新種・虹色イタチ

作者:白鳥美鳥

●新種・虹色イタチ
「どこにいるかなあ? 凄く綺麗らしいから分かると思うんだけど」
 森の中を歩く加奈子。木々の枝を見上げたり、地面の方を見て見たり。
「虹色のイタチ。イタチって言えば毛皮の獲られたりするくらい毛並が綺麗なんだよね。……私は見て見たいだけで捕獲しようとは思ってないけど……普通のイタチより大きかったら、もっと綺麗なんだろうな。輝いてるのかな?」
 しかし、不安そうに加奈子はぽつりと零す。
「唯一心配なのは、イタチって結構好戦的なんだよね……。……珍しい毛並の子だから、自分が狩られないように、先に攻撃しようとして来るかも。見つからない様に気をつけなきゃ」
 そんな加奈子の前に第五の魔女・アウゲイアスが現る。そして、彼女の心臓を一突きした。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『興味』にとても興味があります」
 崩れ落ちる加奈子。そして、そこから虹色の毛皮を持った大きなイタチが現れたのだった。

●ヘリオライダーより
「イタチの仲間のミンクなんかは高級毛皮なんかで有名だよね」
 デュアル・サーペント(陽だまり猫のヘリオライダー・en0190)は、そう言ってから事件の概要を話し始めた。
「不思議な物事に強い『興味』を持って、実際に調査しようとしている人がドリームイーターに襲われて『興味』を奪われてしまう事件が起こってしまったみたいなんだ。『興味』を奪ったドリームイーターは既に姿を消しているみたいなんだけど、奪われた『興味』から生まれたドリームイーターが事件を起こそうとしている。被害が出る前に、みんなにドリームイーターを倒して欲しい。無事に倒す事が出来れば、『興味』を奪われてしまった人も目を覚ましてくれると思うよ」
 続いてデュアルは状況の説明に入った。
「今回のドリームイーターは、虹色をした毛並を持つイタチの姿をしている。大きさは1.5メートルくらいかな? 綺麗だけど、元々好戦的な性格をしているから気を付けてね。場所は昼間の森みたいだよ。それで、このドリームイーターなんだけど、『自分は何者?』みたいな問いかけをしてくるんだ。それで、正しく対応できないと、相手を殺してしまう。でもね、このドリームイーターは、自分の事を信じていたり、噂をしている人がいると、その人の方に引き寄せられる性質があるんだ。だから、それを利用すれば有利に戦えるんじゃないかな?」
 デュアルの話を聞いていたミーミア・リーン(笑顔のお菓子伝道師・en0094)は、目をきらきらさせている。
「虹色のイタチさん……きっと毛並みも綺麗で素敵なの。でも、綺麗なイタチさんが悪い事をするのは哀しいの。みんな、一緒に倒すの!」


参加者
リオ・フォクスター(煌めく星は刃となって・e00181)
眞月・戒李(ストレイダンス・e00383)
倉田・柚子(サキュバスアーマリー・e00552)
花筐・ユル(メロウマインド・e03772)
イーリィ・ファーヴェル(クロノステイシス・e05910)
ヴィンセント・ヴォルフ(銀灰の隠者・e11266)
葛之葉・咲耶(野に咲く藤の花のように・e32485)
天喰・雨生(雨渡り・e36450)

