新説・飴女

作者:白鳥美鳥

●新説・飴女
「わたし、雨女って言われちゃうんだよね……。でも、今日は雨が降らなくて良かったな!」
 小学生の女の子……歩美は、そんな事を言いながら空を仰ぐ。しかし、空は曇り空。もしかしたら、雨が降るかもしれない。
「だけど、ちょっと違う『あめ女』がいるって話なんだよね! ……『あめ』なんだよね? 『雨』って漢字がついてなかったから……『飴』だったりして! それで、飴を空から降らせてくれるんだー!」
 そんな歩美の前に、第五の魔女・アウゲイアスが現れると、その手に持った鍵で、彼女の心臓を一突きした。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『興味』にとても興味があります」
 崩れ落ちる歩美。そして、その隣からはカラフルなキャンディの包みを思い起こす服を着た女性が現れたのだった。

●ヘリオライダーより
「みんな『飴』って好き? 俺は子供の頃から好きかな」
 そう言ってから、デュアル・サーペント(陽だまり猫のヘリオライダー・en0190)は、事件の説明を始める。
「不思議な物事に強い『興味』を持ったりする事ってあるよね? それで、その強い『興味』を自分で調査しようとしている人がドリームイーターに襲われて、その『興味』を奪われてしまう事件が起こってしまったみたいなんだ。『興味』を奪ったドリームイーターは既に姿を消してしまっているみたいなんだけど、奪われた『興味』を元にして現実化したドリームイーターが事件を起こそうとしているみたいで、みんなには被害が出る前に倒して欲しいんだ。無事に倒す事が出来れば、『興味』を奪われてしまった人も目を覚ましてくれると思うよ」
 デュアルは状況の説明を始める。
「場所は郊外のちょっと広い公園。戦闘場所を選ぶなら、芝生が多い場所とか選ぶと良いんじゃないかな。時間帯は朝の6時頃。人がいるかもしれないから、対策は考えた方が良いかもね。……それで、ドリームイーターなんだけど『飴女』らしいんだ。可愛いキャンディの包みとかあるよね? あれを着ている女の人だから、分かり易いんじゃないかと思う。勿論、攻撃手段も『飴』。キャンディとか水飴まで使ってくるよ。キャンディも大きさはボーリングの球位みたい。それから、このドリームイーターなんだけど、『自分は何者?』みたいな問いかけをしてくるんだ。それで、正しく対応できなければ殺してしまう。でもね、このドリームイーターは、自分の事を信じていたり噂をしている人が居ると、その人の方に引き寄せられる性質があるから、それを上手く利用すれば有利に戦えるんじゃないかな?」
 最後にデュアルはケルベロス達に励ましの言葉をかけた。
「今回のドリームイーターは小学生の女の子の『興味』から生まれたドリームイーターなんだ。だから、割と可愛いし、見た目も面白いんだけど……見た目に騙されたら痛い目にあうから、慎重にね! ……後、水飴を使うんで、その対策は考えておいた方が良いんじゃないかと思う。甘いドリームイーターだけど、強さは甘くない。みんな、頑張って来てね!」


参加者
十夜・泉(地球人のミュージックファイター・e00031)
パティ・パンプキン(ハロウィンの魔女っ娘・e00506)
アバン・バナーブ(過去から繋ぐ絆・e04036)
沙更・瀬乃亜(炯苑・e05247)
ニュニル・ベルクローネス(ミスティックテラー・e09758)
志穂崎・藍(蒼穹の巫女・e11953)
愛沢・瑠璃(メロコア系地下アイドル・e19468)
ジェミ・ニア(星喰・e23256)

