載霊機ドレッドノートの戦い~アイアンフォース

作者:鹿崎シーカー

「みんな弩級兵装回収作戦の対応、お疲れ様。早速ダモクレス達が動き出したよ」
 跳鹿・穫は改まって咳払いし、離し始めた。
 過日の弩級兵装回収作戦の折り、回収されたコマンダー・レジーナ及び『弩級超頭脳神経伝達ユニット』と『弩級外燃機関エンジン』が載霊機ドレッドノートに転送された事が明らかになった。
 戦力をつぎ込んで発掘した兵装をあそこへ運んだ理由はただ一つ。六基の指揮官は弩級兵装を組み込んだ載霊機ドレッドノートを、再起動させるつもりなのだ。
 もし、弩級兵装を装備したドレッドノートがダモクレスとして動きだせば、人類はケルベロス・ウォーを発動せざるを得なくなる。皆には急ぎこれを強襲し、指揮官達の思惑を妨害してほしい。
 幸い弩級兵装の内二つは完全破壊。残る二つも大ダメージを負っているので、ドレッドノートがすぐに再起動することはない。しかし、『弩級超頭脳神経伝達ユニット』と、それを修復可能なコマンダー・レジーナは健在。敵に時間を与えてしまえば、載霊機ドレッドノートは本来の力を発揮するだろう。
 指揮官型ダモクレスも修復にあたり、保持する全戦力をもって防衛線を構築している。来るべき決戦の前に、載霊機ドレッドノートとダモクレス軍団にどの程度打撃を与えられるかが、今後の趨勢を占うだろう。
 今作戦の概要についてだが、ドレッドノート周囲にはマザー・アイリスの次世代量産型ダモクレスの軍勢が展開しており、ケルベロス・ウォー無しで攻め込むのは難しい。よって、ヘリオンから降下する必要があるのだが、こちらもまた厳しい。と言うのも、踏破王クビアラがヘリオン撃破用の対空砲台を設置し、彼配下のダモクレスがその守備と砲台の操作にあたっているのだ。
 以上も踏まえて、それぞれの目標を列挙する。
 一、全八台あるクビアラの砲台。先に話した砲台と操作する配下を倒すことにより、ヘリオンの強襲降下作戦が発動できる。逆に言えば、破壊しない限り潜入はほぼ不可能。砲台と守護役ダモクレスが倒せなければ、撤退すらも危うくなる。最初の関門といえよう。
 二、ジュモー・エレクトリシアン率いる歩行ユニット修復班。完全崩壊したウィングに代わる移動手段として足を直す部隊を倒せば、ドレッドノートの動きを遅くすることができるだろう。しかし、ジュモー以下の補修担当はいずれも大勢の護衛部隊を引き連れている。ジュモー以外の三体を倒すには、一体につき三、四チーム。ジュモー撃破には八チーム以上が必要になる。ちなみに、ドレッドノートの最高歩行速度は時速二百キロ超。一日あれば十分都心に辿り着く。
 三、『弩級外燃機関エンジン』。ディザスター・キングの軍団は、自らエンジンの一部となって必要な出力を確保しようとしているようだ。彼らを撃破する事で、ドレッドノートの出力を引き下げられる。起動した載霊機ドレッドノートはこのエンジンを利用して、数多くの戦闘用ダモクレスを生産できる。エンジン出力は、戦争時のダモクレスの数と戦闘力に直結するだろう。
 四、『弩級超頭脳神経伝達ユニット』の修復を行っている、コマンダー・レジーナとその軍団だ。頭脳ユニットが修復されれば、ドレッドノート自身が攻撃可能になるため危険度は一掃大きくなる。ドレッドノート級の攻撃ならば、腕を振り回すだけで巨大なクレーターができるだろう。コマンダー・レジーナは護衛部隊を連れてドレッドノート脊髄部にいる。撃破には十二チーム程度の集中攻撃がいるが、レジーナを撃破できなくとも多くの配下を撃破すれば、その分攻撃頻度は下がる。
 五、最後の目標は、イレギュラーズの筆頭・イマジネイター。イマジネイターは、自らドレッドノートの意志となるべく融合を図っているらしい。現時点での危険度は低いが、万が一ケルベロス・ウォーに敗北すれば、自意識を持つ弩級ダモクレスが出現する事になる。可能ならば、阻止しておきたい。
 長くなったが、皆にはこの五つの目標からひとつを選び、攻撃してもらうことになる。結集したのはいずれも強大な敵ばかり。準備と作戦を練って臨んでほしい。
「ドレッドノートが起動してない、今が最大のチャンスなんだ。僕も全力でサポートするから、必ず無事に帰ってきて!」


参加者
イヴ・ユークリッド(ヴァイスリッター・e00293)
ラハティエル・マッケンゼン(マドンナリリーの花婿・e01199)
天海・矜棲(ランブルフィッシュ海賊団船長・e03027)
ルーチェ・プロキオン(魔法少女ぷりずむルーチェ・e04143)
シュテルン・プラティーン(天衣無縫フルメタルクルセイダ・e09171)
一津橋・茜(紅蒼ブラストバーン・e13537)
エージュ・ワードゥック(未完の大姫・e24307)

■リプレイ

「フンッ、ハァーッ!」
 蒸気を噴いてデコトラが展開。人型になった『鉄将』デコドラス=ゲンダーは即座に反転し中空を見据えた。目に映るのは中空のイヴ・ユークリッド(ヴァイスリッター・e00293)。黒鉄の足に突きつけた黒白の二刀が、紅白の光を帯びる!
