三角コーナーを放置してはいけませんよ

作者:沙羅衝

「うああああ! 来るな! 来るなああああ!!」
 とある民家の台所で、清水・大輔が叫んでいた。手には殺虫剤のスプレー缶が握られ、あたり一面にぷしゅぷしゅと撒き散らす。
 暫くすると、そのスプレー缶から薬剤の噴射が収まる。
 目的を果たしたのかと思うが、そうではない。それを物語るように、彼の指先は噴射スイッチを目一杯押したままなのだ。
 カラン……。
 スプレー缶を取り落とした大輔が、肩で息をしながら、へたり込む。目には涙が浮かんでいる。
「カンベンしてくれよ……。なんで入ってくるんだよ。……生ゴミは直ぐに捨てるようにしたし、食べかすも落ちたままにしないように、食べたら掃除機をかけているのに……」
 そう言いながら、あの時の事を思い出す。
「一週間放置していた三角コーナーに湧き出てきた、大量の蝿……。今も忘れられない。数十匹はいたし、その中にはうねうねと動く……ああああああ!! オレ、何で思い出したあああああ!!」
 大輔はそのまま立ち上がり、慌てて手を洗おうと洗面所に駆け込もうとする。
 ずるっ。ドシーン!
 しかし、部屋中に撒かれた薬剤で足を滑らせ、派手に前のめりに倒れこむ。
 大輔があいたたたと半べそを掻きながら起き上がろうとすると、突如背中から彼の心臓に大きな鍵が打ち込まれる。
「あはは、私のモザイクは晴れないけど、あなたの『嫌悪』する気持ちもわからなくはないな」
 女性の声。第六の魔女・ステュムパロスである。
 大輔がばたりとそのまま倒れこむと、彼の横に、大きな蝿の姿をしたドリームイーターが現れたのだった。

「皆集まってくれて有難う。あんな、皆は苦手なモンとかあるかな? うちはあんま無いんやけど、虫とか嫌いな人とか多いみたいやな。まあ、うちも害虫は嫌いやけど、苦手ってほどでもないけどな。まあ、うちのことはどうでもええねん」
 宮元・絹(レプリカントのヘリオライダー・en0084)はそう言って話を切り出した。
「苦手なモンへの『嫌悪』を奪って、事件を起こすドリームイーターがいるみたいや。今回、このドリームイーターを生み出したやつはもうおらへんねんけど、それを元にした怪物が事件を起こそうとしとる。皆には、被害が出る前に、この怪物を倒して欲しいっちゅう依頼や」
 絹の話によると、その怪物を倒せば被害者も意識を取り戻すらしい。
「今回の敵は、蝿型のドリームイーターで、身長はうちらよりちょっと低いくらいや。まあ、気持ち悪く思う人もおるかもしれんけど、どうやらとてもリアルな蝿怪人でな、動作や攻撃も、それっぽいねん。ジャンプして顔を舐める攻撃と、手をシャカシャカしての回復。あとは目標の周りをブンブン飛んでの嫌がらせ攻撃がある。……ほんま蝿やな」
 あるケルベロスは明らかに嫌そうな顔をする。
「敵はこの1体だけ。被害者の部屋に直接乗り込んでもらうで。時刻は夕方になるな。
 あと被害者の情報はっと」
 絹はそう言って、手に持った端末を確認する。
「名前は清水・大輔さん、お医者さんを目指してる医学部のお兄ちゃんや。20階建てマンションの1階。2DK。一人暮らし。彼女なし。このキッチンに倒れてるわ。幸いまだ、気を失ってるだけやから、上手いこと助けたってな。大家さんには、話通しとくから、合鍵貰って一気に突入できるで」
 成る程と頷くケルベロス達。先ほど嫌な顔をしていたケルベロスは、嫌な顔を更に険しくしていた。
「そんなに嫌そうな顔しなって。まあ、このままにはしておけんし、正体はドリームイーターやから、そこは割り切ってやっつけてな」
 こうして、ケルベロス達はヘリポートに向かって行ったのだった。


