復讐に染まる美貌の神

作者:天木一

 ぼろぼろで手入れのされていない神社。もう人が訪れなくなって長い年月になるのだろう。朽ちるに任せ風雨によって痛み放題となっていた。
「ここか、すげー美人が裏切られて復讐の神になったって噂の神社は」
 町外れの辺鄙な場所にある神社の前に止まった車から一人の男が現れる。
「お願いします神様。俺にクリスマスとホワイトデーに貢がせるだけ貢がせて振った女をぶっ殺してください!」
 神社の前で男が必死に祈りを捧げる。
「あんのアマ、俺以外にも男が居たんです! 俺はキープだったとほざきやがったんですよ! プレゼントも全部オークションで売っちまってたんです!」
 血を吐くような男の嘆きが誰もいない廃墟に響く。
「はは……こんな願い聞いてくれる神様なんている訳ねぇよな……でも神頼みくらいしねぇと、この胸のもやもやが晴れねぇっ」
 怒りなのか悲しみなのか、目を潤ませた男は神社に手を合わせる。
「はあ、こうやって愚痴を言うスポットなのかなここは、まあ口に出したらちょっとは気が晴れたか。きっとここの神様も俺みたいに酷い目にあったんだろうな」
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『興味』にとても興味があります」
 男が溜息をついていると、突然後ろから女の声が聴こえたと思うと背中を貫き胸から鍵が飛び出す。
「あ?」
 驚いた顔で男は意識を失い眠りにつくと、鍵を引き抜いた女は元から存在しなかったように姿を消す。
 その倒れた男の傍に新たな人影が現れた。均整のとれた体に白い衣を纏っている。それは男が見れば女と思い、女が見れば男と思う。そんな美貌の神々しい姿をしていた。
「滅びよ、男も女も、裏切り者には死を」
 中性的な美しい声が響く、その冷たい視線には怨念が籠められていた。

「愛は人を狂わせると言いますが、狂った神の姿をしたドリームイーターが現れるようです」
 アレクセイ・ディルクルム(狂愛エトワール・e01772)がケルベロス達に新たな事件を告げる。
「第五の魔女・アウゲイアスが男性から奪った『興味』から、新たなドリームイーターを生み出し人を襲わせるようです」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が事件の詳細な説明を行う。
「このままでは多くの被害が出てしまいます。その前に皆さんの力でドリームイーターを撃破し、眠ったままの男性を目覚めさせてほしいのです」
 今なら敵が一般人を襲う前に遭遇でき、敵を倒せば男性を目覚めさせる事も出来る。
「ドリームイーターは性別の無い美しい神を模した姿をしています。その美貌は人を惑わす能力を持ってるので気を付けてください」
 人を惑わし同士討ちさせる能力を持っている。対策しておかなければ思わぬ痛手を負うだろう。
「現れるのは奈良にあるもう使われていない廃墟となった神社です。周辺には民家も無く人を巻き込む心配はないでしょう」
 山に近い場所で、周辺を見渡しても畑くらいしかない場所だ。神社の前で男性は倒れ、その隣にドリームイーターが居る。
「本来なら愚痴を言うだけで済む話しでしたが、ドリームイーターが現れてしまった以上は撃破しなくては被害が出てしまいます。男性を助ける為にもよろしくお願いします」
 セリカが一礼し、出発準備へと取り掛かる。
「人を惑わす美貌ですか、既に愛する姫の美しさに囚われている私には通用しないことを教えてあげましょう」
 愛しい人を想いうっとりするアレクセイを置いて、ケルベロス達は戦いの準備を始めるのだった。


参加者
ロゼ・アウランジェ(時謡いの薔薇姫・e00275)
ギルボーク・ジユーシア(十ー聖天使姫守護騎士ー十・e00474)
ロナ・レグニス(微睡む宝石姫・e00513)
辰・麟太郎(臥煙斎・e02039)
ルージュ・ディケイ(朽紅のルージュ・e04993)
左潟・十郎(風落ちパーシモン・e25634)
レテ・ナイアド(善悪の彼岸・e26787)
ルカ・フルミネ(レプリカントの刀剣士・e29392)

