阿修羅のごとく

作者:紫村雪乃


 それは闇の都市に流れる伝説であった。
 午前二時。俗に言う丑三つ時に鬼を呼べば、それが現れるという。
 スマートフォンを手に、若者はほくそ笑んだ。
「伝説は本当だ。きっと鬼は現れる」
 若者は鬼を呼んだ。顕現しろと。が、何も起こらなかった。ただ闇だけが辺りを支配している。
 刹那、彼の心臓を鍵が貫いた。その鍵の持ち主は第五の魔女・アウゲイアスといった。
「私のモザイクは晴れないけれど」
 魔女はずぶりと鍵を引き抜いた。不可思議なことに、その場所からは血が流れ出すことはない。
「あなたの『興味』にとても興味があります」
 魔女がいった。が、その声を若者が聞くことはなかった。喪神し、若者は路上に身を横たえている。そして――。
 若者の傍に生まれた影があった。
 三メートル近い背丈。鋼の筋肉が全身を覆っている。
 蓬髪の下には爛と光る赤い目。耳まで裂けた口からはぞろりとした獣めいた牙が覗いている。
 鬼であった。額には一本の角がぬらりと生えている。さらには腕は六本あった。
 おおん。
 鬼が吼えた。


「不思議な物事に強い『興味』をもって、実際に自分で調査を行おうとしている人が、ドリームイーターに襲われ、その『興味』を奪われてしまう事件が起こってしまったようです」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が形の良い唇を開いた。
「『興味』を奪ったドリームイーターは既に姿を消しているようですが、奪われた『興味』を元にして現実化した怪物型のドリームイーターにより、事件は起こるようです。その怪物型のドリームイーターによる被害が出る前に、そのドリームイーターを撃破して下さい。そのドリームイーターを倒す事ができれば、『興味』を奪われてしまった被害者も目を覚ましてくれるでしょう」
 セリカはある神社の名を口にした。東京近くにある神社だ。
「ドリームイーターはその神社近くに現れます。正確な出現場所はわかりません。しかし、ドリームイーターは自分の事を信じていたり噂している人がいると引き寄せられる性質があります。その点を利用すれば誘い出すこともできるでしょう」
「どんなドリームイーターなの?」
 萌るな真紅の髪の女が問うた。三十歳ほどの落ち着いた物腰の冷然たる女だ。名をレオン・シシドウ(紅髪の戦神・e33172)といった。
「鬼です。六本の腕をもつ怪物です」
「六臂の鬼、か」
 この場合、レオンはニヤリとした。恐るべき魔物との戦いに戦慄しているのである。なんとなれば猛者との戦いこそ彼女の生甲斐であったから。
 うなずくと、セリカは鬼の戦闘力について告げた。
「バトルオーラのものに似たグラビティを使います。ただ威力は桁違い。それだけでなく鬼は六つの腕を自在に操ります」
 言葉を切ると、セリカはケルベロスたちを見回した。
「強力な敵です。けれど皆さんならきっと斃すことができます」
 若者を助けてあげてください。
 セリカはいった。


参加者
シルク・アディエスト(巡る命・e00636)
ベルノルト・アンカー(傾灰の器・e01944)
ユーカリプタス・グランディス(神宮寺家毒舌戦闘侍女・e06876)
エフイー・ヨハン(虚空の彼方をも狙い撃つ機人・e08148)
伊佐・心遙(ポケットに入れた飛行機雲・e11765)
藤林・シェーラ(詐欺師・e20440)
四方堂・幽梨(義狂剣鬼・e25168)
リティ・ニクソン(沈黙の魔女・e29710)