参加者
館花・詩月(咲杜の巫女・e03451)
サクラ・チェリーフィールド(四季天の春・e04412)
幌々町・九助(御襤褸鴉の薬箱・e08515)
リン・グレーム(銃鬼・e09131)
天野・司(マンドラゴラの叫び・e11511)
ソル・ログナー(希望双星・e14612)
レピーダ・アタラクニフタ(窮鼠舌を噛む・e24744)
マリー・ブランシェット(マグメルの落とし子・e35128)

■リプレイ

●穏やかな日に
「え! デウスエクス!?」
 昼過ぎに現場に訪れていたケルベロス達は、まず近隣住民への説明を開始していた。ここは被害者の部屋から真上にあたる二階の部屋である。
「はい! レピちゃん達がキュキュッと退治するので、それまでは外に出ないでくださいね☆」
 レピーダ・アタラクニフタ(窮鼠舌を噛む・e24744)が、キュッキュリーンとポーズを決める。
「それか、これから夜まで外出していただくのが、良いかもしれません」
 レピーダのポーズをスルーし、サクラ・チェリーフィールド(四季天の春・e04412)が、他の案を提示する。彼女の足元には、ボクスドラゴンの『エクレール』がじっと座っている。
 どうやらこの住人は、それじゃあ少し外出してきますと言い、準備をするべく部屋に戻っていく。
「しかし……蝿。ですか。暖かくなってきましたからね……」
 マリー・ブランシェット(マグメルの落とし子・e35128)が、少し外を見る。柔らかな風と共に、様々な春の香りが運ばれてくる。何か昔を思い出しているのか、目を細めている。
「水回りは特に重点的にやらないと……ですね!」
 マリーはそう言って振り返ると、数人のケルベロスが近づいてくるのが分かった。
「首尾はどうだ?」
 幌々町・九助(御襤褸鴉の薬箱・e08515)が、ビハインドの『八重子』を連れて現れる。よく見ると少しぎこちない歩き方なのだが、歩行速度は普通である為、誰も気に留めた様子はない。隣には、リン・グレーム(銃鬼・e09131)の姿も見えた。
「この御宅で二階は最後です」
 九助の問いにサクラが答える。
「一階も完了です。今、被害者の玄関前でソルさんが大家さんと話をしてるっす。大丈夫のようでしたら、合流しましょうか」
 リンは頷きながら、一階の首尾を報告し、来た道を指差した。

 二階にいたメンバーが、一階に下りていくと、ちょうど大家さんとすれ違った。大家さんはよろしくおねがいしますと、頭を下げて、管理人部屋へと戻っていった。メンバーがその先を見ると、壁に腕を組んでいるソル・ログナー(希望双星・e14612)と、天野・司(マンドラゴラの叫び・e11511)が見えた。
「大体の説明はしておいたぜ。任せてくれたから、遠慮なくいけるな」
 ソルはそう言って、受け取った鍵をメンバーに見せ、司が親指を立てて得意げに笑う。リンはその姿を見て、合鍵を手に入れた怪盗団か何かの若頭と手下に見えたのだが、黙っておいた。
 暫くすると、この付近全体が静かになる。日が暮れる前には、近隣住民への連絡は行き渡り、その時を待つこととなった。
 コンコンコン……。
 館花・詩月(咲杜の巫女・e03451)が部屋を一つ一つノックしていき、最後の確認を行っていく。
「大丈夫……みたいだね」
 詩月は無表情にそう言うと、メンバーが集まっている玄関前に到着する。
「準備、完了だよ」
 詩月の声に、全員が頷く。
「うああああ! 来るな! 来るなああああ!!」
 すると、部屋の中から声が聞こえてきた。ケルベロス達は被害者である清水・大輔の声であると分かった。
「男やもめになんとやらだが、蝿か……。じゃ、強く当たって、後は流れで、OK?」
 ソルがそう言うと、ケルベロス達は各々の武器を出現させ、突入の構えを取る。
 暫くすると、部屋の中でグラビティが収束していくのを感じることが出来た。