■リプレイ

●廃神社
 町外れの朽ちるがままにされた廃神社の前で、ケルベロス達は立ち止まる。
「アレクセイの見つけた敵、私が代わりにしっかり倒すの!」
 今回来られなかった大切な人を想い、ロゼ・アウランジェ(時謡いの薔薇姫・e00275)はいつにも増してやる気に満ちていた。
「こい、って……すてき、なのに。どうして……いや、って、おもうのかな……」
 好きになるのは胸が温かくなるような気持ちなのにと、ロナ・レグニス(微睡む宝石姫・e00513)は不思議に思う。
「……やっぱり、つらいことも……ある、から……?」
 それを上手く想像出来ずに眉を寄せる。
「そもそも……裏切りとは何でしょうか」
 ギルボーク・ジユーシア(十ー聖天使姫守護騎士ー十・e00474)は首を傾げる。
「貢ぐとは言いますが、それは本当に相手に好意を持ってもらえる行為なのでしょうか」
 答えは出ないが被害が出るなら放ってはおけないと意識を切り替えた。
「復讐したい気持ちは解るが、殺すのはやり過ぎだろ」
 物騒な願い事だと左潟・十郎(風落ちパーシモン・e25634)は呆れる。
「相手の不実を見抜けなかった自分にも非はあるだろうに、これだから恋愛は面倒臭い……」
 そんな面倒事に敵が関わり更に面倒になったと深い息を吐いた。
「ま、腹いせに女に手ぇ挙げるクズ野郎なら放っとくんだがな。神サン気遣う度量があんなら、救い甲斐があるってモンだ」
 神頼みや愚痴くらいは可愛いものだと辰・麟太郎(臥煙斎・e02039)は古びた神社を見やる。
「どうにも報われない依頼だ。でも、これ以上被害が出ないようにするためにもドリームイーターは倒さないと」
 男性の気持ちを思うとやりきれないと、ルージュ・ディケイ(朽紅のルージュ・e04993)は苦い顔を見せる。
「美しい花には棘がある、とはよく言ったもので。ですが美しくとも、周りに害を為すのでは摘み取る以外ありませんから」
 境内に入ったレテ・ナイアド(善悪の彼岸・e26787)は倒れた男性とその近くに立つ白い衣を纏った人物を見つける。その人物はまるで彫像が動き出したような見目麗しい姿をしていた。
「愚痴聞いてくれるだけなら良かったんだけど、悪さされちゃうのはちょーっと困るかなー? まぁ今回は戦闘に集中出来そうだし? ちゃちゃっと終わらせましょうかね!」
 周囲に人気が無いのを確認したルカ・フルミネ(レプリカントの刀剣士・e29392)は手早く終わらせようと敵に向かって踏み出した。

