狙われた五重塔

作者:なちゅい

●塔を占拠するローブの男
 そこは毒々しい色をした尖塔。
 だが、その所々をみれば、その塔が元々木造だったことが分かる。ここはとある寺、五重塔であった場所なのだ。
 その中で、黒いローブを被った男性が、複数のオークを従えていた。お世辞にも知能があるとはいえない顔立ちのオークが20体程並び、一様に頭を下げている。
「黒き塔はこれで完成だな……」
 言葉を発する男。その顔は腐っており、大きな1つの目がある。
 さらに、体の半分は鱗で覆われ、肘から先の腕は蛇に。そして、脚は蜘蛛のそれになっている。どう見ても、そいつは人間には見えない。
「生憎とここは坊主が多い場所だが、雌もいないわけではない。繁殖せよ、お前達はそれだけしか能が無いのだからな」
 ファミリアロッドをオークへと向けて男が指令を出すと、その命を理解したオーク達はブヒーと鼻息を荒くする。叫び声を上げるオーク達の口元からは涎が垂れ、背中から伸びる触手を蠢かせるのだった。
 
 とあるビルの屋上。
 黒瀬・ダンテ(オラトリオのヘリオライダー・en0004)と一緒にケルベロス達を待っていたのは、燈家・陽葉(陽光の神烏・e02459)だった。
「ちわっす、来てくれて嬉しいっす!」
 ある程度人数が揃ったのを確認し、ダンテは話を始める。
「陽葉さんがとある依頼に参加した後、自分に色々と話をしてくれたことで、事件を予知することができたっすよ」
「うん、お寺を狙うドラグナーがいるかもって思って」
 陽葉の話を聞いたダンテは、奈良県某所にある寺の五重塔をドラグナーの男が目をつけ、拠点にしようと企んでいるのを予知したのだ。
 この後、黒く、禍々しい尖塔に変化したその塔からは多数のオークが現れて住民を襲い、多くの女性がさらわれてしまうという。
 そうなれば、塔の中で繁殖が繰り返され、更に多くのオークが街中に溢れてしまうことが容易に想像できる。
「今回、敵のターゲットになりそうなのは、尼さんっすね。五重塔の拠点化を阻止する為に、塔に乗り込んでオーク達の討伐と、五重塔を黒い尖塔に変えようとしているドラグナーの撃退を頼むっす!」
 これから行われるのは、塔の最上階付近が黒い尖塔の一部に変化し始めたところで地上階から潜入し、五重塔を制圧する作戦だ。
「変化が始まる前に突入すると、敵は別のビルを拠点化してしまうっす」
 こうなると、事件を阻止するのが難しくなると予想される為、タイミングを待ってこのビルへ突入する必要がある。
「五重塔は文字通り、5階建てっすね。そこまで小さな塔じゃないから、戦うのに支障はないっすよ」
 最上階へ向かう直通階段などはない為、1階層ずつ別の場所にある階段で登っていく必要がある。
「20体のオークは最上階に集まっていて、皆さんが侵入すれば、そいつらが撃退に当たってくるっす」
 大きな音を立てるなどして侵入者の存在に気付かせれば、様子を見に来たオークを各個撃破していくことができるだろう。
「さすがに10体以上のオークと一度に戦うと、皆さんも危険っすから、作戦はうまく立ててほしいっす」
 登るだけなら、そこまで苦労はしない塔だ。下手に最上階まで一気に駆け上がると、多数のオークを一度に相手をすることになるので、作戦は慎重に立てたい。
 また、塔周辺の一般人には避難勧告を行っているが、塔に残っているお坊さんや尼さんがいるかもしれないので、もし取り残された人がいるようならば、可能な範囲で救出して欲しい。
「ドラグナーの目的は、オークの繁殖っす。オークを全て倒してしまえば目的の達成ができなくなるっすから、撤退するっぽいっすよ」
 一時的にではあるが、ドラグナーはドラゴンに準ずる強さを発揮できる強大な敵なので、無理に戦わずに撤退させてしまえば良いだろう。
 ドラグナーも余程酷く挑発されでもしない限りは、ケルベロスと戦おうとはしないので、危険は少ないはずだ。
「まあ、無理は禁物っす。ともあれ、ドラグナーの陰謀を阻止してもらえると嬉しいっす!」
 そう言って、ダンテはケルベロス達をヘリポートへと連れていくのだった。


