『イースターエッグ』を撲滅せよ!

作者:柊透胡

 今年は4月16日というイースター、つまりは復活祭。カラフルに装飾した卵、「イースターエッグ」を様々な場所に隠し、子供達が探して遊ぶエッグハントは、イースターならではの光景だろう。
「だが、我らの敵は『卵』に非ず!」
 何と言うか、カラフルな羽の丸っこいビルシャナだった。声音からして、40代くらいの男性と思われる。一方、応じる取巻きは老若男女、合わせて5人。
「如何にも! 敵はソフトに在り!」
 実は――色々な場所に『隠す』エッグハントに因み、テクノロジーの世界ではソフトウェアなどに隠されたメッセージや裏技の事を「イースターエッグ」と呼ばれている。
「わざわざ隠しメッセージを仕込む必要が何処にある。開発の自己満足に貴重なメモリを使うなど無駄の極致!」
「何より許せぬのは、裏技だ! 隠しコマンドでフル装備プレイだと? ゲームバランスを著しく欠いた暴挙だろ!」
「対価には等価のサービスを! 商品として世に出されたソフトウェアは、総てのユーザーに公平でなければならないわ!!」
 口々に怒りを叫ぶ取巻き達。イースターエッグが親の仇とも言わんばかりのヒートアップ振りだ。
「では諸君、『経典』作りに励むとしよう! これは公正明大を求める戦いである! 我らの手で『イースターエッグ』を撲滅するのだ!!」
 オオーーッ!
 乗りと勢いと言うか、ビルシャナの魔力と言うか。『イースターエッグ撲滅明王』の煽動に、拳を突き上げる取巻き達。そうして、「イースターエッグ撲滅経典」作りにせっせと励むのだった。

「えっと……カラフルな卵の話じゃなくて?」
 腕の中のボクスドラゴンのシグナスと、揃って小首を傾げるシアライラ・ミゼリコルディア(天翔けるフィリアレーギス・e00736)。
「隠しコマンド、と言った方が判り易いでしょうか。恐らく、この明王も開発側の人間だったと推測されます」
 対する都築・創(青謐のヘリオライダー・en0054)は、寧ろ懐かしそうな面持ちか。因みに、ヘリオライダーとなる前は、システムエンジニアだったとか。
「……定刻となりました。依頼の説明を始めましょう」
 鎌倉奪還戦の際にビルシャナ大菩薩から飛び去った光の影響で、いまだに悟りを開いてビルシャナとなってしまう人間が後を絶たない。
「その名も、『イースターエッグ撲滅明王』。元はプログラマーの男性で、今はパソコンショップを個人で経営しています」
「パソコンに、イースターエッグが関係あるのか?」
「所謂スラングですね。ソフトウェアに仕込まれた隠しメッセージや裏技の事です……ミゼリコルディアさんの懸念が、私の案件にヒットしましたので、皆さんに集まって戴いた次第です」
「確かに『イースターエッグに絡んだビルシャナが出るかも?』って思ってたけど……ビルシャナも、色々なのね」
 イースターエッグ撲滅明王の主張に賛同しつつある取巻きは5人。やはりプログラマーだったり、ゲーマーだったり、パソコンのヘビーユーザーなOLだったり、逆にPC機器の扱いが苦手な還暦前のサラリーマンだったり、はたまた、不公平を嫌う正義感の強い少年だったりと色々だ。
「彼らは今、ビルシャナの店で『イースターエッグ撲滅経典』を作っています」
 ぶっちゃければ、イースターエッグを仕込んだソフトウェアの一覧リストで、完成すればこれを手に各方面を襲撃するだろう。そうなる前に、ビルシャナを撃破しなければならない。
「ビルシャナとなった方はもう戻れませんが……5人の一般人は、まだ間に合います。ビルシャナの言葉には強い説得力がありますが、宗旨を覆すインパクトある主張を行えば、戦わずして離反させられるかもしれません」
 ビルシャナの配下となった人間は、ビルシャナが撃破されるまで所謂サーヴァントの扱いとなり、戦闘に参加する。
「ビルシャナさえ倒せば元に戻りますで、救出は可能ですが……配下が多くなれば、それだけ戦闘で不利になります。戦力は削いでおくに越した事はありませんね」
 戦いになれば、ビルシャナは『イースターエッグ撲滅!』閃光を発して迎え撃ち、『イースターエッグ撲滅!』経文を唱えてくる。
「更に、隠し持っていた『清めのイースターエッグ(実物)』を割って回復するようです」
 因みに、配下になってしまった取巻きは、イースターエッグ撲滅経典(未完成)を手に『イースターエッグ撲滅!』炎を放ってくるようだ。
「パソコンショップの中でも戦えない事はないでしょうし、店の前には駐車場がありますので、戦闘に差し支えはないと考えます。ビルシャナのテリトリーに乗り込み、取巻きを説得・論破の上、速やかにビルシャナを撃破して下さい」
 慌しい情勢にも拘らず、相変わらずマイペースに事件を起こすビルシャナを、勿論、放っておく事は出来ない。
「ビルシャナとなった人を救えないのは、心苦しいかもしれませんが……ソフト開発者のささやかなメッセージや遊び心から、これ以上、被害が広がらないよう、宜しくお願い致します」


