●言葉は要らぬ、筋肉こそ至高!
とある部屋にて。
鳥人間がなった男が腕組みをし、この場で拳を、蹴りをつき合わせている人々を見つめている。
「…………」
ビルシャナとなったこの男は、ノーキングと名乗っている。アホウドリのような頭に、ガッチリとした体を持つ男だ。
それにもかかわらず、口にくわえたパイプ、頭の黒いシルクハット、黒の外套を羽織った紳士然とした姿は探偵を思わせるのだが……。
「筋力、それ以外は何もいらぬ!」
「「「そうだ、筋肉こそ全て!」」」
その場の人々もまた、鍛え上げた肉体を持つ物達。男性が多めだが、女性の姿も若干ある。すでにビルシャナの信者と成り果てた人々の目は正気を失っていた。
己の体を武器とする者達を見つめるビルシャナは腕組みをしたまま、満足そうに頷くのだった。
「脳筋って……、あまりいい言葉ではないと思うのだけれど」
リーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)はヘリポートに集まるケルベロス達へとそんな言葉を漏らす。
基本的にその言葉は、単純行動ばかりをする者を揶揄する言葉として用いられる。だからこそ、リーゼリットもこの言葉は避けたかったようだが、今回ばかりはそうも言っていられないとのことだ。
「ノーキングと名乗るビルシャナが現れて、人々を信者とすべく動くようなんだよ」
鎌倉奪還戦の際に、ビルシャナ大菩薩から飛び去った光の影響と思われるが、ビルシャナとなったこの男の主張は実にシンプル。『筋力が全て』である。
「信者を増やす前に、ノーキングの討伐を願いたいのだけれど……、現場到着時には鍛え上げた体を持つ10人の人々を自身の主張に同調させているよ」
このまま放置すると、この筋肉自慢の人々はビルシャナの信者……配下と成り果ててしまう。
戦いとなれば、この人々はビルシャナと同様、最前線で殴りかかってこようとする。ビルシャナを倒せばこの人々を救出することはできるが、配下が多い場合はそれだけ戦闘において不利になってしまう。
「できるだけ、戦いが始まる前に説得しておきたいけれど、彼らの目を覚ますのは簡単ではないよ」
普通に説得して人々を元に戻す可能性もなくはないが、ビルシャナの主張を覆すようなインパクトのある主張が効果的なようだ。
また、戦いが始まるまでに説得できなかった信者は倒してしまう他ないことも、予め認識しておきたい。
「敵が現れるのは、群馬県前橋市の市街地にある交差点だね」
前述の通り、『筋力が全て』と繰り返して周囲の人々を力づくで説き伏せようとする。ビルシャナの教義に共感できない者は、この場から逃げているようなので避難はさほど力を入れる必要はない。
「ノーキングはアルバトロス……アホウドリのような頭を持つビルシャナで、彼自身も鍛え上げた肉体を持っているよ」
なぜかビルシャナが纏っているのは、黒い外套。そして、黒いシルクハットにパイプ煙草と、探偵を思わせる格好をしているが、そいつは知識などこざかしいと嘲笑いすらしている。
戦法も至って単純。炎の拳と必殺の蹴り。主張がわからない人には肉体言語で語ってくるようだ。
「真っ向勝負してくるビルシャナとはな……」
その説明を聞き終え、雛形・リュエン(流しのオラトリオ・en0041)が唸る。
搦め手で攻めれば御しやすそうな相手ではあるが、一撃は強力であると予想されるので、万全と帰したいところだ。
「ともあれ、力で攻めてくるビルシャナを止めないと……ね」
リーゼリットは改めて、その討伐をケルベロス達へと託すのである。
参加者 | |
---|---|
トリスタン・ブラッグ(ラスティウェッジ・e01246) |
ロベリア・アゲラータム(向日葵畑の騎士・e02995) |
志藤・巌(壊し屋・e10136) |
セレッソ・オディビエント(だらマス・e17962) |
ユグゴト・ツァン(凹凸普遍な脳深蕩・e23397) |
