●復活阻止
弩級兵装回収作戦の結果、コマンダー・レジーナ及び、『弩級超頭脳神経伝達ユニット』と『弩級外燃機関エンジン』が回収され――それらが載霊機ドレッドノートに転送された事が、載霊機ドレッドノートを警戒していたケルベロス達によって判明した。
「つまり弩級兵装を載霊機ドレッドノートに組み込むことにより、載霊機ドレッドノートを再び起動させる事が指揮官型ダモクレスの目的である、と見ていいだろう」
予想したものも多かろうが、雁金・辰砂(ドラゴニアンのヘリオライダー・en0077)は眉間に皺をよせ、こう告げる。
――もし、弩級ダモクレスの代名詞でもある『ドレッドノート』が動き出すような事があらば。人類はケルベロス・ウォーを発動しなければ対抗できぬ、と。
幸い、全ての弩級兵装が万全でないことから載霊機ドレッドノートが今すぐ起動することはないが、『弩級超頭脳神経伝達ユニット』を修復可能なコマンダー・レジーナを撃破できなかった為、奴らに時間を与えてしまえば、載霊機ドレッドノートは本来の力を取り戻してしまう。
現在、六体の指揮官型ダモクレスが全力をもって載霊機ドレッドノートを守護し、復活させようと動き出している。
「ゆえに載霊機ドレッドノートへの強襲作戦を行う」
この作戦の結果如何によって、来るべきケルベロス・ウォーに向けた今後の戦いの趨勢を占うことになる――。
さて、問題の作戦であるが――辰砂は長くなると前置き、一気に語り始める。
現在、載霊機ドレッドノートは、ダモクレス軍団によって制圧されており、その周辺にはマザー・アイリスの量産型ダモクレスの軍勢が展開され、ケルベロス・ウォーを発動しなければ攻め込む事は難しい。
よって、今回はヘリオンからの降下作戦を行うのだが、ここには踏破王クビアラによる対ケルベロスの作戦が張られている。
ドレッドノートの周囲に『ヘリオン撃破用の砲台』を設置し、強力なダモクレスがその守備と砲台の操作を行っているのだ。この砲台がある限り、作戦全体が危険に晒されるのみならず、作戦終了後、撤退するケルベロスを回収する事も難しくなる為、必ず破壊せねばならない。
砲台破壊後、ドレッドノート内における攻撃目標は全部で四つ。
一つ目、ドレッドノートの歩行ユニットの修復を行っている、ジュモー・エレクトリシアンとその配下。
それらは『弩級高機動飛行ウィング』の完全破壊によって失われた飛行能力に代わり、二足歩行システムの修復を行っているようだ。この修復を行っているダモクレスを撃破する事で、ケルベロス・ウォーを仕掛けた時点の、載霊機ドレッドノートの移動速度を下げる事ができる。
二つ目、ディザスター・キングが守る『弩級外燃機関エンジン』――奴らはエンジンの一部となることで、出力を確保しようとしているらしい。ドレッドノートはこのエンジンから生み出されたエネルギーを利用して、数多くの戦闘用ダモクレスを生み出す。
完全に停止はできぬものの――弱らせただけ、ケルベロス・ウォー時のダモクレスの戦闘力を落とすことができる。
三つ目、『弩級超頭脳神経伝達ユニット』の修復を行っているコマンダー・レジーナとその軍団。これが修復されればドレッドノート自身が巨体を制御しケルベロス達に攻撃可能となる。
ドレッドノートのパンチには殺害した人間のグラビティを奪う能力があり、この能力を持ったままドレッドノートが活動し続ければ、より強力な力を獲得しながら永久に破壊活動を行う事が可能となる――これがどれほどの脅威かは説明するまでもない。