参加者
ゼロアリエ・ハート(晨星楽々・e00186)
シアライラ・ミゼリコルディア(天翔けるフィリアレーギス・e00736)
ベルンハルト・オクト(鋼の金獅子・e00806)
清水・光(地球人のブレイズキャリバー・e01264)
秋芳・結乃(栗色ハナミズキ・e01357)
ティスキィ・イェル(ひとひら・e17392)
愛沢・瑠璃(メロコア系地下アイドル・e19468)
シフォル・ネーバス(アンイモータル・e25710)

■リプレイ

●打合せは大事
 街路樹も萌える春爛漫。今日は雲1つ無い晴天だ。
「イースターエッグ……まさかこちらの意味で出現しましたか」
 お揃いの花冠戴くボクスドラゴンのシグナスを抱っこして、シアライラ・ミゼリコルディア(天翔けるフィリアレーギス・e00736)の視線はパソコンショップに向けられる。
「しかも、復活祭の直後。何というタイミングでしょうか」
 イースターは、彼女の信仰にとって大切な祭り。だが、今回の『イースターエッグ』と無関係だ。その紛らわしさに腹も立つ。
「ああ、イースターって言ったら、カラフルな卵を探しまくるイベントなのに~」
 今日も黒いジャケットとゴーグルが目印のゼロアリエ・ハート(晨星楽々・e00186)の言葉は、日本のイースター観そのものだろう。
「ビルシャナなんかサクッと倒して、卵のイースターを楽しもうな!」
「うんっ。一緒にね」
 ゼロアリエと仲良く手を繋ぎ、ティスキィ・イェル(ひとひら・e17392)の表情も綻ぶ。一方、テレビウムのトレーネの相棒スルースキルは今日も健在。クールに凶器を磨き中。
「今回は、ピコピコに拘るビルシャナ退治と、信者さんの説得ですのね」
「まだ信者予備軍、だがな……何だ? ピコピコって?」
 シフォル・ネーバス(アンイモータル・e25710)に、応じたベルンハルト・オクト(鋼の金獅子・e00806)は怪訝そう。因みに、ピコピコとはコンピューターゲーム全般を指す便利な言葉だ。
「わたくし、説得は不得手ですけれど……命が失われるのは以ての外。精一杯頑張りますわ」
「まあ、俺も余りテレビゲームはやらないが」
 ドイツ出身の少年にも、エッグハントに因んだスラングは興味深い。
「わざわざ専門的に言わなくても、普通に隠しコマンドで良いよね」
 郊外故か、車も人の通りも少なかった。予め駐車場の入口にキープアウトテープを巡らせば、一般人が巻き込まれる心配も無いだろう。
「さっさと卵、というか隠しコマンド嫌いなビルシャナを倒ちゃおう♪」
 早速、秋芳・結乃(栗色ハナミズキ・e01357)が懐からテープを取り出している。
「ゲームのイースターエッグは……最近は少ない印象やね。開発者もプレイヤーも余裕があらへんみたいやな」
 何処か剣呑に笑み、清水・光(地球人のブレイズキャリバー・e01264)は鉄塊剣を担ぐ。
「ほな1つ、やりましょか。この道を修羅道と知り推して参る」
「え、ちょっと……説得が先、よね?」
 物騒な雰囲気に、ウイングキャットのプロデューサーさんもピクリ。愛沢・瑠璃(メロコア系地下アイドル・e19468)が慌てて引き止めた。
「まず店内で信者予備軍を説得して、駐車場まで撤退して戦闘でしょ」
「せやったっけ? うちは説得苦手やから……」
 小首を傾げる光。説得してから戦闘と戦闘しながら説得――似て非なるタイミング。意思統一は凄く大事。
「あら、そうでしたのね」
 どさくさに紛れて、シフォルも惚けた事を呟く。
「ええと、ここは……」
「あっちのお店にビルシャナと取巻きがいるんですよ」
「そうでしたのね。そう言えば、お昼ご飯はまだかしら……?」
 そのトリ頭を何とかしろ、なんて、心優しいティスキィが思う筈もなく。
「仕事の後のお楽しみですね」
 柔らかな笑顔で頷いた。