「接敵確認。充填、発射!」
 解放された光線を、ゲンダーはサマーソルトで蹴散らし霧散! 宙返りする影めがけ、灼熱装甲をまとったシュテルン・プラティーン(天衣無縫フルメタルクルセイダ・e09171)がライドキャリバーから跳んだ!
「篁流格闘術! 『氷刀』ッ!」
「何ッ!」
 一回転した胸に蹴りが直撃。ノックバックする巨体に、一津橋・茜(紅蒼ブラストバーン・e13537)は竜が彫られたハンマーを掲げる!
「ゲンダアアアッ! その風貌、聞きしに勝らぬデコトラァ! 肉持って来いよオラァ! ですッ!」
 吹雪が渦巻く鉄槌をアッパーで相殺するも、腕が音を立てて凍りつく。勢いで着地するゲンダーにローレン・ローヴェンドランテ(灰色夢道・e14818)は両手を向けた。噴出した血が無数の鴉に変貌し、飛び立つ!
「さぁ行くよ……消え失せろ!」
「舐めるな!」
 ゲンダーの銃が鉛弾が吐きだし、鴉の群れを端から一掃。黒羽を突破しローレンを撃たんとする弾幕の前に、逆さのラハティエル・マッケンゼン(マドンナリリーの花婿・e01199)がインターラプト! 金色に燃える剣を振るって弾丸を刻む!
「ジェロニモーッ!」
「まだまだァッ!」
 剣戟に銃撃を浴びせるゲンダー。斬り損ね、裂傷ができるラハティエルの下を天海・矜棲(ランブルフィッシュ海賊団船長・e03027)とルーチェ・プロキオン(魔法少女ぷりずむルーチェ・e04143)が駆け抜けた。
「今がチャンスだ。準備はいいか!」
「もちろんです!」
 ルーチェが両耳に手を当て、矜棲が操舵輪型バックルを殴り回した。稲妻が弾ける!
「変身! さあ、錨を上げるぜ!」
『オモカジイッパーイ! リベル! ヨーソローッ!』
「ムッ!」
 気づいたゲンダーが銃口を下ろした。降りてくる銃弾の嵐をカトラスと星型ロッドが迎撃し、ミニスカドレス姿のルーチェと髑髏顔の矜棲が突進していく。その背を押すのは光の奔流!
「行けェッ!」
「サンライト・シュゥートッ!」
 ピストルで反撃する横で、ルーチェはロケットめいた飛び蹴りを放つ! ゲンダーは銃撃しながら拳を握る。キックに対してパンチが衝突! 爆発する衝撃波!
「ぬおおッ!」
「くっ……!」
 下がるゲンダーと、弾きかれるルーチェ。ゲンダーを遠巻きに囲む仲間達に、エージュ・ワードゥック(未完の大姫・e24307)は亀甲めいた大盾をあおいだ。背後に、周囲を警戒しつつ厳つい翼竜がやってくる。
「大亀さんふぁいと!」
 仄かな光混じりの風が凪ぐ。殴った拳を握っては開き、ゲンダーは敵影を見渡した。
「思ったより出来るようだな。いいアイデアが浮かんだぞ」
「その口癖、相変わらずですね」
 ゲンダーに、ルーチェはぺこりとお辞儀する。
「お久しぶりです、デコドラス=ゲンダー。識別名称プロキオンL-UC3……と言っても覚えていませんよね?」
「生憎、俺の知り合いにケルベロスはいなくてな」
 これ見よがしに銃を排莢。大量の空薬莢を地面に落とし、鼻で笑った。
「それとも、情でも買おうという魂胆か? ハッ、バッドアイデアだ! ラジオドラマの方がよほどまともだぞ!」
「そんなつもりはありません」
 ルーチェは毅然と言い放ち、ロッドを構える。先端の星が数度輝き、使い手の身の丈以上に巨大化した!
