●純喫茶・四月一日
「おまちどおさま、特盛りナポリたんでございますー」
自慢の一品『特盛りナポリたん』をテーブルに置いて、にっこり微笑む男。胸元には『店長:ウソッポ』と書かれた名札をつけている。
ただし、食べる客は誰もいない。ひと昔前の純喫茶風の店内にいるのは店長のみ。
店は既に潰れているのだ。問題はこの『ナポリたん』にあるようだ。見れば、テーブルの上に置かれた皿は500円玉くらいのサイズしかない。なんか、食玩みたいなサイズのスパゲッティなのである。確かに盛りは山盛りだが、どう考えても大人の一口分しかない。
「はあ……この、どんな大きさが来るかわからない、っていう嘘というかフールなジョークで、あんなに怒るお客さんが多いなんてな……大きいサイズの時は喜ばれたりもしたんだけどな……」
店長は深いため息をついた。みんなが笑ってくれる、そんな店を目指したつもりだったのに。
「シャレですよシャレ! ジョークですジョーク! 誰も傷つかない嘘ならいいじゃないですかぁ人生にはシャレが大事でしょーー?」
天井を仰いで、ウソッポ店長が叫んだ、その瞬間。
グサリ、鍵が店長の左胸に突き刺さる。しかしそこから血は流れない。傷すらついていない。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたのこの『後悔』……奪わせてもらいましょう」
そう呟いたのは第十の魔女・ゲリュオン。ウソッポ店長が意識を失い床に倒れたのとほぼ同時、店長と似た体格の、ちょっと大柄なドリームイーターが誕生した。背格好はよく似ているが、如何せん胸元は不穏なモザイクで覆われている。
『シャレデすよー、嘘いいじゃないデすかー』
ドリームイーター店長は、ウソッポ店長の名札を取り上げると自分のエプロンにつけ、倒れている本物の店長を裏の部屋に隠すと客の勧誘を始めた。店の前を通りかかる客を強引に店内に引き込むと、飲み物のオーダーを取り、そして。
『お待たせしましたーあ。クリームソーダデございますー』
「な、何だぁ?! このばかでけえクリームソーダ!」
バケツサイズのクリームソーダにさすがに客がドン引きすると。
『シャレデすよー、いいじゃないデすかー』
そう言いながら、偽店長は客の口にそのバケツサイズのジョッキごと無理矢理クリームソーダを捩じ込んだのだった。
●四月バカ喫茶
「またまたドリームイーターが、妙な店を……あ、いやちょっと個性的な喫茶店がね、襲われたんだ。正確には、もう潰れちゃった店なんだけど」
安齋・光弦が説明するのは、ドリームイーター事件。第十の魔女ゲリュオンは相変わらず個性的な店を潰してしまった店長の『後悔』を奪い、それを元にドリームイーターを生み出して事件を起こしている。
「いつでも一年中四月馬鹿な嘘つき喫茶……探してみたら本当にありマシタ」
発見した本人のはずのクローチェ・テンナンバー(キープアライブ・e00890)ですら、ちょっと驚いている様子だった。
「この喫茶店、メニューの内容は普通なんだ。コーヒーとかケーキとかピザとかホットケーキとか、名物は『特盛りナポリたん』っていうスパゲッティだったみたいだね。問題はサイズ。どうも全メニューに極小~ヘビー級まで12段階もサイズがあって、なんとオーダーを取ってから店長がダイスを振って勝手にサイズを決めるってシステムだったらしい」
「値段はどのサイズでも同じだったらしいデース。そりゃお客サンも怒りマス……」
クローチェが何となく遠い目をして言った。
「まあ、店長さんなりのアイデアだったんだろうけど。で、彼の後悔から生まれたドリームイーターが今現在、この喫茶をひとりで営業しようとしてる。そこで、だ」
店は京都のとある観光地近くにあり、今は近づく人もいない。店にいる敵はドリームイーター1体だけで、偽店長として営業しようとしている。
