載霊機ドレッドノートの戦い~破壊の序曲

作者:綾河司


「ケルベロスのみなさん、こんにちは。天瀬・月乃です」
 ブリーフィングルームの壇上に上がった天瀬・月乃(レプリカントのヘリオライダー・en0148)は集まったケルベロス達にペコリと頭を下げた。
「まずは弩級兵装回収作戦に参加されたみなさんはお疲れ様でした」
 いつも通りの抑揚のない口調で労をねぎらった月乃は大型の立体スクリーンに映像を映し出した。
「みなさんの活躍の結果、2つは完全破壊。残る2つにも大きなダメージを与え、載霊機ドレッドノートがすぐに動き出す事はありません。しかし……」
 月乃が一度言葉を切ってスクリーンの映像を切り替える。スクリーンにはコマンダー・レジーナが写っていた。
「『弩級超頭脳神経伝達ユニット』を修復可能なコマンダー・レジーナを撃破できなかった為、敵に時間を与えてしまえば載霊機ドレッドノートが本来の力を取り戻すことになります」
 弩級ダモクレスの代名詞でもある『ドレッドノート』が動き出すような事があれば、人類はケルベロス・ウォーを発動しなければ対抗することはできない。
「現在、敵に回収された弩級兵装の2つは載霊機ドレッドノートの元へ転送された事が載霊機ドレッドノートを警戒していたマイ・カスタム(重モビルクノイチ・e00399)さん達によって判明しています」
 その目的が弩級兵装を載霊機ドレッドノートに組み込む事であるのは明白だ。
「そこで、載霊機ドレッドノートへの強襲作戦が行われる事になりました」
 スクリーンの画面に作戦領域の地図が映し出され、月乃の説明に合わせて概要が付け加えられていく。
「現在、載霊機ドレッドノートは、ダモクレス軍団によって制圧されています。ドレッドノートの周辺にはマザー・アイリスの量産型ダモクレスの軍勢が展開しており、ケルベロス・ウォーを発動しなければ攻め込む事は難しい状況になっています。そのため、ヘリオンから降下作戦を行う必要がありますが……」
 デフォルメされたヘリオンがスクリーンの地図上を進軍してボカンと弾けた。
「踏破王クビアラが対ケルベロスの作戦として、ドレッドノートの周囲に『ヘリオン撃破用の砲台』を設置し、強力なダモクレスがその守備と砲台の操作を行っています。ですので、まずはこの砲台の撃破が必要になります」
 砲台を撃破できれば、へリオンによる強襲降下作戦を実行に移すことができる。そうなれば載霊機ドレッドノートへの潜入が可能になるだろう。
「潜入後の攻撃目標は4つ……1つ目はドレッドノートの歩行ユニットの修復を行っているジュモー・エレクトリシアンとその配下、2つ目はディザスター・キングとその軍団が守る『弩級外燃機関エンジン』、3つ目は『弩級超頭脳神経伝達ユニット』の修復を行っている、コマンダー・レジーナとその軍団、そして4つ目が弩級兵装回収作戦で動きのなかった指揮官型ダモクレス、イマジネイター……」
 地図に4ヶ所の光点が浮かび上がる。
「ジュモー・エレクトリシアンを攻撃する事でドレッドノートの機動力を封じることができます。また、デザスター・キングを倒せばエネルギー出力を、コマンダー・レジーナを倒せば強大な攻撃力を抑えることができるようになります」
 月乃の説明を受けて、ケルベロスから挙手があった。
「動きをみせていなかったイマジネイターが、いったい何を……?」
「イマジネイターは、自らがドレッドノートの意志となるべく融合しようとしているようです。現時点での危険性は低いですが、万が一、ケルベロス・ウォーに敗北するような事があれば、自ら意志を持つ弩級ダモクレスが出現することになります。ですから、この融合は阻止できるのであればしておきたい」
 そう、全てはこの先にある大きな戦いの為に。
「砲台を撃破し、載霊機ドレッドノートを復活させようと動き出したダモクレス達を妨害、打撃を与えることが今回の作戦の狙いです。作戦終了後は即時撤退でお願いします」
 でないと敵の勢力圏に取り残されてしまいます、と月乃は付け足して、それから締めくくった。
「本作戦で載霊機ドレッドノートを守るダモクレス達に、どの程度の打撃を与えられるかがケルベロス・ウォーの趨勢を占うことになります。簡単な作戦ではありませんが、来るべき決戦を優位に進める為にも、みなさんの力で成功させてください」
 お願いします、と月乃は最後にまた、頭を下げた。


