ガズウェル・ゴー・オン・ザ・プル

作者:鹿崎シーカー

「ハァー……」
「あっ」
 溜め息混じりに振るわれた刃が、市民の首を斬り飛ばした。くずおれる死体を足で蹴りどかすのは、アンニュイな表情の優男。
「あー、女の子いねー。っかしいな、この辺にいたと思うんだけど」
 遊園地をだらだら歩き、銀の長髪をかきむしる。その足元にはバラバラにされた死体が転がり、赤黒い血だまりができていた。右手の曲刀、左手の直剣をもてあそびながら、寸断されたアトラクションを覗き込む。
「みんな逃げたか? いや、俺に限ってンなこたねえな。世の女が俺をほっとくわけがねーし、実際ほっとかれねーし……おっ!」
 男の瞳がきらりと光った。傾いたメリーゴーランドを斬り裂けば、そこには倒れた女性が必死に手を伸ばしていた。足を押さえつけるのは、壊れた木馬。
「待って……誰か、誰かぁっ!」
「なぁ君、どうしたの? 今独り?」
 青年が声をかけると、女性は肩を震わせ振り向いた。恐怖に引きつる彼女に、男は軽薄そうな笑みを近づけた。
「お、すっげーマブじゃん。こんなとこで何してんの? ……あ、わかった。もしや彼にフラれたんだろ。ひでえなぁ、おめかしきっちりしてるし、いい女じゃん。な、俺んとこ来ない?」
「い、いやっ……!」
 耐えかねた女性がたまらず手を振る。スパンと鋭い音を立てる手の平。ビンタを食らった青年が顔を戻し、女性をにらんだ。
「痛ってぇな」
「ひっ……!」
 青ざめた女性が涙を浮かべる。構わず曲刀を抜く青年。
「今さ、俺の顔殴ったよね。誘ってやってんのに、そういうことする? 殴られせいでさ、俺の魅力消えたらどうしてくれんの。責任取れんの?」
 銀髪が逆立ち、青いオーラが陽炎めいて刃を包む。いやいやと首を振る女性に、青年は愛想を尽かせたように立ち上がった。
「あー、もういいや。お前、やっぱいらね」
 剣を握る手がぶれる。手近な木馬を蹴って去る青年の背後で、女性は真っ二つに斬り捨てられた。


「……女の敵?」
「まぁそうかもしれないけどさ……どこでそんな言葉覚えたの」
 資料とミッシェルを交互に見、跳鹿・穫は微妙な表情をした。
 昨今たびたび発生している、エインヘリアルの虐殺事件が予知された。
 今回解放されたのは、『ガズウェル』と言う名の男性エインヘリアルだ。軽薄で気分屋、おまけに女たらしのナルシスト。そんな彼は、とある遊園地にて復活し、ナンパついでに居合わせた客を虐殺しようとしているらしい。
 雪も溶け、徐々に寒さが和らいだためか、件の遊園地には若いカップルが多く集まる。そんなところで虐殺が始まった日には多大な犠牲が出てしまう。
 皆には急ぎ遊園地に向かい、ガズウェルを討ち取ってきてほしい。
 戦場となる遊園地は、中央の広場を囲むようにジェットコースターや観覧車、メリーゴーランドにコーヒーカップと定番のアトラクションが並んでおり、広場にてガズウェルが出現するらしい。
 広場は噴水や露店などがまばらにあり、憩いの場となっている。つまり、ここだけで既に人が多い。戦闘にあたって避難誘導が必要になるだろうが、ガズウェルが出現する前に避難させてしまうと、彼は別のところに送られてしまうので注意。
 ガズウェルは、出現後しばらくはナンパにうつつを抜かし、なんとなく殺したくなったら殺しを始める。彼の戦闘スタイルは曲刀と片手直剣の二刀流。軽薄な性格とは裏腹に、気まぐれに街ひとつを滅ぼすだけの実力を持つ強敵だ。侮るとたちまちやられるだろう。
 余談だが、ガズウェルはある程度かわいいと思えば、選り好みせずナンパするようだ。
「ナンパはともかく、気分で殺されちゃたまったものじゃないよ。そういうわけで、ひとつお願い!」


参加者
篁・メノウ(わたの原八十島かけて漕ぎ出ぬ・e00903)
