幼女のパンツ、危機イッパツン

作者:叶エイジャ

『幼女のパンツのゴム、それで作ったパチンコこそ至高である』
 穏やかな顔。そしてなにかを悟った声。
『幼女からパンツを奪い、伝説のパチンコを作るのだ』
「おおお……」
「伝説のパチンコ……」
 集まった信者たちは、感極まったかのような吐息を漏らす。
「なぜ、なんで我々は気付かなかったんだ」
「最高の素材は、あどけなき天使たちが身に付けていたのか……」
 ビルシャナは、さもありなんといった風に信者たちの嘆きにうなずいている。
「イッパツン様! 幼女の定義に、一部の中高生は入れていいのでしょうか!?」
『おおむねダメである』
 ビルシャナの答えに質問した男はうなだれる。彼のストライクゾーンだったのだろう。ビルシャナはしかし穏やかにこう続けた。
『しかし幼女道は奥深きもの。実際にパンツのゴムを確かめるまでは、真の幼女は見分けられぬ』
「で、では……!」
『精進の過程での収集を許す。しかしてゆめ忘れるな。至高にして至宝は幼女のパンツだ。彼の者たちからパンツを頂戴し、聖なるゴムを精製せよ』
「御意!!」
『それでは諸君、夕方くらいに学校と公園に一狩りしにいこうぞ』
「ジーク・パンツ! ジーク・パンツ」
『それではダメである。我々が狙うは幼女のぱんちゅであるぞ』
「ジーク・ぱんちゅ! ジーク・ぱんちゅ!」
 ビルの屋上で、唱和が続いた。


「せんめつをお願いしまーす」
 笹島・ねむ(ウェアライダーのヘリオライダー・en0003)が説明を始めた。
 今回の依頼内容は、悟りを開きビルシャナ化した人間とその配下と戦って、ビルシャナ化した人間を撃破する事である。
「ビルシャナ化した人が、周りに自分の考えを布教してますから、配下を増やそうとしているその場に乗り込んで倒してきてくださーいっ!」
 ビルシャナ化している人間の言葉には強い説得力がある為、ほうっておくと一般人は配下になっていく。
 逆に、その主張を覆すようなインパクトのある主張を行えば、周囲の人間が配下になる事を防ぐことができるかもしれない。
 ビルシャナの配下となった人間は、ビルシャナが撃破されるまでの間、敵となって戦闘に参加してくる。配下が多くなれば、それだけ戦闘で不利になってしまうだろう。
「ビルシャナさえ倒せば元に戻りますので、この人たちの救出は可能です!」
 敵となったとしても信者はあまり強くないが、肝心なのはビルシャナ。
 名をイッパツンといい、攻撃方法自体はこれまでに確認されたビルシャナと同様だ。
 性格は基本的に穏やかだが、パンツと幼女という単語にはとにかく反応してくるだろう。それが自身の教義に反する内容なら、持論を展開してくること間違いなしだ。
「その教義は、女の子のパンツのゴムを使って、パチンコを作る? ことらしいです」
 ねむは不思議そうな顔で説明する。
 ビルシャナの教義は今回も意味不明なものらしい。
「それで、特に『幼女のパンツ』が材料にいいとして、近いうちにパンツを奪いに行くそうです!」
 とにかく、社会的に危険なやつらであることに変わりはない。
「周りにいる人たちは十人です。ビルシャナの教義に対して納得はしているようですが、もっと年上の女性のパンツが良いかもと思っている人が六人。魅力的に感じつつも本当にパンツを奪って良いのか、と、罪悪感と背徳的魅力の板挟みになってる人が四人みたいです!」
 言い換えれば、六人は幼女以上の女性に魅力を。四人には一種の罪の意識があると言える。
「教義を聞いている一般人は、ビルシャナの影響を受けているため、理屈だけでは説得することは出来ないかもしれません。重要なのはインパクトなので、そのための演出を考えてみるのが良いかもしれません」
 それでは、みんなを現場にお届けしまーす! と、ねむの元気な声があがった。