「君たちがお客さんとしてこの喫茶店に行って、この嘘つき喫茶店の接客を心から楽しんであげると、なんと敵は満足して弱体化するんだ。あと、満足してから戦って撃破してやれば、後悔を奪われた本物の店長さんが目を覚ましたときに、ちょっと前向きな気持ちになれるみたい」
光弦がそう言ってケルベロスたちを見まわした。クローチェが軽く頷いて付け足した。
「嘘つきハ、だめデス。でもシャレなら楽しんであげるのもいいかもデスネ!」
参加者 | |
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赤星・緋色(小学生ご当地ヒーロー・e03584) |
神寅・竜愛(影と踊る情欲・e09189) |
クリスティーネ・コルネリウス(偉大な祖母の名を継ぐ者・e13416) |
プルトーネ・アルマース(夢見る金魚・e27908) |
猫夜敷・愛楽礼(吼える詩声・e31454) |
妹口・琉華(お兄ちゃん属性の男の娘・e32808) |
八点鐘・あこ(ウェアライダーのミュージックファイター・e36004) |
キアラ・エスタリン(包み込む蒼の光・e36085) |
●純喫茶・四月一日へようこそ
「良い場所、だね」
辿り着いた店を一目見るなり、神寅・竜愛(影と踊る情欲・e09189)がそう言った。店の良し悪しは、すぐピンとくる。待ちきれない、とばかりに八点鐘・あこ(ウェアライダーのミュージックファイター・e36004)がドアを開けると、昔ながらのドアベルの音がケルベロスたちを出迎えた。
「わあ! 期待通りです、見て下さい!」
店内は営業していないにも関わらず、綺麗に掃除されていた。木製のテーブルに椅子は赤いベルベット張り。ステンドグラスのランプシェードからはあたたかみのあるオレンジのライト。
「素敵なお店ですよ!」
はしゃぐあこの足元で、ウイングキャットのベルも早くもあちこちのテーブルの下を探検しようとしている。
「本当ですね~、とっても居心地よさそうです~」
次いで入店したクリスティーネ・コルネリウス(偉大な祖母の名を継ぐ者・e13416)も、中を見回しておっとりとそう言った。オルトロスのオっさんは行儀よくクリスティーネの傍に控えている。
内装を見回しながら、至って真面目な顔で考え込んでいるのは、猫夜敷・愛楽礼(吼える詩声・e31454)である。
(「お店の内容を楽しめば、敵は弱体化するはずだから……」)
「……って、弱体化とかどうとか考えてたら、しっかり楽しめませんね! さあ、皆で一緒に座れるように、テーブル動かしましょうか!」
「どんな大きさの料理が出てくるか、楽しみだね」
妹口・琉華(お兄ちゃん属性の男の娘・e32808)がテーブル運びを手伝いながら楽しげにそう答えた時、オルトロスのぴぃが低い声を出した。
「どうかしたの? ぴぃ」
琉華が顔を上げ、ぴぃの視線の先を追うと、そこには店長……正確には店長型のドリームイーターが立っていた。
「あ、店長さんですね」
キアラ・エスタリン(包み込む蒼の光・e36085)がにこやかに、落ち着いた様子で客として接した。今回は皆で、この『嘘つき喫茶のサービス』を全力で楽しもう! という作戦で話が纏まっているのだ。
「えーと8人と、あと6匹、かな? です。お水とメニューお願いしますね」
どうで出るか、と一瞬緊張して見守るケルベロスたち。だが敵は今は店長になりきっているようで、黙って頷くとサーヴァント含めた数の水を用意し、メニューを4冊持ってきた。
「さーて、色んな大きさが揃ってくれるといいな!」
デジタル一眼カメラ持参で張り切っている赤星・緋色(小学生ご当地ヒーロー・e03584)が、早速席につくのに倣い、皆でテーブルをぐるりと囲む形で座った。