■リプレイ

●新種・虹色イタチ
 場所は森の中。ここに虹色の毛並みをしたドリームイーターが現れる筈だ。その為に、ケルベロス達は噂話を始めることにする。
 ヴィンセント・ヴォルフ(銀灰の隠者・e11266)は、イタチ自体見たことが無い。今回の為に図鑑で知識を得てきたが、虹色イタチを見る事には興味津々で、写真も撮る準備はばっちりだし、色々な気持ちでわくわくしている。
 天喰・雨生(雨渡り・e36450)も、図鑑以外でイタチを見るのは初めてだ。その毛並みが虹色をしているというのはわくわくする。正体はドリームイーターなのだけれど。
 倉田・柚子(サキュバスアーマリー・e00552)も、虹色イタチを見てみたい一人だ。大きさはともかく、毛並みはとても綺麗だろうから。実在しないのが少々残念だ。
「虹色に光るイタチなんて本当にいるのかな? もしもいるのだとしたら、それはとても美しいものなんだろうね。一度お目にかかりたいところだね」
 リオ・フォクスター(煌めく星は刃となって・e00181)が噂話を切り出した。
「虹色だなんて本当かしら?」
「ホントに七色なのかな? きっときらきらーってして綺麗だよね」
 そう相槌を打つのは、花筐・ユル(メロウマインド・e03772)と、イーリィ・ファーヴェル(クロノステイシス・e05910)。
「虹色のイタチってすごい目立ちそうだよね。それだけ大きかったら抱き心地もよさそうだし、見てみたいな」
「毛並みが虹色に発光しているのでしょうか。それとも光の回折や屈折で虹色に見えたり? 確認してみたいですね」
 眞月・戒李(ストレイダンス・e00383)の言葉に、柚子が言葉を重ねる。
「イタチの毛並みって綺麗だからぁ、陽の光を浴びたらきっとお空の虹より綺麗なものが見れるねぇ」
 葛之葉・咲耶(野に咲く藤の花のように・e32485)の言葉に、雨生も頷く。
「もしかしたら、動くと流星のようなのかもしれないね。結構大きいんだっけ? 僕と同じぐらいか……いやちょっとイタチにしてはだいぶ大きくない? うらやましいんだけど」
 低身長がコンプレックスの雨生は、現れるドリームイーターの大きさが自分と同じ位の大きさだと思いだし、少し羨ましく感じる。ちょっと嫉妬が混ざっているかもしれない。
「新種……って、毛並みだけなんだろうか。毛皮にもなるらしい……毛皮にしてみたい。いや、体長も、新種か。穴を掘るみたいだけど、洞窟ぐらい掘れてしまうのでは」
「……あの、ちょっと待っていただけます?」
 ヴィンセントの言葉に、綺麗な声が上から降ってきた。見上げると、確かに体長1.5メートルくらいの美しい虹色の毛並みのイタチがいる。そして、ふわっと跳び下りてきた。
「その……私の毛並みが美しいと褒めていただけるというのはとても嬉しいです。……まあ、確かに大きいかもしれませんし、目立つかもしれませんけれど……自慢の毛並みなのです」
 そう言ってから、ヴィンセントに泣きそうな顔をする。
「でもっ! やはり、人間は私達を毛皮にするとかおっしゃるのですね!? 私、大変悲しゅうございます……!」
 しかし、そんな虹色イタチに対してヴィンセントは、さっとカメラを構えた。
「凄く綺麗だよ。写真を撮らせて?」
 ぱしゃり。しっかりとカメラにその姿を収めた。その行動に、少し虹色イタチは気を良くしたようだ。毛皮の美しさではなく、生きている姿を収めてくれたのだから。
「それでは、皆様にお尋ねいたしますね? 私は何者だと思われますでしょうか?」
 丁寧に質問をしてくる虹色イタチ。
「ボクが何者かって? …そうだなあ、ボクはまだまだ駆け出しのケルベロスだよ。強くもない。だけど、だからって弱いわけではないよ。自分で言うのもなんだけど、ボクはやる時はやる男なんだ。それがボクだ。キミをここで倒し、少しでも平和が戻る様に、真剣に頑張らせてもらうね?」
 リオの返答に、虹色イタチは少し困った表情を見せた。
「……ええと、あなたが何者か、ではなく、私が何者か? とお尋ねしたのですが……。でも、私を倒すとおっしゃるのならば、こちらもお相手致しましょう」