参加者
フェクト・シュローダー(レッツゴッド・e00357)
ジューン・プラチナム(エーデルワイス・e01458)
秋野・もみじ(せーぎのみかた・e15534)
白石・翌桧(追い縋る者・e20838)
ティリシア・フォンテーヌ(ドラゴニアンの螺旋忍者・e21253)
リティ・ニクソン(沈黙の魔女・e29710)
月井・未明(彼誰時・e30287)
長野・翠(ドラゴニアンの刀剣士・e35933)

■リプレイ


「ジーク・ぱんちゅ! ジーク・ぱんちゅ!」
 ビルの屋上で、ビルシャナと信者たちの唱和が続いている。そこに突如としてローター音が乱入した。
『!?』
 見上げたビルシャナ、イッパツンの視界に映るのは、ヘリオンから降りてくるケルベロスたちだ。
「イッパツン様、空から幼女が!」
「セーラー服も!」
 目ざとい信者が秋野・もみじ(せーぎのみかた・e15534)やティリシア・フォンテーヌ(ドラゴニアンの螺旋忍者・e21253)を見て叫んだり、リティ・ニクソン(沈黙の魔女・e29710)の制服姿に喜色の混じった声をあげる。一部の信者はすでに落下地点へと走り出していた。
 受けとめようとかではない。あわよくば絶対領域を見ようとする、紳士的な反応だ。
 だが、その動きを見た長野・翠(ドラゴニアンの刀剣士・e35933)は翼をはばたかせた。誰よりも先んじて屋上に降り立つと、彼らの前に立ちはだかる。
 空気抵抗から解放された灰の髪がひるがえり、その奥から翠の赤茶の瞳が無言で信者たちを見据えた。
「う……?」
 咎めるような視線に威圧的なものを感じ、信者たちが足を止めた。翠の隣に、続いて着地したジューン・プラチナム(エーデルワイス・e01458)が進み出た。
 今回はジャージ姿に、スマホの付いた自撮り棒を手にした彼女は、一種伝統的な自宅警備スタイルである。
「一人の自宅警備員として、遺憾の意を表明させてもらう」
「なんだと!?」
 過剰な反応は罪悪感をもった信者の発言か。目を向ければ視線を合わせないようにしているその信者に、さもありなんとジューンは告げた。
「キミはどうして後ろめたい顔をしているの?」
「……っ」
「【萌え】は前向きなものなんだ! ジャンルは問わず、みんなのこころを明るく照らしてくれるものなんだ! 少なくともボクはそう信じている」
『いたく名言である』
 信者をかきわけ、イッパツンが前に出てきた。
『我らが聖具制作のため、幼女のパンツはまさしく光り輝く道標となろう。なんじょう、後ろめたいものか』
 そう言った鳥頭に追従するように、信者たちもうなずく。
『そして我らは紳士である。大事に丁寧に扱うから、幼女とその疑惑のかかっている者は是非ぱんちゅを奉納せよライト・ナウ』
「ライト・ナウ」
 信者たちが唱和する。
「よし、せんめつしよう」
 女性たちへと向けられる熱い視線。月井・未明(彼誰時・e30287)は反射的に戦闘に入りかけそうになったが、すんでのところでリティに止められた。無言で首を振る彼女に、未明も何かをこらえるように大きく息を吐き出す。
「……だめか、そうか……わかった。説得がんばる」
「じゃあ、交渉といこう」
 未明が我慢するのを見て、唯一の男性である白石・翌桧(追い縋る者・e20838)は朗らかに進み出た。彼に背を押されたので、フェクト・シュローダー(レッツゴッド・e00357)も前に出ることになる。自然、注目が二人に集まった。信者たちがこそこそ話し出す。
「ヒソヒソ(あれは幼女か)?」
「ヒソヒソ(見極めろ。体型や発育が)……」
 全知全能の神様を目指す破天荒少女・フェクト。翌桧のやろうとすることは分からないが注目されるのは大歓迎である。なんだか発育がどうとか一部失礼な発言がある気がするが、とりあえずもっと見て崇めよと笑顔を振りまく。
 翌桧がさわやか(?)な笑みを浮かべた。
「そうだな……お前らが幼女のパンツを諦めるなら、ここに居るフェクトのパンツを好きにしていいぞ」
 フェクトの笑顔が消えた。


