出現! 鯉のぼりライド五月人形ドリームイーター

作者:林雪

●驚きを奪う敵
 おじいちゃんとおばあちゃんがせっかく買ってくれたけど、僕ちょっとあの人形怖いんだ……。
 長くて暗い廊下を歩きながらケイタは、何だかヒタヒタ足音が聞こえた気がして振り向いた。するとそこには、祖父母に買ってもらったばかりの五月人形が立って、刀を構えているではないか……!
「わぁああっ!」
 思わず声を上げてがばりと起き上がった。汗をびっしょりかいている。
「あぁびっくりした……なんだ夢かあ……」
 ところが、ケイタの悪夢は今、始まったところだった。
 ケイタの目の前に立っていたのは、第三の魔女、ケリュネイア。悲鳴を上げるより先に、心臓にぐさりと鍵が穿たれた。血も出ず、痛みもないがケイタは意識を失って布団に倒れ込む。
『私のモザイクは晴れないけど……あなたの『驚き』貰っておくわね……』
 ケリュネイアがそう言うと同時、現れたのは……ケイタの夢に出てきた、五月人形型ドリームイーター。しかもそいつは鯉のぼりに跨り、フワフワと宙に浮いている。
『きっと皆、驚くわ……』
『驚ケ皆ノ者……ソレガシ二、驚ケ……』
 低い笑い声を残してケリュネイアは姿を消した。残された五月人形型ドリームイーターは鯉のぼりに乗ったままフワフワと夜の町へ出ていってしまった……。

●フル装備! 武者ドリームイーター!
「出ると怖ェっつーかやべェと思ってたら、本当に出やがった」
 ディオニクス・ウィガルフ(ダモクレスの黒剣・e17530)が雛人形型と戦った時以来警戒していた敵が、初夏の風に乗って現れてしまった。五月人形型ドリームイーター、である。
 本当にねぇ、と溜息をつきながらヘリオライダーの安齋・光弦が説明に入る。
「季節の行事に合わせて、とか子供たちに迷惑だからやめて欲しいよね……でも出現してしまったものは放置出来ない。子供たちから『驚き』の感情を奪ってドリームイーターを生み出す、第三の魔女ケリュネイアの仕業だよ」
 被害者の名はケイタ。小学二年生になる。
「ケイタくんが見た夢の中に現れた、武者姿の五月人形。こいつの形をそのまま模したドリームイーターが、次の被害者を探して町を彷徨ってるはずだ。しかも何故か、鯉のぼりに乗ってる」
 ドラゴンライダーならぬ、鯉のぼりライダーである。
「こいつを倒さないとケイタくんの意識も戻らない。撃破を頼んだよ、ケルベロス」
 ケリュネイアは既に現場から姿を消しているため、敵は単体でケイタの家の近所をうろつき、新たに『驚き』の感情を生み出そうとしているようである。
「まあ、驚くわな。フル装備の鎧武者が鯉のぼりに乗ってたら」
 ディオニクスの言う通り、一般人は恐らく一目見るなり驚きの悲鳴を上げてしまうだろう。
「都合がいいのは、敵は誰かを驚かせたくて仕方ないわけだから、歩いてるだけで勝手に向こうから近づいて来るってこと。ひとつ特徴的なのはね、このドリームイーター『自分を見て驚かないと、ムキになって驚かそうとして優先的に狙ってくる』って性質があるんだ。これをうまく利用出来れば、危なげなく戦えるんじゃないかな。それと、ケイタくんの家のすぐそばに広めの児童公園があるから、戦うのはここがいいと思う」
 うまく敵を引き付けることが出来れば、付近への被害も出さずに済むだろう。
 ディオニクスが口角をつり上げ、好戦的に笑う。
「何にせよ、子供のためのモンに化けるような奴ァろくなもんじゃねえな。さっさとブッ潰してやろうぜ」


