●目覚めし弩級
「召集に応じてくれ、感謝する。アルシェール・アリストクラット(自宅貴族・e00684)他、6名のケルベロス達の調査によって、コマンダー・レジーナに回収された弩級兵装の行方が判明した」
以上の事から、敵の狙いは弩級兵装を組み込むことで、載霊機ドレッドノートを再び起動させる事であると想定される。そう言って、クロート・エステス(ドワーフのヘリオライダー・en0211)は、いつになく険しい表情で次なる作戦について語り始めた。
「弩級ダモクレスの代名詞でもある『ドレッドノート』が動き出すような事があれば、人類はケルベロス・ウォーを発動しなければ対抗する事は出来なくなる。お前達の活躍で、弩級兵装の2つは完全破壊。残る2つにも大きなダメージを与え、載霊機ドレッドノートが直ぐに動き出す事はないと思うが……」
しかし、『弩級超頭脳神経伝達ユニット』を修復可能なコマンダー・レジーナは撃破されておらず、敵に時間を与えてしまえば、載霊機ドレッドノートは本来の力を取り戻してしまう。
「現在、指揮官型ダモクレスの6体は、その全力をもって載霊機ドレッドノートを守護し、復活させようと動き出している。そこで、お前達には載霊機ドレッドノートへの強襲作戦を依頼したい」
来るべきケルベロス・ウォーによる決戦の前に、載霊機ドレッドノートを守るダモクレス達に、どの程度の打撃を与えられるか。今後の戦いを左右する、極めて重要な作戦だ。
「現在、載霊機ドレッドノートは、ダモクレス軍団によって制圧されている。ドレッドノートの周辺にはマザー・アイリスの量産型ダモクレスの軍勢が展開していて、ケルベロス・ウォーを発動しなければ攻め込む事は難しい状況だ」
そのため、今回もヘリオンからの降下作戦を決行するが、敵も黙って降下を許すつもりはないようだ。現に、踏破王クビアラが対ケルベロス用の作戦として、ドレッドノートの周囲に『ヘリオン撃破用の砲台』と、それを守護する強力なダモクレスを配備している。まずは、この砲台を撃破しなければ、ヘリオンによる強襲降下作戦も行えない。
「砲台破壊を目的として降下する場合、お前達は空中でヘリオンへの攻撃を防ぎつつ、砲台に取り付いて敵を撃破。その後、砲台を破壊するという流れになるぞ」
砲台を撃破できれば、後の憂いなく載霊機ドレッドノートへの潜入できる。潜入後の攻撃目標は、大きく分けると4つだ。
「1つ目は、ドレッドノートの歩行ユニットの修復を行っている、ジュモー・エレクトリシアンとその配下だ。この部隊を撃破することで、ケルベロス・ウォーを仕掛けた時点の、載霊機ドレッドノートの移動速度を下げる事が可能になる」
二足歩行可能になった載霊機ドレッドノートは、中途半端な修復状態であっても時速100km以上で移動できる。ケルベロス・ウォーの戦闘中に東京の都心部まで移動するには十分な速度であり、修復するダモクレスを破壊する事は重要になる。
「2つ目は、ディザスター・キングが守る『弩級外燃機関エンジン』だ。ディザスター・キングの軍団は、自らが『弩級外燃機関エンジン』の一部となる事で、必要な出力を確保しようとしている」
この部隊を撃破することで出力の低下が見込めるが、完全に停止させることはできない。だが、『弩級外燃機関エンジン』の出力はケルベロス・ウォー時の戦闘用ダモクレスの数と戦闘力に直結するため、後の戦いを優位に進めたいのであれば、少しでも出力を低下させておくことが望ましい。
「3つ目の攻撃目標は、『弩級超頭脳神経伝達ユニット』の修復を行っている、コマンダー・レジーナの軍団だ。修復を成功させられると、ドレッドノートは自由に動くことが可能になる」
その危険度は、今までに戦ってきたダモクレスの比ではない。なにしろ、あの巨体である。拳の一撃は直径数km単位のクレーターを生む程の威力であり、これで殺害した人間からグラビティ・チェインを吸収することで、半永久的に破壊活動を行うこともできるという恐ろしい存在だ。
このシステムを破壊する為には、コマンダー・レジーナを撃破する必要がある。その場合、脊髄への集中攻撃が必要となり、それ相応の戦力を要求される。最悪、コマンダー・レジーナを撃破できなかった場合でも、多くの配下を撃破する事で、攻撃の頻度を下げる事は可能だが。