アニエス・ジケル(銀青仙花・e01341)
シィラ・シェルヴィー(白銀令嬢・e03490)
八雲・要(英雄志望のドラゴニアン・e14465)
ソフィア・フィアリス(傲慢なる紅き翼・e16957)
ヴァルカン・ソル(龍侠・e22558)
ジェニファー・キッド(銃撃の聖乙女・e24304)

■リプレイ

「お兄さんかっこいいですねー!」
「ん?」
 首を回しつつ、ガズウェルは気だるげに振り返った。長髪や鎧にまとわる虹色光を払う彼に駆け寄ってくるのは、ブラウンのニット帽とポンチョを着こみ、赤い耳当てをしたジェニファー・キッド(銃撃の聖乙女・e24304)。
 カズウェルはにやりと顔を崩すと、近くまで来たジェニファーを向く。
「お、なにお嬢さん。かっこいいってオレのこと?」
 見下ろしてくる軽薄な表情に、ジェニファーは屈託のない笑顔で応えた。
「もちろん! 他に誰がいるんですか!」
「ハハッ! だよなァー!」
 楽しげに笑い、前髪をかきあげる。ガントレット下で目を細め、じっとジェニファーを観察する。寝起きめいて濁った瞳が徐々に輝きを帯び、口元が緩む。ガズウェルが手を下すのと同時、光る瞳に人影が二つ飛び込んだ。
 片や、銀髪と尾に青いリボンを結び、ダークレッドのマフラーには星型のピン。大きめのセーターに黒いロングブーツを履いたドラゴニアン。片や、ワインレッドのロリータワンピースを着、白いテディベアを抱いた地球人。
「ジェニファー! どうし……あっ」
 エディス・ポランスキー(銀鎖・e19178)が足を止めた。一瞬呆けた後、戸惑ったように目を泳がせる隣で、シィラ・シェルヴィー(白銀令嬢・e03490)はクマで隠した口でつぶやく。
「わ、素敵な人……」
「おっと、お目が高いね!」
 おどけるガズウェル。シィラはクマを少し上げると、上目遣いで彼を見上げた。
「初対面なのにごめんなさい。でも、凄く好みで」
「構わねーよ。むしろこんな美人に言ってもらえて光栄だぜ? 男として」
「そうでしたか……それならその、よかったです」
 小首を傾け微笑むシィラに笑み返し、ガズウェルは三人を眺める。キザな仕草であごに手を添え、軽い調子で口を開いた。
「ていうか、君ら全員可愛いよな。友達?」
「ええ、まぁ」
 片足を引き、爪先で地面をつつきながらエディスが答える。銀の尻尾を猫めいて揺らす彼女に、にこやかに問う。
「どうかした?」
「ああいえそのっ……」
 慌てたように手を振るエディス。合いかけた視線を再び逸らしつつ、ぼそぼそと言い漏らした。
「……こんなに素敵な人、初めて見たから」
「ハハハハハハ! 嬉しいね、オレもだよ」
 軽薄に笑う優男を横目に、エディスは広場を抜かりなく見まわす。
 噴水広場に集まるカップル客達。あちこちからいぶかしげに凝視してくる彼らの元へ、ホワイトボードを手に篁・メノウ(わたの原八十島かけて漕ぎ出ぬ・e00903)とアニエス・ジケル(銀青仙花・e01341)が走っては身振り。別所の露店ではヴァルカン・ソル(龍侠・e22558)が買ったと思しき飲み物片手に退散する売り子を見送る。自ら立ち去る者もおり、人波は引き潮めいて減り始めていた。一方で、ガズウェルはまだ気づいていない。
「じゃ、折角の出会いに乾杯、と行きてーけど……オレこの辺のこと知らねーんだよなぁ。男は格好良くエスコートするもんだが」
「大丈夫です。あなたと一緒にいるの、楽しいので」
「おいおい。そんなこと言ったらマジで惚れるぜ? なおさら立たせっぱなしにゃしておけねー。どっかなんか……ん?」
 ジェニファーにフォローされつつ、ガズウェルは素早く視線を走らせる。笑みの代わりに浮く疑問符が緊張を煽った。
「……あれ。こんな静かだったか……」