参加者
風空・未来(けもけもベースボール・e00276)
御神・白陽(死ヲ語ル無垢ノ月・e00327)
チャールストン・ダニエルソン(グレイゴースト・e03596)
ウォリア・トゥバーン(獄界の流浪者・e12736)
ディオニクス・ウィガルフ(ダモクレスの黒剣・e17530)
リョクレン・オルヴィアグレス(殲華の終獄・e19000)
レテイシャ・マグナカルタ(自称遺跡探索者・e22709)
エイス・レヴィ(ワールドイズユアーズ・e35321)

■リプレイ

●驚愕の……?
 そいつは、暗がりの中に唐突に現れた。
「鯉のぼりに乗って、ふわふわと漂う五月人形さんですか……」
 チャールストン・ダニエルソン(グレイゴースト・e03596)がごく小声で、そう呟いた。もはやその正体がデウスエクスであるとわかっているので、本来なら驚きなどしないのだが。
『驚ケ皆ノ者……ソレガシ二、驚ケ……』
「ふわァあっ?! な、なな……何だありゃあ!」
 今回の敵ドリームイーターは、他者の『驚き』を吸い取って糧とする。人影を求めて彷徨っているのも、誰かを驚かせたい一心なのだ。背丈は人間の半分ほどだが、
 というわけでチャールストンが長身をちぢこめ、情けなく驚く中年オッサンを演じて見せる。
『……』
 これに敵は『満足』したようで、次の獲物を求めてふらりとエイス・レヴィ(ワールドイズユアーズ・e35321)に近づいていく。
(「五月人形や鯉のぼりは、子供の健やかな成長を祈るものなんだよ」)
 おじいさんはそう言って、エイスに鯉のぼりを買ってくれると約束してくれた。その時の嬉しかったことを思い出すほど、そういう祈りを踏みにじるような敵は許せない。よし、と張り切って、敵に向かい合う。全身を鎧兜で固めた武者姿の五月人形、そいつは鯉のぼりに跨って宙に浮いたまま、じっとエイスの反応を窺っている。
「うわぁ……! 僕、生で鯉のぼりを見るのは初めてです。こんなこともできるのですね!」
 ちょっと天然を発揮してしまったエイスが、目をキラキラさせてそう言った。驚いている、というより感動している雰囲気である。
『……』
「あぁん? そんなもんで驚くかよ。行こうぜエイス」
 レテイシャ・マグナカルタ(自称遺跡探索者・e22709)がすかさずエイスの肩にひょいと手を回し、並んでスタスタと公園の方へと歩き始める。もし敵がエイスを『驚いていない』と判断して襲ってきても、自分が盾になろうという彼女の配慮である。
「ご、ごめんなさいレテイシャさん。僕あんまり上手に驚けてなかったかな……?」
「ちょっと楽しそうだったな……ま、心配すんなよ。オレが守ってやるし」
 小声で言って、レテイシャが片目を瞑ってみせる。
 そう、敵は相手の人間が自分の姿に『驚き』を発すれば満足して立ち去るが、驚かない相手には執着して付き纏い、驚くまで離れないという性質を持っているのだ。これを利用し、盾役のケルベロスに敵を引きつける作戦なのである。
 風空・未来(けもけもベースボール・e00276)は『驚き役』担当を果たすべく、かなり大袈裟に声高に驚いて見せた。
『驚ケ、人間ヨ、驚ケ……』
「どひゃー! うわーっ、びっくりしたなーまったくもー!」
『……』
「どひゃー、ああ驚いたっどひゃー!」
 大袈裟にそう声をあげつつ、未来はてててっと公園の方へ走っていく。今回の戦場は住宅街の中であるため、思う存分戦えるようにとケルベロスたちは広めの公園にあらかじめ目をつけておいたのだ。
 未来の驚きに満足した五月人形ドリームイーターが、新たな人影を求めてきょろりと見回した視界に、御神・白陽(死ヲ語ル無垢ノ月・e00327)がふっと現れる。敢えてルート上を遮るように立ち、無言で敵を一瞥する。敵はいかにも『つまらない奴。興味がない』という視線を送られると、己の存在を確立しようと躍起になってしまうのだ。
 公園に先回りして仲間の誘き出しを待っているのは3名。
「本当に現れやがったなァ……驚きは人生の彩だぜェ? ガキの彩を踏みにじらせる訳には行かねェよ」
 口こそ悪いがディオニクス・ウィガルフ(ダモクレスの黒剣・e17530)は今回夢の中の驚きを奪われてしまった犠牲者・ケイタくんをかなり気遣っている様子だった。そんな恋人の隠れた正義感にリョクレン・オルヴィアグレス(殲華の終獄・e19000)はひっそりと笑みを浮かべる。
「こんないい夜にな……野暮な奴だ」
 そのふたりの言葉に頷きつつ、ウォリア・トゥバーン(獄界の流浪者・e12736)が左目に地獄の炎を揺らめかせた。
「………鯉のぼり、ニンゲンの男児の健やかな成長を願う、聞いた。つまり、鯉のぼりに跨る敵……健やかさの塊健康の体現。つまり、強者。オレ、強者、倒す。倒せば、オレ、最強に一つまた近づく」
「オメぇーはブレねえよなあ、竜皇」
 ディオニクスが尖った歯を見せて笑う。
 公園の中央を過ぎたベンチの近く、ここは外灯があり足場も良い。その辺りでドリームイーターを先導していたレテイシャと白陽がぴたりと止まり、真正面から向き合った。
『ソレガシニ……驚キヲ、見せテミヨ……人間!』
「さっきも言ったが、お前なんかで驚くかよ!」
 レテイシャの態度はあくまでも挑発的である。白陽の方も全くの無関心だとばかり、あからさまに余所見などしていた。
『驚ケ……、驚ケ!』
「そんなに言うのなら、たっぷりと驚かせてやるとしようか。悪戯が過ぎると、お仕置きが待ってるんだぜ?」
 仄白い電灯の下、青碧の髪を靡かせてリョクレンが、並んでディオニクスが敵を包囲する位置に立っていた。
「ったく、群れで無くて良かったぜ。徒党組まれりゃ中々の脅威だぜェ?」
「お前、強者。オレ、お前倒して、最強に近づく」
 ウォリアとリョクレンが遠距離の狙撃位置につくと、チャールストンがまだ怯えた演技を続けつつそこに並ぶ。敵のまん前、至近距離で壁になっているレテイシャを心配しつつも、自分の務めを精一杯果たすべくエイスも配置についた。敵が攻撃をしてきても、僕が皆さんをしっかり癒すんだ、と拳を固める。
「戦いは楽しまなくちゃね。いつでも全力で楽しむ! スポーツマンの基本だよ!……マンというかウーマンだけど」
 そう言って赤バットを肩に前に出た未来の背を見守り、リョクレンは笑みを深めた。

