燃えよ武闘家幼女

作者:天木一

「ん~? ここどこ?」
 少女が周囲を見ると、広い部屋に粗末な椅子やテーブルが置かれている。
「んーどっかで見たことあるよーな?」
 頭を傾げる少女。そこへぞろぞろと男たちがやって来た。まるでカンフー映画に出てきそうな服装。手には木の長い棒や、ヌンチャク、トンファーなどで武装されている。
「え? なに……」
 少女が困惑顔でいるといきなり男たちが襲い掛かってきた。
「ふぁ!?」
 驚いた少女が足を滑らせると、木の棒が顔のあった場所を空振りする。
「あぶないよ!」
 ごろりごろりと少女が転がると次々と木の棒が地面を抉っていく。少女の体が椅子にぶつかり倒れかけた椅子が木の棒を受け止める。少女の足が偶然当たった椅子が吹き飛び木の棒を持った男にぶつかって吹き飛ばす。
「ふぇ!?」
 その事に驚いた少女が起き上がろうとすると、体がバネ仕掛けのように跳ね上がる。そしてそのまま飛び蹴りをトンファーを構える男に浴びせた。男の体が吹き飛び木の壁に人型の穴を空けて飛んでいく。
「ええええ!?」
 その出来事に呆気に取られているところへヌンチャクを振り回しながら男が攻撃してくる。それに対して少女の体は落ちていたトンファーを拾い受け止める。そして下からキックを叩き込み、男の体は天井を突き破り空へと飛んでキラリと星となった。
「ええええええええええええええええええ!!!?」
 事態についていけずにただただ少女は目と口を開いて驚くばかり。そこで少女の目が覚めた。
「ふぁ! ……んーゆめだったのかー」
 ベッドから上体を上げた少女が部屋を見渡す。
「カンフーのえーがを見たからかなー?」
 夜に父と一緒に見ていた映画を思い出す。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『驚き』はとても新鮮で楽しかったわ」
 いつの間にか部屋に現れていた魔女が少女の胸に鍵を突き立てていた。それを引き抜くと少女の意識が失われ眠りに就く。
 そして魔女が消え去ると、部屋には眠った少女と瓜二つのもう一人の少女が現れた。違うところは動きやすいカンフー衣装を着ているというところだった。
「アチョー!」
 カンフー少女は気勢を上げると、窓から外へと飛び出した。

「えっと、またドリームイーターさんがあらわれる、です」
 アンジェラ・コルレアーニ(泉の奏者・e05715)が新しい事件の発生をケルベロス達に告げる。
「驚いた夢を見た少女が、第三の魔女・ケリュネイアによって『驚き』を奪われてしまいました」
 詳しい説明をと、セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が言葉を続ける。
「奪った『驚き』を使い、新たなドリームイーターが生み出されます。そのドリームイーターが人々を襲い、グラビティ・チェインを奪うようです」
 放置すればドリームイーターの被害が広がってしまう。
「被害が出る前にドリームイーターを撃破して、少女の眠りを覚ましてほしいのです」
 ドリームイーターを倒せば少女は元に戻り目が覚める。つまりドリームイーターさえ倒せば一件落着となる。
「敵は夜の住宅地に現れます。少女の住む家の近くで人が通り掛かるのを待っているようです」
 現れた人にカンフー勝負を挑み倒そうとするようだ。
「ドリームイーターはカンフー服を着た少女の姿をしています。化けているだけなので手加減の必要はありません」
 高い身体能力で物理戦闘を仕掛けてくる。まだ小学生くらいの小さな子供とはいえ見た目で油断はできない。
「敵は堂々とした戦いを挑んでくるようです。挑戦を受ければ優先的に狙われるでしょう」
 相手の性質を利用し、敵の攻撃対象をコントロールすれば有利に戦える。
「カンフー映画は面白いものですが、それが現実で行われるとなれば問題です。被害が出る前にドリームイーターを倒し、眠った少女を目覚めさせてください」
 そう言ってセリカは頭を下げ、ヘリオンの準備に取り掛かった。
「見た目が女の子でも、わるい子はおしおきしないと、ですー!」
 元気にアンジェラががんばろうと拳を上げると、ケルベロス達もそれに合わせて拳を突き上げ気合を入れ行動を開始した。