参加者
ベルンハルト・オクト(鋼の金獅子・e00806)
リブレ・フォールディング(月夜に跳ぶ黒兎・e00838)
キサナ・ドゥ(アガーテの花冠・e01283)
叢雲・紗綾(無邪気な兇弾・e05565)
コルチカム・レイド(突き進む紅犬・e08512)
ケイト・クリーパー(灼魂乙女・e13441)
ドゥーグン・エイラードッティル(鶏鳴を翔る・e25823)
獅子谷・銀子(眠れる銀獅子・e29902)

■リプレイ


 全てのヘリオンが撃墜されることなく、無事載霊機ドレッドノートへの潜入を成功させたケルベロス達。その中の1チームが弩級外燃機関エンジンを目指し、駆け抜けていく。
「ここまでは順調だな」
 突入までの一連の流れを思い返し、ベルンハルト・オクト(鋼の金獅子・e00806)が静かな口調で呟いた。
「ドレッドノートの動くところを想像したら、恐ろしいわね……こんなもの、完全復活は阻止しなきゃ」
 セクシーな忍者装束に身を包んだ獅子谷・銀子(眠れる銀獅子・e29902)が応えるとベルンハルトも頷き返した。敵の戦闘力を減らす為にも今回の作戦は成功させなければならない。
「臭いがきつくなってきたわね」
 臭いを嗅ぎ分けながら敵を警戒していたコルチカム・レイド(突き進む紅犬・e08512)が徐々に強まってくる気配に注意喚起を促す。元気印の彼女の声が幾分抑え気味なのは敵を警戒している事もあるが、隣を併走するリブレ・フォールディング(月夜に跳ぶ黒兎・e00838)が音に注意し、周辺を警戒しているのを知っているからだ。
「鳥頭で妙な気を回すんじゃねーですよ、バカ犬」
 環境音と異音の差を聴き分けつつ、リブレがため息混じりに呟く。
「鳥頭ですって!? 何処に目を付けてんのよ、バカ兎! 私の頭脳は犬並よ!」
 自信満々に反論するコルチカムの言葉を聴きながら、その場にいた全員が心の中で「犬並ではなく、人並みなのでは?」とツッ込んだ。と、
「ストップだ!」
 目視で警戒をしていたキサナ・ドゥ(アガーテの花冠・e01283)と、その気配に気づいたコルチカムとリブレが同時に足を止めた。進軍の足を止めたケルベロス達の前に茶色に装甲を染めたダモクレスが一体、姿を現した。
「我が名はディザスター・ナイト。ケルベロスか……よくぞここまで辿り着けたものだな」
 静かな口調で告げたダモクレスの右腕に備わった剣が光を受けて鈍く輝く。
 一歩前に進み出たドゥーグン・エイラードッティル(鶏鳴を翔る・e25823)が柔らかな口調で応じた。
「ごきげんよう、そちらを止めに参りました」
「何人も我々の邪魔はさせん」
「地球での無礼千万、許すわけには参りません。どうぞお覚悟を」
 優しくも強い意志でナイトを真っ向から見返すドゥーグンに戦闘開始の気配が高まっていく。
「ほんと、はた迷惑なデカブツを持ち出してきやがったですね」
 二丁のバスターライフルを手に叢雲・紗綾(無邪気な兇弾・e05565)は静かにそのときを待った。
「大丈夫、きっと上手くいく」
 大規模な強襲作戦の一端。やや気負い、自分に言い聞かせるように呟く銀子の肩にキサナとケイト・クリーパー(灼魂乙女・e13441)が手を添えた。
「こういうの、ここはオレ達に任せて先に行け! ってヤツかな。くひひ……」
 憧れだったんだぜ、このセリフ、と笑みを浮かべるキサナに銀子も微かに笑みを浮かべてその緊張が弛緩する。無表情のままナイトを注視したケイトは、その頃合いを見計らって気を引き締めた。
「覚悟はいいでございますか? ――さあ、戦争でございます!」
「いい機会です、全部まとめてブッ壊してやるです!」
 ケイトの声を合図に紗綾がバスターライフルを持ち上げる。躊躇なく撃ち放ったフロストレーザーが戦闘開始の時を告げた。


