載霊機ドレッドノートの戦い~鉄騎降る

作者:雨音瑛

 ケルベロスたちの姿を確認したウィズ・ホライズン(レプリカントのヘリオライダー・en0158)が、タブレット端末から視線を上げた。
「弩級兵装回収作戦の結果、コマンダー・レジーナと『弩級超頭脳神経伝達ユニット』『弩級外燃機関エンジン』が回収され、載霊機ドレッドノートに転送されたことが黒住・舞彩(我竜拳士・e04871)をはじめとするケルベロスたちの調査で判明した」
 指揮官型ダモクレスは弩級兵装をドレッドノートに組み込み、再起動しようとしているらしい。もしドレッドノートが動き出せば、人類はケルベロス・ウォーの発動なしに対抗することはできないだろう。
「弩級兵装の2つは破壊、残る2つにも甚大な被害を与えられたため、ドレッドノートがすぐに動き出すことはない——が、弩級超頭脳神経伝達ユニットを修復できるコマンダー・レジーナが残存している」
 それは、敵に時間を与えてしまえばドレッドノートが本来の力を取り戻してしまうということ。
「現在、指揮官型ダモクレスたちはドレッドノートを守護し、復活させるべく動き出している。復活を阻止するため、ドレッドが本来の力を取り戻す前に強襲作戦が行われることとなった」
 作戦の概要は、と、ウィズが続ける。
「ドレッドノートに潜入後、目標に対し攻撃を行って欲しい。とはいえ、現在ドレッドノートはダモクレス軍団によって制圧されている」
 周辺にはマザー・アイリスの量産型ダモクレス軍勢が展開しており、ケルベロス・ウォーの発動なしに地上から攻め込むのは至難。そのため、ヘリオンからの降下作戦を行う必要がある。
 しかし、踏破王クビアラが対ケルベロス作戦としてドレッドノートの周囲に『ヘリオン撃破用の砲台』を設置。強力なダモクレスが砲台の守備との操作を行っているため、この砲台の破壊が必要になる。砲台が破壊できれば、ヘリオンからの強襲降下作戦でドレッドノートへの潜入が可能になるという。
「潜入後の攻撃目標は、4つだ」
 1つ目は、ドレッドノートの歩行ユニットを修復しているジュモー・エレクトリシアンとその配下。この軍団を攻撃することで、ドレッドノートの動きを阻害できる。
 2つ目は、『弩級外燃機関エンジン』を守るディザスター・キング。ディザスター・キングの軍団は、自らが『弩級外燃機関エンジン』の一部となってドレッドノートに必要な出力を確保しようとしている。この軍団を撃破すれば、ドレッドノートの出力を低下させられる。
 3つ目は、『弩級超頭脳神経伝達ユニット』を修復しているコマンダー・レジーナとその軍団。弩級超頭脳神経伝達ユニットが修復されれば、ドレッドノート自身が攻撃可能になるため、危険度はさらに増す。ドレッドノートの攻撃は、腕を振り回して殴りつけるだけで巨大なクレーターができるほど。この攻撃による被害は言わずもがなだろう。
 4つ目は、ドレッドノートと融合しようとしているイマジネイター。現時点では危険度こそ低いものの、ケルベロス・ウォーにおいて敗北すれば、自ら意志を持つ弩級ダモクレスが出現することになる。可能ならば、この融合を阻止しておきたい。
 説明を終えたウィズは、ゆっくりとケルベロスたちを見渡す。
「ドレッドノートと戦うにはケルベロス・ウォーを発動する必要があるわけだが……ケルベロス・ウォーを有利に進めるために、今回の作戦は成功させたいところだ。君たちならできると、私は信じているぞ」
 と、うなずき、笑顔を向けた。


参加者
メイザース・リドルテイカー(夢紡ぎの騙り部・e01026)
リディ・ミスト(幸せ求める笑顔の少女・e03612)
カルナ・ロッシュ(彷徨える霧雨・e05112)
遠之城・鞠緒(死線上のアリア・e06166)
未野・メリノ(めぇめぇめぇ・e07445)
ヒナタ・イクスェス(世界一シリアスが似合わない漢・e08816)
ハインツ・エクハルト(金剛級五番艦・e12606)
三城・あるま(リームス・e28799)