参加者
リリィエル・クロノワール(其の剣は舞い散るように・e00028)
ベルノルト・アンカー(傾灰の器・e01944)
燈家・陽葉(陽光の神烏・e02459)
鳴無・央(黒キ処刑ノ刃・e04015)
リースフィア・マークウェル(エンドレスデイリーワルツ・e05098)
ブランシュ・ヴァルディアブ(おめんやさん・e08260)
ロディ・マーシャル(ホットロッド・e09476)
フレスティア・ムーンライト(敬虔なる剣司祭・e10445)

■リプレイ

●静かなる突入と避難を
 現場となる五重塔周辺へと到着したケルベロス達。
 一行は事前の話に合った通り、塔が変化を始めるタイミングを待つ。避難勧告が出ていたようで、周囲に人の姿はまばらになっていた。
「何考えてるか分かんないし、分かりたくも無いけど、こんな計画壊さないとね」
「オークの繁殖……、何としても阻止しませんと! その……、生理的にも……」
 リースフィア・マークウェル(エンドレスデイリーワルツ・e05098)の言葉に、フレスティア・ムーンライト(敬虔なる剣司祭・e10445)はやや顔を赤くしながら意気込む。
 程なく、塔の上部が徐々に変化を始めるのが確認できた。
 メンバー達はそれを見て、静かに塔へと突入する。
「すごくやだ、女のコの敵だよ。数もすごく多いし、気を付けていきましょう」
 リースフィアが仲間へとそう促しながら先へと進むと、中へと入って間もなく、坊さんと尼さんの姿が確認できた。
「ケルベロスです。この塔に残された人は他にも居ますか?」
 ベルノルト・アンカー(傾灰の器・e01944)が隣人力を使いつつ語りかけると、彼に好印象を受けた2人は怯えながらも、まだ同僚が上階にいたはずだと語る。
「分かりました。もう大丈夫ですよ」
 デウスエクスの接近だと坊さん達も察していたのだろう。仏に対して念仏を唱える彼らへ、フレスティアが優しく声をかけて落ち着かせる。
「此処は制圧します。安全な場所で身を隠していてください」
 ベルノルトは一般人2人にここで待機するよう告げ、自らは仲間と共に上の階へと移動していく。
「いちいち建造物を悪趣味な塔に変えるのって、やっぱ『儀式』と関係あるのかな」
「黒い塔に変化させて、何がしたいんだろう」
 階段を昇る途中、ロディ・マーシャル(ホットロッド・e09476)がそんな疑問を口にすると、燈家・陽葉(陽光の神烏・e02459)が応じてくれた。その際も、この避難の段階で敵に気づかれてしまわぬように声を潜め、木造の階段が音を立てないよう配慮して歩く。
「『儀式』……、オークを繁殖させる……」
 それに、ロディが少し赤面していたのはさておき。
(「オークはグラビティチェインを回収する……なら、その先は」)
 そう考えていた陽葉だったが、程なく2階に到着したことで思考を止め、一般人の捜索に当たり始める。
 ただ、メンバーは全員が探索をしていたわけではない。ブランシュ・ヴァルディアブ(おめんやさん・e08260)はあまり人質云々に興味を示さず、ごろごろしながら戦いが始まるのを待っていたようだ。
 さて、2階にもやはり2人の坊さんの姿があり、発見したロディが隣人力を使って話しかけ、階下への避難を促す。
 そこで合いの手を入れた、リリィエル・クロノワール(其の剣は舞い散るように・e00028)。大きな音を立てぬようにとの一言を忘れない。
 さらに、鳴無・央(黒キ処刑ノ刃・e04015)が上階に取り残された人がいないかと尋ねれば、まだ数人残っているはずだという返答が坊さんから帰ってきた。
 階下の2人とは違って若い坊さんらは慌てていた為に、メンバー達は静かにするよう促す。央は剣気解放も考えたが、彼らはありがたそうにケルベロスを拝んでおり、その必要はなさそうだった。
 2階までを確認したケルベロス達。この上階は、オークに気づかれる可能性が高いと考え、ベルノルト、央、ロディの男性メンバー3人が先行することにし、他の女性メンバーはここで待機をすることにしていた。

