悪意が生まれるゲーム

作者:青葉桂都

●つなぐべき鍵はもはやなし
 2階にある子供部屋の押し入れには大きな箱が置いてあって、中にはたくさんのオモチャが詰め込まれていた。
 もっとも、部屋に生活感はなく、もう住人はいないようだった。
 大人になった子供はオモチャを家に残したまま独立したのだろう。残った家族もことさら息子の部屋を片付けようとはしなかったのだ。
 これから事件が起こることを考えれば、使われていないのは幸運だった。
 押し入れの引き戸に、わずかな隙間ができる。
 音もなく中に入っていったのは、拳大の小さな宝石に機械の手足が生えたダモクレス。
 男の子ものの、金属製の人形や乗り物をどけていく。
 やがて、ダモクレスが見つけたのはキーホルダー型のゲーム機だった。
 引っ張り出して部屋の床に置くと、ダモクレスの手足がゲーム機を改造していく。
 改造を終えたゲーム機は、部屋の天井までゆうに届くほど巨大になっていた。モノクロの液晶にはドットでコミカルな顔が描き出され、不釣り合いに細い手足を生やしている。
「テーテテテーテテ!」
 甲高い電子音を響かせ、画面に戦闘機が出現する。
 液晶の下にあるボタンを押すと、画面から弾が発射されて扉が砕かれる。
 天井や壁に弾を放って広げながら、ダモクレスは廊下から階段へ向かった。

●ゲームに挑戦しよう!
 頬に戦化粧を施した女性がケルベロスたちに語り始めた。
「キーホルダー型のゲーム機が、ダモクレス化するみたいなんです」
 リディア・アマレット(蒼月彩雲・e13468)の調査から予知された事件について、彼女は説明を始めた。
「住宅地にある家の2階にダモクレスは出現します」
 部屋はかつてその家の子供が使っていたものだ。もっとも、もうすでにその子供は独立しているようで、今は誰も使っていない。
「ゲーム機は、子供が置いていったもののようですね」
 持ち主がすでにいないのは幸いだろう。少なくとも、出現したダモクレスにすぐに狙われることはないのだから。
 しかし、現場が住宅地である以上、放っておけば必ず犠牲者が出る。
 放置しておくわけにはいかなかった。
 リディアの後を次いで、ドラゴニアンのヘリオライダーが詳しい情報を語り始めた。
 現場はおそらく六畳間と思われる部屋だ。
 余計な寄り道をしなければ、ダモクレスが出現する頃には現場にたどり着けるだろう。
 室内は戦闘を行うには狭いので、外に誘き出す方法を考えておいたほうがいいかもしれない。
 もっともなにも考えなくとも、いずれ建物が壊れて外に出ることになるだろうが。
「建物はヒールで直るので、壊れても大きな問題はありません」
 敵が使用するグラビティだが、まず画面上に戦闘機のようなものを表示して、そこから弾を放ってくる。
 これは範囲に攻撃可能で、プレッシャーを与えて攻撃を鈍らせる効果がある。
 他に画面に表示した卵を孵化させることで、回復と攻撃力の強化を行える。
「また、念動力のようなものが使用できるようです。対象をグルグル回転させて地面に叩きつけることができます」
 食らうと身体が麻痺してしまうこともあるようだ。
 ヘリオライダーが説明を終えると、リディアが再び口を開く。
「別の部屋に家の人がいるかどうかはわかりませんが、子供が残していったもののせいで親が死ぬなんてひどい話です。なんとかしてあげたいですよね」
 頑張りましょう、と彼女は皆に告げた。


参加者
フィーベ・トゥキヤ(地球人のガンスリンガー・e00035)
エイダ・トンプソン(夢見る胡蝶・e00330)
乙川・千織(スターヴィセオ・e00711)
ルア・エレジア(まいにち通常運行・e01994)
空鳴・無月(宵闇の蒼・e04245)
氷霄・かぐら(地球人の鎧装騎兵・e05716)
リディア・アマレット(蒼月彩雲・e13468)
キアラ・エスタリン(羽ばたく光の胡蝶・e36085)