「あなたはここで倒します。誰であろうと、ドレッドノート修復はさせません!」
「レジーナのヤツは仲間が倒す! ゲンダー、お前の相手はオレ達だ! その銃が飾りじゃないと証明してみろ!」
「抜かせッ!」
 矜棲に叫ぶと同時、ローレンが両手を影に突っ込んだ。跳躍したゲンダーの足に影から伸びる鎖が巻き付く。スネが赤黒く錆びるに構わず、ゲンダーは頭を引き絞る。より高く跳んだルーチェが振り下ろすロッドの先を、ヘッドバットで迎え撃った!
「はあああああっ!」
「ンヌァアアアアアッ!」
 後頭部から蒸気噴出! 全力の頭突きと橙の雷を宿すロッドが真っ向から激突し、打ち返す! 続けて肘から蒸気を噴き出しコマめいて猛回転。全方位に銃弾をばらまきにかかる!
「蜂の巣になれッ!」
「なりませんよッ!」
 ハンマーを扇風機めいて回しながら駆けだした。銃弾を防ぎながらの強行軍!
「そんな豆鉄砲効きません! わたしを倒したければ波動砲でも持って来い! ですッ!」
「必要ない! いいアイデアがある!」
 脚力で鎖を千切って地に下りるゲンダー。デコトラに変形着地しロケットスタート! 茜を潰さんとする!
「俺が波動砲だァーッ!」
「そらあああああッ!」
 ハンマーを地に突き茜は棒高跳びめいてジャンプキック! 蹴り足にバンパーがくぼむが、デコトラはドリフトでタックル敢行! 金色の炎翼を広げたラハティエルは猛禽のように滑空してを救い上げた。
「我が名はラハティエル、ケルベロスが一人! 邪悪な鋼鉄兵よ、我が黄金の炎を見よ。そして……絶望せよ」
「小癪な……ならばこれだ!」
 ドリフトからの人型変形し銃を撃つ。ラハティエルは二人を離すとバレルロールしながら突進。銃弾をかすめながら迫る剣士に屈むゲンダーの背中を矜棲のカトラスが斜めに切り裂く。
「やらすか!」
「ええい、邪魔だッ!」
 裏拳に打ち払われる矜棲! 転がりながらも、叫ぶ!
「捕まえろッ!」
「了解」
 ローレンが黒粘液のネットを投げた。装甲に張りつく即席の網を引っ張り、射線を逸らせる。明後日の方へ飛ぶ銃弾達!
「うおおおおッ! 今度はなんだ!」
「今がチャンスだ。イヴ!」
 網を剥がそうとするゲンダーの右足に、二刀を電極めいて突き入れたイヴは蒼い瞳を見開いた。
「リミッターオープン。エネルギー、解放!」
 脚部爆発! 注ぎ込まれたエネルギーが膝を中から破裂させ、ほとばしる! ここぞとばかりにラハティエルが肩にダイブキックを叩きこんだ。揺らぐ巨体!
「セイ、ハッ!」
「ぐぬゥゥゥ! この程度で……」
 ゲンダーの手が肩の蹴り足を捕らえた。片足に刀を刺したまま、倒れゴマのように回転! イヴとラハティエルが振り回されて地面に打たれ、つられたローレンが空を舞う。倒れたイヴの頭めがけて、ゲンダーは爆破された足を持ち上げる!
「この程度で、倒れると思うなッ!」
「篁流格闘術!」
 肘を曲げたシュテルンがダッシュで迫る! 断頭めいて打ち下ろされる右足を差した指が、伸びた!
「『氷爪雪牙』ッ!」
「ヌアアアアアッ!」
 指先が爆破された膝を貫通! その指をへし折り叩きつけられた足元から、翼竜がイヴを連れてふらふら飛び立つ。蒼い雷のブレスを吐きかけた腹を銃弾が撃ち抜いた。
「アーク……!」
「おのれちょこざいな! ……だがいいアイデアが浮かんだぞ」
 呟き、銃口を翼を広げたローレンに向ける。直後、放たれた一発を茜がハンマーで叩き落とし、ゲンダーはヘイズネットを腕にからめ思い切り引いた!