「凍りつくがいいです!」
 紗綾がフロストレーザーを連射する。他の敵が近付いてこないか注意しつつ、しかし今のところ、その気配はない。かといって、目の前の敵に時間をかけるのも得策ではないので、彼女は確実性の高い攻撃で攻撃効率の向上を狙っていた。
「ハアアアッ!」
「!?」
 ナイトは白く走る弾雨の中を真っ直ぐに駆け抜ける。多少の被弾は構わず、スモールシールドで弾きながら、一気に間合いを詰めてきた。
「死ね!」
 地を蹴り、頭上に掲げたロングソードを最年少のベルンハルトへ向けて振り下ろす。
「上等だ」
 逃げも隠れもしない。正々堂々と。二刀を引き抜いたベルンハルトが受け継いだ剣法を持って真正面から受けて立つ。だが、それだけでは戦いに勝てない事を彼は熟知していた。
「まかせなさい!」
 素早く間に入ったコルチカムが犬爪でナイトの一撃を受け止める。一瞬のせめぎ合いのタイミングを逃がさず、ベルンハルトが回転するようにコルチカムの脇を抜け、
「くらえっ!」
 フォートレスキャノンを零距離でナイトの横腹に打ち込んだ。強烈な一撃にナイトが押し戻される。
「くっ……!」
「いまです、アルゴル!」
 紗綾の声に呼応したボクスドラゴンのアルゴルが一声鳴いて、ボクスブレスで追い討ちをかける。
 一端引かざるを得なくなったナイトの隙を突いて、コルチカムが紙兵散布で前衛を強化した。と、彼女の背後から影が1つ飛び出して、
「うぎゅる!?」
 頭上を飛び越えた影――リブレはコルチカムの頭を踏み台にして、一足飛びにナイトを上方から奇襲した。
「全く、今回もまた機械ヤローですか。腐れ縁なんてのは、どこぞのバカ犬だけで十分なんですが……」
「毎度毎度このバカ兎はぁぁっ!」
 コルチカムの絶叫を無視して、静かにゲシュタルトグレイブを構えたリブレが稲妻を帯びた超高速の突きをナイトに放つ。
「ふざけおって!」
 掲げたシールドと体を捻ることで直撃を避けたナイトが体勢を立て直す。突いた勢いを利用して空中で身を翻したリブレにナイトの意識が一瞬奪われた。
「いいのかよ、よそ見してて!」
 キサナにはその一瞬で十分だった。敵を中心に円を描くような動きで駆け抜けたキサナが『アビシニアの乙女はダルシマーをかき鳴らして』――その愛銃を目にも止まらぬ速さで抜き撃つ。
「たった一人の完全包囲!逃がしゃしねえぜ、覚悟しな!」
「小癪な!」
 暴風雨を思わせるような弾丸の嵐がナイトを縦横無尽に攻め立てた。結果、的を絞れず、動きの止まったナイトに更なる隙が生まれる。
「付け入る隙は与えませんわ」
 音もなく宙を舞ったドゥーグンがライトニングロッドに地獄の炎を纏わせ、ナイトの頭上から叩き込む。
「くっ……!」
 直撃を避けたナイトの体を地獄の炎が包み込む。その様を離れた位置から観察していた銀子が連携する。
「私の全力、受けてみなさいっ!」
 解き放たれた氷結の螺旋が炎に焼かれるナイトをさらに凍りつかせた。
「働くでございます、相棒!」
 遠距離から近距離へ。ケイトの声に反応したライドキャリバーのノーブルマインドが激しいスピンでナイトを引き潰す。ナイトはそれを何とか全身で受け止めて、ノーブルマインドを押し返した。
「じゃ、お邪魔といくでございますか!」
 ケイトがマルチプルミサイルを大量に撃ち込んでナイトを攻め立てる。ヒールドローンがあれば防御補助による戦線維持をより強化していけたのだが。
 彼女はナイトを注視した。ここまでの展開ならケルベロス達が優位に進めている。
「まだまだ、これからだ……」
 ナイトの体が淡い光に包まれると、その身に刻まれた傷が見る間に癒えていった。
「この程度でいい気にならぬことだ」
 その口調にはまだ余裕がある。気を引き締めたケルベロス達が再度身構えた。
「少し長引くか……」
「おまかせくださいませ」
 冷静に戦況を読むベルンハルトに、ドゥーグンが微かな笑みを浮かべた。