●虹色イタチ型ドリームイーター
 虹色イタチは素早く身を動かし、木の幹等を使って更にスピードを出していく。そして、リオに向かって鋭い牙を向けて襲い掛かった。それを柚子とウイングキャットのカイロが共に庇う。
「大丈夫ですか?」
「うん、ありがとう」
 声をかける柚子にリオはお礼を伝える。その間に戒李が攻撃を仕掛けた。
(「イタチ……虹色のイタチ……おとぎ話の動物みたいな見た目してるね。これで大人しければ、もっといえばドリームイーターじゃなければよかったんだけど」)
 左足に蒼い炎を纏った蹴りを使って虹色イタチを狙うが、相手は跳びあがってその攻撃をかわす。素早いとの話だったが、本当に流れるような速さで動く虹色イタチ。とにかく、一撃を浴びせない事には始まらない。
「動きを捉えました。逃がしませんよ!」
 柚子の魔眼をリオ達と共有する。それによって攻撃の精度が上がるのだ。ヴィンセントもオウガ粒子を放ってそれを重ねていく。より、確実に当たるようにと。
「まぁ、本当に噂通りの綺麗な毛並ね……けれど、それだけ。目覚めたばかりで申し訳ないのだけれど、ヒトに害を為すのであれば見過ごせない。さぁ、夢の中へおかえり」
 ユルの煌めきを伴う重い蹴りが、虹色イタチに叩き込まれる。そしてシャーマンズゴーストの助手は、柚子に向かい祈りを捧げて回復に努めた。
「柚子、回復するよー。シュルスも手伝ってね」
 イーリィは柚子に向かってオーラによる癒しを齎し、テレビウムのシュルスも重ねて回復をしていく。その間を縫って、リオは虹色イタチに向かって蹴りを放つが、もう少しで当たる所を、素早く跳びはねられて逃げられてしまう。
「後、ちょっとって感じなんだけど……速いなあ」
「でも、捕まえるよ」
 雨生の放った御業が虹色イタチを捕らえて縛り上げた。
「柚子ちゃん、もう一回いくよぉ!」
 咲耶は、まだ傷の癒え切っていない柚子へとオーラによる回復を、ミーミアも続けて行う。シフォンは戒李達に清らかな風を送り込んで行った。
「ふふ、頑張りますね? でも、こちらもそう簡単にやられたりは致しませんよ?」
 虹色イタチはそう言うと、自らの虹色の光彩を柔らかに優しく、そして素早さも混ぜながら舞うように動く。そこに生れるのは優しい色彩の世界。その光景に、イーリィは飲み込まれそうになる。それを急いで柚子とカイロが合わせて庇った。
「そこだね」
 舞う虹色イタチを狙い、戒李の放つ攻性植物が蔓を伸ばして何とか捕らえる。その間に、ヴィンセントは攻撃が確実に当たる様にと、もう一度オウガ粒子を咲耶達に放った。
「柚子さん、しっかりしてね」
「柚子、さっきはありがとー!」
 ユルは、意識が朦朧としかけている柚子に桃色のオーラを放って意識を回復させる。そして、イーリィはドローンを展開させて守りを固め、助手、シュルス達も柚子の傷を癒す手伝いをしていった。
「今度こそ」
 リオはライトニングロッドを両手に構えると、虹色イタチに叩きつける。痛烈な電流が虹色イタチを襲った。
 雨生は第壱帖丗肆之節・塵核を使う。虹色イタチに向かって魔の波動が撃ち込まれた。
 咲耶、ミーミアはオーラを使って柚子の傷を癒していき、シフォンはユル達へと清らかなる風を送っていった。
「……流石に少々厳しいですね」
 虹色イタチが美しい色に染まっていく。七色の光りが包み込み、その傷を、美しい毛並みを取り戻していった。しかし、回復を図る行動で動きが止まっている所を狙い、戒李の放つ炎の龍が虹色イタチを飲み込む。そして、柚子とヴィンセントは爆発による支援でリオ達とユル達の攻撃力を高めていった。
 力を得たユルはオーラの弾丸を虹色イタチに放つ。そしてイーリィは雨生達へドローンを展開させて守りを高めていった。助手とシュルスは引き続き、柚子の回復を行っていく。
 リオと雨生はアイコンタクトを交わし、虹色イタチに対して足元を狙って、同時に重い蹴りを放った。咲耶は仲間を庇う事でしっかりとは癒えきれていない柚子に対してオーラによる回復を図る。ミーミアは黄金の光による力でヴィンセントの護りの力を高め、シフォンはもう一度、咲耶達に清らかなる風を送っていった。
「……流石に厳しいですね。しかし、負ける訳にはいきません……!」
 虹色イタチは、再び木々を使って加速していく。そして、一番の攻撃の要である戒李を狙って牙をむき跳びかかった。だが、そこを柚子が庇う。
「戒李さん、もう少しです」
「ありがとう。ボク、精一杯やるよ」
 柚子に礼を言うと、戒李は虹色イタチに向かって構える。
「藻掻け」
 左足に青い炎を纏わせ、蹴りつける。その炎は虹色イタチを絡め取った。
「すべてを閉ざせ」
 続き、ヴィンセントの呼びだした氷の精霊は虹色イタチを慈悲という名の氷により凍てつかせる。
「――ステキな夢を、魅せてあげる」
 呪力を纏った黒曜の荊の咎の棘をユルは放つ。それは虹色イタチの精神を縛り上げた。
「後の攻撃は任せたよ!」
 イーリィは、虹色イタチの弱点を狙い、強烈な一撃を放つ。
「輝く星よ、ボクに力を貸しておくれ」
 応援を受けたリオが放つのは、自らの周りに出現させた光の星。それを虹色イタチに向かって放った。
 その攻撃を受けた虹色イタチは、砕ける星と共に、虹色の輝きを辺り一面に降らせて消えていく。……それは、とても美しく幻想的な光景だった。