 先行する男性陣はその後、慎重に偵察を行いつつ進む。
 外からは光が入らず、灯りもついていない為に室内はやや薄暗い。央はライターの炎を光代わりにし、探索を行っていた。
 3階で尼さん1人を保護した3人はさらに、4階へと昇っていく。その途中、敵に気づかれることを懸念し、光源を無くして進んでいたメンバー達は、1人の尼さんと数体のオークを目にする。
「おい、早く下へ逃げろ」
 尼さんを保護した央はそっけない言葉で、階下の避難を促す。彼女は慌てて階下へ駆け下りていたようだ。
 そこで、オークがこちらに気づき、ゆっくりと歩み寄ってくる。
「汚らわしい蛮族が……」
 オークに嫌悪の感情を表し、眉をひそめるベルノルト。多すぎるオークの数に、ロディも顔をしかめていたようだ。
「うじゃうじゃと現れやがって!」
「やむを得ません。この場は引きましょう」
 3人は仲間が待機する2階まで、尼さんを連れて下がっていく。それを、オーク達は下卑た笑いと共に、歩いて追ってきた。
 一方、2階で待機していた女性陣。現状は偵察に出た男性陣の帰り待ちである。
「上の階はどうなっているかな」
「ダメですよ、音を立てないよう待機しないと……」
 大人しく待機していたリリィエルだが、本当は体を動かしたくて仕方ない様子。フレスティアはそんな彼女を優しくたしなめる。音1つでもオークに気づかれる恐れがあるからだ。
 その間、陽葉はたくさん用意した使い捨てプリペイド携帯電話の準備を進める。後で、アラームを使い、敵の誘い出しを行おうというのだ。改造スマートフォンを所持するリースティアも同様のことを考えていたらしいが。彼女は空いた時間、ネットサーフィンに余念がない。
 ブランジュも無言のままでごろごろとして、情けない表情をしている。そのたびに、彼女の頭についたショクダイオオコンニャクの花があちらこちらへと揺れる。
 そんな彼女の耳に、上階から騒々しい音が聞こえてくる。女性陣はすっくと立ちあがり、敵の接近を感じて戦いに備えるのだった。