■リプレイ

●新説・飴女
 場所は早朝の公園。早朝とはいえ、ジョギング等で人もまばらにいる様だ。
「すいません。僕らケルベロスです。これからここは戦場になります。危険ですので避難していただけませんか?」
 そう声をかけるのは、ジェミ・ニア(星喰・e23256)。十夜・泉(地球人のミュージックファイター・e00031)、パティ・パンプキン(ハロウィンの魔女っ娘・e00506)、愛沢・瑠璃(メロコア系地下アイドル・e19468)も声をかけて避難を呼びかけた。
 ドリームイーターを呼びだす場所としては芝生の多い場所を選んだ。まだ、暗い時間でもある為、沙更・瀬乃亜(炯苑・e05247)はランプ等の灯りを用意し、アバン・バナーブ(過去から繋ぐ絆・e04036)はキープアウトテープを貼って、ニュニル・ベルクローネス(ミスティックテラー・e09758)は殺界形成をして人を遠ざける様に施した。
「アバンさんにお久しぶりですね。お元気でしたか?」
「ああ、お前も元気そうで何よりだぜ」
 かつて修練を共にしたアバンに泉は声をかける。それに、アバンも頷いた。
「いつも折角の野外フェスで雨になっちゃうアーティストとかもよくいるけれど、嵐とか大雨になるのは勘弁よね……。飴が降ってくるのもなかなか面白いけど……さすがにそんなのが降ってきたらフェスも中止だからそっちも勘弁願いたいわね!」
 雨になり野外フェスが中止になってしまうアーティストの事に思いを馳せる瑠璃。飴が降るのは面白いとは思うけれど、それも結果は同じなのだ。迷惑には違いない。
 戦闘場所を確保した所で、飴女のドリームイーターを呼び出すために噂話を開始する事にした。
「キャンディーを振らせる女の子がおるのだ!? それは是非ともあってみたいのだ!」
 何故かボクスドラゴンのジャックにシーツオバケの格好をさせたパティが話し始める。そんなパティもお菓子が大好きだ。守りを任せているジャックに攻撃の飴を回収してもらう気満々だったりする。
「『飴女』かぁ。雨の代わりに飴が降って来たらカラフルで楽しそうですね。でも、当たったらちょっと痛いかな」
「あーそれ思った。子供の頃思ったよね」
(「そういえば昔、雨の日に雨じゃなくて飴が降れば皆喜ぶのにと思ったことを思い出したにゃ」)
 ジェミの言葉に、志穂崎・藍(蒼穹の巫女・e11953)が言葉と心の中で同意する。
「外出したらキャンディが降る話なんて、ステキじゃない。毎日のおやつに困らないよね」
 ニュニルもそう話す。お菓子を降らせてくれる夢。それはきっと皆の永遠の憧れ。そう思うから。人を襲わないなら倒したくない相手だと思う。
「そうそう、飴を降らせてくれるなんて、おやつに困らねえし最高じゃんか!」
 その存在を信じている様に装って話に乗るのはアバン。しかし、何故か傍にはバケツが置いてある。相手の水飴による攻撃の水飴をあわよくば回収しようと思っているからだ。
(「タダで腹いっぱい飴が食いたかったから参加した何て口が裂けても言えない」)
 それが、アバンの本当の心情である。信じていなくても、飴の恩恵は受けたい。懐事情の厳しい彼にとって切実な願いなのだ。
「飴が空から降って来て、おやつに困らない……。それは素敵なお話ですね」
 真剣に聞き入る瀬乃亜。こういう話は信じてしまう彼女は、素敵な夢の様に思う。
「飴女、いっそサンタさんみたいに飴を配るような、夢のある立ち位置なら良いのに」
 ジェミの言葉が終わるか終らないか、その位に可愛い声が重なった。
「ふふ♪ 素敵なお話ね?」
 そこに現れたのは10代後半位の可愛い顔立ちの女の子。服装はキラキラ虹色のワンピースに大きなリボン。そして、巨大なぺろぺろキャンディーの様なステッキらしきものを持っていた。にこにこと可愛い笑顔をしている。とても嬉しそうな顔だ。
「キミも噂話に興味あるの? ああほんと、見てみたいよね空から降るキャンディ、キャ9ラメル……。鞄とポケットいっぱい詰め込んで帰るのに」
「うんうん、そうよね、そうよね♪ お菓子が大好きな人に飴を沢山降らせてあげるんだ♪ 嬉しいよね? 喜んでくれるよね?」
 ニュニルの言葉に、うきうき、とっても嬉しそうな女の子。そして、ステッキを掲げてくるりっと回って見せた。
「さてさて、そんな私は誰でしょう?」
「わかった! お主が飴女なのだな!」
 パティの言葉に、女の子はにっこり笑った。
「正解! 正解した良い子には沢山お礼をしちゃうね♪」
 女の子がステッキを掲げると、色とりどりのキャンディが降ってきた。通常サイズ。ご褒美らしい。ちょっと当たると痛いけれど。
 そんな、ちょっとメルヘンな飴女との戦いが幕を開けたのだった。

