閉じた。


参加者
結城・レオナルド(弱虫ヘラクレス・e00032)
古鐘・るり(安楽椅子の魔女・e01248)
ダレン・カーティス(自堕落系刀剣士・e01435)
リリウム・オルトレイン(星見る仔犬・e01775)
ハチ・ファーヴニル(暁の獅子・e01897)
ベルノルト・アンカー(傾灰の器・e01944)
六条・深々見(喪失アポトーシス・e02781)
セデル・ヴァルフリート(秩序の護り手・e24407)

■リプレイ

●イーダの酒場
 彼らは辿り着いた。
 魔王を倒すべく、仲間が集うこの場所へ。
「あっ、ちょ、入らないッ! 挟まったっ、誰か助けてエェェ!」
 でもせっかくの冒険なのに結城・レオナルド(弱虫ヘラクレス・e00032)が入り口で引っかかってた。なんで馬車(馬なし)を引っ張ってきた。
「いや、それにしてもなんか人数少なくね?」
 きょろきょろとダレン・カーティス(自堕落系刀剣士・e01435)があたりを見回す。確かにセデル・ヴァルフリート(秩序の護り手・e24407)の姿がない。思いついたようにハチ・ファーヴニル(暁の獅子・e01897)が自身の拳を叩いた。
「痛てっス! あ、いや、これは仲間のピンチに駆けつけていいところを持っていく奴っスね!」
「いえ、さっきそこで警官に職質受けていましたよ」
「っス!?」
 さらりと答えるベルノルト・アンカー(傾灰の器・e01944)にびっくり。
 真面目に文化を勉強して、RPG女戦士伝統のビキニアーマーを着て往来を闊歩した結果、そんなことになったらしい。秩序とはいったい。まあ、ケルベロスとわかればすぐに解放されるだろう。
「ワールドマップ風の料理ってあるかしら。魔王城どころか周りの毒の沼地まで食べられるやつ」
「マイコニドとか歩き茸とかのシチューあるかなー? あったらそれと……マンドラゴラかアルラウネあたりのお茶ー」
「オレンジジュースとまほうのどーなつです!」
 一方すでに席についてる面々はすでにオーダーしてたりする。割とガチ、約1名以外。
「どう見てもお子様ランチね……」
 山脈なつけ合わせ、草原なサラダ、沼なカレー、そして魔王城なピラフ。どこから手をつけるか迷うところかと思いきや、古鐘・るり(安楽椅子の魔女・e01248)は初手から魔王城にスプーンをつっこんだ。某勇者ランチのように沼に毒とかないから安心していい。
「あ、かわいー。温泉につかってるみたいー」
 マイコニドシチューはなんかまったりした表情が描かれたエリンギがまるまる入ったものだった。食べられるとは夢にも思っていないだろうキノコの腹に六条・深々見(喪失アポトーシス・e02781)がフォークを突き立てる。容赦のかけらもない。
「まふまふまふまふ」
 ドーナツを貪ってるリリウム・オルトレイン(星見る仔犬・e01775)については特に言うこともあるまい。ものすごくアホ毛が揺れているからすごく美味しいに違いない。
 そして、始まる前から多くの困難に見舞われた冒険者たちは、ようやくこの場に集おうとしていた。

