老婆は年長者の責務を捨て去りて

作者:飛翔優

●捨てられ復讐へと至る
 広さなど定かではない。ただ、停滞している空気と無影灯に照らされている床から室内だということだけは分かる部屋の中。手術台に横たえられている老婆に、仮面で素顔を隠したドラグナーが語りかけた。
「喜びなさい、我が娘」
 老婆が身を起こしていくさまを見つめながら、落ち着いた声音で告げていく。
「お前は、ドラゴン因子を植え付けられた事でドラグナーの力を得た。しかし、未だドラグナーとしては不完全な状態であり、いずれ死亡するだろう。それを回避し、完全なドラグナーとなる為には、与えられたドラグナーの力を振るい、多くの人間を殺してグラビティ・チェインを奪い取る必要がある」
 老婆は手術台の横に足を下ろし、力強く頷いた。
「わかっています。貴方様のお陰で、あの忌々しい女に復讐する力を得たんです。全く、あの子もあんな女にたぶらかされおって……」
 忌々しげに吐き捨てながら立ち上がり、ドラグナーに頭を下げた。
「あの女を殺すまでは死んでも死にきれません。ですから、この力を存分に震わせてもらいます。私を排除した世界など……いくら壊しても、問題はないのでしょうから」
 もちろん、貴方様は別ですが……と付け加えた後、老婆は背を向けて立ち去っていった。
 闇の中へと消えていく老婆の背中を見つめていたドラグナーは、呼吸とともに興味を失ったかのように視線を外す。
 闇の中から、リストのような用紙を取り出していく……。

●ドラグナー討伐作戦
「そう。そういう方が」
「はい、ですから……と」
 一咲・睦月(柘榴石の術士・e04558)と会話をしていたセリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)は、足を運んできたケルベロスたちと挨拶を交わしていく。
 メンバーが揃ったことを確認した上で、説明を開始した。
「睦月の予想を元に、ドラグナー・竜技師アウルによってドラゴン因子を移植され、新たなドラグナーとなった方が事件を起こそうとしているのを察知しました」
 この新たなドラグナーはまだ未完成とでも言うべき状態で、完全なドラグナーとなるために大量のグラビティ・チェインを得ようとしている。そのために、ドラグナー化する前に惨めな思いをさせられた復讐と称して、人々を無差別に殺戮しようとしているのだ。
「ですので、急ぎ現場に向かい、未完成のドラグナーを撃破してきて欲しいんです」
 続いて……と、セリカは地図を取り出した。
「未完成のドラグナーが出現するのはこの、田畑が広がる田舎町のスーパーマーケット。時間帯は夕方頃で、主に買い物客を狙っているのではないかと思われます」
 故に、予め避難誘導をした上で、駐車場の辺りで未完成のドラグナーを迎え討つことになるだろう。
「そして、今回相手をすることになる未完成のドラグナーについてなのですが……」
 姿は老婆。偉い人には媚びへつらう一方、自分と同等以下とみなした相手に対してはとても我が儘で陰湿な性格をしているようだ。
 銭湯方針としては妨害特化。ブラックスライムを携えており、用いてくるグラビティもケルベロスたちが操るものと同一。
 複数人の加護を破壊するブラックインヴェイジョン、拘束するレゾナンスグリード、毒を与えるケイオスランサーを用いてくる。
「以上で説明を終了します」
 セリカは資料をまとめ、締めくくった。
「ドラグナーとなってしまった方を救うことはできません。しかし、これから奪われてしまうかもしれない命を守ることはできます。ですのでどうか、全力での行動を……」


参加者
エイダ・トンプソン(夢見る胡蝶・e00330)
一咲・睦月(柘榴石の術士・e04558)
旋堂・竜華(竜蛇の姫・e12108)
御堂・蓮(刃風の蔭鬼・e16724)
ガラティン・シュミット(遺志苛まれし医師・e24979)
アリシア・クローウェル(首狩りヴォーパルバニー・e33909)
アンセルム・ビドー(蔦に鎖す・e34762)
マルレーネ・ミオソフィア(リリーマルレーン・e36254)