スノー・ヴァーミリオン(深窓の令嬢・e24305) |
レピーダ・アタラクニフタ(窮鼠舌を噛む・e24744) |
イ・ド(リヴォルター・e33381) |
●脳筋なビルシャナに……
現場に向かうヘリオン内。
「俺も大概脳筋ではあるが、まさか此処までの奴がいるとは……」
名前の通りに厳つい表情で、ガッチリとした肉体を持つ志藤・巌(壊し屋・e10136)が感嘆する。
今回現れるビルシャナについて、ケルベロス達は語り合っていたのだ。
「人類は文明の力によって、繁栄を築いてきました。狩猟時代の原始人でさえ道具を使っていたと言うのに、この鳥と来たら……」
相手が脳筋と知ったロベリア・アゲラータム(向日葵畑の騎士・e02995)は、しっかりと防具で対処の上での参戦。彼女は、このビルシャナはあと数百年程早く生まれるべきだったと皮肉を言う。
「それはそれで、見た目が斬新すぎただろうがな……」
雛形・リュエン(流しのオラトリオ・en0041)がそれに、冷静なツッコミを入れていた。
「筋肉は自分も鍛えているので気持ちは分かります……。ですが、それは筋肉の為に鍛えているのでは、意味がないのです!」
トリスタン・ブラッグ(ラスティウェッジ・e01246)は、自身の心情をビルシャナに惑わされる人々に伝えようと考えているようだ。
「柔よく剛を制す……。ムキムキなだけじゃ、ファンは増えませんからね!」
自称ヴァルキュリ星人の駆け出しアイドル、レピーダ・アタラクニフタ(窮鼠舌を噛む・e24744)も仲間に同意し、すらりとした手足で人々をメロメロにしようと意気込む。
「武術を嗜む身として、力が理不尽な暴力になるってのは許容できねェぜ」
敵を打ち砕かんと考える巌。同じ依頼に参加しているユグゴト・ツァン(凹凸普遍な脳深蕩・e23397)を気に掛ける。
普段、酒を煽るユグゴトは宿敵と対することもあり、いつも以上に頭を抱えていた。
「…………」
飲み仲間であるセレッソ・オディビエント(だらマス・e17962)はそんな彼女を物憂げに見つめるのである。
●筋肉とは!!
「うわぁ……、初めてガチの脳筋を見た……」
現場に到着したセレッソは、瞬時に呆れ顔になっていた。
「筋力以外は何もいらぬ!」
「「「筋肉こそが全て!!」」」
探偵のような風貌のビルシャナ、ノーキングが高らかに語ると、同調する10人のガタイのよい人々が声を揃える。まるで体育会系のノリだ。
「我が同胞を屠った阿呆鳥だ。幾多の生命を蹴った冒涜鳥だ。負の感情を抱擁せねば」
ピンクの瞳を陰らせて敵を睨むユグゴト。彼女を一旦なだめつつも、メンバー達はまず、取り巻きのようになった一般人の説得を始める。
「地力も大切ですが、道具を使用した方が良いに決まっているではありませんか」
前に出るロベリアは、これぞ人類の英知の偉大さだとドラゴニックハンマーで地面を叩きつけ、敵を威嚇する。
「この文明の利器の素晴らしさを知りたい人から、前に出てきてください」
ならばこの筋肉を存分にと、筋肉自慢の人々が鍛え上げた肉体を見せ付けるところで、レプリカントのイ・ド(リヴォルター・e33381)が小さく首を振る。
「残念だが、筋肉に勝る代物がある。……火器だ」
いくら鍛えても、銃で撃たれれば死んでしまうのは当然の理だし、筋肉は火器、銃器を用いる歯車に過ぎない。
そして、彼が例に挙げたのは、筋骨隆々としたシュワなんたらという俳優。ターミネートするときも、コマンドーするときも、彼は火器を用いていたはずだ。
「火器を……銃を前にして、筋肉は主役たり得んのだ!」
「じゃ、なぜ、あんたは銃を持っていない?」
マッチョな男性が何気なく問うと、銃器の類を持たぬイ・ドは返答に窮してしまう。
ならばと、トリスタンが切り口を変えて説得を始める。
「体を鍛えることが悪いとは言いませんが、それだけで良いとは浅はかな……」