■リプレイ


「鬼」
 すでに闇の降りた街路に声が流れた。風のそよぎとも思える声だ。
 声の主は淑やかな風情の少女であった。夜と同色の黒髪の持ち主だ。
 名はシルク・アディエスト(巡る命・e00636)。シャドウエルフであった。
 鬼ですか。そうシルクは続けた。
「確か、日本に古来より存在するという怪異でしたね」
「まあ、よくある怪物の定番ですね。日本ならではのものです」
 答えたのは二十歳ほどの娘であった。人形めいた端正な顔の持ち主である。名をユーカリプタス・グランディス(神宮寺家毒舌戦闘侍女・e06876)というのであるが、その口調にはあまり心の震えを思わせるものはない。それは慣れているからだ。
 ユーカリプタスは神宮寺家という名家のメイドであった。その神宮寺家であるが、実は退魔を生業とする家系なのである。故に日本の怪異については詳しいといってよかった。
「基となった都市伝説の内容によっては良い鬼もあるのではないかと思いましたが」
「そう」
 一人の娘がうなずいた。こちらも整った――いや、整いすぎているといっても良いほどの美貌の持ち主だ。どこなくユーカリプタスと雰囲気が似ている。それは両者が機械融合生命体――レプリカントであるからで。
 娘――リティ・ニクソン(沈黙の魔女・e29710)とという名の娘はメモリに保存してあった内容を口にした。
「鬼……定説では人に害なす存在のものが多いけど、人を守護したり、時に人に罰を与えたり、地域や時代で随分違う」
「昔噺や伝説ですね」
 ユーカリは指摘した。古来から伝わる話の中には、確かに人間と友達になったり助けたりというものもある。が、現実には違った。鬼は破壊の権化なのである。
「そんな伝説の怪物を見ることができるとはなあ」
 面白そうに笑ったのは、もう一人のレプリカントであった。名をエフイー・ヨハン(虚空の彼方をも狙い撃つ機人・e08148)というのだが――。
 同じレプリカントでありながら、どうもエフィーは他の二人とは違うところがあった。美しいのは同じでありながら、いやに人間くさいのである。
「神社に現れる鬼かぁ」
 興味津々といった様子で、十歳ほどの少女がびょんと跳ねた。南洋をおもわせる澄んだ碧が印象的な美少女である。見ているだけで顔が綻びそうになる可憐さがあった。名は伊佐・心遙(ポケットに入れた飛行機雲・e11765)。
「……いかにもありそうな噂だけど、本当に現れてもらったら困っちゃうよね!」
 心遙は続けたが、どうも楽しそうである。するとベルノルト・アンカー(傾灰の器・e01944)という名の若者が暗鬱につぶやいた。
「面白がっている場合ではありません。豆で祓える手合いならいざ知らず……捨て置く事は出来ませんよ」
「そうだけどよ」
 不服そうにエフィーがベルノルトを見やった。そして思った。辛気臭い奴、と。
 ベルノルトという若者。実は貴族的な顔立ちの美青年なのである。が、そうは感じさせない昏さがあった。まるで拗ねた野良犬のような。いや――。
 違う。エフィーは気づいた。ベルノルトのアイスブルーの瞳にやどる光に。
 それは強く、断じて野良犬がもちうるものではなかった。強いてあげるなら、それは守りし者――騎士の目にやどる光であった。
「で、だ」
 ふっ、と少年が目をあげた。
 白髪に灰色の瞳。十歳ぐらいであるのに、とんでもなく大人びと口調である。名は藤林・シェーラ(詐欺師・e20440)といった。
 シェーラは探るように目をすがめると、
「鬼とは純粋に強そうだケド、どうなんだろ」
 誰にともなく問うた。肉弾戦が得意であるというイメージがシェーラにはあるが――。
「ターゲットは六本腕……通常の敵より、腕が多い分トリッキーな攻撃を仕掛けてくるかもしれないし、個体の戦力自体も侮れない」
 既得情報の分析の結果をリティは告げた。すると八人めのケルベロスである少女が低くつぶやいた。鬼か、と。
 彼女はあるゆる人の中に鬼を見ているのだった。己自身の中にさえ。
 故に彼女は剣を抜く。鬼と鬼が切り結ぶ先、何かを掴めるかもしれないと思うからだ。
 彼女の名は四方堂・幽梨(義狂剣鬼・e25168)。眼鏡にクセ毛にジャージという、残念な外見の剣鬼であった。