●俺の叫びを聞け!
「迷いなく逝け」
 その言葉を置き去りにし、次の瞬間白陽はドリームイーターの懐に飛び込んでいた。鯉のぼり部分にミドルキックを食らわせると、果たして手応えがある。鯉は独立したサーヴァントのようなものではなく、敵の本体の一部と考えていいようだ。
「何ですかなんですか、一体どうなってるんですか君の体は……!」
 あくまでも敵に対しオドオドと及び腰、という風を装いつつ、チャールストンのオーラが全身を覆い、まったりしつつ防御の姿勢に入る。
「さァ……狩りの始まりだ」
 対照的にニヤリと口角をつり上げ、攻め気満々にディオニクスが己の拳を掌に打ちつけると同時、魔獣の爪と黒焔の爪が相互に腕を這った。そのまま拳を振りぬくと、黒い焔から生まれた炎弾が敵の体を貫いた。その隙を見逃さず、未来が振りかぶる。
「ボクのバットが唸って叫ぶ……事は無いけど、くらえー!」
 未来が振るった赤バットがシャイニングしたように見えたのは気のせいかも知れないが、とにかくドラゴニックパワーによる加速とともにフルスイング! 敵の甲冑の上から横っ腹へ強烈な一撃が叩き込まれた。すると。
『……ヤレ』
 表情の読めない兜の口元がボソリとそう呟いた瞬間、鯉のぼりのぱかっと開いた口から謎の吐瀉物が噴出! 狙いは白陽、正体はモザイクだろうと思うものの感じは悪い。直撃をかわし、剣戟で打ち払う。
「うわっ! きたねえ攻撃しやがってこのやろ!」
 レテイシャもそう叫び、目にも止まらぬ速さでエクスカリバールを操って吐瀉物を弾き散らし、そのまま今度はお返しとばかり振るっていたバールを敵めがけて叩き込む。その攻撃の流れを、ウォリアが強烈な足払いで援護する。
「戦華に舞って魅せようか……」
 リョクレンがそう呟いて攻撃を仕掛ける後ろから、エイスはウイルスカプセルをバラ撒いた。これで敵の回復力は格段に落ちる。
 短く仕立てた七ツ月、七ツ影の二刀を腰裏で逆手に構え、敵との間合いを自在に操って動く白陽の姿は夜戦によく馴染む。早くも亀裂の入った鎧兜を狙い、確実にモザイクを斬り出していく。
『驚ケ……!』
「……さあ味わえよ、鯉のぼりくん。WTの威力を」
 幾分の苛立たしさを声に乗せてそう叫ぶ五月人形ドリームイーターに向けて、チャールストンが愛用の銃を構え、本体の胸と、鯉のぼりに3発ずつ弾丸が見舞われた。
「っしゃ、未来、竜皇、乗って来いよ!」
 ディオニクスの意を汲んだリョクレンが拳を揃え、敵に向けて網状の霊力を放射するディオニクスに合わせて御業を放った。一瞬動きの止まった敵に、未来の強烈フルスイングの完成版が襲いかかる!
「一勝負、完全燃焼!」
 カキーン! とホームラン級のジャストミートで敵の体が吹っ飛んだ、が、鯉のぼりはクルリと方向を変えると、そのままモザイク刀を構え、レテイシャに突っ込んでいく!
『五月人形流、九の突き!』
「なかなかの力だ! だがオレにゃ届かねえ!」
 突きのインパクトの瞬間を頭をスライドさせ手首でいなし、蹴りを返すレテイシャ。すかさず傍に駆け寄ったエイスがその身を気遣った。
「レテイシャさん、無理はしないで下さいね」
「心配してくれてんのか? ありがとな」
 多彩な技で敵に見切らせない考慮をしつつ、防御寄りの敵のスタンスを徐々に崩していく。捕えて、捕えて、鯉のぼりから引きずりおろす……のは残念ながら無理そうだが、的確な攻撃で体力を削っていく。