●蝿
 バン!
 鍵を開けて部屋に突入するケルベロス。見ると一人暮らしにしては大きな間取りであった。突き当たりのドアを開け放つと、そこには倒れている青年と、その隣に巨大な蝿がぶーんという羽音と共に浮遊しているのが見えた。
「フライバスターズのお時間だぜ、っとらぁ!!!」
 即座にソルがドラゴニックハンマーの『ギガンティックハンマー』を上段から蝿叩きの如くフルスイングする。
 だが、その攻撃を素早い攻撃で避ける蝿のドリームイーター。
「なんとも逞しいもんじゃないか! つーわけで皆頼んだぞ、俺は後ろで応援してるから!」
 司はそう言いながらも、前を行くソルとレピーダ、詩月、サクラとエクレール、それに、九助の指示により前に出た八重子に紙兵を撒く。
 ただ、その紙兵は詩月には付く事が出来なかった。
「ああっ、しまった! ちょっと多かった。詩月、また後で!」
「……僕はいいよ。衛生的に好きじゃいなけれど」
 詩月は無表情でそう答え、オウガメタルを纏わせた拳で殴りつける。だが、その攻撃はドリームイーターをかすめただけだ。
「さあ、キュキュッと退治してしまいましょう♪」
 レピーダがドリームイーターに飛び込むと、持っている傘に『虚』の力を纏わせて切りつける。その攻撃は刃となり、ドリームイーターの生命力を吸い取る。
「んんー。虫が特別苦手というわけではないですが、やはり気持ちのいいものではありませんね」
 レピーダはそう言って、苦い顔をする。
 すると、ドリームイーターが突然ぶうんという音と共にジャンプして、九助の周りをぐるぐると回り始めた。
「ぶーん」
「うぉっ!」
 驚いて身を硬くする九助。だが、その速度を加速させるドリームイーター。その動きから魔法のグラビティが生み出され、九助は馬鹿にされたように感じる。
「くそ……。相手はコイツだけだが……流石嫌悪から生まれただけあって気味が良くねえ!」
 九助はそう言って、浄玻璃の灯を展開する。
『来世じゃもうちょい品良く生きな。』
 ドリームイーターから炎が上がり、後ろに跳び退る。だが、その先に八重子が用意していたグラスを念を籠めてぶち当てる。更に、リンがバスターライフル『スナイパーライフル』で狙い済ませ、魔法光線を突き刺した。
 その攻撃を受けたドリームイーターは、フラフラと立ち上がり、またぶうんと浮遊する。
「生きているのだ、ということはわかるんですが、あの動きはちょっと……。どうしてこんなに不気味に感じるのでしょう」
 サクラは少し腕をさすりながら、オウガメタル『氷晶姫の守護』からオウガ粒子を前衛に放出させる。エクレールに詩月へと属性インストールを指示した。
「まずは、その動きを止めたい所ですね」
 マリーはそのままジャンプして蹴りを放つ。だが、その蹴りは寸での所で避けられてしまった。