参加者
香祭・悠花(ジュエルコンダクター・e01845)
アンジェラ・コルレアーニ(泉の奏者・e05715)
湯島・美緒(サキュバスのミュージックファイター・e06659)
マロン・ビネガー(六花流転・e17169)
ルチアナ・ヴェントホーテ(波止場の歌姫・e26658)
リリー・リー(輝石の花・e28999)
伽藍堂・いなせ(従騎士・e35000)
八点鐘・あこ(ウェアライダーのミュージックファイター・e36004)

■リプレイ

●カンフー幼女
 人気の無い暗い夜道を、住宅の明りに沿ってケルベロス達が進む。
「人通りは少ねェようだが、誰が通りかかるかわからねェからなァ」
 念の為にと伽藍堂・いなせ(従騎士・e35000)はキープアプトテープを張って周辺を封鎖する。
「幼女姿でカンフーなドリームイーターさんです? なんだか格闘ゲームの世界なのです」
 うむむとマロン・ビネガー(六花流転・e17169)は強い幼女を想像して唸る。
「わたしにとっても格闘技なんて映画の中か他のケルベロスの話だったわ。降魔拳士になるまではね」
 ルチアナ・ヴェントホーテ(波止場の歌姫・e26658)は昔の事を思い出す。
「あちょー! 降魔拳士の血がちょっとだけ騒いじゃうのね」
 カンフーっぽくリリー・リー(輝石の花・e28999)が手足を振ってぴょんぴょん跳ねると、その頭の上にウイングキャットのリネットが着地する。
「リネットも手が空いたらパンチしてもいいのよ?」
 リリーがリネットの首を撫でるとのんびりとにゃーと鳴いた。
「わるい子にはしっかりおしおきして、いい子にはすっきり目覚めてもらいませんと、です♪」
 元気いっぱいにアンジェラ・コルレアーニ(泉の奏者・e05715)はミニスカ付きリングコスチューム風衣装で意気込む。
「子供の夢を奪いその心を……あと何でしたっけ? 何か昔のヒーローがそんなこと言っていたような気が……」
 湯島・美緒(サキュバスのミュージックファイター・e06659)はうろ覚えのヒーロー物の台詞を思い出そうと頭を傾げる。
「まあどの道ドリームイーターですし」
 変な小細工をしないなら楽でいいと、出発前にカンフー物のBGMを聴いて覚えたメロディを口ずさみながら道を進む。
 道の先、街灯の明りの下に動きやすいチャイナっぽい服を着た幼女の姿を見つける。腕を組み仁王立ちして道の真ん中に立ち塞がっていた。
「珍しくお友達のような姿をした敵なのです!」
 八点鐘・あこ(ウェアライダーのミュージックファイター・e36004)は物珍しそうに人の姿をしたドリームイーターを見やる。
「なるほど、チャイナ幼女! 健康的な生足で相手を魅了するとは……さすがなのです! でもわたしもオラトリオ的に負けるわけにはいかないのです!」
 間違った方向に張り合いながら、香祭・悠花(ジュエルコンダクター・e01845)が堂々と正面から歩み寄る。