トリスタンも、説得する人々に負けずとも劣らぬ筋肉を持つ。
「筋肉を鍛えるのに必要なのは、トレーニングだけではありませんよ」
適切な運動、適度な休息、そして効率的な食事……。より良い肉体をつくるためには、それらをきちんと学ぶ必要だってあるのだ。
「筋肉の為にも、ダンベルを置いて本を手にするのです。そして、本を読み、様々な事を知れば、筋肉以外の魅力に気付く日も来るでしょう」
鍛えた身体をもつトリスタンが言えば、説得力も増す。
「私らはケルベロスだから強いんじゃない。力と技術と知識があるから強いんだ」
セレッソも自身の言葉で説得を重ねる。本当に強い者は、その筋力を使いこなす技術と対戦相手への対処を的確に判断する知識を持つ者なのだと。
2人の言葉に正気を取り戻しかけた人々。しかし……。
「筋力以外は何もいらぬ!」
しかしながら、ノーキングが一喝し、人々をすぐに自らの主張に同調させてしまう。
「キュッキュリーン☆」
それならと進み出たレピーダはポニーテールを躍らせ、可愛らしく挨拶するが、ジャージ姿が残念さを誘ってしまう。
「筋肉が全てなら、筋肉で何もかも解決できるってことですよね?」
問いかける彼女は、ステップを踏み始めた。
「キュキュッ、じゃあ、ダンスバトルと参りましょう!」
数人の男性がそれに乗ったところで、リュエンがアップテンポの曲をギターで弾き始める。
「あんまり言いたくないのですけどね。私の身内にも、筋肉大好きな姉がいるわ……」
一方、ダンスにさほど興味を持たぬ女性2人には、スノー・ヴァーミリオン(深窓の令嬢・e24305)が話しかけていた。
プロテインを飲み、鶏肉のささ身を食べ、おやつにきな粉と見事にたんぱく質ばかりの姉は、美容だ、乙女の嗜みだと主張しているが、スノーにとっては世迷言にしか聞こえないのだとか。
「もう、何でしょうね? 乳なのか……胸筋なのか解らないレベルですね?」
しかも、姉本人はプロレス好きらしい。筋肉好きであればそちら関連も好きな人いるのではと、スノーは半ば姉に対する愚痴になってきている。
「断言するわ。絶対モテないわ!」
反論しようとする女性達へ、スノーは更に続ける。
「筋肉って脂肪より重いから、つまり重い女になるわね。それでも、まだそんなに筋肉つけてたい?」
重いという言葉が肉体に突き刺さる女性達は、自らの筋肉に些か自信をなくしかけていた様子だ。
さて、ダンス対決だが。
「ステップ踏んで、クルッとターン☆ ジャンプしてから華麗に宙返り♪」
サイリウムを振るトリスタンの手前で、アクロバティックに舞うレピーダはしなやかな筋肉を見せ付ける。
一方、上下左右に踊る筋肉美を持つ人々。ガッチリとした肉体は、踊る上では障害にすらなって。
「……既にお判りの通り、過剰な筋肉は敏捷なアクションの邪魔になります!」
可愛さ、人の魅力は、筋肉だけで出すことは出来ないとレピーダは主張する。ダンス勝負にのった人々は愕然とし、敗北を認めていた。
そんな彼らへ、巌が呼びかける。
「人は何故今日まで武術を伝え、研鑽してきたと思う? それは、技術は筋力を凌駕するからだ」
単純に筋力をつけるだけではただの木偶の坊でしかなく、本当の意味で強い者には勝てないと、彼は幼馴染のことを思い出しつつ主張する。
ノーキングはパイプ煙草を加えて高みの見物であるが、ケルベロスと対峙する筋肉自慢の人々の考えは揺らいできていた。
「……それと、大切な友人の為に私はここにいる。お前らみたいな奴らがこの心と鎧を壊せると思うなよ!」
「俺の意見を否定したいってんなら付き合っても良いが、こっちには少々殺気立っている奴もいる……それでもやるか?」
セレッソが敵意を見せ始め、巌も関節技を仕掛けそうな勢いで人々を威嚇する。
なぜなら、ユグゴトが感情を昂ぶらせていたからだ。
「貴様等は莫迦だ」
悪意に満ちた表情をした彼女はさらに捲くし立てる。