「こっちに、来いッ!」
「っ!」
 引かれかけたローレンがとっさにネットを解除! 勢い余って腕を引き過ぎたゲンダーがぐらついたところへルーチェは高速で疾駆する。鋼の腕を覆う橙色の電光が弾け、励起した。ロケットめいた跳躍で殴りかかる!
「サンライト・インパルスッ!」
「フンッ!」
 ゲンダーはイヴの二刀が刺さった足を踏んじばってルーチェの渾身のパンチをガード! 雷鳴がうなり、防御した腕に稲妻が流れる。だが鉄鬼の将は平然として言い放った。
「やはり、俺はお前など知らん!」
「どういう、意味ですか!」
 電撃をさらに励起させ、拳を押し込むルーチェ。電光は肘を伝い、肩まで達するがゲンダーは根を張ったように動かない。
「これだけのハンデがあってこのレベル! そんな貧弱な奴は俺の車両部隊にはいない。俺の部下はな!」
 電気の流れる腕を振り、ルーチェの腕をひっつかむ! 一本背負いめいて踵を返し、思い切り振った!
「お前達より、遥かに強いッ!」
「ぐはっ……!」
 背中から叩きつけられ、ルーチェがわずかに浮き上がる。だが再び電流を流してグラップをほどき、連続バク転で飛び下がった。ゲンダーは一瞬、レジーナが戦っているはずの方へ視線を向ける。赤いレンズをまたたかせ、蒸気を発散。
「向こうも佳境といったところか。そろそろ……本気を出させてもらうぞッ!」
 エンジン音が大きくいなないた。その右腕が手にした銃と変形合体。足首の車輪がかかとに移動し回転を始める。一回り大きくなった腕から、拳に添って銃身が飛び出した。空中のエージュが降らせる柔らかなオーラに癒されながら、ルーチェは星のロッドに雷を注ぐ。
「私は……いえ、私達は元々本気ですっ! デコドラス=ゲンダー、あなたはここで倒します! この、魔法にかけて!」
「やってみろ! やれるものならなァァァッ!」
 かかとの車輪が高速回転し急発進! 爆走に対抗して走るルーチェは電光を全身にまとって蹴りかかった。肥大した右腕でガード、タックルで弾き飛ばす! 肩部のタイヤが脇腹をヤスリめいて削り取った。
「ぐっ!」
「フハハハハハハ! 貧弱貧弱!」
 ダッシュの勢いでハイジャンプしたゲンダーはローレンに殴りかかる! 灰色の翼を広げ、不敵な笑みとともに手を伸ばす。薄革の手袋に触れられたゲンダーの腕が、腹にめりこむと同時に火を噴いた! コートの背が抜け鮮血が飛び散る。それでもなお、全力で振り下ろす!
「ぬアアアアッ!」
 落とされたローレンがふと笑う。背中の穴から零れる鮮血が固まり、鎖に変じてゲンダーを締め上げた。広げた翼の後方、広がる血だまりがボコボコと隆起する!
「痛くなーい痛くなーい……その程度で、ボクはやられないよ?」
 真上に差した手を振ると、血は無数の剣になって飛翔した。右手の銃で迎撃を試みるゲンダー。弾丸をかわして彼の後ろへ突き抜けた剣を二本手に取り、イヴは白いロングコートをはためかせる! 発砲の反動を利用して見返るゲンダーのライトに、回転斬撃を叩きこむ!
「せあ!」
「フンッ!」
 片方が砕け、片方が光る! ガラス片をまき散らしながらも目を潰されたイヴにジャブを出しかけた左手を、血鎖が捕らえる。引き寄せられるまま落下するゲンダーの懐に飛び込む茜とシュテルン!
「篁流格闘術!」
「圧し潰せ、巨王ヒューゲル!」
 茜の腕輪が真紅に輝き、シュテルンの腕がドリルめいて回った。頭を引き絞るゲンダーを、赤い力場が押し潰す! 胸に打たれるボディブロー!
「『隼六花・襲爪』ッ!」
「縊り捩り切り落とす! ですッ!」
 胸元を削る拳打と咆哮。隕石めいて落下する中、ゲンダーはシュテルンを突き飛ばして割り込んだ茜の頭をつかみ、叫びながらヘッドバットを繰り出した!