■リプレイ

●応酬
「神滅機装ヴォルザークは何処でしょうか、闘いの相手を所望します!」
 カルナ・ロッシュ(彷徨える霧雨・e05112)が言い終えるが早いか、ひとつの影がケルベロスたちに接近する。
「ご指名とは——嬉しいね!」
 小柄なシルエットに不釣り合いな、大きな斧が振り下ろされる。それをエクスカリバール「Heiligtum」で受け止めるのは、ハインツ・エクハルト(金剛級五番艦・e12606)だ。
「はっ、その程度かよ!」
 決して軽くはない一撃をこらえ、挑発の言葉をかける。身体のところどころが紫水晶のような装甲に覆われた少女——神滅機装ヴォルザークは、わかりやすく顔を歪めた。その一瞬を、ヒナタ・イクスェス(世界一シリアスが似合わない漢・e08816)は見逃さない。
「くぁ、背中ががら空きのオチね〜」
 続いて号令をひとつかけると、どこからともなく現れた小さな小型赤ペンギン群が殺到する。
「くぁ♪ さ〜楽しい楽しい嫌がらせの時間のオチね〜」
 ヒナタの呼び出した小型赤ペンギンの群れは、手にした重火器でヴォルザークへと集中砲火を浴びせる。その間、ヒナタ自身は踊りながら高みの見物を決め込んでいたりする。
「くぁくぁ〜♪」
 戦うことよりも煽ることが好き。そんな主・ヒナタの様子を気にも留めず、テレビウムの「ぽんこつ一号」は手にした凶器でガツンと殴りつけようとする。
「そう何度も……喰らうかよっ!」
 ヴォルザークは体勢を立て直し、斧で凶器を弾く。大きく振りかぶった斧を再び手元に引き寄せるヴォルザークの懐へ、リディ・ミスト(幸せ求める笑顔の少女・e03612)が飛び込んだ。
「それじゃあ、これはどうかな?」
 加える蹴撃は、ヴォルザークの急所へ一直線。SF作品にあるようなアーマーの上にオウガメタル「鬼牡丹の護り」を纏い、どこか優雅な振る舞いで拳を叩きつけるのは遠之城・鞠緒(死線上のアリア・e06166)だ。
「あなたこそ、そう何度も回避できますか?」
「はン、この神滅機装ヴォルザーク様を舐めるんじゃないよ」
「舐めてなんかいるものかよ。力業頼みのお前とは違うんだ!」
 ハインツの言葉に同調するように、オルトロス「チビ助」が咥えた剣で果敢に斬りかかる。直後、ハインツがオウガ粒子を前衛の仲間へ向けて放出した。
 同様に、メイザース・リドルテイカー(夢紡ぎの騙り部・e01026)も支援に当たる。
「その通り。攻撃、支援、回復……こちらはさまざまな役割を担って君に対峙しているのだよ。——我が名を以て命ず。其の身、銀光の盾となれーー堅牢なばかりが盾ではないよ?」
 オウガメタル「Atlas」を一瞥して魔力を分け与えれば、分体が生成される。分体はハインツの流体盾として作用するようになった。
 鞠緒のウイングキャット「ヴェクサシオン」が翼をはためかせ、前衛へ清らかな風を送り込む。
 ケルベロスは、再び攻めへと回る。カルナと三城・あるま(リームス・e28799)の、煌めきを宿した蹴りがヴォルザークを挟撃する。ヴォルザークは舌打ちをしながら、いったん下がる。が、すぐにまた前へと出てくる。
 前衛で戦うことが相当好きなのだろう。ならば、重い一振りにはいっそう気をつけなければならない。
「私は、私に出来る限りを行います。——照らします、ね」
 未野・メリノ(めぇめぇめぇ・e07445)は一呼吸し、歌い始めた。大気が微かに揺れ、惹き寄せられた光がかわいらしい小花を模る。メリノ自身を含む前衛に、やわらかな光が降り注いだ。
 ヴォルザークに噛みつこうと駆け寄るミミック「バイくん」の背中を見て、メリノは小さく呟く。
「バイくんが傷つくのは厭ですが、それでも、やらなければいけないことがあるのです」