●武闘
「挑戦者か!」
 カッと可愛い声で幼女が一喝する。
「ふふ、見つけました、です♪」
 アンジェラが嬉しそうに幼女に話しかける。
「あなたが噂のカンフー少女さん、ですね? ひとつわたしとお手合わせ、していただきます、です♪」
 挑戦を申し込みアンジェラは突っ込んで巨大化させた羽で相手を包み、動きを封じながら膝蹴りを腹に叩き込んだ。
「アチョー!」
 すると幼女も反撃にアンジェラを拘束ごと蹴り飛ばした。
「雰囲気は大事ですから、カンフーらしい曲でテンションを上げて行こう!」
 美緒がギターでノリの良いカンフーアクションのメロディを弾き、仲間の気分を盛り上げていく。
「1人vs多数……何だか此方が悪の組織構成員みたいです……はっ、これが策略ですね!」
 そんな手には引っ掛からないと独り合点したマロンは、ひんやりした色白のオウガメタルから粒子を飛ばし仲間の超感覚を呼び起こす。
「1対8以上は正々堂々じゃないかもしれないけど、リィ一人を狙えば、1対1なのよ。さあ、かかってきなさいなの、ほわっちょー!」
「ホワァッ」
 リリーが掛かって来いと構えると、幼女は素早く怪鳥のように叫んで回し蹴りを打ち込んで来た。その一撃を受け薙ぎ倒される。
「あたしはドラゴンハルカ! ここを通りたくばあたしを倒していくのね!」
 トンファーを構えた幼女が名乗りを上げカンフーっぽい構えをとる。
「闘技大会は好きだけど、ストリートファイトは趣味じゃないの。だから……手加減なしで終わらせるよ」
 オーラを纏ったルチアナは正面に構えると、起き上がったリリーは力を与える矢でその体を射抜いた。
「わたしの名はルチアナ・ヴェントホーテ! いざ尋常に勝負!」
 鋭く踏み込み幼女に拳を打ち込む。すると少女はトンファーで受け止め蹴りを返す。ルチアナもすぐにバックステップで躱した。
「こちらも正々堂々と勝負しましょう!」
「受けて立つよ、ァチョー!」
 そこへ翼を羽ばたかせて跳躍した悠花が飛び蹴りを放つと、カンフー幼女も跳躍して飛び蹴りを合わせる。両者の蹴りがぶつかり合い、互いに反動で吹き飛ぶ。
「あこは堂々とした挑戦はしないのです。狩猟のプロであるにゃんこは人間基準の『堂々とした戦い』ではなく、奇襲を善しとするからなのです……!」
 そこまで言い切った後にウイングキャットのベルに視線を向ける。
「あっ、ベルはディフェンダーなので挑戦を受けるのですよ」
「に゛ゃっ!?」
 指示を出したあこは満月のような光球を放って悠花を癒す。そしてベルも渋々幼女の前へと向かった。
「ホワァア!」
 幼女がベルを蹴ったところへ、ウイングキャットのビタは尻尾の輪を飛ばして幼女の脚にぶつけ、よろめいた幼女に駆け抜けながらオルトロスのコセイが銜えた刀で斬りつける。
「デウスエクスめ、ガキに何やってんだ」
 子供から心を奪って利用する行為に不快感を抱きながら、いなせは無数のドローンを飛ばして仲間を守るように配置して援護する。それに合わせてリネットもびゅんびゅん風を送って仲間の傷を癒していく。
「熱いメロディに乗せて、熱い攻撃をお見舞いするね」
 美緒がギターを弾くと、現れた御業がリズムに合わせて炎は放つ。
「なかなかやるね!」
 幼女はトンファーで炎を切り裂き突っ切ってくる。
「流石チャイナ幼女、動きが速いです! でも負けません!」
 悠花は幼女の進路上に黒い液体を広げて幼女の体を呑み込み、その上から貫くように蹴りを叩き込む。だが幼女はトンファーで防御し、反対に蹴り返してきた。
「戦いたいなら、ルールと場所を用意して、お互い合意の上で戦えばいい、ですのに……」
 アンジェラは敵の攻撃に合わせて拳を横から当てて防ぐ。
「そうしないのなら、わたしはあなたを、おしおきしないといけません、です! あちょー!」
 そして足を払い蹴りを胸に叩き込んだ。吹き飛んだ幼女はバク転して着地し跳び戻ると蹴りの連打を浴びせてくる。
「スピードでは負けてますです。ですのでこっちもスピードアップするのです!」
 魔導書を開いたマロンが詠唱すると、ルチアナの脳が活性化し反応速度を高める。
「なるほど、一撃の強さよりも手数で勝負というわけね」
 前に出たルチアナは蹴りの連打を腕で捌きながら足元を払い、姿勢を崩したところに拳を脇腹に叩き込む。
「今度はリィから行くのよ、あちょー!」
 よろけたところへ突っ込んだリリーが、春色の花びらのようなオーラを纏った拳を打ち込んだ。
「アァチョォー!」
 だが同時に幼女もつま先をリリーのお腹にめり込ませた。
「売られた喧嘩なら買いてェトコだが、受けちまうと狙われっからな」
 相手の挑発を無視したいなせが手元のスイッチを押すと、カラフルな爆発が起こり幼女の視界を奪うように煙が巻き上がる。
「もっとがんばって注意を引くんですよベル」
 あこはベルに破壊のルーンを与え、相手の守りを打ち破る力を与え応援する。するとベルが飛び掛かり爪で引っ掻くが、カウンターで蹴り飛ばされた。
「蹴りが得意みたいね。いいわ、掛かってらっしゃい」
 ルチアナは幼女のハイキックを手で受け流す。すると回転して幼女が後ろ回し蹴りを放つ。それを下から手で押して軌道を変えて躱すと、胸を押し背中から地面に叩きつけた。
「ハイィッ」
 幼女は跳び起きてルチアナを弾きトンファーを向ける。その腕をアンジェラが横から掴み取った。
「捕まえました、です。これでトンファーは……あうっ!?」
「ホワァッ!」
 だが幼女はアンジェラの足を払い転がしてしまう。そして拳をガードの上から打ち込んだ。
「ここからは援護攻撃に移ります!」
 手合わせしてすっきりした悠花が指揮棒を向けると弾丸が撃ち出され、時を止めるように幼女の体を凍りつかせる。
「こ、これは、強い、です……」
 その間にアンジェラは相手を蹴り反動で転がって距離を取る。
「あちょー! ですっ!」
 入れ替わるように接近したマロンも仲間の真似をしてぎこちなくカンフーパンチを胸目がけて放つ。鋼を纏った拳が身を捻る幼女の肩を打ち抜いた。
「本物のカンフーアクション映画みたい」
 ならもっと演出しようと美緒は御業を使って組み付かせる。
「どんどんリィにかかってきなさいなの、あちょー!」
 そこへスカートを翻しながら軽やかにステップを踏んだリリーは、炎を帯びた蹴りを浴びせた。
「やったなー! ならこっちもアチョー!」
 すると幼女もハイキックからの連続蹴りでリリーを攻める。そこへベルが割り込んで攻撃を受け止めた。
「にゃー!」
「ニャチャ―!」
 幼女は狙いを変えてベルを宙へと蹴り上げた。
「考えるよりも感じてるといったところですかね?」
 ベルの挑発に反応する幼女を見ながら、あこは光球ででリリーの傷を治療していく。
「元気なガキだな。元のガキもこんな元気なのかねェ」
 鋼を纏ったいなせはオウガ粒子を放出し、仲間を包み込んで感覚を鋭敏化させた。