■リプレイ

●ゲームスタート
 住宅街はまだ静かなままだった。
 ヘリオンで付近まで移動したケルベロスたちは、現場に向かって移動する。
「むーっ、なんだかフクザツっ。ゲーム機は楽しく遊ぶべきものだよねっ。誰かを傷つけるなんてゴンゴドーダンだよっ!」
 乙川・千織(スターヴィセオ・e00711)が、頬を膨らませる。
 まだ幼い少女である千織は、ゲームで遊ぶことも多いのかもしれない。
「人間のための、機械だったのに。それに、取りついて、人を襲うように、なるなんて……絶対に、止める」
 同意したのは空鳴・無月(宵闇の蒼・e04245)だ。
 ドラゴニアンの少女は無表情だったが、その意志は声から伝わってきた。
「ゲームを改造してそれを使って戦う……はて、どこかで聞いたような」
 フィーベ・トゥキヤ(地球人のガンスリンガー・e00035)が首をかしげた。
 だが、銀髪の青年は、それ以上考えない方がいい気がしたので、そこで言葉を切る。
 まあアニメや漫画でもよくあるネタ……の、はずだ。
 現場である2階建ての家では、まだ騒ぎが起こっている様子はなかった。
 日にちに余裕があれば事前にこの辺りの住民をすべて避難させておきたいところだったが、残念ながら予知から発生までそれほど時間があるわけではない。
 なるべく寄り道せずヘリオンで現場に向かったほうがいい程度の時間しかないのだ。
「いちおう警察には連絡しておきましたが……まだ来ていないようですねぇ」
 リディア・アマレット(蒼月彩雲・e13468)がゆったりと周囲を確かめる。
 もしも到着前に避難を完了させられるほど時間があるのなら、おそらくケルベロスが要望するまでもなく連絡は行われて、ヘリオライダーもそう言っていただろう。
「とりあえず後からでも来てくれるみたいですから、私たちでできるだけ避難させて、後は警察の方に任せましょう」
 キアラ・エスタリン(羽ばたく光の胡蝶・e36085)が落ち着いた声で言う。
「なんにしても、なるべくサッと倒して被害が出ないようにしたいわね」
 鎧装機兵らしく、フィルムスーツに身を包んだ氷霄・かぐら(地球人の鎧装騎兵・e05716)が仲間たちに告げる。
「ここの2階にダモクレスが現れるんです。すぐに警察の人が来てくれるので、指示に従って避難してください!」
 1階で家事をしていた壮年の女性に、エイダ・トンプソン(夢見る胡蝶・e00330)が声をかけて、ケルベロスたちは2階に上がっていく。
「今日はルアさんと一緒だから鬼に金棒ですよ! ところでこのお部屋に住んでいたお子さんは身長180cm以上のスパダリイケメン次男坊さんだったりしませんかね?」
 階段を登りながら、エイダは夢見る乙女の表情をして黒豹のウェアライダーである少年に問いかけた。
「どうだろ。戦闘が終わったらあのお母さんに聞いてみたら? あ、でも、お母さんだと親のひいき目に騙されちゃうかもしれないし、難しいね~」
 軽い口調でルア・エレジア(まいにち通常運行・e01994)答えた直後、破砕音が響く。
 見上げると、壊された扉から巨大な小型ゲーム機が覗いていた。
「意外とかわいい見た目……。でも、眩しいわね……」
 かぐらが呟いた。
「ゲームに手足は可愛いけどさ、ちっこいまんまの方が可愛かったのに……あ、そういう問題でもない?」
 ハリウッドセレブみたいなカッコいい靴で、跳ぶようにルアは2階へ駆けあがった。
「行きましょう、皆さん。まずは敵を外に追い出します!」
 リディアが龍神の加護を宿しているケルベロスコートを脱ぎ捨てると、先ほどまでおっとりとした様子だった彼女は表情を引き締めた。