■リプレイ

●夕暮れ時の街中で
 沈みゆく太陽が世界を茜色に染める中、スズメたちの群れは空を行く。地上に生きる者たちも買い物に勤しむはずの時間だけれど……今、商店街を行き交う人影はない。
 ケルベロスたちの警告に従って、自宅やスーパーなどへ避難していたから。
「ささっ、ここは危険ですので、お買い物は後にして逃げてくださいませ。本日は外食か出前でどうでしょうか?」
 スーパーへ赴こうとしていた者を追い返し、帰ろうとした者には早々なる帰還を促すエイダ・トンプソン(夢見る胡蝶・e00330)。トラブルになりそうならば力を用いて誘導し、三十分も経つ頃にはもう、スーパーや商店の中以外にはひと気はなくなっていた。
 人を近づかせぬ力も用いた後、ケルベロスたちはスーパー駐車場へと集まっていく。
 未完成のドラグナーを迎え撃つために。
 誰かの命が奪われてしまうことなどないように……。

●黒き力、心のまま
 スーパーの前が静寂に沈んでから、おおよそ二十分の時間が経った時。
 少しずつ色彩を失っていく空の下、一人の老婆が歩み寄ってくる様が見えた。
 力が効いていない以上、普通の人間ではありえない。旋堂・竜華(竜蛇の姫・e12108)は老婆が未完成のドラグナーであると断定し、静かに歩みよっていく。
 正面にて立ち止まり、礼儀正しく一礼した。
「ごきげんよう、お婆様。ここが貴女の終着です……。行いの報い、受けて頂きます」
「むっ……」
 立ち止まり、視線をぐるりと巡らせていく老婆。
 自分が視界から外れた隙を逃さず、竜華は黒色の魔力弾を撃ち出した。
 乾いた肌を貫かんとした瞬間、ブラックスライムに飲み込まれて霧散する。
「邪魔伊達するか、小娘風情が!」
 怒気を孕んだ声音はケルベロスたちを立ち止まらせ、戦場の外側にあるスーパーのガラス壁さえも震わせた。
 一拍置き、ガラティン・シュミット(遺志苛まれし医師・e24979)がメガネを軽く押し上げる。
「もはや言葉は届かない。それを承知であえて言わせて頂きます」
 雷の壁を作り出しながら見つめた、真っ直ぐに。
「子の気持ちを汲めない貴女は……それでも本当に親なのですか?」
 老婆は不機嫌そうに唇を尖らせた。
「はっ。逆に聞くが、親の気持ちを汲めずに何が子か! 精一杯の愛情を注いできたのに、立派に育ててやったのに……あの、恩知らずが……」
 固められていく拳。
 震える肩。
 横目に、アリシア・クローウェル(首狩りヴォーパルバニー・e33909)は距離を詰めていく。
 車のドアをボンネットを足場代わりに跳び回り、背後へ回り込むと共に脚を振り被った。
 振り向く暇を与えずに放った蹴りは、盾のような形状に変化したブラックスライムとぶつかり合う。
 大きな水音と共に、ブラックスライムが飛び散った。
「可哀想ですね。老醜を晒したばかりに死に様すら無様に散る羽目になるんですから」
「っ! 何だと!」
 衝撃によろめいた瞬間、老婆は足を崩しアリシアのいない方角へと転がった。
 御堂・蓮(刃風の蔭鬼・e16724)が猛追し、間合いの内側へ踏み込むと共に跳躍。
 真っ直ぐに伸ばしたジャンプキックは、掲げられたブラックスライムとぶつかり合う。
「俺達としてはあんたに恨みはないが、そうなってしまった以上致し方ないな」
「っ! この……」
 貫く事は叶わねど衝撃は通し、老婆は再びよろめいた。
 見つめながら飛び退いて、静かな息を吐いていく。
「しかし……そうまでして恨まずにはいられないか。それが己が成してきた事への報いだというのに。因果応報……だな」