「己が知識を唾棄し、阿呆な存在を謳うなど。痴れた物体の所業。糞が。崇拝対象諸共破滅を往くのか。逝くならば容赦は皆無と想え。我が憤怒は総てを無碍と見做す。殺さねば。屠らねば。妨害の業を知るが好い」
もはや、それは脅迫。正気を取り戻した人々はユグゴトに怯え、この場から走り去ってしまう。
だが、ノーキングを睨むユグゴトの言葉は止まらない。
「対象の脳は不要だ。我が恐怖を憤怒に変換させ、悪夢に終焉を齎すべき。観よ。奴の不死性を毟り削って魅せる。破滅の時だ。貴様の肉体を束縛するのだ」
憤怒の中に、恐怖を抱くユグゴト。それは、目の前の相手が彼女の同胞の命を多数屠ったからに他ならない。
「ほう、だが、我が筋肉の前には全て無力」
腕組みを解き、ノーキングが構えを取ると、ケルベロス達もまた戦闘態勢に入る。
「お前の攻撃が、私に通ると思うんじゃねぇえ!」
「鳥野郎、お前の蹴りを見せてみろ。俺達が打ち砕いてやるからよ」
セレッソ、巌が揃って敵を挑発すると、ビルシャナはなにやらメラメラと全身の炎を燃やして襲い来る。
「貴様らは……蹴り屠るぅぅぅ!」
「《反抗》、開始」
まずは、炎の拳……というよりも翼で仕掛けてくるノーキングに、イ・ドが冷淡に告げたのを皮切りに、ケルベロス達もまた応戦を開始するのである。
●筋肉をねじ伏せろ!
ビルシャナよりも先に、スノーが動く。彼女は紙兵を撒くのにも構わず、ノーキングは炎の拳を見舞ってきた。
そこで前に出てきたロベリアが、悠然とその拳を受け止める。
「渾身の一撃を……くらえッ!」
敵はノーキングのみだが、例え信者と成り果てた人がいようとも、ロベリアはそいつを狙うつもりでいた。
先ほど言っていた『文明の利器』を行使し、大きくハンマーを振り上げたロベリアは真正面から敵と殴り合いに臨む。
ヌンチャク型にした如意棒を手にしたイ・ドもまた、正面から攻め入る。そんな前列メンバーを、巌もまた紙兵を撒いて援護していたようだ。
「ムキムキは可愛くないからやーです」
いつの間にかノーキングの頭上で傘を開いていたレピーダは、敵の頭へと重力を伴うドロップキックを喰らわせる。
「鍛えているのが自分だけだと思わない事ですっ!」
続けて、トリスタンが逆に炎を纏った拳でノーキングを殴り飛ばす。
敵の攻撃に備え、オルトロスのタフトと共に前衛に布陣するセレッソも「千疋狼」を頭上に投げ飛ばし、分裂させた槍をノーキングへと降り注がせる。
「貴様に攻撃の機会など与えぬ」
敵意の炎を燃やすユグゴトは、敵に猛攻を仕掛けた。一度敵に鏡を映し出すグラビティを使用した後、彼女はブラックスライムを飛ばし、敵の捕縛を試みる。
「筋肉の前では……全てが無意味!」
だが、ノーキングは意にも介さず、ケルベロスへと殴りかかってくるのだった。
ほぼ格闘戦を仕掛ける形の敵。肉体言語でケルベロスを惑わせてくることはあれど、その一撃の威力は非常に強力で、ケルベロスの体すらもやすやすと砕いてくる。
対して、やや前のめりな布陣で戦うメンバー達。しかしながら、巌が鎖で描いた魔法陣で味方を護っていたし、リュエンも雷の壁をメンバーの手前へと構築させていく。
「お疲れ様! 色々と頑張ってくれてありがとうね」
スノーは満面な笑顔で仲間を鼓舞する。主にその回復の対象となるのは、ロベリアだ。
事前にノーキングに対策を行っていたこともあり、被害を抑えながらもロべリアは脳筋戦法で戦い、ハンマーを叩きつけて行く。
脳筋ではないが、大鎌、そして、黒色の魔力弾。ユグゴトもまた、宿敵相手に猛然と攻撃を繰り返す。
「筋力だけで、人の心をどうこうできるわけないじゃないですか!」
同じ後方のレピーダ。心を通じ合わせる方法は1つではないと、彼女は全力でノーキングへと攻め入る。
「筋力を超えた可能性を、此処に!」
レピーダは正面から電光石火の蹴りを浴びせかけた。
続き、イ・ドが赤熱させた如意棒をノーキングへと振るう。