「え?」
「え?」
「ん?」
 上からフェクト、信者たち、翌桧である。フェクトは真顔で言った。
「いやパンツとか普通に嫌だけど」
「なんで?」
 翌桧は言い募る。
「よく考えてみろ。ここでパンツをくれてやればこいつらは(変態だが)お前の信者だ」
 信者たちを示す。
「こいつらはパンツを、お前は信者を獲得する。WinWinってやつだ」
「神様のパンツは、そんな安売りはできないよ!」
 どことなくずれた回答は、フェクトだからというべきか。翌桧は両手をあげる。
「まあ待て落ち着け。なんならパンツって呼称は止めて、聖骸布とでも呼ぼう。どうだ、神様っぽいだろう?」
「聖骸布! めっちゃ神様っぽい響きじゃん……!」
 途中出てきた言葉に目を輝かせるフェクト。勢いよく信者たちに向き直る。
「ほんとに皆、パン……聖骸布あげたら信者さんになってくれる……?」
『え?』
 今度は信者とほかのケルベロスの声だった。翌桧の唇が「ちょろい」とか動いている気がするが、誰も気付かない。みんなフェクトの奇行に目がいっていた。
「……なってくれないの?」
「な、なります!」
「俺も!」
「一生大事にします朝も昼も夜も肌身離さず持ち歩きますのでどうか!」
 一人ヤバいのがいたがフェクトもヤバい状態なので全然気にしなかった。
「うーんそっか、だったら仕方ないかな。めっちゃ嫌だけど……うん、信者さんのためだもんね……」
 目が狂気にグルグル回りながら、神様を目指す少女はパンツに手を掛けようとする。ハッと気づいたジューンがその手を掴んだ。
「待つんだ。何をしてるかよく考えて!」
「は!?」
 目が正気に戻ったフェクト。慌てて手を止める。そして怒りの視線をイッパツンに向けた。
「危なかった! ビルシャナめ! 神様を洗脳しようなんて許せない! タダじゃ済まさないからね!」
『なに!? しかし今のは……!』
 ビルシャナが翌桧を見て何か言おうとする。舌打ちした翌桧は先んじて大声を放った。
「そんなエセ教祖より身近な神様だ! 興味があるやつは今すぐ抜けると……このあと続きがあるかもしれんぞ?」
「ぬ、抜けます!」
『ぬうっ!?』
 一人が抜け、ビルシャナが狼狽える。その隙にケルベロスは次の説得に移った。新たに進み出たのはリティだ。セーラー服と身長で中高生に見えればと思いつつ、疑問を投げかける。
「何のためにパチンコが必要なんだろう」
「え?」
「なにって……」
「何を撃つのか聞いてもいい?」
 そう言ってリティはスカートをひらひらと、おもむろに翻した。見えそうで見えない、しかしまくれ上がって見えそうな様子に「おおっ」とどよめきがあがる。
「女学生のパンツでよければ、撃つ対象と交渉次第では提供しないでもない」
「え、それって……もしやあなたの!?」
「ご想像にお任せするわ」
 リティはエサをちらつかせる。
 ひらひら。
「おおっ」
「み、見えない!」
 ひらひら。
「おおっ」
「ああ、あとちょっとなのに!」
「…………」
 一瞬、もうこの人たちホントダメだなーという感情が横切ったが、リティは努めて冷静に続けた。
「幼女から奪われたパンツは、幼女の悲しみが凝縮されて悲しみを生み出す兵器にしかならない」
「だけど、女学生のパンツなら夢と希望と、ちょっぴりえっちも詰まっている」
「幼女のパンツと違って、新しい命を育むために成長中の身体を守るパンツには、創造の力が溢れている」
「……多分」
 真言のように語られた言葉の数々に、信者たちがわなわなと震えた。
「そ、創造の力!」
「そんな力が女学生のパンツに!?」
「し、知らなかった。ほかにも夢と希望が詰まってるとか命を育むとか、パンツって壮大すぎる……!!」
 壮大なのは信者たちの想像力だった。多分、なんて全然聞いちゃいない。
 頃合いと見て、リティは恥ずかしそうな仕草と声音を意識した。
「改心するなら、ねこさんパンツあげてもいいよ」