「あ、私はアマトリチャーナとオレンジジュース、ドルチェはおすすめの奴ね!」
「何にしようかなー。甘いのがいいかなあ」
プルトーネ・アルマース(夢見る金魚・e27908)がワクワクしながらメニューを開くと、テレビウムのいちまるもテーブルの上に顔を出して覗き込む。
「あった! あこはホットケーキと紅茶にするのです!」
特大サイズも恐れない、とあこがホットケーキを注文。琉華もちょっとメニューを眺めてから即決した。
「ボクはオムライスにするよ」
「ちょっと待って下さいね……うーん、そうですねー……やっぱり目玉メニューって話ですし、特盛りナポリたんでしょうか? あ、でもこっちのサンドイッチも……あ、飲み物は……た、炭酸じゃないもので!」
真剣過ぎるほどに真剣にメニューを選ぶ愛楽礼を、オルトロスの火無が心なしか心配そうに見守っている。同じく生真面目な性格のキアラがそっと気を遣う。
「では、私が特盛りナポリたんを頼んでみましょう。猫夜敷さんはサンドイッチを」
その隣ではクリスティーネがとてもマイペース。
「ん~、何にしましょうね~オっさん? 迷います~。パフェ、っていうのも惹かれますね~」
皆がワイワイと口にする注文を、店長はきっちりメモしているようだ。竜愛は内装やメニューをじっくり眺めている。
ということで注文はスパゲッティが特盛りナポリたんとアマトリチャーナ、オムライス、ホットケーキ、サンドイッチ、そしてチョコレートパフェと本日のおすすめドルチェ。飲み物はオレンジジュース、紅茶、ミックスジュース、クリームソーダというラインナップになった。
『……ありがとウゴざいます。少々、お待ち下さいマセ』
店長型ドリームイーターは丁寧に注文のメモを確認し、厨房へと引っ込んでいった。
「さあこーい、準備は出来てるよ!」
緋色がカメラを構えて笑顔を見せる。すると、コロコロ……と何か固いものが転がる音がする。好奇心を煽られたあことプルトーネがそっと席を立って、様子を窺う。
「コロコロいってるのです!」
「ふふ、大人なのに一生懸命サイコロ振ってるなんてちょっと面白いね」
世間にはたまにいるのである。ダイスを大真面目に振るいい大人が……。
さておき、どうやらサイズが決まったらしく、そこからは調理が始まった。
「……かなり手慣れた感じがするわね。適当なインスタント食品を出すつもりはないようね」
竜愛がそう分析するうちに、いいにおいが漂ってくる。そして。
『お待たせいタシました。お先に、特盛りナポリたんでございマス』
どかーん。ダイス目がどうやら火を噴いていたようである。直径70センチはあろうという大皿に、これでもか、とタテに盛られた四月一日名物特製ナポリたん降臨!
『そしてこちらが、アマトリチャーナでございまス』
チーン。出た、これが多くの客を失望させてきた極小食玩サイズメニューである。
皿は500円玉くらいの大きさで、麺も自作なのかめちゃくちゃ細い。短冊切り、と呼ぶには細かすぎるベーコンもちゃんと乗っている。
「何かすごいの来た! 撮影は任せろー」
早速一枚、緋色がスプーンと並べて撮った写真データをスマホ経由でSNSにアップする。
これが噂のサイズムチャクチャ嘘つきメニュー。だが、ケルベロスたちは逆にこれを期待して来店したので、もちろん誰も怒らないし嘆かない。
「やっぱりボク、このお店好きかも。すごく可愛いねこれ」
クスクス笑いながら琉華が極小パスタを眺め、緋色はまだシャッターを切りまくる。
「ネタだってわかってれば面白いよね! すごい、どうやって作ったのかなこれ」
「大きかったり小さかったりで面白い。良い資料になるね」
竜愛も素直に感心している。
「み……皆さんで、頂きましょう?」
あまりの大きさに絶句していたキアラが我に返って、フォークを皆に回す。受け取った愛楽礼も山の麓で真顔である。