●『イースターエッグ』を撲滅せよ!
「では諸君、『経典』作りに励むとしよう!」
 オオーーッ!
 さして広くない店内に、鬨の声が轟いたその時。
「開発者と利用者のちょっとした楽しみを奪うのは許せん!」
 勢いよく突入したゼロアリエは、声高に言い放つ。
「何奴!」
「そんな事はどうでもいい! いいか! ヒトは隠されると気になる生き物なんだ!」
 イースターエッグ撲滅明王の誰何をぶった切り、ゼロアリエは勢いのまま断言する。
「オマケを楽しむ人間は多いんだよ!」
 例えば、ゲームに隠されたコマンド、入力成功の効果音、縦読み、意味不明の集合写真、等々。
「ねぇ、どうして隠し要素がダメなの? 私もつい探しちゃうな」
 ティスキィも穏やかに問う。
「戸棚とか開けてお菓子探す事ない? あったら嬉しいし、なかったらガッカリする。それと同じじゃないかな」
「隠しコマンド探し、楽しいですよね。開発者の心の内とか聞けるのも、好きです」
 シアライラ自身、レトロゲームは好きだから。
「遊び心をなくしたらつまらないです。余裕がないと煮詰まっちゃいますよ」
「馬鹿な事を!」
 声を荒げたのは、20代の青年だった。
「俺は色んなゲームを攻略して、くそゲーだってやり込んだ。何が裏技だ! 隠しコマンドでフル装備など、やり込みプレイヤーを嘲う暴挙だろ!」
(「時間だけ使って攻略本通りしか出来ない人って事やな」)
 光が内心で突っ込む一方、ベルンハルトは徐に口を開く。
「隠し要素はゲームバランスを崩すかもしれないが、初心者への救済措置ではないのか?」
 小柄に違う大人びた口調は整然と。
「隠し要素は本当にいけないのか? 物語、に広がりを与え、スタッフのお遊びも入れられる。それがが好きな人もいるだろう? 実際、ここにいる」
 揃って頷くケルベロス達。
「結局、自分が下手っていうだけやないんか?」
「何だと!」
 辛辣な光の言葉にいきり立つゲーマー青年に、シフォルは素朴な疑問を投げる。
「どんな人がやってもプラマイゼロな、完璧すぎるバランスのゲームは面白いですの?」
「視野を狭くするのは、ゲームを最大限楽しむ上では少し邪魔じゃないだろうか。色々な視点を持つのも、大切だと思うぞ」
「!」
 続くベルンハルトの言葉に、ハッとなるゲーマー青年。
「俺は……ゲームを楽しみ尽くしていなかったのか」
「でも、隠し要素って不公平だよ。見付けた奴が自慢するとか、知らない人を馬鹿にするとか、酷くない?」
 代わって口を開いた少年は、思春期特有の潔癖さを滲ませる。
「あ、ひょっとして、卵探しが苦手で、見付からないのが悔しかったりするのかな? なのかな?」
 結乃の衒いない言葉に、少年の頬が忽ち紅潮する。図星のようだ。
(「単なる情弱少年やね」)
 光の本音は、口に出さないで良かったかもしれない。
(「ま、あんまり多すぎるのも困っちゃうけどね」)
 内心はおくびにも出さず、見付けた時の嬉しさや楽しさもゲームの一部と、結乃は断言する。
「それに『上上下下左右左右BA』って唱えれば、幸せになれたりするんだよ? みんなで、せーのっ!」
「ゲームで裏技見付けたら、嬉しくなって試さないか? 試したくなったらもうコッチ側だ!」
 黙り込む取巻き達に、畳み掛けるゼロアリエ。
「もう1回! 『上上下下左右左右BA』! せーのっ!」
「「う、上上下下左右左右BA!!」」
 漸く唱えたのはゲーマーと少年の2人。彼らの表情が憑き物が落ちたように晴れやかとなる。
「そ、それはこの場では危険だから!」
 店のパソコンにそのコマンドを打ち込んだシグナスを、シアライラが慌てて止めたのはさて置いて。
(「私も探すの苦手だけど……見つかった時はやっぱり嬉しいよ。ついタンスも戸棚も探してみる、よね」)
 見付けたら喜んで欲しい――そんな想いが篭ったイースターエッグ。いらないなんて言わないで、とティスキィは強く願う。
「……この際、ゲームはどうでもいいのよ。私、コンピューターゲームやらないし」