「最後の目標は、弩級兵装回収作戦で動きのなかった指揮官型ダモクレス、イマジネイターだ。こいつらはドレッドノートと融合することで、自らがドレッドノートの意志になろうと企んでいるようだが……」
仮に、イマジネイターが融合せずとも、敵はドレッドノートを無人の弩級起動兵器として運用してくる。現時点での危険度は低いが、万が一、ケルベロス・ウォーに敗北するような事があれば、自ら意志を持つ弩級ダモクレスを野放しにしてしまうことになる。
「載霊機ドレッドノートと戦うには、ケルベロス・ウォーの発動が不可欠だ。その時の戦いを少しでも有利に進めるために、この作戦は絶対に成功させる必要がある」
どの部隊と戦うにしても、強敵との遭遇は避けられない。だが、個々の力は弱くとも、人間にはそれを紡ぎ、繋ぐことで、何倍にも高める術がある。
赤き血の流れる人間の底力を、心を持たぬ機械達に見せてやれ。そう言って、クロートは改めてケルベロス達に依頼した。
参加者 | |
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ジョルディ・クレイグ(黒影の重騎士・e00466) |
呉羽・律(凱歌継承者・e00780) |
ムギ・マキシマム(赤鬼・e01182) |
カナメ・クリュウ(蒼き悪魔・e02196) |
ヤクト・ラオフォーゲル(銀毛金眼の焔天狼・e02399) |
白波瀬・雅(サンライザー・e02440) |
ソル・ログナー(希望双星・e14612) |
ワーブ・シートン(とんでも田舎系灰色熊・e14774) |
●弩級の中枢
載霊機ドレッドノート。規格外の巨体を誇る弩級ダモクレスの内部へと、ケルベロス達は決死の潜入を成功させていた。
この場所自体は、ダンジョンとして幾度となく走破して来た者も多い。外部を守る砲台が全て破壊された今、必要とされるのは迅速な攻めだ。
「ダモクレスには最近、煮え湯飲まされてばっかだしな。この作戦は後に続く要素もあるわけだから、きっちりこなして後で楽できるようにしますかねっ……と」
そう、ヤクト・ラオフォーゲル(銀毛金眼の焔天狼・e02399)が口にした矢先、彼らを出迎えたのは異形の軍勢。
明らかにロボット然とした姿の者から、どう見ても人間が鎧を纏ったようにしか見えない者、果ては獣の頭を持った軍人から、肉体を構成する大半の箇所がホログラフの者まで。
彼らは当然のことながら、その全てが余すところなくダモクレスだった。型こそ違えど、その身が機械で造られていることに相違はない。どうにも凄まじい陣容の混成部隊だが、この場所が弩級の中枢……『弩級超頭脳神経伝達ユニット』を守る、コマンダー・レジーナの部隊と考えれば、納得も行く。
「さて、こっちも戦闘開始だね」
軍勢の中に目当ての相手を見つけ、カナメ・クリュウ(蒼き悪魔・e02196)が足を止めた。彼の視線の先に映る者。それは絶えず不気味な笑みを浮かべる、10歳ほどの白衣の少女。
黒髪の隙間から覗く赤い瞳が、怪しげな輝きを放っている。三日月のように歪んだ口元は血のように赤く、白衣の袖から覗く腕の先は、大小様々な医療器具と化している。
ドクターマルコ。天災ドクターの異名を持つ、生体改造を得意とするダモクレスだった。彼女にとっては、有機生命体であること自体が病気そのもの。故に、目に付いた生物を手当たり次第、見境なく改造して回るという危険な存在。
「まぁ、おいら的には、直接、縁のない相手なんだけどねぇ。まぁ、ここで、何とかしないとですよぅ」
巨熊の姿をしたワーブ・シートン(とんでも田舎系灰色熊・e14774)が、その穏やかな口調とは裏腹に、鋭い視線で敵を射抜いた。
この場を押さえ、仲間達を先に行かせるのも大切だが、それを抜きにしてもこんなやつを野放しにはできない。この狂った医者を放置しておけば、人間か動物かの区別なしに、地球上のあらゆる生物へ改造の魔の手が伸びてしまう。
「こっからは行き止まりだぜ?」
「お前の相手は俺達だ、悪いが付き合ってもらうぜ」
敵が動き出すよりも先に、ソル・ログナー(希望双星・e14612)とムギ・マキシマム(赤鬼・e01182)の二人が、それぞれ退路を塞ぐようにして散開した。だが、そんな彼らの姿を前にしても、ドクターマルコは身体を小刻みに揺すりながら、奇怪な笑みを浮かべているだけだった。