●アチョー!
「強い強い! なら本気の本気だよ! アチョー!」
 幼女はトンファーをブンブンと振ってビシッと構える。
「こっちも本気の本気で行きます、です!」
 アンジェラは巨大化させた羽でトンファーを払い幼女を蹴り上げる。宙に浮いた幼女は頭上からトンファーを振り抜く。
「わっ危ないですっ!」
 咄嗟にマロンはナイフを振るってトンファーを弾いた。だが体を捻って幼女は足を振り下ろす。
「凄いアクション、こっちも負けてられないかな」
 そこへ美緒はギターを激しく掻き鳴らし、指が見えぬ程の速弾きによって衝撃波が放たれ、2重、3重の音の波となって幼女の体を吹き飛ばした。
 悠花が指揮棒を振るうと周辺の看板や自転車、ゴミ箱といったものが飛んでいく。それをトンファーで幼女が捌く。
「油断大敵なのです!」
 ゴミに紛れるように生み出した六振りの光輝く剣が飛翔し幼女の全身を斬り裂く。
「武器を使うならこっちも遠慮なく使わせてもらうわよ」
 ルチアナは指輪から輝く鞭のような幻影の刃を生み出して振るうと、トンファーに絡みつき引き寄せたところへ反対の腕で拳を腹に叩き込んだ。
「ここからは狩りの腕前をお見せするのです……にゃんこパンチを食らうがいいのです!」
 死角からそっと近づいたあこが猫パンチを背中にお見舞いする。
「ホイサッ」
「ここはリィに任せるのね!」
 幼女が後ろに振るうトンファーをリリーが受けるが、続けて放たれた蹴りが鳩尾を打ち抜く。
「う、痛いの。リネット、助けてなのね……」
 呻くリリーに、にゃあん?と鳴いたリネットが癒しの風を送った。
「こっちの常識を当てはめんのが間違いだ、っつーのはわかってんだがよォ。それでも胸糞悪ィのは仕方ねェよな?」
 傷つく幼女を見ていなせは顔をしかめる。だが戦いの手は緩めずにドローンを飛ばし攻撃する幼女を妨害する。
「アチョーォッ!」
 幼女が怪鳥音を発して飛び蹴りを放つ。
「クライマックスですし、最速で弾きますよ」
 それを阻止するように美緒のギターが更に速度を上げ、放たれた衝撃波が幼女を打ちのめす。
「被害者のガキのためにも、とっとと片付けて……、片付……。ガキ殴んのも気分悪ィだろオイ! 趣味悪ィことしやがるなデウスエクス!」
 怪物の姿でもしていればと、いなせは悪態を吐きつつ派手な爆発を起こして仲間の力を高めた。
「単純な攻撃は防げても、これは防げないのです!」
 マロンがさまざまな花を召喚し、幼女に纏わりつかせて動きを封じる。最後に無数の花が見たこともない七色の花へと変わり一面を満たす。
「今度はこっちの番なの! リィのこのキック見切れるかしら、あちょー!」
 大きく助走をつけたリリーが跳び蹴りで打ち抜く。それに続いてコセイが青白い炎を放って驚かすと、ビタが爪で引っ掻いた。
「ホォォァッ」
 幼女がトンファーで守りを固めると、あこがパンチの構えからにゃーにゃにゃと歌い出し、そのまま幼女の心を蝕んでいく。
「狩猟のプロは手段を選ばないのがプロたるゆえんなのです……」
 そう恰好をつけながらあこは堂々と胸を張った。
「決め手はやはり素手でいくわよ、受け切れる自信はあるかしら?」
「ホワアアアッ!」
 挑発的に言い放ちながらルチアナが掌に意志の力を集める、すると来いと幼女が手招きした。
「貫け!」
 打ち込む掌打を幼女はトンファーで受け止め反撃しようとする。だが伝わる思念の奔流が体に流れて心を捕ら動きを止めた。
「最後はこれで決めます! エンジェルキーック!」
「これが力を合わせた必殺の一撃、です!」
 悠花は翼を動かして空を加速し、アンジェラはスカートを翻しながら跳躍して矢のようにダブルキックを放つ。
「アチョォオ!!」
 負けじと幼女も跳んで蹴りを放つ。両者が衝突し爆発が起こる。押し負けた幼女の体は天高く吹き飛ばされ消滅した。