●美貌の偽神
「愚かな人間よ、自ら滅びにやってきたか」
 偽の神となったドリームイーターが聴く者を虜にする甘い声で語りかけ、顔がケルベロス達に向けられる。愁いを帯びた視線が絡みつき見る者の庇護欲を刺激する。
「綺麗……だけれど、私の彼の方がもっと綺麗で優しくてカッコイイですから! 惑わされはしませんよ!」
 思わず見惚れそうになったロゼは頭を振りアレクセイの事を思い出す。そして仲間を守るように紙兵を撒いた。
「どれだけ美しかろうと僕の心を惑わすことはできませんが、その技は厄介ですね」
 胸を張って宣言するギルボークはその自信を現すような強いオーラを纏い、美貌の放つ魔力に耐えた。
「へぇ、こいつが噂の神サンか、何だか弱々しいねぇ」
 出会い頭に麟太郎がアームドフォートをぶっ放した。爆発を受けて敵の体が吹き飛ぶ。
「見た目の美しさなんぞどうでも良い、価値があるのは心とか、目に見えない部分だろうが……とは言え、催眠は厄介だな」
 相手の美しさには一顧だにせず十郎は腕を伸ばす。すると月の如く光る隼が飛び立ち、旋回すると光となって着地した敵を貫き聴覚を奪い平衡感覚を失わせた。
「望んで生み出された訳ではないのだろうけど、人を襲うというのならここで倒す!」
 よろめく敵に向かって跳躍したルージュは回し蹴りを浴びせて側頭部を打ち抜き、更に回転して着地しながら後ろ回し蹴りで脇腹を抉った。
「ここなら大丈夫です。前は頼みましたよ、せんせい」
 その間に男性を離れた場所に引きずったレテはウイングキャットのせんせいとハイタッチする。ふんすと鼻を鳴らしたせんせいが任せろとばかりに翼を動かし清浄な風を仲間に送り、レテも続いて剣を地面に突き刺し、光が描いた星座の力を仲間に与えた。
「拝聴せよ愚かな人よ。我は神なり。愛を憎む悪神なり!」
 良く通る声が響き、聴くだけでふらりと酔うような感覚に陥る。
「いい、なぁ……りょうおもい、すてき……!」
 そんな相手に向かって木の葉を宙に舞わせて障壁を作ったロナは、恋の話で気を引きつける。
「我の前で恋を語るか痴れ者め」
 偽神の憎しみの籠った目がロナを射抜く。するとロナの体が石へと変化し始めた。
「私ってば恋愛ってよく分からんしー。そんなんなくてもホラ、武器持って向き合えば、それだけでドキドキしてくるじゃん?」
 鋼を纏った拳を敵に向け、ルカはオウガ粒子を放出して仲間を癒し超感覚に目覚めさせる。
「愛と憎しみは紙一重とはよく言ったものです。甘く苦い恋物語……愛を踏み躙られた痛みは重く深いのでしょう」
 その辛さを想いロゼは目を伏せる。
「受け止め乗り越えるべきその想い、奪わせはしません!」
 心を好きにはさせないと天使の如く美しい声で愛を籠めて歌い出す。金の髪に咲く七彩の薔薇が咲き乱れ聴く者の心に力と勇気を与える。
「毎度ながら、魔女ってのは大層勤勉なこったぜ」
 どこにでも現れて騒動の種を残す魔女に悪態を吐きつつ、ライフルを構えた麟太郎は光線で足を撃ち抜き凍結させる。
「美貌が武器なら、その顔を潰せば効果は無くなるんじゃないか」
 駆け寄った十郎はバールをフルスイングしボールを打つように顔を吹っ飛ばした。
「おのれ、人風情が……神の顔を傷つけるとは」
 偽神は手で顔を覆うが、そこから覗く美貌に陰りは無く人々を惹きつける。視線を塞ぐように飛び出したテレビウムのへメラが攻撃を受けて、ハートの飛び交う動画を垂れ流す。
「不思議ですか? そう、なぜボクを惑わすことができないか。ボクの心はすでにヒメちゃんに向けられているから……!」
 同じく仲間の前に立って庇うギルボークが自信満々に敵を見て告げる。その強い想いが魅了の力を撥ね退けた。
「わたし、まだかたおもい……だけど、すきなひと……いる、よ」
 好きな人を思い浮かべながらロナはカードを掲げ、召喚した氷の騎士が槍で敵を貫く。
「男か女か分かんないけどさ、こいつはそんなん関係ないからね! シビれろっ!」
 接近したルカが手を向けると、指先が開放し電撃が放出される。感電した敵の体が痙攣した。
「見るだけで魅了されるか、神というより魔性の性だね」
 巨大なハンマーを担いだルージュは、噴射で加速して一気に間合いを詰めハンマーを振り抜く。巨大な鉄塊が上半身を捉え叩き伏せた。
「人を惑わす美貌だなんて、昔から禍しか齎さないですよねえ」
 小さく嘆息したレテは歌を唄い始め、全てを許容する優しい歌詞が聴いた者の心を優しく癒す。
「滅びよ、愛もろとも滅びゆけ」
 その歌を打ち消すように心を搔き乱す声が響く。
「無駄です! ボクの心はヒメちゃんしか奪えません!」
 ギルボークは刀を振るって敵の魔力に斬り込み、返す刃で逆袈裟に敵の体を斬りつけた。だが偽神はその耳元で滅びろと囁く。
「その甘ったるい声を止めろ」
 不快そうに十郎が隼を飛ばし敵の顔を貫くと、鳴き声が脳で反響し神経を麻痺させ口を止めた。
「長期戦は、不利になりかねません! 相手のペースに巻き込まれる前に、終わらせましょう!」
 頭を押さえふらつくところへ、妖精のように軽やかに跳んだロゼは宙を舞うように蹴りを浴びせる。
「……ん、がんばる、ね……!」
 こくりと頷いたロナが吹雪を起こして敵の全身を凍り付かせていく。
「ま、こんなもんでも兄ちゃんにゃ良い憂さ晴らしになるかもしれねぇな」
 ハプニングも無事に終われば気分転換にはなると、麟太郎はライフルから放つ光線で顔を狙う。咄嗟に敵は腕で防ぎ美しい肌に焼き目がつく。
「不敬な輩よ、その目に神の尊き姿を焼きつけよ」
 後光が差すようにその美貌が美しく輝く。
「美しいものは嫌いじゃないんですけどね」
 それが人の害になるならば話は別だと、レテは歌を続けて仲間から魅了の効果を追い払う。
「物理的な攻撃じゃないというのは戦いにくいものだね」
「まだお昼だけど、お構いなしで!」
 目を合わさぬように回り込んだルージュは大きな鎌を薙ぎ胴を斬りつけ、反対側から月を描くようにルカの振るう刀は弧を描いて手足を斬り裂いた。