「おらああっ!!」
 逆にケルベロスたちは気合いの咆哮で、自分たちの身も心も高揚させていく作戦だ。驚きを司る敵を、逆に驚かせてやろうというちょっとした意趣返しである。先駆けたのはレテイシャ。
「……へへ、ビビってんじゃねーぞ!」
 その声に、ひそかにうわ! と小さな叫びを上げてしまったエイス。
「僕、今度こそ本当に驚いてしまいました……でも、ちょっと……僕もやってみたい」
「ハッハー! いいぞ、夢喰いヤローを驚かしてやろうぜ」
 悪童の笑みとともにディオニクスがそう言い放ったのを皮切りに、攻撃の合間にケルベロスたちの咆哮が織り交ざるようになる。本当に敵が驚いているかどうかは定かでないが、迫力のあることは間違いない。
『驚ケ……我に驚ケェ!』
 相変わらずそれを繰り返すドリームイーターが、鯉のぼりの口からモザイク吐瀉攻撃を放った。が、いつしか宿る炎を右目に移したウォリアがそれを胸で受け止め、チチ、と指を一本立てて言い返す。
「……シャウトとはこうするものだ……ウオオオオオォォォォーーーッ!!!」
 辺り一面が震え上がるような声が響いた。
「いいぞ、まるで宴だな。次は誰だ?!」
 夜気の中、竜眼を爛々とさせたリョクレンが楽しげに声を上げる。
「やれやれ……お若い皆さん叫びまくりですね。おじさんにはついていけない世界です」
 これは演技と言うより、日頃の素の部分が出たらしいチャールストンがそう呟いて再度撃鉄を起こした。
「屋根より高い鯉のぼり……とありますが、そのままふわふわ浮かんで、屋根よりも高い所に行ってしまいなさい」
「がおー!」
 もはや意味はないが、楽しくなってしまって叫ぶ未来。通称怪獣公園には相応しい戦い方かも知れない。
「過日の幻、薄暮の現、黄昏の夢、宵闇の真――、汝が脳裏に刻まれし、棄て去れぬ者の面影よ……」
 ディオニクスが魔獣の爪で敵を切り裂き、そこから流し込むのはありもしないはずのトラウマ。過去すら捻じ曲げるその獄炎に、モザイクはボロボロと崩れ出す。
「どォだよ、どんな夢みてんだ夢喰い?」
「……来たれ星の思念、我が意、異界より呼び寄せられし竜の影法師よ………神魔霊獣、聖邪主眷!!! 総て纏めて……いざ尽く絶滅するが好いッ!」
 畳みかけよとばかりに右目を燃やしたウォリアが詠唱を終えると、足元から噴出した炎が武装した彼自身の姿を模し、敵へ一斉に襲いかかった。もはや勝負は見えた。
「おらおらどうした! 紙人形の鎧武者だったのかぁ!?」
 レテイシャが豪快に暴れ、リョクレンは敵武者の姿に似せた御業でその足を止めにかかる。
「どうだ、驚いたか?」
 嫣然と微笑むその狂なる美に、ディオニクスの口角も自然と持ち上がる。
「回復、間に合わないみたいですね……でも手伝ってはあげられない」
 己の撒いたウイルスの効果に満足げにエイスがそう告げた。
 鯉のぼりライドのドリームイーター。子供の夢を食い荒らす悪の最期を決定したのは、白陽の虚無。
「死は尊くあるべきもの――いつか終わることだけは世の全てに平等だ」
 ドリームイーターは人の感情を搾取し悪行を働くが、彼ら自身の感情は一体この世にありやなしや? 答えは謎に包まれたまま、今は死の概念を、つまり死そのものを与えられるドリームイーター。
『……ァ!』
 悲鳴と呼ぶのも頼りない声の欠片のみを残して、鯉のぼりも鎧兜も全ては消え去り、後には外灯の白々とした光が残るのみだった。