「なっ……それって、もしや」
「言わせ、ないで」
 視線を逸らす。勝手なことを想像した何人かが「ずきゅーん」と言いながらその場にくずおれた。
「俺、抜けます」
「俺も! 夢と希望をあの子に教えてもらいました!」
「イッパツン様、悲しい兵器を生み出すのはもうやめましょう!」
『正気か!? 女学生が何だというのか!』
 いい感じに混乱するビルシャナ軍。リティは満足そうに未明とバトンタッチ。
 未明のターゲットは、もっと年上のパンツが良いかもと思っている信者だ。
 なんだこの枕詞。
「……この際教義の是非は置いておこう」
 未明はそう前置いた。
 世には特殊な性癖というものだって、確かに存在する。
 それはそれで尊重されるべきだと、未明は思う。
「しかし考えてみてほしい。本当に幼女のパンツが欲しいのか。そこに妥協は含まれていないのか。誰かを泣かせてまで手に入れたいと望むほど、強い意志があるのだろうか」
 表情の変わった紳士たちに、未明は言葉を重ねた。
「そのまま進めば、そこは地獄だ」
「……!」
「地獄に身を投じて一片たりとも悔いないと言い切ることが出来ないなら、幼女を狙うのは止めておけ」
「そっちの諸君も、よく考えるんだ!」
 そこにジューンが高らかに、罪の意識がありそうな信者たちに言葉の十字砲火を放つ。
「確かに神(ようじょ)は素晴らしいものだ。公園の砂場で、遊具で、スカートの下のぱんつが見えるのも気にせず夢中になって遊んでいる」
『ばんちゅである!』
「その笑顔には無限の価値がある!」
 ジューンはビルシャナの横やりに負けじと、メガネをキラーンと光らせながら熱く語り続ける。
「だが想像してほしい。そこに現われて神(ようじょ)のぱんつを剥ぎ取り、あまつさえ引き裂いて『ぱちんこ』を作る者の姿を!」
 子どもの泣き声が聞こえた。信者たちがその方角を向けば、ティリシアが顔を覆って泣いていた。
 嘘泣きだが、心なしかポニーテールも元気なくしなだれて見える。
「盗られた子のことを考えてみて。可哀そうだと思ったらやめてほしい」
 翠がティリシアの肩に手を置き、責めるような視線を信者に向ける。
「ち、ちが……」
「俺たちはこんな結果を望んだんじゃ……」
 心理的ダメージの蓄積を見計らい、ジューンはトドメを刺す。
「神(ようじょ)の笑顔は失われ、ただ泣き声だけが響く……いったいそれのどこが聖なるアイテムなのかと!」
 ビシリ、とイッパツンを指さす。
「その『ぱちんこ』で何を打つと言うのか! 目を覚ませ同士たちよ! 神(ようじょ)はただその笑顔を見守るのが真の紳士(ようじょすきー)たる証なのだと!」
「ぱしゅーん! ぱしゅーーん!! ぱしゅしゅしゅーーん!!」
 絶妙のタイミングで響くもみじの声。何の影響か、パチンコにはまってるようだ。無邪気に危なくない場所に飛ばして遊んでる。
「お、おお……」
「幼女が、聖具で遊んでおられる」
「なんだあの神々しい姿は……なんとまぶしいことか」
 いつの間にか頬を伝っている温かい感触に、信者らは驚愕の情を禁じ得なかった(むしろピュアすぎてケルベロスたちの方が驚愕した)。
「ねーねー! おにーさんたちも、パチンコがすきなんだよね! いっしょにあそぼーよー!!」
 もみじが信者たちにかけよって、提案する。
 そして少し困った顔をして付け加えた。
「その……パ、パンツははずかしくてあげられないけど……でも、かわりにボクのつくったパチンコをあげるから、みんなであそぼーよー!」
「……ああ、そのことはもういいんです」
 仏のような穏やかな笑顔を見せて、信者の一人が言った。
 否。彼は、もう無害な紳士だった。
「ほんと!? あのね! ボクのパチンコ、すごくとぶんだよ!!」
 再び笑顔を弾かせたもみじに連れられ、ひとり、またひとりと信者たちは去っていく。
「自分を偽るなら、男物のパンツで作ってみろよ。パチンコを」