 神社に続く街路。
 点滅する街灯に八人の男女の姿が浮かび上がった。いうまでもなくケルベロスたちである。
 時間は深夜二時。俗に言う丑三つ時だ。
「ここにすごく強い鬼が出るんだって!」
 足をとめると、心遙が興味深げに辺りを見回した。
「どんな鬼なんだろ? やっぱり大きいのかなぁー」
「やはり大きいのではないでしょうか」
 シルクがこたえた。そして素早く周囲に視線をはしらせると、
「鬼は偉丈夫。力は強く、猛き者と聞きます。時には人を喰らうとすらも」
「人を喰らう……」
 信じられないというようにベルノルトは息をひいた。が、その目はシルクと同じく油断なく周囲の様子を探っている。
「けれど」
 口を開くと、リティは続けた。
「鬼って、怖い存在の話が多いけど、人と仲良くて、人を護ったりして感謝される鬼も居るらしい。あと、『仕事の鬼』とか言うような感じで、凄いことを『鬼』と表したりするみたい。怖いけど親しまれてるんだね。あと、雷を操ったり、語尾に『だっちゃ』って付くって聞いた。ところで、この鬼も虎柄のパンツ穿いてるのかな?」
「はいているとして」
 最後尾。挙動不審に見える様子でついてきた幽梨が突然疑問を口にした。
「鬼のパンツっていいパンツらしいけど、材質は何なんだろう?」
 シーン。
 沈黙が落ちた。親しげに視線を交わしあったのはリティと幽梨だけだ。どうやら二人は馬が合いそうだ。
 咳払いをすると、エフィーは材質は知らねえけど、と話しだした。
「鬼っていやぁ、金棒を持っているっていうのが有名だけど。あれは鬼の正体が金工師だっていう噂もあるみたいだな! 鬼が出たっていう伝説の場所も大抵金鉱座山の近くが多いみたいだし、案外人が鬼になるっていう話も嘘じゃないのかもしんねーな?」
「人が鬼になる……」
 何を感じたか、幽梨が目を伏せた。
 その時だ。生暖かい風が吹き付けてきた。
「危ない。上!」
 叫んだのはベルノルトであった。はじかれたようにケルベロスたちが跳び退る。
 直後、彼らが佇んでいた地に何かが舞い降りてきた。巨大な何か。地響きとともに地が爆ぜたのは、それが拳を叩きつけたのだと後でケルベロスたちは知ることとなる。
 粉塵と闇にくるまれ、それはゆっくりと立ち上がった。
 三メートル近い背丈。鋼の筋肉がそれの全身を覆っていた。
 蓬髪の下には爛と光る赤い目。耳まで裂けた口からはぞろりとした獣めいた牙が覗いている。
 鬼であった。額には一本の角がぬらりと生えている。さらには腕は六本あった。
「これが――」
 幽梨が絶句した。
 鬼。伝説の中にのみ存在しうる怪異だ。それは彼女の想像を超えて邪悪であり、かつ威圧的であった。剣鬼であるはずの彼女の背に戦慄がはしる。それは恐怖によるものであったか、それとも喜悦のためか。
「うわぁ、ほんとに大きい!」
 心遙が嬉しそうに手をぱちぱちと叩いた。楽観的というより、底が抜けてしまったような明るさをもつ少女である。
 心遙は愛くるしく――いや、恐い笑みをうかべた。
「せっかく来てもらったトコ悪いけど、こはる達の本物の鬼退治に付き合ってねっ」
「ターゲット確認。ミッションスタート」
 リティがライトの光を鬼にむけた。すると一瞬くだけ鬼が眩しげに目を細めた。
 次の瞬間、鬼は疾駆。風の速さでシェーラに襲いかかった。突進の勢いを利用し、拳をぶち込む。
 そのあまりの拳の速さにシェーラは即座に反応する事ができず、もろに直撃を食らった。大型トラックに激突されたように跳ね飛ばされる。ぶつかった街灯をひしゃげさせ、ようやくシェーラの身はとまった。
「大丈夫」
 リティがシェーラの傷をスキャン。肋骨と内蔵の損傷を確認した。次いでグラビティ発動。座標軸を固定し、リティは呪術的手法によりシェーラの傷を分子レベルで修復した。
「おい」
 ずい、と。エフィーが足を踏み出した。そして銃口をむけるように指を突きつけた。
「よくもやってくれたな。もう容赦しねえ。ここで大人しく倒れて貰うぜ!」
「さて、鬼退治と参りましょう」
 ベルノルトの目が蒼く光った。