●トラウマ
 ケルベロス達は、その蝿の動きの気味悪さに少々の嫌悪感を抱いたが、そこはやはりドリームイーターなのだと割り切った。
「しゃかしゃかしゃかしゃか……」
 だが、ドリームイーターは蝿そのものの動きをする。左右の手を擦り合わせ、自ら受けた傷を癒し、そしてまたぶうんと浮遊する。
「ごめんよ清水さん……これも正義の為だ、許してくれ!」
 司がそう言いながらも、楽しそうに爆破スイッチを押す。
 どうん!
 爆風と共に前衛の士気を上げる。当然、その爆風で家具の幾つかに傷が入る。食器棚の中は既に目も当てられない状態だ。
「おっとっと。ちょっと派手にやりすぎか?」
 ソルが被害者の大輔に、ガラスの破片が降ってきているのを見て、素早く抱えて隣の部屋へと運び出す。
 ケルベロスの攻撃は、徐々にその効果を発揮させていっていた。
「流石に唾液を氷漬けってのは無理みたいだが、使い物にならなくすりゃまた変わるんじゃねえかな」
 九助が時空凍結弾を放つとリンがフロストレーザーをあわせる。二人の精密な狙撃が大量の氷で弱らせ、確実にダメージを増やしていく。
 そこへ、マリーの飛び蹴りがヒットし、ドリームイーターを吹き飛ばした。
 サクラが歌い、ゲシュタルトグレイブへと地獄の炎弾を纏わせ、放つ。
「いきますよぉー☆」
 そこへ、レピーダが電光石火の蹴りで、ドリームイーターに追撃をかけ、壁に打ち付ける。
「いい流れだね。一気に行こうかな」
 詩月は機械弓の弦を鳴らし、詩を奏じる。
『月の元にて奏上す。我は鋼、祝いで詩を覚えし一塊なり。なれど我が心はさにあらず。許し給え。我が心のままに敵を打ち砕かんとする事を。』
 放たれたグラビティが司の爆発の援護もあいまって、ドリームイーターに突き刺さっていく。
「やったか!?」
 司はそう言いながら、くるくる回る。特に、意味は無いようだ。
 しかし、その時ドリームイーターが大きくジャンプして、目の前の詩月の顔に取り付いた。
 そしてそのまま、顔中をよだれだらけの口で舐め回す。
「うわ……」
 レピーダはその様子に、同情の表情を浮かべる。
「やな攻撃だな、オイ!」
 すると、隣の部屋から帰ってきたソルが電光石火の蹴りで、詩月から引き剥がす。
「詩月さん! 大丈夫ですか!?」
 サクラが駆け寄るが、詩月は少し嫌な顔をした程度だった。
「詩月、やるなあ! よしきた! 俺も仕事は頑張らなきゃ!」
 司は彼女のなんでもない様子に感動したのか、派手な動きで気力溜めを施す。
「え、いえ。ぼ……私は……」
「すごいです。私はあんなのやられたら、ちょっと卒倒しそうですよ」
 何か言いたそうな詩月にマリーが、感激の言葉を投げかける。
「え、あ。……はい」
「さて、一寸の虫にも五分の魂、とはよく言うが……」
 頷く詩月を見て、九助が錫杖をドリームイーターに向ける。
「そろそろ、ケリつけようか」

●一寸の虫にも……
『水の刃よ、駆け抜けて!』
 マリーがそう言うと、シンクの茶碗に溜まっていた水から刃を作り出し、ドリームイーターを切り裂く。すると、与えていた氷がさらに増加していく。
『忘れちゃダメだ。俺たちは、まだ此処に在る…!』
 司が、最後の攻撃を行う前衛に安心して突っ込んでもらう為に、地獄を集約して指先から雫として地面に落とす。すると、その雫が炎となり広がっていく。これで残っていたダメージも無くなった。
『妖精八種族が光のヴァルキュリア……その輝きの真髄を、今!』
 レピーダが光の翼を刃に変換し、切りつける。
 更に九助が惨殺ナイフを振り下ろし、その傷口を広げると、八重子がその動きを縛る。そして、更に九助のナイフがその羽を切り落とす。
 そこへ、サクラがエクレールと共に突撃する。エクレールが、ドリームイーターをタックルで体勢を崩させると、サクラは再び地獄の炎をゲシュタルトグレイブに纏わせて叩き、その炎を燃え上がらせた。
「ぶ……ぶうん!」
 その時、ドリームイーターが、最後の力を振り絞り、大きくジャンプする。そして、もう一度目の前の詩月に取り付こうとした。
「やめていただけないでしょうか?」
 どう!
 無表情のまま、そのジャンプを緋袴のような装甲で受け流し、オウガメタルを纏った拳で叩きつぶす詩月。
「おお! 正に、ハエ叩き!」
 司の声に続き、リンがリボルバーの銃口を、倒れているドリームイーターに向け、接近する。
『轟く叫びは狂いの証 響く嘆きは命の散華 猛き鋼に火種は宿る 天の静謐 白き月に今こそ誓え この闘いに決着を 我が弾丸は月をも穿つ』
 そのリンの銃口は、ほぼ動けないドリームイーターの頭部にガチャリとあてがわれた。
「さぁ、ソルさん。終わりは近いっすよ。きっちり〆てくださいよッ」
 ドゥン!!
 その弾丸が頭部を射抜いた時、ソルは黒い槍を出現させていた。
『魂に刻まれし、破壊と復讐の鎖に彩られし叛逆の槍、今降臨せよ!』
 その槍を掴むと、ドリームイーターの上部に投げつける。
「縫い止める! ブチ抜け!」
 その槍はドリームイーターの正面まで来た時、突如無数の小さな槍に分裂し、幾つも突き刺さる。それは、ちょうど標本のような状態で壁に縫い付けられた。
 そして、蝿の姿をしたドリームイーターは、消滅していったのだった。