●恋とか愛とか
「神に逆らう愚か者め、汝らも知るであろう。いずれ愛しい者に裏切られ、愛憎に狂うのだ」
 偽神の言葉は呪いの刃となって心を抉りケルベロス達の精神を乱す。
「そんな人を脅すような真似、ホンマもんの神サンが見てたらどう思うかねぇ」
 麟太郎は鞘を一振りさせて祝いの風を起こし、春風が仲間達に掛かった魔力を洗い流す。それと同時にせんせいも一緒に風を送り仲間に掛かった呪いを払う。
「私がもし彼にそんな事をされたら、死なない程度にボコボコにします!」
 こんな風にとロゼは星の煌きのように光を反射する鋼を纏い顔を何度も変形するまで殴りつける。
「でも想像はできないかな、彼は私を本当に心から……いきすぎて周りが引くくらい、愛してくれてます」
 敵を吹っ飛ばしながらロゼはぽっと頬を赤らめる。
「つらいことも、いっぱいある……けど、やっぱり、すきだから……」
 好きという気持ちの強さを示すように、ロナは大きなハンマーを叩きつけた。
「惚気話というのは聞いていてむずがゆくなるな。早く終わらせよう」
 少し顔を引きつらせた十郎はバールを投げ敵の腹に突き刺した。
「愛など儚き幻。汝らの愛に災いを」
 偽神が愁いを帯びた顔で見る者を惑わす。
「ただ顔が綺麗なだけで誰でも言う通りになると思ったら大間違いです!」
 仲間を庇うギルボークはオーラを高めて魅了の影響を弾き飛ばす。
「美しすぎるというのも問題ですね。ですが誰もがそれに惹かれるとは思わないことです」
 レテが対抗するように美しい声で歌い敵の力を弱める。へメラも皆を元気にするような映像を流して治療を行った。
「その力が一般人に向けられたらと思うとぞっとするね、絶対にここで止めるよ!」
 スライディングするようにルージュが滑り込み足を刈り、敵に膝をつかせる。
「ほぉれ、可愛そうだけど身も心もスタズタよー」
 そこへルカが刀を振るい袈裟に斬りつけた。
「今度はこちらが目を釘付けにしてあげますよ」
 刀を鞘に納めたギルボークが間合いを詰め一閃する。すると剣閃が幾重にも走り敵の全身から鮮血が桜の花びらのように舞い散った。
「おのれ……!」
 怒りの籠った視線がギルボークに向けられる。
「神サンよぅ、その程度で怒るなんざ、ちいと狭量すぎやしねぇか」
 麟太郎がアームドフォートから光線を放ち、その顔を撃ち抜いた。
「ドキドキした? もっと刺激的にドキドキビリビリさせてあげる!」
 仰け反ったところへ、笑みを浮かべたルカが近づき指先から電撃を放つ。
「恋愛は感情のままに人を惑わす。胸の高鳴りも地獄に落とす為の序曲に過ぎぬ」
 偽神がルカを睨み石へと変えていく。
「……うん、……こい、って……たのしい、よね……」
 恋を肯定したロナが指輪を媒介に弓を生み出し矢を射る。放たれた一条の光は正確に胸の中心を射抜いた。
「悔い改めよ。謝肉祭を終えたのならば」
 レテが祝詞を謳うと、荘厳な声は力を持ち敵に圧力を与えその場に縛り付けた。
「神様はそんな風に人を傷つける存在じゃない、人を守るものだよ」
 ルージュの右目の地獄の炎が激しく燃え盛る。敵の視線がその姿を捉えるより一瞬速くステップを踏み死角へと逃れ、背後に回り込むと薔薇を纏う大鎌を振り抜き、背中に大きな傷を刻む。
「神の出番はない。ここは人の世界だ」
 敵の正面に飛び込んだ十郎は、両手のバールに雷を宿しXに斬りつけた。
「汝ら呪われるがいい。恋は嫉妬に、愛は裏切りに、心を切り裂く」
 胸から血を流し深手を負った偽神は最後の力を振り絞り、最後の呪いを残そうとする。
「私は幸せ者、勿論私も彼を裏切る事はしません」
 ロゼはうっとりと想い人に夢中になり敵の美貌を意識の外に追い出す。
「だって彼は、私の大好きな大好きな、唯一無二の愛する騎士様なのです」
 だからあなたの攻撃は効かないと、その顔を踏みにじるように蹴りつけた。顔を潰され無貌となった偽神は虚ろとなり消え去った。