四つ目、弩級兵装回収作戦で動きのなかった指揮官型ダモクレス、イマジネイターの軍団だ。奴らはドレッドノートと一つとなり、自らがその意志となるべく融合しようとしているらしい。
融合が完了してしまった場合――万が一、ケルベロス・ウォーに敗北するような事があれば――自ら意志を持つ弩級ダモクレスが出現する事となる。
最悪の場合の危険度は高いものの、融合の可否そのものは直接ケルベロス・ウォーを左右するものではない。
「いずれも落としたい戦場であるが……何処へ、何と戦うか。選択は貴様らに委ねられている――いずれにせよ、敵中に飛び込む、ということを忘れるな」
戦闘への心構えは元より、撤退まで――無事に帰ってくるための備えが必要であろう。
そう辰砂は淡々と告げ、説明を終えるのだった。
参加者 | |
---|---|
ノル・キサラギ(銀架・e01639) |
ラティクス・クレスト(槍牙・e02204) |
ルリナ・ルーファ(あったかいきもち・e04208) |
輝島・華(夢見花・e11960) |
秋空・彼方(英勇戦記ブレイブスター・e16735) |
マロン・ビネガー(六花流転・e17169) |
ゼラニウム・シュミット(決意の華・e24975) |
ゲリン・ユルドゥス(白翼橙星・e25246) |
●ルーツ
瞳を閉じ、ノル・キサラギ(銀架・e01639)は左手でロザリオに触れた――薬指にある白金の指輪とそれと。ここにはいない大事な人を感じる。
そっと目を開けば、敵意と緊張がぴりぴりと皮膚を刺す。
既に戦場に降りている。のんびりと感傷に浸っているわけにはいかぬと思いつつも、気心の知れた仲間が揃っているからだろうか、思わず零す。
「ラティと、ルリナがいて……本当に、何年か前みたいだね」
ラティクス・クレスト(槍牙・e02204)は普段と変わらぬ笑みを向け、ルリナ・ルーファ(あったかいきもち・e04208)がこくこくと頷く。
「けど、前とは違うだろ?」
「みんなでがんばって、みんなでご無事に帰ってくるの! みんな一緒なんだから、こわいコトなんて絶対無いの!」
その通りだと二人の言葉にノルも同意する。
他の仲間達に向け、笑顔を向けようとしたその表情が僅かに強ばったのを、秋空・彼方(英勇戦記ブレイブスター・e16735)は見た。
身構え振り返るより先、コツン、堅い足音が床を打つ。
KX-XF-09ノウェム――まず目を引くのが少女らしい肢体を包む赤い装甲。
無表情の顔立ちは美しいものの、何の感情も湛えぬ赤い瞳が無機質さを高めていた。じろりとケルベロス達を一瞥した視線すら、人工的に感じられた。
それはノルにとっては妹であり、ダモクレスとしては上の存在。
(「――こわい」)
殆ど無意識に、彼はそう感じた。恐怖。彼が一番はじめに手に入れた心。
実験機としての末路に覚えたそれこそが、レプリカントとしての己のルーツであり心の核だ――と長らく思っていた。
物憂いを振り払うように目を瞬けば、仲間達が彼を庇うように居並んでいた。
「大丈夫、微力ですが私達がいます」
ライトニングロッドを抱きしめ、輝島・華(夢見花・e11960)が微笑む。
「大切な仲間の、ノルさんを縛る枷は此処で! 皆で潰して打ち砕くですよ!」
ついでに彼女からノルさんの妹分の座も奪ってみせます!