●逞しく
「お疲れさん、ケガぁねえかよ?」
「ディオ。鯉に乗るのは面白かったが、俺を驚かせるにはまだまだだったな……」
 真っ先に恋人の下へ歩み寄り、その髪の毛を一房手に取って口付けるディオニクス。戦いを終え、恋人にそっと寄り添いつつも、被害者の少年が目を覚ましたかどうかが気にかかるリョクレン。
「これで一安心、だろうか……行末が良きものであるよう、祈りを捧げよう」
 公園内の壊れた遊具をヒールするケルベロスたち。白陽は淡々と物理力つまり人力ヒールに勤しんでいる。
 ひと通りの作業を終え、少し離れたベンチで携帯灰皿を取り出したチャールストンが煙草に火をつけ、夜空に向かってフーッと白い煙を吐き出した。
(「にしても『驚き』ばかり集めて何をしたいのか……あの魔女は」)
「僕も、もうすぐ鯉のぼりを買って貰えるんです。お人形はまだですけど……にしても、ケイタくんそういえばお人形がちょっと怖いんでしたか」
 エイスがそう言うと、レテイシャが明るく笑って答える。
「よし、ケイタが人形に慣れるよう明日会いに行こうか」
「僕も一緒に行きます!」
 またしても首謀者に届かぬのが歯がゆいが、まずはひとりの少年を守りきれた。五月五日は子供の日。全ての子供たちが健やかに、逞しく大きくなって欲しいとの祈りをも守りきった充足感をそれぞれ感じつつ、公園を後にするケルベロスたちだった。

作者:林雪 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年5月5日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 7
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