●連携
 決して楽な戦いではない。開戦数分でハインツは思い至る。だが、その程度で怯むくらいならば、姉のようには到底なれない。視線は常にヴォルザークを捉え、庇える範囲ならば庇えるように。
「ここでどれだけ敵を削れるかが、みんなの運命を変えるんだ! さあ、気合い入れていくぜ!」
 鼓舞するように声を張り上げ、ハインツはエアシューズで駆ける。体を回転させながら蹴りを叩き込めば、アシストするようにチビ助が瘴気を解き放つ。そこですかさず、鞠緒がヴォルザークの胸元に手を伸ばす。
 現れるのは、紫水晶の色をした硬質な想定の本。鞠緒が慣れた手つきで本を開けば、心の奥底から音楽が湧き出してくる。
「これは、あなたの歌。懐い、覚えよ……」
 口元からこぼれ出た歌はヴォルザークの欲求、その根源を掻き立てる。
「クソ、なんだってんだ……!」
 呻くように顔を覆うヴォルザークをよそに、ヴェクサシオンは中衛に清らかな風を送る。
 バスターライフルを構えるあるまの髪が揺れれば、銃口からは容赦なく凍結光線が放たれた。確かに当たっているのを確認し、つぶさにヴォルザークの様子を観察する。あとどれくらいで倒れるのかは判別できない。
「顔色こそ悪いものの、まだ余裕がありそうですね」
 短く言い切られたあるまの言葉に反応し、ヴォルザークは斧を構える。
「当然、だろうが」
 地面を踏み切り、あるまの頭上で斧を掲げる。
「アタシがお前らケルベロスごときにやられるように——見えるってのかよ!」
 重さに任せた振り下ろしは、存外に早い。身構えるあるまの眼前に、小さな影が落ちる。
 ぽんこつ一号、だ。あまりにも重い一撃は、ぽんこつ一号を消し去るに至る。
「ちッ、ジャマしやがって……」
 斧を振り払い、ヴォルザークは数歩だけ距離を取る。
「くぁ、さすがに接近戦に強いオチね。くぁくぁ、でもそれで満足してるのなら……とんだ噛ませ犬のオチね〜」
 煽ることも忘れず、ヒナタは如意棒をヌンチャク型に変形させ、斧を牽制しながらヴォルザークの体へと的確に叩き込む。ヴォルザークが仕掛けてくる攻撃の威力を落とすのが、ヒナタの狙いであった。
 また、今回レジーナ軍団のひとり「神滅機装ヴォルザーク 」に狙いをつけたのは、ケルベロス・ウォー発動時にドレッドノートの移動距離を抑えるため。
(「超巨大メカの進撃、とだけ聞けば特撮的な夢があるけれど——現実はそんなに楽しいものではないみたいだ」)
 思わず笑みがこぼれるが、すぐさま表情を引き締める。
「夢物語で終わらせるとしようか」
 メイザースはリディの傷を大きく癒やした。
「ありがとう、メイザースさん! これでしばらく頑張れそうだよ!」
 癒やしてくれたことに、共に戦う仲間がいることに、感謝しながら。リディもまた自身の成すべきことをしようと、マインドリング「レディエンスリング」から光の剣を現出させる。一閃、リディの後ろから跳躍したメリノが現れた。
「負けるつもりは、ありませんから」
 垂直に振り下ろしたルーンアックスは、ヴォルザークに負けず劣らずの威力。バイくんも、主に負けじと黄金をばらまく。
 少しずつではあるが、ヴォルザークの体力が削れてきているのは間違いない。
(「力ありそうですし、早めに装甲と回避を削って短期決戦としたいですが……」)
 ヴォルザークと、彼女の手にする斧を見てカルナは息を漏らした。
「なかなか思うようにはいかないものですね」
 言いつつ、カルナの表情と動きは戦闘を楽しんでいるかのよう。
「舞え、霧氷の剣よ」
 紡がれた言葉に呼応して、凍てつく刃がヴォルザークへと襲いかかった。防ぎ切れなかったヴォルザークの細腕を、薄氷が覆う。
「ふぅん……面白いことしてくれるじゃねえの」
 彼女もまた、此度の戦闘を明らかに楽しんでいた。