●旅立ちに備えて
 ある時はしがない郵便屋さん、またあるときは旅の僧侶、しかしてその正体はやっぱりしがない郵便屋さんのケルベロスである彼女は、此度バーテンに身をやつしていた。
「はろはろ~、今日のロッタはワザセレクトのお手伝いをしますよぉ」
「おねがいしますです!」
 というわけで、アドバイスを受けてきたっぽいリリウムが戻ってきた。職業はまほうつかいで、スキルがオブジェクトを破壊する魔法の杖と、魔法攻撃の威力が上がる魔力増幅。残りひとつのスキルをセティに頼むというのだが。
「せんとう用のスキルがないっていわれましたです!」
「的確すぎて反論の余地もありません……攻撃用なら、あ、これどうでしょう。ジェノサイドハンマー」
「おおお~」
 高威力低命中。博打技だが一撃のロマン。よくわかってないけどリリウムは気に入ったらしい。喜びすぎてルシエドのしっぽにアホ毛をぺしぺしぶつけてる。
「いやー、どこか覚えのあるスキルですねぇ……じゃなくて魔力増幅の恩恵は!?」
 レオナルドがなんか言ってるけど気にしない。ちなみにそんな彼自身、魔獣戦士という職業で、マンティスシックル、ワイルドランページ、アルティメットビーストというスキルを選択している。
「でもその説明、私の知ってるスキルと違う」
「何のことでしょうか」
 素知らぬ顔のライオンさん。草刈りに行くふりして逃げるとか、モーモー鳴いてダッシュで逃げるとか、ひよこの着ぐるみ着て『うさぎ(cat)』と書かれた札を下げてワンワン鳴いて相手が混乱してる間に逃げるとか、そんな逃げ特化の魔獣知らない。
「これは……調教するしかありませんね」
「えっ!?」
 ふうと溜息ひとつベルノルト。ちらりとライオンさんに目を遣ったような気がした。
 書き込んだ職業は猛獣使いで、捕獲、餌やり、応援。ちかくのライオもとい猛獣を捕獲し、餌をやって手懐け成長させ、戦わせて応援するのだ。
「……」
 で、なぜか近くのライオンさんをみつつ、じっと鎖付き首輪を持っているベルノルトであった。
「ふっふーん。やっぱり今日の自分はモンクっス! 闘う修行僧、超アツいじゃないっスか!」
 ハチはそんなに悩むことがないらしい。ささっと職業にモンクと書き、スキルも2つは埋めていく。
「取得経験値の上がる修行に、自己ダメージがあるけど強力な竜撃……セティ、もう一個は何がいいっすかねぇ」
「修行が好きなハチさんにはこれがおすすめですね、その名もハンデ!」
 あらゆる能力値が常に最低、つまり1になるスキルだそうで。
「おお、なんかハードル高そうでいい感じっスね!」
 気に入ってしまった。この状態で竜撃を使うとたいした威力も出ないうえに死ぬことを彼らはまだ気づいていない。
「ついでなんですけど、モンクは修行僧、つまりお坊さんなんですよ」
「ふむふむ」
「つまり殺生禁止、肉禁止、頭丸めてください」
「っス!?」
「あ、セティ。私の方も選んでくださいませんか?」
 驚くお坊さんはさて置いて、セティはセデルの方へ。職業は盾戦士、格好もビキニアーマーに丸盾といった出で立ちだ。
「グラディエーターかアマゾネスですかねぇ……って着替えてなかったんですか」
「私は思うのです、形も大事だと!」
「なるほど、でもサイレントさんそこ喜ぶ所じゃないと思います」
 なんでかビハインドのイヤーサイレントことサイレントさんが嬉しそうだった。
「守りが固い感じだといいと思うので……これでどうでしょう」
 攻撃力が下がるが防御力の上がる、防御態勢。他の味方への攻撃をかわりに受ける、庇う。そして敵の攻撃を自分に集中させる、挑発。
「あえて装備の軽さを見せつけて油断させて内に秘めた防御力で弾き返すのですね!」
「挑発ってそういうものなんでしたっけ」
 そして庇うと挑発が効果的に競合してることにまだ気づいていない。あと、サイレントさんが挑発的なポーズをしていることも。
「これは……ちょっとどうかと思うわね」
「なにが?」
 るりの言葉に深々見が首をかしげる。
「戦闘職に攻撃をできる人がいないわ」
 今のとこ、まとも(?)な攻撃はまほうつかいのジェノサイドハンマーくらいか。ハチはすぐ死ぬので除外。ライオンが戦うなら応援も効果はあるのだが。
 かくいうるり自身は戦闘職ではない錬金術士。素材を見つける、採取。アイテムを作る、調合。そしてアイテムを、投げる。
「まあ、武器や爆弾を作って投げれば戦えるけど……あ、ヒトも投げていいのね」
「けっこう物騒だねぇ」
 でもなんか唯一まともに戦えそうな気がしないでもない。深々見も付与術士なんていしているが、スキルが怠惰、堕落と来ている。体力や魔法攻撃をアップする効果があるが時々サボるらしい。どうしてそういう名前になったか不明。
「じゃあ、セティには攻撃スキル選んでもらおうかなー。楽で強そうな奴」
「あ、ちょうどいいのがありますよ。カイザードラゴンって」
「自らにドラゴンを付加かー」
 竜の王に変身して敵を薙ぎ払うというスキルだ。でもやっぱり気づいてない。変身してからサボるに決まってる。
「と、ところでセティさん……?」
 話もまとまってきたところで、わなわな震えたままのダレンが話しかけてきた。
「俺のスキルチョイスなんなんですかねぇぇぇ」
「職業遊び人とか書くのでつい」
 スキル。自決、自害、自刃。
「いやこれ死ぬだけじゃないですかああああ!」
「役に立たないだけならいいですけど、仲間の行動妨害するのは死んだ方が建設的かと」
「酷くねエンジェル!」
「レベル上がるほど使えないとか、もうさっさと賢者にでもなればいいじゃないですか」
「何の話!?」
 なお、セティはホントに職業に虚無僧とか書いてた。そしてスキルにギター、ボーカル、修行と入れてた。何をする気なのだろうか。