如意棒を突きつけ、心なしか、その胸部装甲へ鋭い視線を送っているマロン・ビネガー(六花流転・e17169)が朗らかに宣戦布告する。
「ノルさんのため……妹のためにも。守ってみせます」
決意を意味する赤い花弁、生への執着が染付いた蒼い攻性植物の花弁を織り込んだペストマスクを装着し――ゼラニウム・シュミット(決意の華・e24975)がそれと向き合う。
「ノルくんのコワいモノ、ボクも戦う。絶対に一緒に乗り越えよう!」
橙水晶の瞳に優しい色を湛え、ゲリン・ユルドゥス(白翼橙星・e25246)が声を掛けてくれる。
皆の言葉に応じるように、ノルは顔を上げ、真っ直ぐにノウェムを見据えた。
(「大丈夫。俺は、ひとりじゃないから」)
目の前にルーツがいる。だが、恐怖はない。
「さぁ行くぜ、ノル!」
最後に、ラティクスが威勢良く奮えば、ノルは力強く頷き応じる。
「ああ!」
片や――眼前で交わされる会話など歯牙にも掛けず、ノウェムは身の丈ほどのバスターライフルを淡々と構えた。
「ケルベロス確認。排除します」
●激突
走る光線をラティクスは雷槍で受け流す――それを繰る指先が凍り付いていくが、彼は気に止めず、光線の向きを地面に叩きつけるよう躰を捻り、道を作る。
くるりと入れ替わり前に出たのはノル。真っ直ぐ急所を狙う戦槌を、それは数歩引くだけで巧くいなす。
だが、更にエクスカリバールを振り上げた華と、ガントレットのジェットエンジンを解放した彼方が左右から仕掛ける。不可避、そう思える挟撃をそれは深く身を沈めて躱す。二人が捉えたのはあざ笑うように揺れる銀の髪。
逃がさないです、とマロンが双節棍のように分かれた如意棒でその腕を搦め取れば、すかさずオウガメタルを纏ったゲリンが突進する。ノウェムは構えた銃を振り回すようにして盾としたが、彼の拳は躱せなかった。
(「ノルくんは、世界で一番大好きな友達。怖くて辛い時、抱きしめて、一人じゃないって言ってくれた」)
「ボクにとって大切な人を殺すのは、絶対にゆるさない!」
だが、苦痛に表情を歪めることもなく――そのまま銃を回転させてゲリンを突き飛ばすと、ひと跳びで間合いの外まで一度逃れた。
「速ぇな」
ひゅうと口笛混じり、ラティクスは賞賛した。楽しそうな彼の声音に、ルリナはラティさんらしい、と困ったように笑う。
単純に動きが速い、というだけではなく――ノウェムは最低限の動作でケルベロス達の攻撃をかいくぐる。
仕掛ける前より演算で導き出しているかの如く。否、実際そうなのだろう。
「でしたら、相手の自由を奪うまで。確実な一撃を選んでいくべきでしょう」
彼の凍り付いた腕を鮮やかな手捌きで治療しつつ、ゼラニウムが告げる。後方から戦場を見ていた彼女が判断するに、相手はかなりの回避力を持っている。
更に、高火力にチューンアップされている敵のバスターライフルは、守りを固めた彼らの体力を一気に削り取ってくる。その分制御が難しいだろうに、彼女の狙いはどれも的確だった。
これが完成機の性能――たった数回のやりとりで、皆、その力を実感していた。
「一人を狙った攻撃しかしてこないみたいだね……念のためにもうひとつ!」
ルリナがケルベロスチェインで地に魔法陣を描き、皆を守護する。
明るい声音で励ましながらも、彼女の胸の裡には少し不安があった――周囲で、いくつか開戦した気配がある。
声を届けることは敵わぬだろう距離。だが確かに、他の敵と戦う仲間が視界にちらちらと映るのだ。
(「大丈夫かな……ううん、きっと大丈夫」)
近い戦場で宿敵と対峙しているだろう恋人を思い――軽く首を振って、目の前の戦いに集中する。
気合いを高める雄叫びを上げながら、彼方が距離を詰める。
地を蹴り、身体を捻って拳を突き出す。がむしゃらな一撃。それをウェノムは正面から受け止める――届かない、その事実に悔しさを覚えつつ、ふと彼はウェノムが銃を逆さに構えていることに気付く。そして、彼女の背後より具現化した光の剣を垂直に振り下ろすゲリンを見、その意味を知る。
「ゲリンさん、危ない!」
背後に下がりながら、彼方が叫ぶ。バスターライフルの銃口が、光を集めていた。
「任せろ!」
ルリナと華を制し、ラティクスが体当たりする形でゲリンと入れ替わると、破氣を高めて銃口の前に立ち塞がる。