 諦観にも似た言葉を紡ぎながら、前線にオルトロスの空木を向かわせる。
 横を、黒き影が駆け抜けてきた。
 ブラックスライムだと断定し、蓮は爆破スイッチを押していく。
 爆発が、ブラックスライムの軌道を逸した。
 腕を掠めていく感触を覚えながらも、表情を変えることなく縛霊手をはめている拳を握りしめた。
「……生き方も終え方も人により千差万別だが、死は等しい。最後くらいは安らかに、逝け」
 真っ直ぐに走り、間合いの内側へ入り込むと共に跳躍。
 進路を邪魔してきたブラックスライムとぶつかり合い、霊力を解放していく。
 ブラックスライム越しに伝わったか、老婆の動きが僅かに乱れた。
 すかさずウイングキャットのママシエラが飛びつき爪を立てていく中、マルレーネ・ミオソフィア(リリーマルレーン・e36254)は霧を放つ。
 蓮の治療を行いながら、悲しげに目を伏せ呟いた。
「レーネ、こういうの、しってるよ。いま、はやってるどくおやっていうんだよね、ママシエラ」
 聞く限りでは息子が女にたぶらかされ……恐らくはいびっていた嫁に逆襲され、愛していたはずの息子にさえも捨てられた老婆。その愛が歪んだものであっただろうことは、想像に難くない。
「……わるいママはゆるせないよね、やっつけちゃおう」
 ギュッと拳を握りしめ、きりりと老婆を睨みつける。
 ママシエラも更なる勢いで爪を振るう中、植物が絡みついている少女人形を抱えているアンセルム・ビドー(蔦に鎖す・e34762)は無数の氷槍を生み出した。
 ――貴女は、既に人類に害を為す存在でしか無いのですから。被害が出ない内に、私たちに倒されるしか、道はありません。
 少女人形が歌うように語る中、氷の槍を解き放つ。
 一つ、二つと、破片を凍らせながらも防いでいくブラックスライム。
 くぐり抜けてきた穂先から頭をかばいつつ、老婆は後退していく。
 退路を塞ぐかのように、アリシアが老婆の背後に降り立った。
 無防備な背中に、重い拳を撃ち込んでいく。
「かはっ」
 押し返され、よろめく老婆。
 叫びたくても叫べない、そんな様子を眺めアリシアは口元に笑みを浮かべていく。
 直後、老婆の体を竜の幻影が飲み込んだ。
 一部を凍てつかせたブラックスライムを溶かすことのない炎が上がる中、一咲・睦月(柘榴石の術士・e04558)は剣を横に構えていく。
 倒す以外に方法が無いのだから、仕方がない。全力で討つ、ただそれだけだ……と。
 ……開幕から、ケルベロスたちは矢継ぎ早に攻撃を仕掛け、老婆に休息を許さない。瞬く間に炎の勢いは強まり、氷も面積を増していく。
 けれど、老婆の持つ力もまた未完成とはいえ本物だった。
 三分も経つ頃には落ち着きを取り戻し、ケルベロスたちの合間を縫うようにしてブラックスライムが動き回った。
 槍状に変化したブラックスライムが蓮の腕を掠めていくさまを見て、マルレーネは即座に霧を生み出していく。
 どれだけ仲間が傷ついてもそれ以上に癒していく。
 ガラティンや前線で戦うママシエラと共に、仲間たちが全力を出すことができるように。
「……」
 悲しげに細められた瞳の奥、浮かんでいるのは憐憫か。
「……ドラグナーにされちゃったのはかわいそうだけど、でも、わるいママがもっとわるいママになっただけだよね」
 ため息と共に紡がれた呟きは、風にかき消されて消えていく。
 老婆へ届くことはなく。
 仮に届いたとしても、老婆が良い方向へ向かうことはなかっただろうけど……。