 強力な近距離攻撃と回復をスタンダードに繰り返すナイトに対し、ケルベロス達は間合いを図った連携で確実なダメージを積み重ねていく。
「喰らえ!」
「くっ……」
 ナイトの振り払った一撃をベルンハルトが二刀を交差して受け止めた。逃がしきれなかった衝撃を身に受け、ベルンハルトがぎりぎりと押し込まれる。一対一では、やはり敵の力が数段高く、直撃を受ければそう何度も耐えられるようなものではない。
「たのむ!」
「まかせな!」
 背後を取ったキサナが体を高速で回転させながら、ナイトに『輝きにひれ伏せ』を叩きつける。弾き飛ばされながらも何とか踏み止まったナイトが続けて飛び込んできたドゥーグンを見て舌打ちした。
「回復は阻害させていただきますわ」
 投射されたウイルスカプセルがナイトに直撃し、その治癒力を阻害する。様々な攻撃の成果が確実にナイトの体に積み重なっていく。
「おのれ!」
「逃がさん!」
 ベルンハルトが体勢を立て直そうとするナイトに肉薄する。凌ごうと盾を構えるナイトのその盾に狙いを定めてベルンハルトが破鎧衝を打ち抜いた。
「ぐっ……」
「さっさとスクラップになっちゃえですよ!」
 ロングレンジから一転、宙を舞って間合いを詰めた紗綾の流星の煌めきと重力を帯びた飛び蹴りがナイトの顔面に炸裂した。
「このような屈辱……許せるものか!」
 ケルベロス達の猛攻を前にナイトを取り巻く空気が一変する。
「みなさん、下がって!」
「気をつけなさい! 来るわよ!」
 それは敵の兆候に注意を払っていた銀子やコルチカム以外の者達にも如実に知れて。
「くっ……させない!」
 ガトリングガンから大量に銃弾を打ち込む銀子に構わず、防御を放棄したナイトが吼えた。
「オオオオッ!」
 大量のグラビティがロングソードに集中し、振り払われた斬撃からエネルギー波が飛翔する。その一撃はケルベロス達の後衛を纏めて薙ぎ払わんと襲い掛かった。
「止めるわ!」
 仲間の前に割って入ったコルチカムが捕食する降魔の力を全開にして、エネルギー波に立ち向かう。
「アルゴル!」
 咄嗟に叫んだ紗綾の声に呼応したアルゴルもまた、体を目一杯広げて庇いに入った。エネルギー波がコルチカムとアルゴルを切り裂いて突き抜ける。
「いったぁ……このぉ」
 強烈なダメージを受けてもなお、コルチカムもアルゴルもその場に踏み止まった。怒り心頭で睨み返すコルチカム。
「好き勝手、やってくれんじゃないわよ!」
 開放した捕食する降魔の力を手足に集め、地面を踏み抜くような勢いで彼女は駆け出した。そのまま一気に距離を詰め、ナイトを掴み、巨大な柱にナイトを叩き付ける。勢いのまま、後方に飛び退いた彼女はそこで宙返りをして体勢を整えた。
「毎度毎度、踏み台にされてたまるもんですか」
「……っち」
 死角からコルチカムを踏み台にして強襲をかけようとしていたリブレが小さく舌打ちする。諦めて、彼女は体勢を整えたコルチカムの両足の裏に着地した。
「行ってこーいっ!」
 蹴り出されたコルチカムの両足をカタパルト代わりに踏み出したリブレが超加速でナイトに襲い掛かる。咄嗟に身を固めたナイトの防御の隙間に重力で凝縮した擬似ナイフが突き刺さった。
「乱れ散れ」
 次々とナイトの体にねじ込まれていく擬似ナイフ。最後の一本を突き入れると同時に刺さった擬似ナイフ全ての重力が一斉に開放され、一気に爆発した。
「がっ……」
 立て続けに大きなダメージを食らったナイトの体ががくんと揺れる。
「こんなところで……」
 忌々しげに吐き捨てるナイト。好機と踏んだケイトが静かに言葉を紡ぐ。
「咲けよ、閃熱。焼き滅ぼせ、我等が疾駆を阻む縛鎖のことごとくを――!」
 一番ダメージの蓄積が多かったコルチカムの傷が見る間に癒えていく。
「さあ皆様、意地の見せ所でございますよ!」
 ケイトの激励にケルベロス達は脚に力を込め、一気に躍動した。


