載霊機ドレッドノートの戦い～総力を以て強襲せよ

■リプレイ

●突入そして遭遇
「対空砲台八門はすべて沈黙している……担当した連中が巧くやってくれたようだ」
　載霊機ドレッドノートへと突入するヘリオン内部で、叢雲・刃心（セイクリッドセイバー・e29861）が外を窺いながら告げる。
「有難いことです。……こちらも、しっかりと使命を果たさないと」
　砲台からあがる信号弾を見据えながら、大原・大地（内気なチビデブゴニアン・e12427）がやや固い口調で応じる。
「ああ、早々に撃墜されて標的の顔も見れずに逃げ帰る最悪の展開は、避けられたみたいだからね」
　ごく淡々と、塚原・宗近（地獄の重撃・e02426）が告げる。
「突入して、向き合うことができれば……倒すよ。必ず」
「よしっ！　降下、出るぞっ！」
　峰岸・雅也（ご近所ヒーロー・e13147）が気合の籠った声で叫ぶ。御武運を、と返すヘリオライダーの声を背に、ケルベロスたちは載霊機ドレッドノートに向けて降下する。
「こちらの標的は、ドレッドノートの歩行ユニット修復を行っているジュモー・エレクトリシアン軍団麾下、ドクターＤ部隊所属のダモクレス『ブリキングセブン』です！」
　あらためて仲間に告げながら、他グループとの連携担当を務める大地はドクターＤ部隊を標的とするケルベロスたちとの合流を図る。
　その数、４グループ。サーヴァントを除いて３２名。ドクターＤ部隊は首領のドクターＤと護衛ダモクレス３体とのことなので、各グループが一体ずつ受け持つことになる。
「４グループ、全員揃ってますね。よかった……」
　大地が確認し、ほっと安堵の息をつく。もし、ここで早々と欠員が出ていると、攻撃を仕掛ける者の負担が格段に大きくなる。
　するとリーファリナ・フラッグス（拳で語るお姉さん・e00877）が、苦笑混じりに突っ込む。
「いやいや、安心してる場合じゃねーから！　本番の戦闘はこれからだから！」
「そ、そうでした。気を引き締めて行きましょう！」
　慌てた声を出し、大地はてってと走りだす。
（「まあ、もちろん油断はできないが、戦争ってもんは仕掛ける側の事前準備が想定通りに達成できていれば、それで八割は勝てるというしな」）
　言葉には出さないが、メカなちっちゃいおっさんこと流星・清和（汎用箱型決戦兵器・e00984）が、分別臭く呟く。
（「当然っちゃ当然だが、ダモクレスの戦い方は基本的に理詰めだ。つまり、充分な戦力を用意して効果的に運用した側が、順当に勝つ確率が高い」）
　当時の記憶は朧に霞の彼方だが、もともと清和は歴としたダモクレスの指揮官級機体が転じてレプリカントとなり、ケルベロスになったという経歴を持つ。
　そのためか、清和は戦闘に臨んで、まず彼我の有利不利を冷静に計算する。もちろん、必ずしも計算通りに行くものではないが、それでも今回の戦いは有利と判断できる。
　だが。
　いざ敵と遭遇し、自分たちが担当する敵『ブリキングセブン』を見た時、清和は内心、勝利への計算を揺るがすような奇妙な不気味さを感じた。
（「……何なんだ？　この妙な感じは？」）
　もちろん事前に資料は見たし情報も集めた。しかし、やはり目の前に打ち倒すべき存在として出て来られると……この敵は予期せぬ事態というか、番狂わせを起こしそうな気がする。
　もっとも、その不気味感というかアンバランス感は、彼が元ダモクレスのレプリカントだから感じるのかもしれない。
　現に地球人の雅也は、舌舐めずりしそうな表情で言い放つ。
「なんか、こう、うずうずしてくるような相手だな！　男の子心を擽るっつーかさ！」
「うーん……ユニークなのは認めるが……」
　少々釈然としない表情で、リーファリナが唸る。
　すると、その途端。
　腕のドリルを特徴ある作動音をあげて高速回転させながら、『ブリキングセブン』がリーファリナに突撃してきた。
「ドリルアタック・セブン！」
「は、迅っ！」
　鈍重そうな外見のイメージとは裏腹に『ブリキングセブン』の動作は迅い。リーファリナは跳びさがったが躱しきれず、あわやという瞬間に、大地のサーヴァント、ボクスドラゴンの『ジン』が飛び込んだ。