「あ、ではあの方に聞いてみるのはどうでしょう」
 くるりと回り、シィラが少し離れたベンチを指さした。つられたガズウェルの目が、ベンチに腰掛けぼうっと広場を眺めるソフィア・フィアリス(傲慢なる紅き翼・e16957)捉える。優男は釈然としない顔を振って笑みを戻すと、元の調子で肩をすくめた。
「まぁいいか。じゃ、ちょっと聞いてみるとするかね」
 ベンチへ近づく背後で、エディスとジェニファーが胸をなで下ろす。ちらりと目線を寄越すソフィアに、ガズウェルはにこやかに手を挙げる。
「そこの姉さん、ちょっと道を聞いてもいいかい」
「……道?」
 頬杖を突き、気だるげに聞き返すソフィア。警戒を解くような独特の笑顔で、優男が二の句を継いだ。
「道っつーか場所っつーか。どっかさ、雰囲気のいいトコ知らない? 案内してほしくてさ」
「あら、デートのお誘い? エインヘリアルに口説かれるとか……五十年ぶりかしら」
「よくわかるな。もうエインヘリアルは腹一杯?」
 軽薄な笑顔から目を逸らし、ソフィアは広場をあらためる。やがてベンチに背を預けると、緩く両手を持ち上げた。
「んー……残念だけど、今探し物してるのよねー」
「探し物? 思い出の品かい」
「そういうわけじゃないんだけどね。こう、光る丸い宝石みたいなもので……人が出るのよ」
「人が出るねえ……そりゃあれか? 前にあったっていう、ウチの同族?」
 ぎこちない手振りを見下ろしガズウェルが笑う。だが冗談めかす彼とは逆に、ソフィアは鋭い眼光でその顔をにらんだ!
「貴方のことよ!」
「!」
 轟音。ソフィアと共に巨大浮遊ガントレットが柏手を打つ! ベンチの下から家電製品めいたミミックが飛び出し、ガントレットの指を足場にして跳躍。後方にジャンプ回避していたガズウェルに噛みかかる!
「ヒガシバ!」
「うおっと!」
 大口を開けるヒガシバを蹴落とした勢いでさらに下がる。驚愕・怪訝・納得と表情を瞬時に切り替える甘いマスクの背後から、激しい熱風! 肩越しに振り返った横面めがけ、炎翼を広げた八雲・要(英雄志望のドラゴニアン・e14465)が殴りかかった!
「ガズウェェェルッ! ここで会ったが百年目だ! 死ねぇッ!」
「ハン。熱烈なラブコールだなァ!」
 鼻で笑い回るガズウェル。高速で放たれた燃える拳を金のナックルガードで受け止める。要の腹と顔に膝蹴りを入れ、柄で頭部を強打。続く回し蹴りで吹き飛ばす! 要は翼を広げて制動。直剣投擲!
「要殿ォッ!」
 横から割り込んだ火炎弾が飛翔する切っ先に衝突、爆発めいて紅蓮の炎壁を展開。星霊甲冑の足が地についた所へヴァルカンが刀を携えて駆けた。赤い鞘から長大な刃を抜き放ち、大上段から斬りかかる!
「ぬァアアッ!」
 力任せの剣戟をガズウェルは曲刀の腹で弾き踏み込み斬。羽ばたきバックステップしたヴァルカンが突き出す刀を籠手で逸らし、真っ直ぐ振り下ろす! 避けるコートの肩口!
「男に用はねえよ」
 流麗に一回転し横薙ぎに斬った。血を噴く胸の一文字傷を手で押さえるヴァルカンを紫色の風が突き飛ばす。ホワイトボードを投げ捨てたメノウは離れた位置で舞い、スミレ色の旋風を巻き起こしていく。
「清き風、吹き荒れろ! 『青嵐』ッ!」
「アニエスも格闘術はちょっとかじってます、よ……えいっ!」
 腕を振り上げると同時に竜巻が跳ねる! 風に乗ったアニエスは青白二色のテレビウムと共に上から強襲。余裕の笑みで見上げるガズウェル背後でヴァルカンの炎壁が消えた。
「今だ! エディス殿、要殿ッ!」
「待ってたわ!」
 残り火を貫き、戦斧と槍をそれぞれ手にしたエディスと要がチャージをかけた。優男は緩い立ち姿で曲刀を回し見返る。瞬間、宝石のついた穂先が砕け、斧の刃が崩壊! 武器を投げ捨てたエディスは獰猛な笑みを浮かべて己の影を踏み付ける!