「そうですか……。そんなことが……」
 ケルベロス達は戦いのあと、戦闘で滅茶苦茶になってしまった部屋を片付け、ヒールを施しながら大輔を介抱していた。事情を聞いた大輔は、少ししょんぼりしているようだ。
「やはり、水回りは注意しないといけないですね」
 マリーがゆったりと落ち着いた様子で話しかける。
「これから暖かくなっていく時期ですので、ごみの処理はちゃんとしておきたいところですね」
「これからは、物臭をせずにちゃんと片付ける事だね」
 サクラと詩月もそれに同意する。
「良い教訓なったろ。とりあえず、簡単にが基本だぜ。そうするとマメに出来る。医者になるんだろ? じゃあ、ちゃんとしないとな」
 ソルがそういって、大輔の方をぽんと叩く。
「そうですね。何事も基本が大切です。人の事をするには、まず自分からですね」
 大輔は、そう言って頷いた。
「……ふう」
 詩月がそう息を吐くと、あっというリンの声が聞こえてきた。
「ソルさん、すいません。一匹入り込んだっす! こっち手が離せないのでお願いするっす!」
 片付けのために開けていた窓から、一匹の蝿が迷い込んできたのだ。
「ムシムシする季節は虫が増えるんですね。あっ、虫だけに☆」
 レピーダが冗談を飛ばすが、それに続く声は無かった。
「……」
「ちょっと、レピちゃんを無視しないでくださいよー!」
 ぶうーん。
 少し大きめのサイズだが、それを見てソルが呟く。
「さっきのに比べれば、こんなくらいは可愛いもんだな」
「えー!? 可愛いかあ?」
 その一言に、司が反応する。
「言葉のあやってやつさ。本気で可愛いとは思ってないぜ」
 そうソルが説明していると、その蝿は詩月の肩に止まったのだった。
「うーん。これだけ入ってこられると、確かに対策が必要かも。虫除けの何かをつけたほうが良いかもっす。立地的なものもあるかもしれないし。一階だしね」
 リンがその蝿を見ながら、思いついた事を呟く。
「それなら、ハーブなんか良いらしいぜ。ミントの香りとか虫除けにゃてき面だぜ」
 別の部屋を片付けていた九助が、八重子を伴って戻ってきた。
「それなら簡単っすね。でもこんな時間だし、用意できるっすかね」
 時計を見ると、時刻は20時を回っていた。
「僕が明日に買ってきます。何から何まで、申し訳ない」
 大輔がそう言って、礼を言う。
「詩月、ささっと退治してしまいなよ。清水さんの為にもさ」
 ソルがまだ肩に止まっている蝿を見て言う。
「そういえば、先程は頼りになりました。詩月さんは強いのです……ね」
 マリーがそう言った時、ふらりと詩月が揺れる。
「あ……」
 そして、詩月はそのまま後ろに倒れてしまったのだった。
「まさか……」
 サクラが駆け寄り、様子を見る。
「気絶……していらっしゃいます、ね」
「あ、ひょっとしてアレ。効いていたのかー!?」
「いや、あの攻撃は流石に嫌だろ……」
 司の声に九助がドリームイーターの攻撃を思い出す。
「兎も角。ヒールを……」
 サクラがぼんやりとした薄灰色の靄を呼び出し、包み込む。

 果たして、その癒しの力で、精神的なダメージは回復できたかどうかは、彼女のみぞ知るのである。
 彼女の肩に止まっていた蝿は、再び窓から飛んでいったのであった。

作者:沙羅衝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年4月28日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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