 炎を纏っても、凍てついても、老婆の瞳から憎悪の炎が消えることはない。
 ただただ強きにブラックスライムを操って、前衛陣への反撃を行ってくる。
 乾いた唇が紡いでいく呪詛にも似た言の葉を聞きながら、エイダは爆破スイッチを押し込んだ。
 前衛陣の背後が爆発し、カラフルな爆煙が茜色の空へと立ち上る。
 力の加護を与えられた前衛陣が、さらなる勢いを持って老婆を攻め立てていく。
 時を重ねるたび、増えていく熱量。
 溶ける事なく面積を増していく氷。
「……大丈夫、充分有利に戦えています。皆さん、この調子で行きましょう」
「ええ、そうですね……っと!」
 受け取りながら、アリシアは首筋めがけてハイキック。
 胸をそらし、風圧に薄く斬られるにとどめていく老婆。苦虫を噛み潰した表情を浮かべながら、喚き散らす。
「くっ、一体全体何なんだい! なんで逆らうんだい! 若者は老人に……」
「……」
 聞きながら、ガラティンは薬液の雨を振らせつつ視線を落とした。
 不相応の力を獲得し、存分に振るいながら自分勝手な言葉を吐き続けている老婆。正当性を信じ切っているのだろう、自らを省みる言葉が紡がれることはない。
 ともすれば、世界中全てを敵に回しているかのような態度。それが……。
「私も妻と出会わなければ、こう暴れていたのは私自身だったかもしれない……」
 小さなため息と共に、瞳を瞑る。
 一秒、二秒と時を重ねた後、力強く頷き顔を上げた。
「……さあ、戦いはまだまだこれからだ。勢いに負けぬよう、全力を尽くしていこう」
 雷の壁を生み出して、前衛陣の細かな傷を拭い去った。
 間を抜け、ブラックスライムが剣を振り下ろしたばかりの竜華に飛びかかってきた。
 すかさずママシエラ代わりこんで、その小さな体で受け止めていく。
「ママシエラ! いま……!」
 即座にマルレーネが霧を放ち、ママシエラの治療を行った。
 瞬く間にブラックスライムの影響が拭い去られていく中、エイダは乗用車のボンネットを足場に跳躍。
 空を背に、老婆めがけて蹴りを放つ。
 もう、充分に加護を重ねた。
 後は、加護を最大限に生かせるよう攻撃を仕掛けていくだけ。
 つま先は手元に戻されたブラックスライムを貫いて、老婆の胸元を捉えていく。
 うめき声を上げながら後退していく老婆を見つめながら、力強く拳を握りしめた。
「さ、準備は整いました。この力を活かし、攻めましょう!」
 少しでも早く戦いを終えるため。
 街の平和を取り戻すために。