●高揚
 ヴォルザークの行動を阻害しつつ、各自が攻撃を加え、または癒やしを与えてゆく。
 何度か攻撃も加えたが、弱点らしい弱点も見当たらない。ケルベロスの攻撃を受け止め、あるいは回避し、双方ともに消耗してゆく。
「私の前で、幸せは奪わせない……!」
 リディは攻撃を切り替えた。瞬間、ヴォルザーク周辺空間の時が止まる。リディが解放したのは、失われたはずのオラトリオの力、その一端だ。
 しかしあくまで一端、ヴォルザークが無理矢理にもがけば突破されてしまう程度の拘束力しかない。
「これくらい……なッ!?」
 ヴォルザークが力まかせに突破すると、身体にはいくつもの傷跡が刻まれた。さすがに驚嘆するヴォルザークへ、カルナが背後から肉薄する。
「なかなかの力をお持ちのようですね。でも、動きも攻撃も、すべてが大ぶりすぎます」
 相手にとって不足はない。ぞくぞくするほどに、楽しくなってくる。高ぶる感情をそのままに、カルナは高速演算を開始する。ほんのわずかの時間ではあるのに、攻撃を仕掛けるまでの時間すら惜しい。
「さぁ、楽しくなってきましたよ」
 計算が終わると同時に、カルナは利き手での一撃を見舞った。さらに加わるのは、メリノの獣化した脚による攻撃。バイくんもエクトプラズムの武器で殴りつけ、ヴォルザークを翻弄する。
 これだけ攻撃を叩き込んでもなお、まだ決定打とはならない。
「やれやれ、やっかいなことになったねぇ?」
 肩をすくめながらも、メイザースはハインツへ生命賦活の雷鳴を飛ばす。ヴォルザークの力はかなりのもので、その都度メイザースは的確にヒールを施してきた。なかなか味方の攻撃力を底上げする機会がなかったが、今ようやくその時が訪れたのだ。すぐにとはいかないが、やがて優勢に転じてくれることを願って。メイザースは、無言でライトニングロッドを握り直す。
 また、ヴェクサシオンも癒やし手として幾度となく翼をはためかせ、耐性を高めてくれている。まだ全員に耐性を行き渡らせることはできていないが、回復の一助となっていた。
「戦うからにはレジーナ軍の完封を……!」
 鞠緒が、手にしたファミリアロッド「藍の旋律」を青い目のハツカネズミへと変えた。一瞬だけ視線を交わし、魔力を籠めてヴォルザークへと撃ち出す。
「わかりやすく息切れのひとつでもしてくれれば良かったのですが、そうもいきませんね」
 ならば、とあるまは如意棒の形状を変える。相手に不利になることだったら、どんなことでも、いくらでもするつもりだ。
 ヌンチャク型となった如意棒で、あるまはヴォルザークの腕を弾きつつ打撃を与えようとする。だが、如意棒はあとわずか、ヴォルザークに届かず。
「ったく、うぜぇ連中だな……」
 ヴォルザークは斧を水平に構え、自身を癒やす。斧からは赤いオーラが立ち上っている。
 そんな変化をまったく気にせず、ヒナタはチェーンソー剣を唸らせた。
「くぁ、近くに顔見知りが居るような気もするけど、それはそれのオチ」
 今回の作戦でヴォルザークに狙いを定めたのも、全ては来る決戦のため。くぁ、と鳴いて、ヒナタはヴォルザークへと斬りかかる。
 チビ助がヴォルザークを睨んで炎を灯すと、ハインツも手の爪を硬化さて斬りかかる。とたん、ヴォルザークの手にしている斧から赤いオーラが消え去る。
「オレ達を倒せないようじゃ、レジーナの護衛失格だぜ?」
 返答代わりの、ヴォルザークの短い舌打ちだけが聞こえた。