「え、あなた、パソコンのヘビーユーザーでしょ?」
 結乃の言葉に、OLらしき女性が不機嫌に言い放つ。
「ええ、朝から晩まで。文章作成は勿論、表計算、画像加工、動画編集なんかもね。ゲームやってる暇なんて無いわ」
 説得もすんなり進むかと思いきや、そうは問屋が卸さない。
「仕事で使うソフトに、イースターエッグを仕込むとかどういう了見よ。そんな暇があるなら、もっと使い勝手よくしなさいよ!」
 あ、と顔を見合わせるケルベロス達――イースターエッグは、ゲームソフトばかりではない。
「隠し要素なんて言語道断! そもそも世に出たソフトウェアは、総てのユーザーに公平でなければならないわ!!」
 反論できなければ、ここで終わりとなってしまう。
(「イースターエッグなんて、プログラマーサイドのちょっとした遊びやサービスよね……」)
 ツンツンした態度で白のツインテールを揺らす瑠璃。
「総てのユーザーに平等にって、隠し要素を発見するのに命を懸けてるようなヘビーユーザーだっている事を忘れてないかしらね?」
 アーティストにしても、歌詞や音楽にギミックやパロディ、隠しメッセージを仕込んだりする。イースターエッグと似ていると思う。
(「だから、撲滅されても困るのよ」)
「隠し要素が主役になる仕様はいけないけど、それはもう『隠し』でも何でもないし。でも、隠し要素が無ければイースターエッグを好む層の否定になるのよ。総てのユーザーが総ての要素解禁を望む訳じゃないわ」
「な、何を……」
「総てのユーザーを代弁したつもりになられても困るわ!」
 自信満々に断言してのけた。シュンと小さくなったOLが店を出て行く。強気の攻勢で押し勝ち、瑠璃が小さな胸を大いに張るのも束の間。
「公平、だと?」
 そこで口を開いたのは、他の取巻きに紛れていた還暦前らしきサラリーマン。今やその形相は怒りに満ちている。
「なら、最近やっとメールが読めるようになった、わしでも使えるソフトこそ『公平』だな?」
 何が許せないと言って、パソコンの素朴な質問に面倒臭そうな表情を浮かべる若手社員達! 時代遅れはすっこんでろ……何度、馬鹿にされてきたか。
「パソコンをソフトを使いこなせなければ人に非ずか? イースターエッグとやらが、そんな連中を助長するのだ!」
「そうだそうだ!」
 これ幸いと囃し立てる明王。色々混ざりまくっているが、サラリーマンの鬱憤を都合よく昇華させてしまった模様。『公平』を謳うならば、パソコンビギナーの琴線に触れる理屈も必要だっただろう。
「それは大変やねぇ」
 口だけで同情しながら、光は背後を窺う。潮時の気配だがもう1人、信者予備軍が残っている。
(「知ってる。作ったゲームの隠しコマンドを、バグと誤解されたプログラマーさんやね」)
「言わせておけば……わざわざ『卵』を仕込む必要が何処にある!」
 息巻くプログラマーに、シフォルはいっそのんびりと。
「他と比べて一歩上に出るような、バランスを揺らすデータがあるからこそ面白いのです。その最たるがイースターエッグ。楽しみを知る遊び心が、退屈しないゲームを作るのですわ」
「ふん! 面白いシステムを隠す必要などない! イースターエッグなど所詮は開発の自己満足、貴重なメモリを浪費する事か!」
(「隠しコマンドに使うROM容量なんか、古いCG1枚の数千分の一くらいですわ。そもそも、ソフト開発なんて頭脳労働の最たるもの、遊び心が無ければ苦行でしかありませんもの」)
 もし、シフォルが口に出していれば、プログラマーは論破されていただろう。
 だが、後の敵戦力に係る取巻きの説得は、依頼の成否にも影響する。声に出さなければ、どんなに良い意見も伝わらないのだ。
「御託は沢山だ! 我が同胞よ! 公正明大を求める戦いの狼煙を上げようではないか!」
 示すべきを間違えたのはシフォルだけでないし、説得にも偏りがあった。それでも、戦力を半減出来て幸いだったと言えるだろう。