しかし、それは牽制の一撃。彼は敵の足を払い、相手の体勢を崩す。
「斯く搦め手も織り交ぜてこそ、合理的」
そうして、イ・ドは敵の顔面に拳を叩きこんだ。
くちばしにヒビを走らせたノーキングは、爛々と瞳を輝かせる。
「蹴り屠るぅぅぅ!」
吠えるビルシャナは峻烈なる蹴りを繰り出してきた。それを前に出たセレッソが受け止めた。
「遠く離れて手の届かない獲物に襲い掛かろうと、狼は梯子のように連なっていく……千疋狼、聞いた事はないかい?」
狼の名の槍を敵へと投擲する彼女。それがノーキングの腹を穿つと、柄に描かれた狼が笑っているようにも見えて。
「……速さを削ぐッ!」
仲間の支援を止めて攻勢に出た巌が敵の足を踏みつけ、敵を地面へと縫い止める。
「Deprived force type Grendel」
さらに、トリスタンが忌まわしき沼の巨人から奪い取った力を腕に宿し、ノーキングへとその拳を浴びせる。
いくら肉体に自信のあるノーキングとはいえ、足が笑い始めていたようだ。
その姿を、ユグゴトが鏡へと映し出す。
「私は人間か。私は夢魔か。私は怪物か。私は異端者『Outsider』か。ああ、私は何だ。貴様は何か。応え給え。鏡に映った存在は――」
映し出されたのは、紛れもなくノーキングの姿。異端者『Outsider』の輪郭。元々、深くは考えていなかったであろうノーキングだが、その思考が完全に停止した。
「…………」
目から光を失ったノーキングは、重い音を立てて地面に崩れ去る。
「《反抗》、完了」
それを確認したイ・ドは、仲間と共に戦闘態勢を解いたのだった。
●群馬の焼きまんじゅうをご堪能あれ
ノーキングが倒れた後。ユグゴトは俯き、祈りを捧げ始める。
「…………」
「……お疲れ様。気持ちが落ち着いたら、また一緒に酒でも飲もう」
そんな彼女の肩へと、セレッソが心配そうにしながら手を添えた。
その時、ユグゴトの頬からは一筋の滴が流れ、ぽとりと地面へと落ちていた。
修復作業は進む。
戦闘序盤と同様に、魔法陣を描き、紙兵を撒く巌。
トリスタンは溜めた気力を撃ち出し、翼を広げるロベリアは極光を発して、戦場となった市街地を幻想で埋めていく。
「あぁ、久しぶりに姉に対して思ったこと言えて、スッキリしましたわ……」
全て終え、晴れやかな表情で呟くスノーは、仲間から視線を集めている事に気づいて。
「じゃなくて、私は本来はこんなこんなこと言わないのですからね? 皆さま信じて下さいね?」
あたふたとする彼女はしどろもどろになりながらも必死に弁明するが、仲間達はにやにやと笑って。
「さぁ……、ほら早くみんなでソースカツ丼ですっけ? 食べに行くわよ!!」
必死に話題を反らすスノーに、メンバー達が唸る。
「ソースカツ丼か。どこかにあればよいが」
「筋肉の為にも、いい肉を食わなければいけませんね」
幾つかリュエンが前橋名物の名前を口に出すと、トリスタンは運動後の栄養補給をしたいと語る。
「焼きまんじゅうってのに、興味があるな」
巌がそう言うと、通りがかりに早速販売店がケルベロス達の目に入る。
蒸したまんじゅうを竹串に刺し、甘く味付けした味噌ダレをつけて食べる、群馬の味なのだとか。
「この芳ばしい香り……珍しいですね」
ロベリアは早速食べてみると、その風味と食感、そして甘くしょっぱい味に驚く。巌も土産代わりにいくつか購入していたようだ。
メンバー達はしばしおやつ感覚で焼きまんじゅうを楽しみつつ、今度はお肉をと店探しを始めるのだった。
作者:なちゅい |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年4月21日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 6
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