「地球人……脆弱なタンパク質の肉体を持つ、機械にとっての癌細胞……。レプリカント……エラーが起きて、異形と成り果てたダモクレス……。全部まとめて、私が治療してあげようね」
機械の身体を持つダモクレスにとって、有機の肉体は、それ自体が病。心を持たぬダモクレスにとって、感情はバグかエラーでしかない。
この地球に生きる定命の者達からすれば、それは狂気に等しい発想だった。だが、ダモクレスであるドクターマルコからすれば、これは至極真っ当な考えということになるのだろう。
「どうやら、話すだけ無駄みたいね」
溢れんばかりの狂気を前に、白波瀬・雅(サンライザー・e02440)も覚悟を決めた。
こいつはヤバい。そして強い。華奢な見た目からは想像できない程に、その力は黒い闘気のような煙として、敵の足元から漂って来ている。
「狂える機械よ……。我が嘴と爪を以て、貴方の妄執を破断する!」
「さぁ、戦劇を始めようか!」
ジョルディ・クレイグ(黒影の重騎士・e00466)が双斧を構え、長剣を掲げて呉羽・律(凱歌継承者・e00780)が叫ぶ。
狂った医者の紡ぎ出す、戦慄の外れた歯車の音を止めるため。弩級の中枢に足を踏み入れた、地獄の番犬達の死闘が幕を開けた。
●天災ドクター
弩級の機人の脊髄にて、邂逅したるは機械仕掛けの狂った医師。中枢を守る存在としては、なかなか皮肉が効いている。
「なかなかイカれた相手のようだが……いつものように、俺はただやるべき事をやるだけだ」
だが、そんな状況に飲まれることなく、ムギは自身の駆るオウガメタルから銀色の粒子を解き放った。
全身の装甲から放たれる光が、仲間達の感覚を極限までに研ぎ澄まして行く。各上の相手と戦うには、定石ともいえる自己強化。もっとも、ドクターマルコからしてみれば、それは未知なる感染症にしか見えないもので。
「異様な力の感染を確認……。これは、全員治療が必要だね」
左手から生えた無数の手術器具を動かしながら、奇怪な笑みを浮かべて呟いた。
「おっと、ちょっと大人しくしててくれる?」
「悪いが、好きにやらせんさ」
このまま、先手を許してなるものか。すかさずカナメが床を蹴り、ソルも側方から回り込む。
炸裂する跳び蹴り、そして回し蹴り。二つの衝撃が同時に重なり、ドクターマルコの華奢な身体を吹き飛ばし。
「逃さんぞ!」
すかさず、ジョルディが懐に飛び込んで、巨斧の一撃を炸裂させた。
「……ッ!? いけないね、病人は大人しくしていなくちゃ……」
もっとも、白衣を破られ、中の機械さえ丸見えにされても、ドクターマルコは何ら怯む様子を見せなかった。そればかりか、足元から吹き出す黒い霧が濃くなるにつれ、能面のような顔に浮かぶ狂気の色も、ますます強みを増して行き。
「お尻を出しな。オイルの注射をしてあげようね」
そう言うが早いか、信じられない程の跳躍力で、ケルベロス達の頭上へ跳び上がる。あの小柄な身体の、いったいどこにそんな力が。その答えを考える暇さえも与えずに、ドクターマルコの袖口から覗く、巨大な注射器がミサイルのように射出された。
「……痛っ! ちょっ……な、なに……これ……!?」
飛翔する注射器の先端が、文字通り雅の尻に突き刺さった。生肌に五寸釘を直接打ち込まれたような鈍い痛みが腰に走ったが、それはまだ序の口といえるものだった。
「うっ……き、気持ち悪……。な……なに、注射したのよ……」
注ぎ込まれた不純物の塊が、血管を通して全身に回って行く不快な感触。自分の身体が、徐々に自分のものでない何かに変わって行く感覚に、体中が蝕まれ、意識が薄れる。
「彼女は俺に任せてくれ。君達は、その間に敵の足止めを!」
このまま放っておくのは拙いと察してか、すかさず律が爆破スイッチのボタンを押した。
敵を攻撃するためでない。極彩色の爆風で雅を含めた仲間達を鼓舞することにより、その肉体に残る様々な毒素さえも、まとめて吹き飛ばすことが目的だ。
「あ、ありがと……。それにしても、あの医者……人様の身体を、なんだと思ってるのよ!」
肉体に力が戻ったのを確認し、雅が軽く腕を振るう。その間に、ドクターマルコを押さえるべく、のっそりと近づいたのは……巨熊のワーブ!