●ノックバック
「テーテテテーテテ!」
 突進してくるケルベロスたちを見て、ダモクレスは液晶に映し出した戦闘機から無数の弾をばらまいてくる。
 前衛のメンバーを薙ぎ払う線状の弾丸から、無月が千織をかばった。
 そのまま雷を宿した槍を構えて駆け上がると、全身をぶつけるように敵を突いた。
「射線確認……フォートレス、行きます!」
 短く細い脚がよろめいたところにリディアがフォートレスキャノンを叩き込んだかと思うと、かぐらも突撃をかけて部屋の中へ押し戻した。
 千歳は敵を追って部屋の中に飛び込んだ。
 部屋がもう何年も使われていないことは一目でわかる。押し入れに押し込められていたのだとすれば、いなくなるよりももっと前からゲーム機は使われていなかったのだろう。
(「子供がいなくなって、あのゲーム機も寂しかったのかな……」)
 彼女の母親と違って、大人になるとゲームで遊ばなくなる者も多い。きっと、この部屋の住人も遊ばなくなった側なのだろう。
 エイダがギターをかきならして戦い続ける者の歌を響かせる。ルアがその歌に合わせて獣化した拳を叩き込んで窓際へと押しやる。
 部屋は狭く、まずは敵を外に追い出さなければまともに戦える状態ではなかった。
「星の鼓動を宿して、かならず成すよ。遂げる。見つけてみせる、わたしだけの――!」
 千織も敵を外へと押し出すべく、未来を信じるひたむきな想いを光に変える。
「ゲームは人と人を結ぶものなんだよっ! だから、人を傷つけたりしちゃだめっ!」
 一気に接近した千織は光を敵に打ち付ける。
 窓が壊れる音が響いた。星のかけらのような煌めきを舞い散らせながら、衝撃に押されたダモクレスの巨体が庭へと落下していった。
 巨大ゲーム機は空中で一回転して庭に着地したのが見えた。
 千織も敵を追って窓から飛び出す。他のケルベロスたちも同様だ。
 キアラがヴァルキュリアの光の翼を広げて飛び出し、光の胡蝶を前衛に立つ者たちの周囲に舞わせている。
 駆けつけた警官が避難活動を行っている音をケルベロスたちは聞いた。
 フィーベはサングラスで隠れた目を一瞬だけ声の方に向けた。
「まあ、助けても助けなくても、銭になるわけじゃないんだけどな」
 ケルベロスの役目は、あくまでデウスエクスを撃破することなのだから。だが、軽口を叩きながらも彼の目つきは真面目だった。
 塀の上に陣取って敵から距離を取り、フィーベはダモクレスを狙う。
「逃げられるのは厄介だ。なるべく釘づけになっててもらうぜ。狩りゲーのデータは入ってないみたいだしな」
 両手に構えたリボルバーの引き金を連続で引く。壁に、塀に、跳ね返った弾丸が死角からダモクレスへと襲いかかる。
 庭からまったく出さないのは至難の技だとしても、逃げにくくすることはできるだろう。
 的を絞らせぬように移動しながら、フィーベはさらに狙いをつけた。
 無月は庭の土を蹴り、敵へと一気に接近する。
 たとえ姿が面白おかしくとも、ダモクレスの攻撃は決してあなどれない。
 だが、彼女は恐れない。赤い瞳で液晶画面の表示を静かに見据えていた。
 表示が落下するブロックに変化して、敵が画面をリディアに向ける。
 しかし無月は素早く画面とリディアの間に割り込んだ。少女の体が浮き上がり、空中で激しく回転させられる。
 地面が見えたと思った瞬間、無月の体は叩きつけられていた。
 衝撃にしびれる体を、槍を杖にして起き上がらせる。
「ありがとうございます。あまり無理はしないでくださいね、無月さん」
「……大丈夫。みんなを守るの、私の、役目だから」
 声をかけてきたリディアに、無月は淡々と応じる。
 土から穂先を引き抜く。星空のように輝く刃を彼女はダモクレスに向けた。
「受けきれる……?」
 刃に氷の霊力を宿し、嵐のごとく縦横無尽に振るう。
 凍りついた敵へと仲間たちはさらに攻撃をしかけ、ダモクレスを傷つけていく。
 ダモクレスは攻撃の合間に、時折卵が孵化する映像を映し出していた。
「早く片付けちゃいたいのに、回復されるのは厄介ね」
「まー確かにねー。けど、回復される以上のスピードで削ればいいんだし。任せておいてよ、かぐらちゃん。エイダちゃんも心強いっていってくれたしさ」
 ルアはかぐらの独り言を聞きつけて告げると、息を大きく吸い込みながら彼女の横を駆け抜ける。
 エイダが重力を操って強化ガラスの靴で蹴りを叩き込むのが見えた。
「動きを止めましたよ、ルアさん!」
「ナイス、エイダちゃん! さあ……いまコロスから逃げんなよ!!」
 仲間に向ける軽い口調が、一転して怒りの感情を込めた咆哮へと変わった。
 足止めされた敵に向かって、高まった破壊の衝動のまま拳を叩きつける。
 直撃した拳が、ダモクレスの液晶に大きなひびを入れた。