「ぐッ……おおおおおッ!」
 裂帛の一撃が、シュテルンを押しのけた茜の額を砕く。二度、三度。ぶつかる度に力場は弱まり、血が流れる! 顔面を赤黒く染めた茜はカッと目を見開いて頭を握る手を払い、ハンマーを振り上げた!
「まだ……やられませんよッ! はああああああああッ!」
 真紅の力場が戦槌に収束! 紅蓮に変わったそれを、全霊を込めて叩きつけた。赤い重力が、黒鉄の将を突き落とす! すかさずエネルギー球を投げて回復するエージュ。弾ける泡沫の下で、ゲンダーを囲むオレンジラインが入った銀盾のドローンと一輪バイク。それらを足場にしてイヴとシュテルンが飛び交い、ゲンダーを蹴って斬りつける!
「オラオラオラオラオラオラオラオラ!」
「せい!」
 銃を乱射しドローンを破壊していくゲンダーの全身が傷にまみれる。嵐のように吹き荒れる剣閃とキックの中、イヴは膝に刺さったままの二刀を引き抜き、再度突き入れた!
「片足を……もらい受けます!」
 閃光、爆発! ボロボロの膝はついに砕け、千切れ飛んだ!
「まだだ……俺に策ありッ!」
 なおも発砲を続ける銃にシュテルンの蹴りが命中! 同時、右腕がオレンジの電光をほとばしらせ、赤黒い錆に覆われた。ひび割れる巨腕!
「何ィィィッ!? クソッ!」
 二人の頭をつかんで地面にぶち込む! そして片足の車輪を回してドローン包囲をタックル突破。仲間を回収し治癒していたエージュがハッと振り返った。
「あ、あわわ! えーっと、えーっと!」
「エージュ殿、皆を任せる!」
 吹き飛んでくる矜棲を受け流し、ラハティエルが前に出る。広げた大翼が燃え盛って拡大し、太陽めいて輝きを増す!
「さぁ私が盾だ! 鋼鉄兵よ、我が真髄をその目に刻め!」
 宣言し、大きく羽ばたく。解き放たれる炎の洪水がゲンダーを飲み込み、灼熱に燃え上がった! 装甲表面を焼かれ、獄熱の突風に揺れ動きながらも走るゲンダー。
「それが本気か! ならば!」
 錆び切り電光弾ける腕を崩しながら、なお加速!
「真正面から……粉砕するのみよッ! ぬおおおおおッ!」
 炎を抜けたパンチがラハティエルを打ち抜いた。後方、倒れた矜棲が操舵舵型ベルトを回し、傷をふさいだローレンが血を吸い上げる。
「巨大ロボ動かすには、昔から心が必要だと相場が決まってるんだぜ……決めろルーチェ! 使えッ!」
『オモカジイッパイイッパーイ! アンカーストライク! ヨーソロー!』
 ベルトが激しく稲光を発し、血の塊を巨大なイカリの形に変えた。その柄を握り、ルーチェは橙色の稲妻を流し込む! 向かってくる満身創痍の将を真っ直ぐに見据え、走った!
「行きます!」
「ウオオオオオオッ!」
 隻腕の拳とアンカーの刺突が最後の正面衝突を起こす! 血でできたアンカーの先が拳を砕き、橙の電光が黒鉄の体を駆け巡った。端々から爆炎を放つゲンダー!
「サンライト……インパルスッ!」
「バ、バカな……俺、がッ……ぐああああああッ!」
 ほとばしる激しい雷が鉄将を押し潰す。眩いオレンジに包まれ、デゴドラス=ゲンダーは爆発四散した。


「ふぁいと! がーんばれ! みんな、生き返って!」
 亀甲の盾を必死であおぐエージュに、矜棲は倒れたまま声を上げた。
「一応聞いとくぜ。皆、まだやれそうか?」
「私は大丈夫です」
 視線を寄越すイヴにローレンが首を振る。
「ごめん、ちょっとふらふらするかな。貧血だから、すぐ治るけど」
「無理はなされない方がいいだろう、ローレン殿。私は問題ない。茜殿は……」
「肉あれば治ります!」
 炎に包まれたラハティエルに、燻製肉をかじる茜が続く。
「では、予定通り先行班の援護に向かう、でいいですね。……皆さん、ありがとうございました」
 各々回復し、立ち上がる仲間に頭を下げるルーチェ。シュテルンはヨタローにまたがった。
「さて、最後の一仕事です。ひとっ走り行きましょう!」

作者:鹿崎シーカー 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年4月14日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 6/感動した 1/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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