●戻れぬ力、戻れぬ道
 自らの力を高める一方、重ね刻み込んできた呪縛。
 徐々に老婆を蝕み始めたか、ブラックスライムの動きは鈍いものへと変わっていた。
 ゆうゆうと、蓮は槍状に変化していたブラックスライムを縛霊手で打ち払う。
「そろそろ終焉だ。せめて、長く苦しませることなく終わらせよう」
「はっ。まだまだ、これからだ。何のためのこの力をもらったってんだ。この力で、わたしゃあの女を、息子を……」
 ブラックスライムを手元に戻し、喚き散らしていく老婆。
 見つめ、睦月は目を細める。
「自分に都合のいいように子供を育てるのは、愛などとは呼べません」
 次元の精霊より柘榴石製の剣を借り受け、切っ先を老婆へと向けていく。
「貴女といることを負担に感じていれば、逃げもするでしょう」
 ――あるいは、子自身が離れることで、親に自己を省みてほしかったのか。
 真実は、子供本人に聞かなければ分からない。
 聞いたとしても、もはや意味を持たない仮定。
 首を横に振り、抱いた思いを思考の片隅へと追いやった。
 改めて老婆を指し示し、柘榴石製の剣を解き放つ。
 盾に変わるブラックスライムを貫いて、老婆の左肩を切り裂いた。
 のけぞる老婆を猛追し、アリシアは踊る二本のナイフを何度も何度も突き出しながら。
「あっはははは! いいですよ! アリシアに絶望の声を聞かせてください! 肉を裂き、血を呼び覚ます、死の叫びを!」
「ぐっ、この……小娘どもがぁ!!」
 肩を、脇腹を貫かれ、老婆は車を背に立ち止まる。
 息つく暇は与えぬと、アンセルムが右側面から切りかかった。
「くっ!」
 体をひねる老婆の背中を切り裂いて、呪縛を更に強固なものへと変えていく。
 炎は勢いを増し、氷の面積を広げていった。
 ほうほうの体で、老婆はアンセルムの間合いから離脱していく。
 静かな眼差しを向ける中、少女人形はさえずった。
 ――改心して前向きになったら、元に戻る……なんて、ドラグナーにもあったら良いのに……。
 叶わぬ願いは風に消え、現実は逆巻く炎に招かれる。
 エイダの放つ投げキッスが氷を反応させ、亀裂を走らせていくように。
「……もう、終わらせましょう」
「うん! いこう、ママシエラ!」
 意気揚々と、マルレーネが半透明の御業を解き放つ。ママシエラの放つリングに導かれ、老婆を鷲掴みにして動きを封じていく。
 風にドレスをはためかせながら、夕焼けを浴びた肌を艶やかに輝かせながら、竜華は鉄塊の如き剣を突きつけた。
「さぁ、貴女の最後の一時……私の炎の華で彩って差し上げます……」
 甘い笑みを浮かべながら、炎を纏いし八本の鎖を解き放つ。
 夕焼けに隠れ、鎖は一本、また一本と老婆を縛り上げた。
 数多の炎に焼かれながら、身動き取れずに老婆は呻く。
 怯む事なく、容赦もなく、竜華は鉄塊の如き剣に炎を走らせ……。
「舞い散れ! 炎の華!」
 斜めに両断した。
 散りゆく血しぶきは炎に焼かれ、舞い踊る火の粉は桜吹雪のごとく。
 手元に鎖を戻し剣を担ぎ直せば、老婆は仰向けに倒れていく。
 空を見つめたまま震える瞳に、映り込んだのはアンセルム。
 一拍置き、少女人形が口を開いた。
 ――息子さんは貴女を捨てたのではなく、貴女から逃げたのだと思いますよ。
 老婆が瞳を見開いたかのように思えたのは、その言葉が届いたからだったのだろうか。
 もっとも、何かを語ることはできず、老婆は……。

 得物を収め、竜華は姿勢を正した。
「……」
 瞳を閉ざし、ドレスの裾をつまんで一礼を。
 報いは、すでに受けたのだから。
 もう、現世のしがらみとは関わりのない存在となったのだから。
 一人、また一人と武装を解除していく中、睦月もまた向き直る。
 もしも、老婆がドラグナーにならなかったのなら。もしも、自分を省みて話し合う機会を得ていたのなら……。
「……」
 首を横に振り、叶わぬもしもを打ち消した。
 今はただその先行きが幸いであるように、静かにまぶたを下ろしていく。
 それからしばしの時を経て、事後処理が始まった。
 足場にしたり流れ弾が当たったりして傷ついた車の修復を行う中、蓮は空を仰いでいく。
「終焉を迎えるとき、己に残ったものが幸か不幸か。幸で生きて行きたいものだな」
「……」
 無言で頷き、ガラティンは視線を落とす。
「必死に隠そうとする心の弱みに狙いを定めたドラグナー。何とも厄介な相手です」
 ――ビルシャナと違って、手遅れなんだよね。私たちが知った頃には、もう。
 アンセルムが同意しつつ、少女人形は語るため息代わりに。
 スズメたちが飛び交う夕焼け空が見守る下、平和を取り戻しつつある街の駐車場で。
 静寂が、夜を運んでくるのを感じながら……。

作者:飛翔優 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年4月14日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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