●夜も更けて
「くっそ今晩夢見悪そうだ……」
 たとえドリームイーターであっても見た目が普通の子供と戦うのは胸が痛いと、いなせは後味の悪い気分に苦虫を嚙み潰したように顔を歪めた。
「お疲れさまでした、コセイもお疲れさま」
 悠花の元にコセイがわふっと跳び付き、その頭をよくやったと撫でて褒めてやる。
「ベルもしっかりみんなを守って偉かったのです」
 あこもベルを撫でてやると、ベルは疲れたとぐでっとしていた。
「帰ったらギターの弦を張り替えなきゃ」
 ギターを確認した美緒は速弾きでぼろぼろになった弦を緩めた。
「いっぱいカンフーを楽しめたのよ」
 大暴れして満足そうにリリーは笑い、リネットを抱き上げた。
「それにしても、びっくりする位、強かった、です……。もしこの子が格闘技や武術に目覚めたら、将来ものすごく強くなるのかもしれません、です……?」
「わたしも負けていられません、です! また明日からもトレーニング、です!」
 幼女が成長して立派な武闘家になったところをアンジェラは想像し、負けていられないとアンジェラはやる気を漲らせて飛び跳ねた。
「カンフーとは着眼点が素晴らしいです、女の子の将来が楽しみです」
 今度カンフー映画のDVDでも借りてみようかと、マロンもカンフーに影響されていた。
「スピード重視の相手ならもっと初動を読んで……」
 先ほどの戦いの復習にイメージトレーニングしていたルチアナは、途中から夢中になって独り言を呟き無意識に帰り道を歩き出す。
 それに続き仲間達も一緒に夜道を戻り帰途へつくのだった。

作者:天木一 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年4月28日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 3
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