 突如、エフィーが仲間に向き直った。
「ターゲット・ロックオン! 狙い撃つぜ!」
 エフィーは自らに搭載したエレメンタルシステムを作動させた。ラディエントクリスタルから生成されるフォトンエネルギーを特殊フィールド展開能力に変換。自動ロックオン機能を有するエネルギーバイザーを味方側に広範囲展開した。
 と、何かが地を滑るように疾った。疾風の速さをもつはシェーラであった。勇猛果敢に鬼の懐へ跳びこんでいく。
「貴女の御前に傅く私が、偉大なる御身を讃えることをお許しください。貴女は例えば氷、茨、棺。極寒の冬に一輪咲く、気高く麗しい白の花」
 シェーラの唇が呪式をつむぐ。するとシェーラの背後に異様なものが現出した。
 猛々しくも壮麗。夜叉の女王であった。
 阿修羅王と夜叉王、ここに相対す。女王がちらりと鬼を見やった。同時に鬼が拳を突き出した。
 次の瞬間、空で爆発が起こった。女王が放った必殺の一瞥を、鬼の闘気が迎え撃ったのである。
「やりますね」
 吹きすさぶ風に髪を翻らせ、シルクは身体に装備された砲台を鬼にむけた。
「さあ、力比べと参りましょうか!」
 シルクは戦闘形態をとった。鬼をまとう者に。白兵形態・剛鬼の金棒だ。
 シルクは金棒型の砲身で鬼を殴りつけた。咄嗟に鬼が腕で受け止める。衝撃に鬼の足元の地が陥没した。
「おおおおお」
 鬼が吼えた。腕一本のみでシルクをはじきとばす。
 次の瞬間、いまだ残る爆煙をつらぬいて光が疾った。数は五。鬼が放った闘気の塊である。
「私も長年退魔を仕事にしてきた家に仕える従者。こういったものに後れをとっては名が廃るというもの。神宮寺家筆頭戦闘侍女、ユーカリ参ります」
 スカートの裾をつまみ、淑女然として一礼。そして彼女はするすると前に出た。ミミックのトラッシュボックスと共に。
 次の瞬間、闘気が彼女の身で炸裂。その破壊力はあまりに大きく、防御するために交差した彼女の腕は粉砕された。トラッシュボックスも消し飛ぶ。
 と、オルトロスがくわえた退魔神器の先端を鬼にむけた。デザイアだ。鬼の身体が炎に包まれた。が、鬼は腕のひと振りで炎を吹き払ってまう。おそるべき強靭さといえた。
「では、これならどうですか」
 ベルノルトが精神をたわめ、尖らせた。一瞬後、鬼の腕が爆発。たまらず鬼は苦悶した。
「まだだよ」
 一瞬で距離をつめ、幽梨が神速の刺突を繰り出した。紫電をからみつかれた日本刀――黒鈴蘭の刃が鬼の身体に突き刺さる。
「あっ」
 呻いたのは幽梨であった。突き刺した刃が抜けない。鋼のような鬼の筋肉が噛んでいるのだ。
「があっ」
 鬼が拳を幽梨にぶち込んだ。同時に四撃。叩きつけられた規格外の破壊力に幽梨の身が吹き飛んだ。
 いかなケルベロスであってもたまらない。地に叩きつけられたとき、幽梨の身は血まみれの肉塊と化していた。
「幽梨!」
 リティの口からひび割れた叫びがもれた。仮面めいた美貌に動揺の色が滲んでいる。が、身体は機械的な正確さで動いていた。魔術的手術を幽梨に施す。すると停止しかけていた幽梨の心臓が再び動き出した。