●仲間がいるから
 準備ができたところで一行はダンジョンに挑戦する、のだが。
「これは後でじっくりたのしむとして」
「いまはさっくり行こうかー」
 用意されてた謎解きはるりと深々見にさっくりと攻略されて、あっという間に大魔王のもとへたどり着いた。
『おお勇者よ。なにゆえ、もがき生きるのか』
 という看板がドリームイーターの魔王の後ろにかかっていた。
「ええと、この中に勇者は……居ましたっけ」
 ベルノルトの一言であたりは沈黙した。
「猛獣はいますが……って何逃げようとしてるんですか」
「い、いやいやいや」
 きっちり後退していたレオナルドをしっかり牽制。いい連携だ。
「勇者はいません……が、魔王の悪事はここまで、討たせていただきます!」
「お、乗ってるねぇ」
 堂々と口上を述べるセデルに、ダレンが言う。
「私以外の人が!」
「自分でやんねーの!?」
「いえ、私攻撃スキルありませんし」
「いやいやいや、こっから普通に戦闘だからね!?」
 あっ、といわんばかりの反応。ちょっと忘れてたっぽい。
 忘れてはいけない、ここからが本番だ。
「あー、だっるいー」
 いきなり深々見がサボり始めた。
「いやほらー、あたしメディックだしー、仕事がないほうがいい、みたいなー?」
「引きこもりにありがちな理論ですけど、かばうの俺たちですからっ!?」
 とっさにレオナルドが引っ張って、撃ち込まれてきた魔力の弾丸を回避。危なかった。
「サイレント、抑えますよ!」
 セデルとサイレントさんが並んで前に出る。こうして並ぶと動きがよく似て見えるふたりだが、ぼこぼこにされて恍惚とするサーヴァントを姿を見るセデルの心境やいかに。
 ともあれ守りはOK、あとは攻めるのみ。
 ドクン、と音がした気がした。
「……準備はできました、どうぞ」
 ベルノルトが何かをしたというのは想像に難くなかった。前衛で攻める機会をうかがっていた者たちの感覚が研ぎ澄まされていく。
「それじゃあ、攻める道を作るわね」
 さらに魔王に対してるりがフラスコが投げ込んだ。それと同時に立ち昇った煙が魔王の足先を石へと変えていく。
「気分よ」
 ペトリフィケイションだが、錬金術的な演出である。この人だけ相変わらず本気。
「いまがチャンスですます! ミーディアム召喚でルシエドさんを召喚します!」
 唐突のリリウムの宣言に、ルシエドがえって顔して振り向いた。
「ガーディアンの力を見せつけるのですー!」
 ただけしかけてるだけだった。しかし自分の行動はどうするのか。
「こ、こうなったらきつねガンマンなあの人を呼ぶしか……!」
 絵本用意してた。早く呼べばいいのに、眼鏡がずり落ちるだろうけど。
「ごぉああああー!」
 でもなんかダメージはちゃんと通ってるみたい。痛かったのか魔王が暴れ出す。
「隙アリってなあ!」
 暴れて動くその合間を縫うように、飛び込んだダレンが魔王の身体を深く斬りつける。そしてよろめいた魔王の足元、深くしゃがみ込んだハチがいた。
「う、おおおおおお……竜撃ィィィィィっスゥゥゥゥゥゥ!!」
 全身のバネをふんだんに使って飛び上がりながらの鉄拳一撃が魔王の腹に深くめり込んだ。
「ぐ、ぐ……」
 倒れるかに見えた魔王は、立ったまま動きを止め……。
「グオオオオオオオ!!!」
 咆哮した。
「ここからが本番、ということでしょうか」
 震える拳を握り、レオナルドが武器を構えなおす。
「へっ、上等……遊び人はなあ、ジョブチェンジする時はめっちゃ強い上位職業になるんだぜっ!」
 ダレンがもう一度武器を構え飛び上がる。
「行くぞ魔王、ウオオオオオ!」
 ケルベロスたちの勇気が世界を救うと信じて!