強烈なレーザーがオーラを突き破り腕を灼く――金の瞳に怒りを隠さず、ノルが滑走する。流星の煌めきが斜めに走り、ウェノムの頬にひとすじの疵が走った。
即座、刃を変形させ斬りかかったマロンの頭上をそれはふわりと飛び越え、また間合いを広げる。
「私は…癒す側の立場なのだから…その決意を今此処に!『決意の華冠』!」
青水晶で癒しの力を増幅しつつ、ゼラニウムはラティクスの核を探る。魂から治癒力を引き出し高めることで、その恐ろしいほどの傷はたちまち薄くなっていく。それでも仮の処置だ。
時間をとってきちんと休まねば、この傷は治るまい。
「チ、今のでも取り逃がすか」
「やっぱり可愛くないです」
痛みより、なかなか芯を捕らえた攻撃が出来ないことに歯噛みするラティクスにマロンも同意しつつ、光輝くオウガ粒子を放出する――同様にメタリックバーストを重ねながら華が頷く。
「でもちゃんと当たるようになってきていますの」
ノルの一撃が形になったことが、証左である。何より多くの言葉を発せず皆が動ける心地よさがあった。戦いやすい――相手の攻撃が危険であるにも関わらず、誰もが振り返る事無く戦える充足感。
対し、相手は――どこかおかしいですね、とぽつりと零したのはゼラニウムであった。
「……ノウェムはただ私達を見つけたから、戦っているだけ、のような」
それだけならば不自然ではないが。無策すぎるのが気になった。レジーナが指揮をとっているのであれば、何かしらの指示や作戦を出すのでは無いか。
地の利があるというのに、ノウェムは仲間と合流しようという気配すら見せない。
周囲に感じられるいくつかの戦場も、詳細は解らぬが、同様の状態であるように思えた。
その中で、もっとも強力な個体とぶつかる気配の方へと視線を向け、ルリナは目を瞠る。
「レジーナを圧してる……!」
レジーナと対峙するケルベロス達は、他班の救援を待つのでは無く、積極的に仕掛けているようだ。それが指揮系統に狂いを生じさせているようだ。
だが、この相手にこの攻め方は長続きするものではあるまい――ならば、こちらも早くノウェムを倒し、援護しに行かねば――。
「簡単な事じゃないけど!」
顎を伝う汗を乱暴に拭って、彼方は己を奮うよう声を出す。
「ノルさんが超えなきゃいけない壁と戦うというなら! それを助けるためには、今までの僕の力以上の力で戦わなきゃ!」
己を喝する言葉は、仲間達にも強く響き。再び、戦場が動き出す。
●心の核
それから幾度か直線的な閃光が爆ぜ、血と塵が舞う。
相変わらず精緻なノウェムの動きは変わらぬが、ケルベロス達はそれを捉える事ができるようになってきていた。
彼女の腹部中心にあるコアが眩く光る。
丁度懐へ飛び込んでいた彼方を襲う、強烈なエネルギー波。右肩が無くなったかのような、恐ろしい痛み――。
「こ、れくらいでっ!」
倒れるもんか、唇を噛みしめ痛みを堪え、返すはとっておきの応酬。
「ブレイブスター!アクションモジュールシックス!コードナルカミ!迸れ!」
天より一筋の雷光が左手のガントレットへと落ちる。閃光はグラビティによって増幅され、四叉に分かれ――放たれる。
倒れ込むように振るわれた動きに対応できなかったのか、AC 006:『コードナルカミ』はノウェムの動きを強か捉えた。無数の疵に覆われた赤い装甲をぱりぱりと稲光が駆けて、それは動けない。
そのまま崩れ落ちた彼方の元へ、ゼラニウムがすぐさま駆けつける。傷はすぐ治せるが――戦闘に復帰することはできないだろう。
彼が身体を張って、これ以上無い好機を生み出した――ありがとう、ノルは囁いて、一度瞑目し、
「皆、俺に力を貸してほしい!」
心からの思いを、改めて言葉にする。
当然だ、という表情と様々ないらえ。どれも明るく力強く、彼に応えた。
「ええ、ノル姉さんのためです……ゲリン君!」
先にオウガメタルを纏って駆け出したマロンの声にゲリンが頷き、続く。
「月光よ、彼の者の魂を照らしたまえ…願わくば苦果を憐れみ、天へと導くことのできる慈愛の力をこの手に…ゆっくり休んで、ね?」
鋼の腕が赤い装甲を穿てば、その疵を庇うように月のような白い光を手で優しく撫ぜる。
相反するような攻撃は、どちらもノウェムの装甲を更に破壊し、守りを剥いだ。
次に距離を詰めたのはラティクスだった。痛む腕をだらりと垂らしつつ、片腕で構え、