「行け、屍竜絶血ッ!」
 影から出現した粘液の黒龍が羽ばたき甲冑の胴に巻き付く。黒いスライムに縛られた頭を鱗に覆われた腕と傘が、腹を赤熱するパンチが襲った! ガズウェルは曲刀を捨てどちらも両手でガード。余裕の笑みを浮かべ、わざとらしく溜め息を吐く。
「ったく、ドッキリにしちゃあタチ悪いぜ。そこの君さ、さっきのハニートラップってヤツだろ? でもって、ベンチの美人も仕掛け人。友達二人もそうなんだろ? 嬉しかったけどさ」
 二人がかりの拳を抑え込み、首をこきこきと鳴らす。要は奥歯を噛みしめ、捕らえられた拳を押し込む。炎がわき立ち、火の粉を散らした。
「ああそうさ。まさか仇が、こんな単純な罠にひっかかるなんてね……」
 要の背がバーナーめいた炎を放つ。焦熱が周囲を覆い、陽炎を昇らせていく。
「どうせあんたは、俺のことなんて覚えてないだろうけど、俺は……ッ! 殺す。必ず、ここで殺してやるッ!」
 決然とにらみ上げてくる金の眼。黒龍、包囲網、紫風の残滓を順に眺めたガズウェルは、口元を喜悦に歪めた。
「フッ。斬新なプロポーズだな、ハニー?」
「ッ……うおおおおおおおおおおおッ!」
 怒りの咆哮を上げた要がロケットめいて炎を噴出! アニエスを片手間で放り投げ、圧力を増したパンチを受け流す。粘液を手刀で断ち切る視界を、茶色の布が覆い隠した。ポンチョその他を脱ぎ捨てたジェニファーは胸元に銃を突きつける!
「零距離、取りましたッ!」
「うおっ!」
 即座にバク転するガズウェルの身を銃弾が撃つ! 被弾しつつも華麗に着地した噴水のオブジェを巨大ガントレットのフックが爆砕。再び跳躍した着地点に走ったメノウとヴァルカンが剣戟を挑む!
「よし、今回はちょっとまじめモードだ。篁流剣術!」
「シィラ殿、援護を頼む! 行くぞッ!」
 直後、シィラが天に発砲。七発の弾は空に北斗七星の形を描き、仲間達に降り注ぐ。すり足めいた歩法で滑り込んだメノウが黒い刀を振りかざした! ガズウェルの両手が極光を発する!
「『朧月』ッ!」
「そらよッ!」
 霞む切っ先が脇腹を捉え、伸びた極光が紫苑の刺繍を貫く。ガズウェルはメノウの顔面を蹴って召喚した直刀を引き抜き曲刀を引き絞る! 断頭の一閃に割って入ったしたヴァルカンが庇って背で受け、全力を乗せて斬り払った。長いリーチの連続斬りを極光の曲刀とぶつかり合う。
「ソフィア殿!」
「はいはい。抑えといてねー」
 剣を打ちつけ合う二人の上をソフィアが飛行。背中まで開いた両手の先に浮く巨大ガントレットをアメリカンクロックめいて打ち合わす! 同時に下がった二人の間で激突したそれらをシィラの銃弾が飛び越しガズウェルの足を撃ち据えた。爆発!
「調停者が直々に相手してあげるわ。感謝なさい」
「付き合うのだけは死んでもごめんですけどねッ!」
 フラッシュしジェニファーが瞬間移動! 光速の飛び蹴りを手で受け、優男はヘラヘラと笑う。
「言ってくれるぜ、ホントに。胸が痛くて泣きそうだ」
「地獄で泣いてろッ!」
 真紅の宝玉を手の中で砕いた要が急降下する。緋色の電光弾ける指をガズウェルは身もせず剣で防御。一回転し炎拳のインファイトをワン・インチ距離でステップ回避! 一定距離を保つジェニファーの近距離銃撃ごと剣舞で次々とさばく。
「どうしたよ、もっと情熱的に攻めて来な」
「このッ……!」
 燃える要のアッパーカットが剣のクロスガードにぶつかった。交叉した刃を開いて弾き、二連斬撃!