●ゲームオーバー
 戦闘の流れ弾はやがて塀を破壊し、戦場は隣家の庭まで広がっていた。
 攻撃も、回復も、ケルベロスの技よりもダモクレスのほうが強い。
 けれども敵は結局1体きりだ。
 かぐらは精神を集中しながら敵の隙をうかがう。
 一気に妨害を加速できる技があればよかったが今回は準備していない。とはいえ、敵を不利な状況に追い込んでいくことはできる。
「これ以上は移動させないぜ」
 フィーベが敵の背後に回り込むと、精神を集中させて爆破していた。
 液晶が歪んだか、反撃と撃ち出す戦闘機の弾が少し鈍る。
「なら、わたしは装甲を削らせてもらうわ」
 敵の反撃を防ぐ仲間たちの少し後ろで、かぐらはチェーンソー剣に雷の霊力を宿した。
 ばらまく弾が途切れる。
 中距離から踏み込んだかぐらは、神速の突きを繰り出した。
 雷がダモクレスのボディを走って、硬い装甲を劣化させていく。
 そこに、ケルベロスたちは攻撃を集中した。
「ナイフの、間合いまで……後、踏み込み……ひとつ!」
 リディアが惨殺ナイフを構えて接近し、敵をジグザグに切り刻んでいる。他の者たちの攻撃も敵の体力を削り取る。
 再びブロックが液晶画面に現れた。
 エイダは千織をかばって顔から地面に叩きつけられた。
「うう……できれば顔はやめて欲しいです……。早く結婚して寿退社したいですよ」
 ダメージも軽くはないけれど、それより土塗れの顔で王子様に幻滅されることを想像するほうが悲しい。
 盾役である彼女は仲間をかばって何度もこの攻撃を受けているが、なんとなく頭から地面に叩きつけられることが多い気がする。
「エイダちゃんありがとう! お顔、だいじょうぶ?」
 千織が気遣いつつも次の攻撃に移るべく拳を固める。
「はい、負けないですよ! さぁ踊りましょう、蝶のように!」
 くじけずにエイダは跳ね起きる。戦い続ける者の歌を、先ほど歌ったのは彼女自身だ。
 魔力を用いて無数の赤い蝶を生み出す。美しく、気まぐれな蝶たちがダモクレスへとまとわりつく。
 ルアがそれに続いて、加速するハンマーを敵に叩きつけた。
「テーテテテーテテ、テッテッテ」
 追いつめられていることに気づいているのかいないのか、ダモクレスはただひたすらケルベロスたちを攻撃し続ける。
 後衛にもたまに攻撃が飛ぶが、さらされているのは主に前衛たちだった。
 前衛たちにまた光の弾丸が突き刺さる。無月がエイダをかばって2人分の弾丸を受けている。
 キアラは攻撃を受けている仲間を回復し続けていた。
「子供の思い出から生まれたダモクレス……。使わなくなって、残されたのは辛いでしょう、でも暴れて殺戮を起こしては元の持ち主ももっと悲しみます」
 戦いの間は勇壮なキアラだが、根は内気な少女である。思い出から生まれた敵に同情する気持ちが間違いなくある。
 けれど、できることは1つしかない。
「ここでその悲しみを断ちましょう! 空に舞って、光の胡蝶たち……。皆さんを癒して、勝利へ向かう力を!」
 祈りを捧げると、光の胡蝶が仲間たちの周囲に舞う。
 胡蝶の祝福は4人の前衛、特に仲間をかばうエイダや無月を癒している。時折、フィーベもドローンを展開して援護に加わっていた。
 やがて、ケルベロスたちの攻撃の前に、ダモクレスは限界を迎えた。
 千織の拳がうなりをあげてダモクレスをよろめかせたと思うと、フィーベの銃弾が死角から襲いかかる。
 リディアは自分の体が浮き上がるのを感じた。
 空中で回転させられた体が、地面に叩きつけられる。
「まだまだ、この程度では……!」
 おそらくあと一息で敵を倒せるはずだ。衝撃にひるむことなく、機甲楯に懸架した砲塔を敵に向け、収束翼を展開した。
 無月が空の魔力を乗せた槍を、軽々と振るって敵を切り裂いた。
 エイダとルアが連携して、炎とバールを叩きつける。直後に精神を集中し、敵を爆破したのはかぐらだ。
 攻撃を加えた仲間たちが射線から外れた瞬間、リディアは砲身から破壊光線を放った。
「グラビティ・チェイン、収束開始。照準補正完了。射線クリア。R-1、発射します!」
 二対四枚の集束翼によって圧縮したグラビティ・チェインは液晶画面のど真ん中を貫いて、さらに住宅地を走り抜ける。
「テーテテーテテー……」
 おどろおどろしい鳴き声を残して、ダモクレスが庭に倒れこんだ。