●打倒! イースターエッグ撲滅明王!
「結局、イースターエッグを見つけられないから嫌いなの?」
 ティスキィの挑発に、ケルベロスを追う明王と信者2人も駐車場へ。
「……ちっ」
 後方のビルシャナをゼロアリエの轟竜砲が直接狙うが、イースターエッグ撲滅経典(未完成)を手にプログラマーが射線を遮る。
「同胞に癒しを!」
 清めのイースターエッグ(実物)を叩き割られ、信者の傷は忽ち癒える。
「信者さんはディフェンダーぽいね」
「明王はメディックか」
 メディックの立場ながら得意の狙撃で明王を狙う結乃。延々と回復されるのも面倒だ。ヒールドローンを展開するベルンハルトも眉を顰める。
「ビルシャコロスベシ慈悲ハナイ」
 ゲーム音声的に呟く光も、唯一の遠距離攻撃の命中率も芳しくない。インフェルノファクターで様子見しようにも、活性化していなかった。
 尤も、クラッシャーの火力を一般人が庇えば、1発で沈みかねない。
「前からお願いします!」
 『事故』の可能性を考えて判断したシアライラは、地面に守護星座を描く。だが、『慈悲』を準備したのは、シフォル、シアライラ、瑠璃、ゼロアリエの4人。火力半減となれば、序盤はもどかしい戦況が続く。
 プロデューサーさんに清浄の翼を頼みながら、後方から信者を狙う瑠璃。
「トレーネ、応援動画を頼む!」
 要請には無反応ながら、テレビウムは『イースターエッグ撲滅!』炎に炙られたシグナスに応援動画を流す。そんなツンデレに苦笑するゼロアリエも手加減の一撃を繰り出す。
(「……捉えるっ」)
 ケルベロス全員で穿つには、やはり明王の足止めは必要。瞳孔まで絞りきった結乃の超集中の狙撃は1度はサラリーマンに遮られたものの。程なく鳥影を貫く。
 ベルンハルトは元より、ヒールと庇う事に専念の心算。ジャマーたるティスキィが全身からオウガ粒子を放出し、ケルベロスの攻撃が命中し出せば戦況の好転も早い。
「明王様……」
「畏れるな! 大儀は我らに在り!」
 シフォルの一撃に忽ち昏倒するサラリーマン。慄くプログラマーを、明王は声高に鼓舞する。
「イースターエッグ撲滅!」
 前衛を舐める閃光がオウガ粒子を幾許か剥がすも、ケルベロスの勢いはもう止まらない。
「そもそも、復活祭の時分にこの騒ぎは紛らわしいのです」
 シアライラの手加減も容赦ない。敢え無くプログラマーも沈黙すれば、すかさずシグナスが明王へボクスタックルを敢行する。
「おのれ、よくも同胞を!」
「同胞なら盾にするな! それから撲滅経典を寄越せ!」
 ゼロアリエのグラインドファイアが炸裂。恋人と息を合わせ、ティスキィのファミリアシュートが延焼を促す。
 対照的に、ベルンハルトの達人の一撃が、瑠璃のフロストレーザーが、次々と凍らせていく。
「……それでも、私は、イースターエッグを、ゆるさ――」
「課金ゲームも重課してこそ。そっから出直しやね」
 ゲーム的コンボが繋がらなかった鬱憤を晴らすように、『イースターエッグ撲滅!』経文諸共に超必殺緋色芙蓉を刻む光。
「レトロゲームプレイしたくなっちゃったかもっ」
 何処か楽しそうな結乃の狙撃はあくまでも正確だ。
「わたくしもピコピコ覚えれば、物忘れ対策になるのかしら……」
 多分関係ないです、なんて、シフォルのヴァルキュリアブラストに轢かれた明王に言える口もなく。
「ハッピーイースター! 皆さんにイースターの祝福を」
 時空凍結弾でトドメを刺したシアライラは、それはもう、笑み満面で仲間達に振り返った。

作者:柊透胡 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年4月29日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 2
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