「ぐぅ……だ、出されたものを残すわけには……火無、頑張って下さい」
本来なら小皿に取り分けたいところだが、テーブルにそんな余裕がなさそうなのでそのまま皆でナポリ山の攻略に入る。
「大盛メニューは名古屋にある喫茶の攻略法を参考にするのです!」
あこが待ってましたとばかりにナポリタンを巻き取り、口に運ぶ。そこに行くことを登山と呼び、ギブアップは遭難と呼ばれる……大盛りと珍メニューで有名な店にやたら詳しいあこ。
「美味しいです!」
無邪気に笑うあこにつられるように琉華も微笑み、フォークを伸ばす。
「じゃあボクも頂くね……うん、美味しいや」
以下、いい大人が真剣にダイスを振って決まった結果。
オムライス→特盛り、ホットケーキ→特大、サンドイッチ→特盛り、チョコレートパフェ→シェフの気まぐれ大盛り、本日のおすすめドルチェのコーヒーゼリー→ちょこっと小、オレンジジュース→特大、紅茶→シェフの気まぐれ大盛り、ミックスジュース→特盛り、クリームソーダ→やや普通……ダイスの結果なので恨まないで欲しい。
「これもすごく大きいね。みんなで食べよう? ぴぃもね」
これまた山のようなオムライスを前に、琉華がスプーンを手にする。続くホットケーキもまるで座布団、あこが四苦八苦して切り分ける。チョコレートパフェに至ってはシェフが気まぐれに大盛ったので、ホテルのロビーとかの花瓶みたいになっている。
「ちょっ、サンドイッチって沢山くるんじゃなくて、一個がこんなに大きいんですか?! こんなサンドイッチパン、一体どこで……まさかパンから手作り?!」
自分の顔の2倍くらいあるサンドイッチを手に、愛楽礼が絶叫。
「よく見たらメニューの一番後ろにものすごく小さい字で書いてあるわ……当店のメニューは極小Max、極小、小、ちょこっと小、普通、やや普通、大盛り、特大、シェフの気まぐれ大盛り、特盛り、特大盛りもう無理の12種類がランダムで出ます、か」
竜愛がなるほど、とテーブルに並んだ料理と見比べ、スマホで写真を撮った。
「何だか、自分たちがちっちゃくなったみたいな気分になるね」
「並ぶと大きさがよくわかるよ」
鍋か、というサイズのティーカップを目の前に、プルトーネも笑っている。ミニチュアサイズ仕様で持ってきたレンズを外して、緋色が特盛り祭りのスナップを撮り始めた。
楽しげな皆の様子に、店長ドリームイーターに変化が訪れた。
『……良かった。お客さんが楽しんでくれている。嬉しい、ものすごく……僕のジョークの感覚はやはり間違ッテなかったんだワハハ!』
承認欲求を満たされたドリームイーターのモザイクが全身から溢れだす。戦闘の始まる気配を察知したキアラと愛楽礼が、テーブルを脇に避けた。食べ物を粗末にしたらいけないのだ。
「残りは戦いの後で食べちゃってくださいねオッさん~、行きますよ~」
おっとり型のクリスティーネだが、戦闘時には頼もしい。まずは敵の動きを止めるべく、駆け寄って足元を払う。どうやら遠距離から正確に狙ってくるタイプの敵のようだが、今は満足したせいかフニャフニャして見える。では遠慮なく、と同じく遠距離から構えていた愛楽礼が、ドリームイーターに向かって跳び、足を高く振り上げた。
「ここは断頭台、その首頂きます!」
ズガァ、とモザイク化した脳天に強烈な踵落とし! 火無が皆の盾となる位置で走り回る間を縫って、プルトーネが氷の弾丸を叩きこむ。いちまるも愛用の凶器を手に、店長型ドリームイーターに襲いかかる。
「ふははははー。人に危害を加えようとするドリームイータは私達が退治しちゃうよ! いちげきひっさーつ!」
緋色がシャキーン! と鎌を振りかぶり、大きくジャンプ! 時が人を結ぶまちこと川越市で抽出されたグラビティチェインが鎌に宿り、そのまま投げつけられる!