●釣り出したオークを倒せ!
 近づいて来るオークを引きつれる形で階下へと降りていく男性陣。
 先に降りてきた一般人を1階へと避難させた女性陣は、男性陣に続いて降りてくるオークに備える。
「来たね……行くよ」
 姿を見せたオーク達目がけ、陽葉は携えた和弓から何本もの矢をバラ巻くようにして射る。
 柱に隠れていたフレスティアも、敵の接近に合わせて姿を現す。一気に敵を減らそうと、彼女は斬霊刀の刀身を断罪の光で包む。
(「悪しき魂を浄化せよ、断罪の十字架よ!」)
 心の中でそう呟いたフレスティアは、神速の十字切りを放つ。そのオークは断末魔の叫びを上げ、その場へと崩れ落ちた。
 敵は汚らしい笑みと、汚らわしい触手をうごめかし、ケルベロス……主に女性陣へと狙いを定めてくる。
「連れたのは……7体か」
 反転したベルノルトは敵の数を数え、斬霊刀を手にする。
「せめて醒めないまどろみの中で、眠るように崩れてゆけ」
 ベルノルトは最も手前の敵に狙いを定め、斬撃を繰り出していく。体から血しぶきを上げたそいつは、神経を麻痺させて体を硬直させる。
 その後ろからは、央が左手を突き出す。その腕にはブラックスライムを抑えつけるようにケルベロスチェインを縛り付けていて。そして、広げた手のひらからは、ドラゴンの幻影を放つ。炎に包まれたオークは叫び、そのまま燃えて崩れ落ちてしまった。
 リリィエルは密集するオークの群れを見定めて凝視する。それに惑わされたオークは、同士打ちを始めてしまったようだ。
 ただ、全てのオークが催眠状態になったわけではない。正気のままでいるオークは男性メンバーを倒し、女性メンバーを汚そうと触手をうごめかす。
「させねぇぜ、男として女性を危険に晒したくないんでな!」
 ロディが前線で手を広げると、そこにオークの触手が絡みつく。そこから分泌される毒が彼の体を侵さしてしまう。
 それでも、ロディは精神を極限まで集中させ、掴みかかるオークの体を爆破した。
 ぐらりと崩れかける敵は踏みとどまるが、ブランシュが無邪気な顔で近づき、音速を越える拳を叩きつける。オークは顔面を潰され、意識を無くしてしまったようだ。
 リースフィアも前へと出て、テレビウムのトラと共にオークの触手を受け止める。彼女はその醜悪な見た目や、汚らしい触手に心底げんなりしてしまう。
「焼いても全然美味しく無さそうです」
 淡々と戦うリースフィアはそう呟くが。敵の触手がトラの体を貫けば、彼女も黙ってはいられない。2台の改造スマートフォンを操作した彼女。オークの身体が突然燃え上がる。
 身体の脂が火の勢いをさらに大きくして、そいつは黒炭へと化してしまったのだった。

●次々と現れる豚の群れ
 誘い出した7体を全員倒したかと一行が思った瞬間、2階へと新手が現れる。それは、男性陣が4階で出くわした残りだ。
 上階からはまだ、ドタドタと床が揺れ動く音が聞こえる。ブランシュなどが徐々に物音を大きくして戦っていたことで、さらなる敵を誘い出したのだろう。
 だから、この場の敵を早く倒さねば。陽葉は和弓からエネルギーの矢を射る。心を貫かれてそれに精神が耐えられなかったオークは、汚らしい声を上げて倒れゆく。
 そこで、フレスティアが敵の触手に縛り付けられてしまったブランシュに気づく。
 フレスティアはその触手に生理的な嫌悪を覚えながら。確実に1体ずつ潰そうと、両手で握った2本の斬霊刀から衝撃波を放つ。霊体のみを断ち切るそれで捕縛を解くことはできなかったが、オークはダメージに耐えきれず、そのまま絶命してしまった。
 これで10体。フレスティアは討伐数をカウントしながらも、ブランシュへと囁くように声をかける。
「大丈夫ですか……?」
 面を被ったブランシュの表情はうかがい知れないが、それでも彼女は楽しそうに戦っていたようだ。
「問題ない。それに……」
 彼女は両腕に巻き付けた鎖を伸ばして敵を捕らえ、派手な音を立てて床に叩きつける!
「もう手加減しなくて良いよね」
 床へめり込んだオークは触手をへたらせて動こうとしない。フレスティアは唖然とし、討伐数カウントを忘れかけてしまうのである。