「キュウッ！」
　高速回転する巨大ドリルと衝突し、『ジン』はひとたまりもなく吹っ飛ばされる。しかし、その捨て身の妨害でドリルの切っ先が逸れ、リーファリナは無傷で避ける。
（「うわ、やべぇ……」）
　内心冷や汗をかきながらも、リーファリナは素早く体勢を立て直し、巨大なダモクレスを睨み据える。
「いきなり何しやがる！　お嫁にいけなくなったらどーすんだ！」
「……オ嫁？」
　意外に愛嬌のある動作で首を傾げ、『ブリキングセブン』が怪訝そうな声を出す。
「オ前、オ嫁来タカ？　戦イ来タ、違ウカ？」
「いや、違わん、違わん！　私は、貴様と戦いに来たんだ！」
　そんな顔で真面目に訊ねるな、調子が狂う、と、リーファリナは声をはりあげる。
　すると雅也が、猛然と斬りかかる。
「おら、よそ見してんじゃねーっ！」
　ばき、と音をたてて敵の脚部に斬りつけ、氷を付着させると、雅也は他のダモクレスに向かう他チームに向け、サムズアップして叫ぶ。
「とっとと終わらせて、手ぇ貸しに行くぜ！」
「ム、オ前コソ、ヨソ見シテルジャナイカ！」
　ダモクレスが文句をつけると、雅也は呵呵大笑する。
「こいつはよそ見じゃねぇ！　激励のパフォーマンスって奴だ！　油断はしてねぇから存分にかかってこい！」
「いやいや、まだまだ、こっちの手番です！」
　大地が咆え、雅也が傷つけた脚部に竜爪を叩きつける。
「『ジン』を吹っ飛ばして、タダで済むと思わないでくださいよ！」
「キュ？」
　いや、ボクはやられてないよ、健在だよ、とアピールするように声をだしながら、『ジン』は自分自身を治癒する。
　そこへメディックの小花衣・雅（星謐・e22451）が、オリジナルの治癒グラビティ『神の炎（マーゲン）』を重ね、回復に加えて防御力の強化を行う。
（「ディフェンダーを一撃で潰すほどの力はないようね。ならば、私の治癒で凌げるはず」）
　真剣な表情で戦況を測り、雅は呟く。彼女のサーヴァント、ウイングキャット『アステル』も、『ジン』の回復を行う。
　そして清和が、ドラゴニックハンマーを砲撃形態にして撃ち放つ。
「見かけによらず素早いなら、足止めして動きを止める！」
　外見には騙されん、と、清和は小さく呟く。
「……ちょっとやそっとじゃ潰れてくれそうにないわね、この相手」
　ならば防御からいきましょう、と、シアライラ・ミゼリコルディア（天翔けるフィリアレーギス・e00736）はゾディアックソードの紋章を光らせ、前衛に状態異常耐性を付与する。彼女のサーヴァント、ボクスドラゴンの『シグナス』も、自分自身に状態異常耐性を付与する。
　一方宗近は、最初から全開というべきか、オリジナル必殺技『鋼刃重撃（ハガネノジュウゲキ）』を放つ。
「この一撃の重さが全てを証明する」
　呟きとともに、鉄塊剣が唸る。凄まじい斬撃が『ブリキングセブン』の脚部を深々と抉る。
「よし、追い討ちっ！」
　リーファリナが同じ箇所に、刃のような回し蹴りを叩き込む。べきっ、と音がして、ダモクレスの巨体が傾く。
「クッ……足ガ……モウ、オ嫁ニイケナクナッタラドースル！」
「……行く気なのか？　嫁に？」
　ボケなのか意外に本気なのか、叫ぶ『ブリキングセブン』に、リーファリナは思わず真顔で訊ねる。
「つーか、婿のあてがあるのか？」
「……ナイ」
　力なく応じるダモクレスに、刃心がゾディアックソードから星座のオーラを飛ばして氷を付着させた。

●激闘そして決着
「マルチプルミサイルファイアー・セブン！」
　ダモクレスの咆哮とともに、ケルベロスの前衛に向け、その全身からミサイルが放たれる。クラッシャーの宗近を大地が、リーファリナを雅也が庇い、庇われた方は無傷だが、庇った方は倍のダメージを受ける。
（「何の！　ディフェンダーですから倍で元々です！」）
　とは言っても、痛いものは痛いですが、と、顔を顰め、大地は『ブリキングセブン』を振り仰ぐ。
　何回にも及ぶケルベロスの攻撃で、脚部を中心に多くの損傷を受けているが、まだその機能……攻撃や移動に目立った劣化，蹉跌はない。