 それでもまだ動かない信者たちをじれったく思ったのか、翌桧が掃討に入った。
「ちゃんとパチンコにしやすいよう、良いゴムを使ったブーメランパンツを持参した。パチンコの素材としては申し分ないはずだ」
「うわっ。い、いらないよ!」
 パンツを手渡されかけた信者が飛び退き、ハッと表情を変える。翌桧が笑った。
「これではっきりしただろう。お前らが欲しいのはパチンコの素材じゃない。女子のパンツだ」
 事実は、結局そうなのだ。
「このまま性犯罪者として逮捕されるか、改心して真っ当に生きるか……ここで選べ」
「この場に残るなら、君たちは小さい女の子のパンツが欲しい、いわばロリコンさんたちなワケだ!」
 フェクトがそう言って端末を見せる。
 そこには先ほど信者たちが合唱している動画が流れていた。
「欲しいものを欲しいと言えるのは美徳! でもコレ見て。いい年した人が大声でぱんちゅぱんちゅ言ってるのって相当ヤバいよ……女子高生的にも神様的にキモい。そう、ゴモい(ゴッド・キモいの略)!」
 造語にショックを受ける最後の信者たち。
「でも、今ならまだやり直せる! さ、こっちへ!」
 フェクトに合わせ、未明は静かに告げた。
「地獄に進まず、清く正しく真っ当に生きていけば、きみたちにも、いつかパンツをくれる女性が現れるだろう」
 それが最後だった。
 残った者たちはフラフラと歩き出し、やがてもみじの即席パチンコ教室へと加わる。
『ふぅざけるぅなぁ~~~~!!』
 奇声をあげたのは、それまで呆然と状況を見ていたビルシャナだった。
 信者たちが惑わされないと信じていたのか、その表情には裏切りへの深い激情がある。
『貴様ら、よくも我が信徒をォ!』
「ところで、何故パンツでパチンコを作りたいの?」
 翠がそもそもの疑問を聞いたが、ビルシャナはすでに冷静ではない。
『貴様らのパンツを使って、教えてやる!』
 どこからか取り出した男物のパンツを鳥頭にざっくりと被り、化鳥の構えでもって突進してくる。
 その口からは呪文が紡がれ、更には放たれた閃光がケルベロスたちに襲い来る。
「ゴモい!」
 フェクトがライトニングボルトで閃光を迎え撃った。翠のブレスが突進するビルシャナを焼いていく。
 ジューンのスターゲイザーが突き刺さり、リティがスカートを押さえながらのフォートレスキャノンをお見舞いする。
 もみじやティリシア、未明や翌桧のグラビティが通過した頃には、ビルシャナの姿はこの世から消えてしまっていた。
 頭にかぶっていた『おぱんちゅ』が、温かな風に吹かれてどこかへ飛んで行った。


「みんなで一緒に、ぱしゅーん!」
「ぱしゅーん!」
 もみじの配ったパチンコを使って、元信者たちが号令一下、遊びに興じている。
「平和だね」
 ヘリオンを待つ間の、ひと時の光景。ジューンの呟きにリティも静かにうなずいた。
「動画は削除っと」
 フェクトは彼らの黒歴史を消していく。
「そういえば月井はどんなパンツを履いてるんだ、トランクス派?」
 ふと、未明に聞く翌桧。今更ではあるが、彼女を男だと勘違いしているらしい。
「まぁ俺が普段履いてるのはボクサーパンツなんだが」
「奇遇だな。おれもボクサー派だ」
「お、そうなのか。思えばあんまりパチンコの素材には向いてなさそうだよなー」
 未明がとくに女子だと言わなかったので、続くパンツ談義。
 翌桧がいつ気づくかは、また別の話となりそうだった。

作者:叶エイジャ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年4月13日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 3/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 2
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