「まだだ、まだ……」
 ノーブルマインドの炎を纏った突撃をいなしつつ、ナイトが振り被ったロングソードでドゥーグンに斬りかかる。
「しつこいのよ!」
 それをコルチカムが受け止めると、その脇を抜けてリブレが螺旋掌を叩き込んだ。
「とっとと、くたばるがいいです」
 突き放すようにナイトを押しやると、そこはキサナの銃弾の嵐。
「弾雨の中で逝っちまいな!」
 縦横無尽に叩き込まれる弾丸の雨がナイトの体力を削り取っていく。その弾雨の中を駆け抜けて、銀子がナイトに肉薄する。
「私達は負けない!」
 すれ違い様に貼り付けた見えない爆弾を手元のスイッチで爆発させると、ナイトは堪らず膝を突いた。濛々と沸き立つ爆煙の中をドゥーグンが舞い降りる。
「引き際ですわ。最後にそちらの現状など、お話くださいませんか?」
「なにを……」
 突然の問いかけに虚を突かれたナイトが顔を上げ、はっとした。優しげなドゥーグンの瞳を通じてナイトが巨大な蛇を幻視させられる。力の強いナイトを居竦ませる程の大蛇とはどれ程の大きさだったのか。
 その一瞬の隙を逃さず、ベルンハルトが間合いを詰める。
「全てを食らう龍神よ、我が刃に宿りて、稲妻と化せ――雷霆剣」
 刀身を発振器とし、雷の刃を生成する。振り抜かれた雷刃が一帯に大爆発を起こしてナイトを遍く焼き斬った。それでも、なお立ち上がらんとするナイトに紗綾が二丁のバスターライフルの銃口を向けた。
「遠慮は要らないです、鉄クズ」
 一瞬の精神集中の後、超高速の指捌きにより一瞬にして数十回ものトリガーを引く。
「全弾纏めて持っていけですー!」
 放たれた無数の弾丸が全てナイトに集束する。動けぬまま、その全ての的となったナイトは断末魔を上げて消滅した。
「皆様、お疲れ様でございました。さ、ずらかるでございますよ!」
 ナイトの消滅を確認したケイトが仲間を見回すとキサナがひとつ頷いた。
「なるはやでな」
 それが彼女の信条でもある。
「そうだな」
 ベルンハルトも頷いてみせた。もう一体ぐらい撃破できないかという考えも浮かんでくるが、ここが敵地であり、本当の戦いの序盤に過ぎない事を考えれば無理はしない方が無難だろう。なにより、目的は達成されたのだ。
「それでは帰還いたしましょう」
 ドゥーグンに促されて、ケルベロス達が撤退を開始する。
「私、甘いものが食べたいかも……」
 戦闘の緊張感から開放されて、銀子が呟く。それにコルチカムが反応する。
「私は肉よ! 断然、肉だわ!」
 欲求に忠実な相方を見て、リブレが思わず嘆息した。
 最後尾にいたキサナがふと振り返る。今もまだ戦っている仲間がいるかもしれないという思いが彼女に足を止めさせたのだ。
「……負けんなよ、ケルベロス共」
「どうかしたです?」
「いや……」
 気付いた紗綾に呼び掛けられ、キサナが首を横に振る。彼女は武運を祈りつつ、仲間達の後を追って撤退した。

作者:綾河司 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年4月14日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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