●前向きに
「はっ!? どこだ? 確か神頼みしに神社に来て……」
 目覚めた男性にケルベロス達が事情を告げる。
「そんな事が……迷惑かけてすんません!」
 申し訳なさそうに男性は頭を下げる。
「裏切られたくなければ見る目を養うか、自分自身の価値を上げることだ」
 失敗は次への糧にすればいいと十郎が諭す。
「少なくとも復讐なんてのを神様に頼むのは間違えだったと思うよ。どうせならもっと素敵な女性に巡り合わせて貰う方がずっといい」
「きっとそれは運命ではなかったの、でもいつか本当の愛を掴めるはず。だから前を向いて、より魅力的になって彼女を見返して下さい」
 どうせなら前向きな願い事が良いとルージュが、そして運命の相手がきっと見つかるとロゼが続けて励ます。
「贈り物を大事にしてくれる彼女を見つけて見返してやります!」
 気持ちが少しは上向きになったのか男性が立ち上がる。
「次は棘の無い花を探すといいですよ」
 世の中には色々な花があるものだとレテがアドバイスする。せんせいもその通りだとこくこくと頷いた。
「いいじゃないですか……プレゼントは気持ちが大事。モノより思い出!」
 ギルボークが自らの胸に手を置く。
「贈るという行為に込められた想いが大事なのであって、究極的にはその後の扱いはどうでもいいのです。大事にしてくれたほうが嬉しいけど!」
 相手の幸せを願う事が一番大事だと語る。
「そうだよな! 気持ちが大事だよな! 次は真剣に結婚までお付き合いできる相手を探します!」
「およめさん、いいな、いいな……! ウエディングドレス、すてき……。わたしも、きてみたい……」
 夢見るようにロナは自分が好きな人の隣に立つ姿を想像した。
「ま、旨いモン食って寝て、それを十も繰り返せば多少は気が紛れんだろ」
 鷹揚な態度で麟太郎が肩を叩き、細かい事など笑って吹き飛ばしまうような笑みを見せた。
「もっとビリビリ……じゃないや、ドキドキする相手と出会えるよ!」
 ルカも強く背中を叩いて気合を注入した。
「ありがとうございました! もっかい頑張れる気がします!」
 深く頭を下げ、前向きな気持ちになった男性が去っていく。心も体も救えた事に満足感を覚え、ケルベロスもまた神社を後にするのだった。

作者:天木一 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年4月13日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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