「潰せ《風槌》!叢雲流牙槍術、弐式・窮奇!」
自身の闘気を乱気流へ変じ、暴風を槍の穂先に纏わせる。
ここまで追い込まれても揺らがないノウェムの体勢を崩すべく、ラティクスは肩を狙うように軽く矛を上げる――素早く判断し身を低くして躱そうとしたそれへ、力任せに捻って軌道を変え、膝を穿つ。
この一撃の本領は、威力よりもその特性――暴風はノウェムの四肢に纏わり付き、動きを阻害する。
「今だ! やれ!!」
痛みをねじ伏せ彼が叫んだ時、既にノルは動いていた。
体勢を崩したノウェムが目の前の脅威を如何に退けようとするか――彼の脳裡で様々なシミュレーションが生まれ、瞬く間に理想的な動きの像を造り出す。
「コードX-0、術式演算(カリキュレーション)。ターゲットロック。演算完了」
実験機だからこそ知り尽くしたノウェムの動き――集中した彼の世界で、それは時が凍り付いたように止まって見えた。
正面から距離を詰め、誓約を刻んだ白銀のリボルバーをノウェムの胸へと突きつける。次に彼女が取る動きも解っている。力任せに振り払おうとする銃の横薙ぎを躱すべく、仰向けに倒れる形で滑り込み、引き金に指をかける。
その前に、光を溜め始めたバスターライフルを、きりりと凛々しい表情をした巨大すぎる羊神が吹き飛ばしていく。
いっけーと拳を突き上げたルリアの横、華がエレキブーストで彼の力を引き上げる。
「さあノル兄様、今です!」
(「俺たちは、ひとりじゃない。確かな絆が、互いに通じ合う心がある」)
絶望的な性能差を埋める、今の心の核。それをぶつける。
「俺たちの、ひとの心を――魂を刻め!」
高い銃声と破壊音が殷殷と反響する――。
覆い被さるようになったノウェムの背中から、銃弾が真っ直ぐ突き抜けていく。
至近距離で起こった撃鉄に、それは回避する事も敵わず、ただ戦慄いた。
「……ガ、ガ」
機械的にブレた高い声が、耳の横で響く。刻まれていた識別コードごと、穿たれた胸。それは致命的な損傷であるのは誰が見ても明らかだった。
――それでも、ノウェムは恐怖を覚えたりはしないのだろう。
ただ彼を見つめる感情の宿らぬ赤い瞳はやがて色を失い――彼女は崩れ落ちた。
大切な友が無事で良かったと安堵しつつ、ゲリンはそっと囁く。
もしこの子が生まれ変わるのなら、命を大事に思う優しい心の持ち主でありますように。先の攻撃時、願ったことは嘘では無い。
「それまで……おやすみなさい、ノウェム」
●女王、その決着
ひび割れたバイザー、殆ど残らぬ襤褸切れのマント――満身創痍と表現するに相応しい姿となってなお、女王は健在であった。
戦場の状態を見れば、そこで展開された激闘は一目でわかる。
レジーナは指揮官としての威厳と覚悟をもってケルベロス達を迎え撃った。
「……ブチ抜けぇええッ!」
凄みのある一吼えに、ゼラニウムも続く。
「今度は私が……!」
先程まで仲間を癒やす事に注力してきたそれに渾身の雷を湛え、解き放つ。傷付いた仲間達に報いるための、一矢。
――絶対にこの作戦を成功させるのだ、と。
「うずうずヒラヒラ、花アタックです!」
マロンにより女神の花園より召喚された色とりどりの花が戦場を彩る。鮮やかで美しい花たちが、レジーナの周囲を埋め尽くす。
高まる芳香の中生まれた『名も無き花』が、数多のグラビティの雨が降り注ぐ中で、幻想的に揺れ、種子となって消えていく。
怒濤の如き集中砲火――耐えるレジーナの姿を見据え、華が纏うオウガメタルを解き放つ。
「さあ、最後の一押しですの!」
可能な限り大きく広がったオウガ粒子が、きらきらと光輝く。
最後に冴え冴えとした氷の一矢が、それを穿った。
そして、鬨が上がる――。
作者:黒塚婁 |
重傷:ラティクス・クレスト(槍牙・e02204) 秋空・彼方(英勇戦記ブレイブスター・e16735) 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年4月14日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 7/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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