●戦いの終わりに
 戦いで傷ついた木々にヒールを施した後、近くにいる筈の加奈子を探す。
「み~つけたぁ」
 咲耶が倒れた加奈子を無事に見つけた。自分だけでは回復が足りないので、イーリィや柚子にも手伝って貰う。
「……ん……」
 気付いた加奈子に、皆は事の次第を伝える。
「あのねぇ、相手はイタチだったんだよぉ? イタチが危険って知ってるんだよねぇ? 会いに行くなんて危ない事をしちゃ駄目だからねぇ」
「は、はい、すいません……。これから気を付けます」
「うんうん、そうだよぉ」
 咲耶は加奈子に注意を促し、反省してくれた彼女を見て笑顔で頷く。……言動も声も優しいのだが、浮かべる笑顔が口端を歪めて怪しいのが残念なのだけれど。ちょっと怖いから。
「そうだ、写真なら撮ったんだ」
 虹色イタチの写真撮影をしていたヴィンセントが、思い出したように言う。
「本当ですか!?」
「一枚、あげようか。今後、危険な事はしないなら、な?」
「はい!」
 嬉しそうな加奈子に、ヴィンセントも皆も温かい気持ちになる。特にヴィンセントは写真を撮れて良かったと改めて思った。

「みんな、お疲れ様なのー!」
 春の日差しの中、加奈子を含め、皆は、ひなたぼっこをする。そこに、ミーミアが笑顔でお手製マフィンと紅茶に珈琲を持って皆に配り始めた。
「雪が溶けて、もう春が来たんだ。この前までまだ白かったのにねぇ」
 感慨深げに言うイーリィ。色鮮やかな季節は、わたしにはちょっと眩しすぎるかな、そんな事も思うけれど。
「イーリィちゃん、咲耶ちゃん、加奈子ちゃん、どうぞなの」
「ありがとう!」
「ありがとうねぇ」
 ミーミアはイーリィ、咲耶、加奈子にマフィンを渡す。
「雨生ちゃんもどうぞなの」
「ありがとう」
 紅茶とマフィンを受け取った雨生は、マフィンを一口食べて、ミーミアに微笑む。
「これ、美味しい」
「わあ、ありがとうなの!」
 それから、リオ、戒李、柚子の所に出かけていくミーミア。
「差し入れありがとう。嬉しいよ。ご馳走になるね」
「ありがとう」
「ミーミアさん、ありがとうございます」
 リオ、戒李、柚子も笑顔で受け取る。柚子は辛党なのだけれど、これはこれで嬉しいものだ。
「ユルちゃん、ヴィンセントちゃんもどうぞなの」
「ありがとう、ミーミアさん。これ、お礼にどうぞ」
「ありがとう。おはぎとか、食べる?」
 草花が好きなユルはミーミアに春の花を渡し、ヴィンセントは、おはぎを勧めてくれる。
「わあ、お花、ありがとうなの! それに、おはぎ……遠慮なく戴くの!」
 ユルとヴィンセントのお礼に、ミーミアは嬉しそうに笑った。
「春が来る度にシュルスが傍にいてくれてよかったって思うんだよ」
 マフィンを戴きながら、イーリィは保護者的な存在で、今も寄り添ってくれるシュルスに微笑みかける。それに、シュルスも答えるような仕草を返した。
「折角のいい天気、のんびり休憩も良いよね」
 柔らかな陽射しを浴びて戒李は微笑む。春の心地にのんびりとした一時を過ごす……そんな優しい時間だった。

作者:白鳥美鳥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年4月23日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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