●戦果
 戦闘に専念しつつも、鞠緒は気にかけていることがあった。
(「無事に敵を倒して帰れたら、メリノさんにモフらせて下さいってお願いしよう……」)
 子羊ウェアライダー、メリノのことだ。くるくるの巻き毛は、さぞかしふかふかのことだろう。動物変身したのなら、尚更だ。
 鞠緒の視線に気付いたメリノが、振り返る。
「鞠緒さんったら、もう……構いません、よ」
 琥珀色の瞳を細めて、メリノは鞠緒を見遣る。そうして、言葉を続ける。
「でも、無事に倒せたら、ですよ。ですから、頑張りましょう、ね」
 メリノに軽く触れられ、鞠緒も微笑み返す。獣化したメリノの一部を見てときめきながら、鞠緒はヴォルザークへと向き直った。
(「まだ大丈夫。こんな会話ができるのなら、わたしたちは勝てるはず」)
 傷の数、深さ。自身も、ヴォルザークも、相当のものだ。だが、ケルベロス側はまだ後衛に攻撃が及んでいない。その分、余裕が持てる。
 メリノがルーンアックスを叩きつけ、直後、鞠緒がタイミングを合わせて「幻影合成獣」を放つ。
「ああああーッ!! ったく、お前ら何なんだよッ!」
 ケルベロス側にはいくつもの加護が働いている。そのお陰で、ヴォルザークの攻撃は通りにくくなってきていた。苛立ちを咆吼に載せ、ヴォルザークが斧を手に駆け出す。
 捨て身とも思える行動ではあったが、斧は的確に振り下ろされ——リディへと、直撃した。
「くぁ、追い詰められてきたのオチね〜?」
 ヒナタはエアシューズ「赤ペンフット」で滑走し、炎に包まれた蹴りを喰らわせる。その間、リディの回復にあたるのはハインツとメイザースだ。
「これで大丈夫だ、あと一歩頑張ってこうぜ! トイ、トイ、トイ!!」
 故郷での魔除けのおまじない——激励の言葉でもある——とともに、蔦状に変形させたオーラが癒やしを与える。メイザースのウィッチオペレーションも加わり、リディの傷は見る見る間に消えていった。
「さて、どうかな?」
「あと一回……ううん、二回くらいなら喰らっても大丈夫かな?」
 問いかけるメイザースに笑顔で強がり、リディはオウガメタル「ハピネス」を自身に纏わせた。叩き込んだ拳からは、確かな手応えを感じる。
 チビ助の剣が閃くと、ヴォルザークを覆っていた紫水晶の装甲がいくつか剥げ落ちた。
「あと少し、でしょうか」
 それなら、とあるまはヴォルザークの正面へと回りこむ。
「全ッ力で、いっきますよーっ!!」
 掛け声と同時に、あるまがアルマジロの姿へと変わった。アルマジロは高速回転を始め、勢いのままに全身全霊の体当たりを喰らわせた。当たった場所は、ヴォルザークの頭部。そしてあるまの変身は、当たった衝撃で解ける。
「回復を味方に任せて正解でしたね」
 ぽつり呟いて、カルナは竜の幻影を解き放った。ヴォルザークは、カルナが放った幻影を回避できない。眼前まで迫る炎に目を瞑るでなく、ただ口角を上げて受け入れた。
「まあ、それなりに楽しかったぜ」
 強がりともとれる一言を残し、ついにヴォルザークは膝を突く。斧が手から落ち、上体が前方に倒れる。やがて身体と斧は灰のように崩れ、消え去った。
 これで、ヴォルザークは撃破した。次は他の班の援護を、と、援護する班を見極めようとリディが周囲の様子を伺う。思考より先に動き出そうとした足は、すぐに止まる。
「コマンダー・レジーナは、ヴォルザークと同じタイミングで撃破されたみたい。他班の援護も必要なさそうだよっ♪」
 撃破に時間がかかったものの、紛う事なき勝利。ハインツが快哉を叫ぶのを視界に映し、メイザースは穏やかな笑みを浮かべた。

作者:雨音瑛 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年4月14日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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