 雷鳴にも似た轟音が空気を震わせた。伝説級の破壊力を秘めた砲弾が唸り飛ぶ。心遙がかまえたハンマーから撃ち出されたものだ。をむけた。彼女の手には余るほど巨大はハンマーを。そして砲撃形態に形状変変化させると、鬼をロックオンした。討つ。
 が、それは空で炸裂した。鬼が放った闘気塊によって。その時――。
 爆炎を突き破って飛燕のように空を翔けた者があった。ユーカリプタスだ。流星の破壊力を爪先に、煌きを散らしつつ彼女は蹴りを鬼に叩き込んだ。
 鋼の筋肉のひしゃげる感触がユーカリプタスの足に伝わった。さしもの鬼も身を仰け反らせる。すとん、と地に降り立ったユーカリプタスがちらりと振り返った。
「飛び蹴りはメイドの嗜みです」
「なら俺はパンチだ」
 エフィーが拳を鬼の腹にえぐりこませた。視認できぬほどの神速のパンチ。亜音速のそれは衝撃波すらばらまいた。
「ぐわっ」
 鉄杭を打ち込まれたような破壊力に、たまらず鬼が身を折った。口から瘴気まじりの黒血を吐く。が――。
 鬼は信じられぬほどに兇猛であった。激痛を無視し、エフィめがけて下方から拳をうちあげる。さすがのエフィも避けきれなかった。鬼のパンチに顎を砕かれ、空に舞い上がる。あいた腹になおも鬼は拳をぶち込み――。
 鬼の腕がとまった。その胸に、ずぶりと指が突き入れられている。シェーラの人差し指だ。
「経穴を突いた。これで少しの間、お前は動けないよ」
 シェーラは告げた。恐るべし。彼は経穴を突いて気脈を絶つことにより、相手の動きを封じることができるのだった。
 何でその隙を見逃そう。地を滑るように幽梨が鬼に接近した。
「我が身、是空と也……色ぞ風花の如く舞い踊り……泡沫が如く空と為せ……」
 自己暗示の祝詞。強制的に無念無想の境に自らをおいた幽梨の口から裂帛の呼気が発せられた。繰り出される刃の一閃は全てを凍てつかせる氷の鋭さを秘めている。断ち切られた鬼からしぶく血すら凍った。
「ぎ……ぎぎ」
 ぎろりとむいた鬼の目は、するすると走り寄る若者の姿をとらえている。ベルノルトだ。
「罪業に依らず、裁きの刃は人の身に宿らず――力が命を断ち切るのみ」
 静かに告げるベルノルトは刃をたばしらせた。疾る白光は鬼の首を刎ね――いや、咄嗟にかばった鬼の腕二本を切り飛ばした。
「へえ、まだ動けるんだ」
 感嘆する心遙であるが。その掌の上に光が現出した。心遙がふっと息を吹きかけると、それは天球儀の回転。風を呼んだ。さらに、さらに――。
 颶風のように巨大化したそれは鬼に襲いかかった。鋭い気流が鬼の肉体を切り刻み、細胞そのものを霧散させていく。
「哀れなるかな。昏き世界の者。その命、自然へと還して差し上げましょう」
 シルクは告げ、金棒型砲台から最大出力のビームを放った。超高圧の破壊熱量は空間を灼きながら疾り、鬼を飲み込んだ。


 再び地に静寂が落ちた。静かな闇が戻る。ケルベロスたちは辺りの修復を行い始めていた。
 一人――。
「鬼になるのはいつも人だ。没頭するあまり、彼がそうならなきゃいいけどな……」
 眠りから目を覚ました若者を遠く見やり、幽梨は鞘に白刃をおさめた。

作者:紫村雪乃 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年4月30日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 0
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