●飴女型ドリームイーター
「やけにガーリーで可愛いドリームイーターね! だけどアイドルも女の子も時代はパンクだから、さっさと宿主の夢に帰ってもらうわよ!」
 瑠璃は、そうドリームイーターに言い放つと、煌めきを伴う重い蹴りを叩き込む。
「なめんなよ……こんな戦い、キャンディ舐めながらだって俺には出来る!」
 先程、ご褒美で降ってきたキャンディをアバンはちゃっかり口に入れると、大地さえも割れるような強い一撃をドリームイーターに放った。
 泉は左手にオーラを、右手にナイフを構える。そして、ドリームイーターを激しく斬りつけた。続き、ジェミの雷を纏った突きが放たれる。
「痛~い! えー、私の事、信じてくれてるんだよね? そこの子は飴まで食べてくれたよね? どういう事なの? どういう事なの?」
 混乱しているドリームイーター。しかし、気を取り直したらしい。
「私の飴を食べておいて、いじわるするなんて酷い子なのー!」
 狙いはアバン。ステッキからは綺麗な虹色の塊が現れる。流れる様は水の様で、まさに虹色の水の飴。それがアバンに襲い掛かる。そこを、シーツオバケなジャックが庇いに入り、庇いきれなかった水飴を用意していたバケツを構えてアバンが回収を図る。その飛沫はニュニルにもかかった。
「ジャック、ナイスなのだ! シーツに水飴が付いたのだ!」
「よし、少しは水飴をゲット出来たか?」
「わわっ。もう、後でクリーニング代請求するよ。……うん、味は中々」
 喜ぶパティ。バケツを覗いて確認するアバン。そして、文句を言いつつも水飴を舐めて悪くない顔をするニュニル。
「ちょっと、あなた達、なんなの!? 私の飴が目当てなの? それなのに、何で攻撃するの!? 攻撃してこなければ飴なら一杯あげるのに!」
 ケルベロス達の行動に、更に混乱するドリームイーター。明らかに彼女を倒そうとしている感じがするのに、飴はしっかり戴こうとしている。……ケルベロスの方がドリームイーターを倒すついでに、ちゃっかりと飴のご相伴に預かろうとしている訳なのだが、そのちゃっかりさがドリームイーターには理解できないらしい。いや、理解しろと言う方が無理だろう。
「そうだね、確かにボクもキミを倒したくない所なんだけど……仕方が無いんだ。ね、マルコ?」
 ニュニルはピンクのクマのぬいぐるみ、マルコにそう話しかけると、ドリームイーターに向かって重い蹴りを放つ。
「子供の頃の『夢』だからにゃ」
「『夢』、だから良いのかもしれませんね」
 そう言うと、藍は泉に向かって紙兵を放ち、瀬乃亜は星座の守護の力を用いて瑠璃達の護りを固めていき、パティはアバンの傷をオーラによって回復した。瀬乃亜のテレビウム、赤薔薇とニュニルのボクスドラゴン、スクァーノも回復に努め、瑠璃のウイングキャット、プロデューサーさんはドリームイーターに向かって引っ掻き攻撃を行う。
「何か分かんないけど、私を殺そうとするなら容赦しないんだから!」
 ドリームイーターはキャンディステッキを振り上げる。そこから現れるのは、白、黄色、ピンク、マーブル等々、色々な色のキャンディ。ただ、サイズが大きい。
「喰らえ、キャンディ乱舞!」
 色とりどりのキャンディが、パティに向かって飛んでいく。ジャック、赤薔薇、スクァーノが一つ一つのキャンディを押さえるが、残りのキャンディがパティを取り巻いていく。
 ……そこに広がるのはキャンディの溢れる甘くて素敵な世界。お菓子が好きだと幸せに浸れる、そんな世界。
「……キャンディ……キャンディが一杯なのだ……」
 お菓子大好きのパティは夢の中に引きずり込まれていく。痛いような気がするが、それすら気にならない位に。
 泉はオーラを全身に纏うと、思いっきりドリームイーターを殴りつける。早く倒さないとやっかいな相手の様だ。
「おい、しっかりしろ!」
 飴を転がしながら、パティに向かってアバンはオーラを放って回復していく。それで、パティは我に返った。
 瑠璃はバスターライフルを構えるとドリームイーターに向かって凍結光線を放つ。続き、ジェミの召還した氷の騎士の一撃が入った。
「この縄は不動明王の羂索、滅罪を象徴する縄よ敵を辛め取れ」
 藍は呪を唱えると御業を放ち、ドリームイーターを縛り上げる。そこにニュニルが前進にオウガメタルを纏うと、鋼鉄の拳を繰り出した。その間を縫って瀬乃亜はオウガ粒子を泉に放って集中力を高め、パティは紙兵を藍達に放って護りを固めていく。プロデューサーさんはリングを放ってドリームイーターを攻撃した。
「さあ、キャンディ! あいつを狙うのよ!」
 ドリームイーターのステッキから大きなキャンディが出現する。何だか重たそうなキャンディだ。それが泉に向かって飛んでいく。それをジャック、赤薔薇、スクァーノが3体がかりで庇いに行く。重たい一撃だったらしく3体はそれぞれ弾かれて飛んでしまった。速度の遅くなったキャンディが泉にも当たる。確かに3体が弾かれても仕方が無い重さだ。
 早く倒すべく、素早く泉がナイフを使ってドリームイーターを激しく切りつけていく。更にアバンの重い蹴りが放たれた。瑠璃のルーンアックスが輝く。そして、輝きを伴う斬撃が加えられた。更にジェミの鋼鉄の拳がドリームイーターに向かい襲い掛かる。その場所を狙いニュニルの漆黒の弾丸が放たれた。
「ボクの炎はただの炎じゃないにゃ、敵を浄化する迦楼羅炎にゃ、炎よ浄化せよ」
 藍の御業が炎となり、ドリームイーターを包んでいく。そこにプロデューサーさんの引っ掻き攻撃が入った。
「A red rose is not a rose red flo」
 瀬乃亜は泉達の傷を癒していく。更にパティは紙兵を放って護りの力を高めた。
「水飴ちゃん、水飴ちゃん、今度はしっかりするのよ!」
 ドリームイーターのステッキから、流れる水の様な塊が浮かび上がるとキラキラと輝き始める。その水飴はジェミに向かって流れ放たれた。それを受け止めるジェミは、見事に水飴に覆われてべたべたになってしまう。
「本当に飴だ……」
 そう呟くジェミは、どこか不思議そうな感心しているような……そんな表情だ。
「そろそろお終いにするわよ」
 瑠璃のバスターライフルから凍結の光線が放たれる。
「灰は灰に、興味は興味に。この一閃は元の興味の元へ帰る音ですよ?」
 泉の正確な一撃がドリームイーターに叩き込まれる。
「こいつで決めてやる! スピリット・ストリィィィィム!!」
 アバンはドリームイーターに光の奔流を放ち、ドリームイーターを包み込んだ。そして、その光に飲まれるようにして、ドリームイーターの少女は消えていく。散っていく虹の破片は太陽の光に反射して美しく輝いたのだった。