●エンディング
 残ったのは、今や手のひらに載るほどの大きさの、壊れたゲーム機の残骸だけだ。
「子供達の、夢と浪漫の産物を……この様に扱うとは、嘆かわしいですね……」
 おっとりとした雰囲気に戻ったリディアが、息を吐く。
「そうですね……でも、誰も傷つけさせずに終わらせられて、よかったです」
 キアラの瞳からは、安堵の涙がこぼれていた。
「……ずいぶん、壊して、しまいました」
 無月が周囲を見渡して呟く。
「金にならないことはやりたくないんだがなあ……直してくのも仕事のうちか」
 フィーベも破損した場所を確かめている。
「……あ。ここも、直しておかないとねっ!」
 千織が指さしたのは2階の部屋。
 もともと敵が現れた部屋の被害はもっとも大きい。窓がはじけ飛び、壁が外に向けて広がっている。
「そういえば、お子さんの写真とかあのお部屋にありましたっけ。でも、壊れてるのを直したらファンタジーっぽくなってイケメンかどうかわからなくなっちゃいますよね」
「エイダちゃんは相変わらずだねえ。……いっぺん壊しちゃってごめんな。ちょっとファンタジーだけど……可愛いし……いいよね♪」
 見上げているエイダに声をかけながら、ルアが家に近づいていく。
 ヒールがあらかた終わったところで、リディアは警察に連絡を入れている。
「状況、終了しました。住民を帰宅させて頂いて、構いません。ご協力、ありがとうございました」
「避難に協力してくれた人にも、後でお礼を言っておかないとね」
 かぐらが庭から外へ目を向ける。どこまで避難したかはわからないが、少なくとも見える範囲ではないようだ。
 皆が撤収を始める中で、千織はダモクレスの残骸に近づいていた。
 破壊されたゲーム機を小さな手で撫でてやる。
 もうずっと昔の話だとしても、きっと長年子供たちを楽しませてきたはずだ。
「……お疲れさまっ」
 だから、少女は最後に、小さなゲーム機へねぎらいの言葉をかけた。

作者:青葉桂都 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年4月30日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 2
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