 その後も、新手のオークは続々と一行の前に姿を現す。
 敵の攻撃を受けながらも、央は首に巻き付けた緋色のマフラーを気遣う。忘れ形見であるこのマフラーを、決して汚すわけにはいかない。
 央は伸びてくる触手をかわし、左腕に巻き付けたケルベロスチェインを全方位に射出する。
 鎖に刺されたオークは、全身を駆け巡る毒に苦しむ。それにメンバー達はトドメを刺していく。
 オーク1体当たりはさほど強くはない。それでも連戦となればメンバーの疲労も蓄積していく。
 ベルノルトは冷静にそれを見て、戦場へと薬液の雨を降らせ、仲間達へと治癒を施す。
「汝、創世の剣、無限の印。始まりを導く燦然たる光よ」
 陽葉は、天地開闢の座標となったといわれる大剣型の聖剣を創り出す。
「創世の剣よ、彼の者らに加護を……」
 陽葉がそれを頭上へと掲げると、剣から溢れた光が仲間を包み込み、加護を与えた。
 前線で仲間達の盾となるリースフィアもその手当を受け、さらに敵の触手を受け続ける。
 リースフィアは敵の数が減ってきていたことを感じ、上階に行くことも考えたが、降りてくるオーク達がそれを阻害する。
 テレビウムのトラがそのうちの1体を凶器で叩きつけると、リースフィアも合わせて敵に踊りかかる。
「バラバラになっちゃってください」
 リースフィアは影のような斬撃を幾度も浴びせかけていき、敵の触手を細切れに切り刻む。大量の体液をぶちまけたオークが白目を向いて倒れていった。
 残るオークはもう少ない。
 舞い踊るように敵へと斬りかかっていたリリィエルが、ロディへと声を掛ける。
「ふふっ、これも何かの縁かも。ロディ君、せっかくだし、ダンスのお相手お願いできるかしら!」
「似たような名前だな。んじゃ、一緒に行くか!」
 リボルバー銃から銃弾を発射してオークを幾体も沈めていたロディも、ここぞとそれに応じた。
「持ってけ、ありったけ!」
 2丁のリボルバー銃からファニングの連撃を叩き込むロディ。まさに神業めいた銃捌きで弾丸を放てば、その間を縫うようにリリィエルが踊り、オークへと迫る。
「シビれるような踊り、見せてあげる! 見とれちゃダメよ?」
 しかし、リリィエルは敵が見とれる暇もなく、舞うようなステップと共に斬撃を浴びせかけていく。
 これぞ、リリィエルのブリッツワルツと、ロディのブリッツバレッツによる連携攻撃である。
 振り抜かれる2本の斬霊刀。そして、同時に弾丸がオークへと浴びせかけられる!
「ぶひぃいいいぃぃぃ!」
 汚らしい声を上げて倒れるオーク。
 敵の討伐を確認した2人は頭上でハイタッチを交わした。
 残る最後のオークはブランシュが相手をしていた。彼女は鎖を使い、オークを外へと放り投げる。
「死人に顔なし……だよ?」
 高いところから落ちるのが大好きという彼女は、そのままオークの顔面に手を当て、無数の呪詛を叩きつけて相手の顔面を捻り切る。オークは無惨にも地面へと叩き付けられたが、ブランシュは顔面を手にしたまま、翼でゆっくりと降り立ったのだった。

●ドラグナーとの対峙
 事前情報にあった全てのオークを倒したメンバー達。念の為、慎重に歩みを進めて最上階へと昇っていく。
 そこで待ち受けていたのは、ローブを被った男だった。
「オーク達はやられたようだな……」
 鼻を鳴らす男。このドラグナーが強敵だと聞いていたメンバー達は、敵の様子を窺う。
 20体ものオークを倒した後のメンバー達。さすがに疲弊したこともあり、ほとんどのメンバーは敵に手を出すことはおろか、刺激的な言動や行動も可能な限り慎むようにしていた。
(「オークからグラビティチェインを回収して、ドラゴンを呼び出す……?」)
 陽葉は戦いの前の推論を脳内で展開させる。敵の狙いは果たして、彼女の考え通りなのか、それとも……。
 バァン!
 そこで鳴り響く大きな音。遅れてやってきたブランシュが床へと何かを投げ捨てたのだ。それは、オークの体の一部のようだ。
 以前、ドラゴンを相手にしていたというブランシュ。物怖じすることなく気丈に敵へと突き直り、ドラグナーを威嚇するように、彼女は敵意を示す。
「ふん……」
 しかし、敵はその挑発をさらりとかわして鼻を鳴らし、何も語ることなくドラゴンの羽を広げて塔の外へと飛び立つ。
 ケルベロス達は、去りゆく敵を苦々しい顔で見送ることしかできない。
 いつか、あの敵を倒すことはできるのだろうか。そう考えつつ、一行は守り切った五重塔を降りていくのである。

作者:なちゅい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2015年10月17日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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