「さすが名のある大型ダモクレス……しぶといぜ！」
　唸りながらも、雅也が斬撃を放つ。
「それだけに、倒し甲斐があるってもんだけどな！」
「オ前ラモ、シブトイ……我ガ攻撃ヲ受ケナガラ、一人トシテ倒レナイトハ……」
　ダモクレスが、賛嘆とも忌々しいともつかない口調で告げる。
「正直、侮ッテイタ……コレガ、ケルベロスカ……」
「悪いけど、その反省を生かす機会、与えるつもりはありません！」
　宣言し、大地が気咬弾を放つ。『ブリキングセブン』の肩のあたりで、爆発が起きる。
　そして『ジン』が大地に、『アステル』が雅也に治癒を行い、雅は前衛全体に回復と破壊力上昇の士気上げ爆発を送る。
　そして清和が、満を持して叫ぶ。
「全パーツ射出っ　超合金合体！　いくぞ必殺、フォートレススラーッシュ！」
「ヌオオオオッ！」
　ダモクレスが発した咆哮は、驚愕か、あるいは戦慄か。清和は、どこからともなく飛んできたグラビティ形成のパーツと合体、『ブリキングセブン』に劣らぬ巨大ロボットと化し、手にした大剣で斬りつける。
　これぞ清和必殺のオリジナルグラビティ『超合金DX要塞斬（チョウゴウキンデラックスフォートレススラッシュ）』である。通常の戦闘で等身大の敵に使うと、弱い者いじめというか大人げない印象を与えてしまう技だが、相手が巨大ロボットなら、対等互角、誰憚ることもない。
　ドリルを大剣にぶつけて防ごうとする相手の動きを巧みにいなし、清和は大上段から袈裟切りに大剣を撃ち込む。
　一刀両断、とまではいかなかったが、『ブリキングセブン』は深刻なダメージを受けてよろめく。
「追い討ちっ！」
　シアライラが、ここぞとばかりにオリジナル必殺技『Lumen de Purificatione（ジョウカノヒカリ）』を放つ。
「燃え盛る太陽よ、煌々と輝く月よ、夜空に瞬く無数の星よ。大いなる力を与えたまえ！」
　天空に捧げる祈りに応じ、ダモクレスを浄化分解する光が降り注ぐ。この光はシアライラ自身をドレインで癒やすが、現状ではダメージを受けていないので、その効果は出ない。
「グ……ガ……」
　ダモクレスが濁った声で呻き、全身からぎしぎしと軋み音があがる。
　そして宗近が、ぶれないというか何というか、大きくジャンプして鉄塊剣を猛然と叩きつける。
「立て直す隙は与えるつもりはないよ……ここは力押しで行かせてもらう！」
「ガッ！」
　必殺の『鋼刃重撃（ハガネノジュウゲキ）』で肩口を大きく割られ、よろめく『ブリキングセブン』の全身から黒煙が噴き出す。
「悪いが一気にスクラップだっ！　いけえっ！」
　雄叫びをあげて、リーファリナがオリジナル必殺技『継界攻撃式、撃滅（デストラクション）』を繰り出す。
「全てを打ち砕く界の怒りよ。力の猛り、轟きをもって我が敵を討ち滅ぼさん！」
　リーファリナが言い放つと同時に、魔法円から異界の力が噴き出して、『ブリキングセブン』に襲いかかる。生きて這いずり燃え盛る炎、世界を震わせる轟音、そして全てを打ち砕く砲撃。
　凄まじいとしか言いようのない爆炎と噴煙が収まった時、『ブリキングセブン』はかろうじて立ってはいるものの、リーファリナの宣言通り、ほぼスクラップと化していた。
「これでとどめ……だな！」
　刃心が鉄塊剣に地獄の炎をまとわせ、真っ向から叩きつける。がらがらと音をたててダモクレスの巨体が崩れ、一山の残骸と化した。
「やったぜ！　じゃあ、他は……」
　周囲を見回す雅也に、大地が告げる。
「皆さん、既にそれぞれの標的を討ち取ったようです！　残るは指揮官のドクターＤ……も、今、討ち取りました！」
「ならば、長居は無用だな。引き揚げるぞ！」
　雅也が叫び、ケルベロスたちは誰一人欠けることなく載霊機ドレッドノートから脱出……いや、凱旋した。

作者：秋津透	重傷：なし 死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2017年4月14日 難度：やや難 参加：8人 結果：成功！
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