『ぐあぁあー!』
ドカーン! 何やかんやで起きる大爆発。だが、敵もさるもの。爆発の中から立ち直ったドリームイーターが、こんなことを言ってくる。
『いやぁー昨日うちのオフクロ死んだんっすよ』
「えっ、オフクロってお母さまですか? それは……ご愁傷様です」
滅茶苦茶間に受けてしまったキアラに向かってモザイクが飛ぶ。飛び込んだオっさんがそれを横腹に受け止めた。
『ジョーーク! ジョークっすよ!』
「ユーモアはいいけど、そういう嘘はダメだと思うな」
琉華が軽く眉を上げ、仲間たちを守護すべく光の壁を呼び出した。
「そんなジョーク楽しくないのです……ご飯よ、出ろ!」
憤慨しつつあこが念じると、虚空にまぐろ油漬の缶詰がポンッと現れた。正直今、とてもお腹がいっぱい……という風にオっさんが項垂れるが、食べなくとも回復するので安心だ。ベルとぴぃが気にするな、という風に寄っていく。
「夢喰らいに容赦はしないわ。店長さんの夢と後悔を返しなさい……神帝、頼むね」
刀を抜き、ウイングキャットの號華・神帝に攻撃の指示を出した竜愛が斬撃を繰り出した。
「よくもだましてくれましたね……店長さんの心を踏みにじるような嘘は許しません!」
キアラの胡蝶型の光の翼が広がり、怒りの炎を乗せて御業がドリームイーターのモザイクを抑えにかかる。
ケルベロスたちが心から楽しんで接客を受けた結果、敵の戦意戦力はかなり低くなっていた。互いを守る布陣を取りつつ、敵の動きを封じていく確実な戦闘が功を奏し、決着はあっさりとついた。
「全てを! 切り裂く風を! 巻き起こします!」
クリスティーネの翼が大きく羽ばたき、竜巻がモザイクを散り散りバラバラに砕いていく。
『アァ……ジョーク……ッスよ……』
嘘とジョークは全然違うのである。妙に料理上手だった嘘つきドリームイーターは完全に消え去ったのだった。
●楽しませるということ
「ウソッポ店長さん……しっかりして下さい」
愛楽礼が声をかけると、助け出された本物のウソッポ店長は無事に目を覚ました。
「おじさん大丈夫? はい、お水」
プルトーネが水の入ったグラスを差し出す。何故だ、何故僕は美少女たちに労わられているんだ? という疑問もないではないが、今は全力でこの環境を楽しむことにした店長。
「店長さん、料理はとっても美味しかったの。だから、もう少し融通がきけば面白くて美味しいお店になると思うわ」
竜愛がそう声をかけ、琉華も相槌を打った。
「うん、オムライス美味しかったよ」
「オっさんも大満足です~」
と、クリスティーネもそれに乗る。美少女たちが店を褒めてくれている? 何故? と思う反面、ドリームイーターが後悔を吸い取ってくれたせいか、卑屈な気持ちにならずに受け入れることが出来た。
「食べ物のがっかりは傷つく嘘なのですよ」
「傷つく、嘘……」
あこの言葉に、ウソッポ店長が目から鱗という顔になる。
「食べ物の怨みは怖いっていうしね! でも喜ばれるウソならそれはウソじゃないと思うよ」
緋色がそう励まし、プルトーネも感じたことをそのまま伝える。
「じゃんけん勝ったらおかわり1回無料とか、そういうゲームみたいなのでもお客さん喜ぶと思うんだ」
「喜ばれるウソ……、お客さんが、喜ぶ……」
ケルベロスたちがかける言葉をひとつずつ噛みしめるウソッポ店長。キアラがその背を押す言葉を続けた。
「店長さん、自信を持ってください、ジョークも人生には大事ですから」
「ジョークですよね。確かに、お客さんに笑って貰えなきゃ、それはジョークじゃない!」
ウソッポ店長、接客の何たるかを学んだようである。
「人を楽しませようと思う心は大事です。大丈夫です! 今度は上手くいきますから! ……というわけで、店長さんも一緒に、食べましょう?」
「うわ?! ダイス目すごかった?!」
愛楽礼が示したテーブルの上には、特盛りメニューがずらりと並んでいる。8名の団体客の経験がなかったウソッポ店長、これもまたいい勉強になったようである。
かくして、ケルベロスたちの活躍によりドリームイーターの手から一軒の喫茶店が守られた。
竜愛が最後に店を振り返りながら、口角を持ち上げた。
「興味深いお店だったわ。うちの店長にも話してみようかしら」
人が何かを楽しむ心、それを守っていきたいと願うケルベロスだった。
作者:林雪 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年4月15日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 1/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 4
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