「まぁ、ご存知はないんですけどぉ、地球のために、ここで破壊させてもらうんですよぅ!!」
真上から見下ろすように敵の姿を捉え、ワーブは容赦なく脚を振るった。
「まずは、これから行くですよぅ!!」
繰り出されるは、その身からは想像もできない程に素早い、電光石火の回し蹴り。身長さが大きかったからだろうか。丸太のような脚を使った重たい一撃は、ドクターマルコの頭部を真横から直撃し。
「これは、ほんのお返しよ!」
「逃がすかっての! こいつもオマケだ!」
続けて、雅とヤクトがタイミングを合わせ、流星の如き蹴撃を敵の顔面に叩き込んだ。
「……やった……と、いうわけでは、なさそうだな」
顔面を吹き飛ばされ、首と胴体が離れ離れになったドクターマルコの姿を前にして、意味深な言葉を呟くソル。果たして、彼の予想は正しく、ドクターマルコは自分の頭を拾い上げて首の上に乗せると、調子を確かめるように軽く回して見せた。
「いけない、いけない、危ないところ。縫合、縫合……元通り♪」
これもまた、彼女の使うグラビティの一つだろうか。自分の身体でさえ、パーツとしてしか考えない。あまりに薄気味悪いドクターマルコの発想に、思わず何人かの者達が嫌悪の感情を露わにする。
「なるほどね。ドクターだけに、接合手術もお手の物ってことかな?」
だが、そうでなくては面白くないと、カナメはどこか期待に満ちた表情で呟いた。
久しぶりに、楽しめそうな相手だ。改造狂と戦闘狂。どちらが、より面白い形で狂っているのか、この戦いでそれを確かめてみるのも、また一興。
体勢を整えられたことで、戦いは再び振り出しに戻った。先に倒れるのは、果たしてどちらか。恐れ知らずの名を冠する弩級ダモクレスの体内で、狂った機械との戦いは続く。
●病みの終焉
入り組んだパイプと、冷たい鋼鉄の壁や床。載霊機ドレッドノートの内部における戦いは、正に佳境を迎えていた。
あらゆる生命体を、機械へ改造せんと企むドクターマルコ。様々な医療器具を凶器に変えて繰り出される攻撃も強力だったが、それ以上に厄介なのが、彼女の持つ修復能力そのものだった。
腕を吹き飛ばされようと、足を破壊されようと、人知を超えたオペの技術で瞬く間に損傷を修復させてしまう。狂っていても、医者は医者。ドクターマルコの忌まわしき技術は、生体改造だけに留まらない。
「往生際の悪いやつだな。いい加減に、破壊されろ!」
唸りを上げて振り上げられたソルのチェーンソー剣が、真正面からドクターマルコに振り下ろされる。無数の手術器具にチェーンソーの刃が絡み合い、不快な金属音と共に火花が散る。
「随分と粘ったみたいだけど……そろそろ終わりだよ」
ソルの攻撃を拮抗しているドクターマルコの背後から、カナメが攻性植物を解き放って襲い掛からせた。
先端を、巨大な口に変えての捕食形態。食らい付いた傷口から注入される猛毒は、あらゆる存在を蝕み破壊する。血の通わない、機械の身体を持ったダモクレスであっても、それは同じこと。
「行くぜ、雅! 合わせろ!」
「任せて! 絶対に逃がさないんだから!」
金属の腐食する音を聞きながら、散開するヤクトと雅の二人。光と闇、二つの力をヤクトが拳に宿して敵に迫れば、同じく雅もまた両手の縛霊手を展開する。奇しくも似たような武器を使う二人は、そのままドクターマルコを左右から挟み込み。
「食らえ! ダブルセイクリッド……」
「……裂界撃!」
さながら、それぞれが巨大な右手と左手になったかの如く、敵の身体を押し潰す。狼の覇気を纏って迫るヤクトが魔の右腕を体現するならば、光翼を広げた雅の姿は、さながら聖なる左腕と言ったところか。
両腕を締め付けられるように挟まれて、さすがのドクターマルコも自由に動くことができなかった。その隙を、胸元が完全に空いたところを、二人は決して見逃さず。