「わ、わ! いそぎ、回復します……!」
 アニエスが光の矢を射かけて要を治癒する。一方バックキックでジェニファーを退けたガズウェルは再び剣を交叉した。腕を伝い、オーロラの光が刃に注がれていく。エディスとヴァルカンが突撃! 大振りの剣と足狙いのハンマーをそれぞれの剣で受け止める。直後、余裕の笑みが若干薄れた。
「ぬゥンッ!」
「うおっ!」
 剛の刀が直剣を弾いた! わずかに体勢を崩した膝へ、エディスが鋭くトーキック。蹴り足を紫色のオーラが包む!
「篁流回復術、『東尋坊』ッ! やったれ!」
 メノウが叫び、さらなる舞いで風を起こす。同じく風をまとったシィラとジェニファーが背後に周り至近距離での銃撃を浴びせる。黒い粘液の九頭竜、銃弾。反撃に数度斬るもラッシュが途切れぬ! お互いの血飛沫が散りばめられる中、ガズウェルは変わらぬ笑みを浮かべ続ける。
「楽かと思えば意外とやるじゃん。上手く行かねーな」
「ええ、女性は思い通りにいかいないものです」
 冷気弾を足に撃ち、シィラは薄く微笑んだ。
「私、乱暴な男性は好みでは有りません。元々貴方に靡くレディなんて、此処には居ませんよ」
 鼻で笑い、ガズウェルがコマめいて回転! 四人を斬りつけて弾いた瞬間、双剣が虹色の光を帯びた!
「そうかい。なら、しょうがねえ。……そろそろ本気出すとすっかな」
「やらすかッ!」
「要殿ッ!」
 ヴァルカンの声を背に要が突っ込む! 向かってくる火拳を前にガズウェルは笑顔を深め……両手の剣を閃かせる。直後、嵐のごとく吹き荒れる虹色の斬撃がケルベロス達に襲いかかった! 極光の全方位攻撃にメノウは舞の型を変更!
「来たれ、『青嵐』ッ!」
 飛ぶ斬撃がオーラを貫き肉を裂く。虹色に混じって赤い血飛沫が跳ぶ中、ソフィアはガントレットを膨らませ、両手で斬撃を抑え込む! 削れる鋼鉄の手の平!
「ぐうッ……おばちゃんに力仕事させないで欲しいわね!」
「ソフィアさん、そのままお願いします」
 斬撃の嵐を脱したシィラが祈るように拳銃を持った。赤いドレスをさらに赤く染めながら、祝詞を呟く。星めいてまたたく、空の一点!
「お星様に、お願いを」
 刹那、空より来るレーザーが斬撃にダイブする! 幾重にも刻まれた光は流星群のように降り注いで着弾、爆発! 勢いがわずかに弱まった渦中へ、ジェニファーとエディスが身を投げる! ペンダント、そして傷からあふれ出す血を赤黒い鎧と化した修羅と光の銃聖が体勢を崩した隙を見逃さず、銃弾と拳のラッシュを叩きこむ! 斬撃の余波に傷つきながら、それでも笑う。
「どう? 私達、戦っている姿も綺麗でしょ?」
「まだまだ! まだ、行けますッ!」
「ンだと、クソッ……!」
 血濡れの拳をナックルガードで打ち返し、ジェニファーを柄で殴る。再度剣に虹色の光を宿し、回転! 虹色の円環が広がり、ガントレットもろとも二人を打ち払った。迫る斬撃に走るのは、ヴァルカンとアニエス!
「ぬおおおおおおおおッ!」
「アニエスが……アニエスが、まもり、ますっ!」
 激突! 紫の追い風を受けた炎の剣と爪。斬撃に食い込み突き破る。砕き開けた活路の先、要はズタズタになった手を伸ばす! 燃え上がる手の平!
「じゃあな、ガズウェル。これで……終わりだッ!」
 目を見開くガズウェルの顔面を、ルビー色の光が包む。
 一転凝縮された地獄の焔が爆轟を引き起こし、甘いマスクを跡形もなく吹き飛ばした。

作者:鹿崎シーカー 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年4月22日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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