●エンドロール
 なんやかんやでドリームイーターである魔王を撃破し、飯田氏を救助。改めて残ったものでではあるが、カフェを一通り楽しむこととした。
「あああああああ、ダメっすぅぅぅぅぅ!」
 何度目かもわからない。ハチが絶望の叫びを上げた。あまりにもやかましいので、るりがセデルに尋ねた。
「彼はどうしたというの?」
「いちばん最初のダンジョンさえ何度やってもクリアできないのだそうです。私もサポートはしているんですけど……すぐ死んでしまうんです」
「スキルを見直しさせなさい、今すぐ」
 即死コンボ組んでる限り無理だと気付くのはいつか。あと、サイレントさんがスキル欄にハンデと書こうとしてるので誰か止めたほうがいい。
「ハチ、とりあえずそのくらいにして休憩にカレーでも食おうぜ。ってなにこのケミカル色!」
「クラーケン焼いれていっスかね」
「挑戦してくな、お前!?」
「修行っスから!」
 ダレンの予想を上回り、青色からパープル色に変化したイカ入りカレーを軽々平らげていくハチ。ちなみにその脇でセデルがレッドスライムなカレーを食べていて、何とか我慢してる様子だが、サイレントさんが喜びながら辛さを堪能してるので、誰か止めたほうがいい。
 がうー、ぐるる……。
 唸り声が聞こえて、ダレンがとっさにドーナツを取り出した。
「がおー、きしゃー、がぶー!」
「なんでだ、出しただろ!!」
 動物対策にドーナツを用意したというのに、それでも右脛をリリウムに、左脛をルシエドにかじられた。痛い。
「ドーナツゲットですー、ほらほらライオンさん見てくださいー」
 そしてリリウムは戦利品を片手にレオナルドに飛び乗った。
「そっかー、きみはドーナツが好きなフレンズなんだね!」
 ルシエドもドーナツ咥えて乗っかってきた。
「きみもドーナツが好きなフレンズなんだね!」
「ライオンさんとお揃いですー」
「は?」
 言われて首に手を当てると輪っかがかかっていた。つながった鎖はそのままベルノルトの手へ。
「きみは……俺に対してだけ何か対応がサイコなフレンズなんだね!」
「ややサイコです、やや」
 そこは譲れないらしい。
 まあほら、猛獣使いとしてはちゃんと鎖繋いでおかないと危険ですし。
「とりあえず僕は珈琲をいただいているので……そうですね、おすすめの一品でもあれば、ポイズンスライムでも毒の沼地パフェでも」
「毒々しいですよねそれ!?」
 フレンズは止めたらしい。
「……そちらのライオンさんの方へお願いします」
「おっと、ちょっと草刈りに行って来なければ」
「逃がしませんよ」
 レオナルドのマンティスシックル発動。しかしベルノルトに回り込まれてしまった!
 一方その頃、ライオンに乗るのに飽きたリリウムは、ルシエドの背に跨り、アホ毛で鞭のようにぺちぺちルシエドのお尻を叩いてた。
「で、ダンジョンっていってもこんな感じだったのねー」
 一枚のシートをぴらぴらさせながら深々見は言った。
 シートがマス目上になっていて、駒を使って進ませ、進んだマスで戦闘が起きたりなぞなぞが出たりとそんなシステムだったようだ。
「おっとスライムが出た。ドラゴン変身ー。防御防御防御……」
「働きなさいよ。ダレンを投げて攻撃、と」
「あるぇ、俺って武器なの? ねぇ武器なの?」
 抗議は無視して、サクサク進めるるりと深々見のふたり。
「えっと、次の数式の棒を4つ移動させて正しい式にしろ?」
「セティ分かるー?」
「さっぱりです!」
「ここをこうよ」
「わかってるじゃないですか!」
 あっさりるりが解いた。彼女にとっては少々難易度が低い遊びなのかもしれない。とはいえ、退屈そうな表情でも内心楽しんでそうな雰囲気なのは目を見ればわかる。ちょっときらきら。
「それにしてもねー、んー」
「どうかしたんですか?」
 深々見がぐでーっとし始めたのでセティが尋ねる。
「あたしはこういうの結構好きだけどなー……でもまぁ、通い詰めるほどでもないと言えばその通りなんだけど……」
「たしかに面白いんですけど、なんか違うんですよねー」
「んー、それ系のテーマパークの中とかにあったら割と人も来たのかも?」
「それでもうちょっと大掛かりにするとか……あ、それは楽しそうですね」
 なんていろいろ考えを巡らせてみるのだが。
「まあ、商売って難しいよねー」
 そんな一言でまとまった。
 だがその言葉を聞いた飯田氏の肩がびくっと震えたのだった。

作者:宮内ゆう 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年5月6日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 2
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