「今だよ、ワーブさん!」
「まだまだ! もいっちょ、オマケ食らわせてやれ!」
互いに敵を抑え込んだまま、右の拳にグラビティを集中させていたワーブへと叫ぶ。その言葉に、ワーブは静かに頷いて、ゆっくりと間合いを詰めて行き。
「この右手にかけるですよぅ!」
殆ど零距離に等しい位置から、必殺の拳を叩き込んだ。
それは、正に大木をも圧し折る巨熊の一撃。どれだけ固い身体を持つダモクレスでも、この衝撃を完全に殺すことはできない。
「ぐっ……はっ……!?」
人間であれば心臓のある部分を抉られて、ドクターマルコがついに膝を突いた。だが、それでも黒髪の隙間から覗く、狂気に染まった瞳は未だ衰えず。
「キェェェィッ!」
あらゆる拘束を振り払い、ドクターマルコは奇声を発して飛び掛かって来た。
迫り来る、身の丈程もある巨大な手術器具の数々。まともに食らえば、肉体を木っ端微塵に解体されかねない。強烈な一撃。だが、それでも……。
「その程度で俺が止まるかぁぁああ! 筋肉全開!!」
襲い掛かる刃の数々を、ムギが真正面から受け止めていた。肉が、骨が、容赦なく抉られる音が辺りに響くが、それでも彼は怯まなかった。
「これぞ筋肉白刃取りってな! ブチかませジョルディ!」
そう言って、にやりと笑いつつ振り返る。今までの戦いで、敵も相当に疲弊しているはず。ならば、最後は力と力、気合と気合いのぶつかり合いだ。
「ムギ殿……その想い、無駄にはせぬ! 征け! 相棒!」
「任せろ! さあ、これでフィナーレだ!」
長剣を引き抜き、律が駆ける。その後ろから、頭部に力を集中し、それをジョルディが右目に圧縮させて。
「エネルギーチャンバー頭部接続! 視線誘導ロック完了! 喰らえ! 全てを貫く魔眼の一撃……Mega Blaster!! ”Balor”!!」
瞬間、凄まじいエネルギーの奔流が、ジョルディの右目から発射された。
視線のみで、相手を殺せるとさえ言われる一つ目の魔神。その名を冠した破滅の光は、律の長剣に力を貸すように追い縋り。
「俺達の力、受けてもらおうか!」
「これぞ新たな人機一体! 超必殺! Budy Crash!」
破滅の光が刃と重なり、狂った医者を両断する。もはや、修復することさえ敵わない。断末魔の叫びを上げることさえできず、爆散して行くドクターマルコ。
「やったな、相棒!」
「ああ……。それに、どうやら向こうも片付いたようだ」
揃いの腕輪を互いに当てて鳴らしつつ、律はジョルディへ促すよう告げる。見れば、どうやらレジーナを相手取っていた者達も、無事に撃破を成功させたようだ。
「なんだ、もう終わったのか? それじゃ……後は、さっさとズラかりますかね」
多少、拍子抜けな表情を浮かべつつも、迅速に撤退へと切り替えるヤクト。敵の親玉が倒された以上、この場に長く留まる理由もなく。
「殿は俺がやる。さあ、退くぞ!」
元来た道を引き返す仲間達を横目に、ソルは敢えて退路の確保を買って出た。
「まぁ、このあとすぐ、この場所で大きな戦いが起きるですからねぇ。今は、抜けさせていただくですよぅ」
「大きな戦い、か……。次の相手も、オレを楽しませてくれるのかな?」
冷静に引き際を見極めるワーブの横で、カナメが不敵に笑ってみせる。
載霊機ドレッドノート。東北の地に眠る弩級ダモクレスの体内で、次なる戦いを勝利へと導く、確かな布石を確信したケルベロス達だった。
作者:雷紋寺音弥 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年4月14日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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