●戦いの終わりに
「はい、クリーニング終わりなのだ!」
「ありがとう、パティさん」
 パティに服を綺麗にして貰った藍はお礼を言う。
「ジェミもべたべたなのだ。綺麗にするから、こっちに来るのだ!」
「ありがとう」
 パティは水飴をまともに喰らっているジェミに声をかけると、綺麗にしてあげる。
「くんくん……。でもまだ身体から甘い匂いがするような」
 同じくクリーニングをして服を綺麗にしたニュニルは、まだ甘い匂いがするような気がして気になった。
「飴につつまれるのはもう少しいいものだと思っていました。あなたもそう思う?」
 同じく洋服を綺麗にしている瀬乃亜は赤薔薇にそう尋ねてみたりしている。
(「飴にしても雨にしても、私はどちらも好きなので、私にとって、これはなんだかいい夢でした。夢だからこそいいのかもしれないわ」)
 同時にそんな事も瀬乃亜は思う。夢は夢で素敵だと感じたから。
「歩美ちゃんかしら?」
 周辺のヒールをしていた瑠璃は、倒れている少女を見つけ駆け寄る。パティと瀬乃亜も手伝って癒してあげた。
「飴は如何ですか?」
「わあ、ありがとう!」
 元気になった歩美に、泉があらかじめ持って来ていた飴をプレゼントする。それに歩美は満面の笑みを浮かべた。
「空からは降ってきませんが、いい子の元には集まるものですよ?」
「そうなの? うん、いい子にする!」
 泉の言葉に元気よく答える歩美。それを見て、瑠璃、瀬乃亜、藍は微笑んだ。特に、藍は同じような夢を抱いた女の子だから……。
(「……流石に腹一杯は食べられなかった」)
 そんな事を思いながら、アバンはご褒美の様に降ってきた飴をいくつか拾う。
「ジャック、たくさん飴をゲットしたのだ?」
 パティはジャックにそう尋ねたり。何だかんだ、飴を楽しめた気がするドリームイーターだったと思う。
 歩美と共に甘い飴を食べたりしながら、少しばかり小さな少女の夢を思い描き、優しい気持ちも感じる一時だった。

作者:白鳥美鳥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年3月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 3
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