折り畳み犬

作者:天木一

「あーお腹空いたー何かおやつあったかなー」
 背伸びをした少年が棚からクッキー缶を取り出す。
「おっクッキーだ! ラッキーッ」
 嬉しそうに少年が不器用に爪を立てて缶を開ける。
「え?」
 するとそこに入っていたのは缶の内部にぴっちりと折り畳んで詰まった、ふさふさの毛皮のような布だった。
「なんで服が入ってるんだ?」
 少年が手を触れようとすると、ギロリと開いた目と目が合った。
「ワンッ」
「うわぁ!?」
 驚いた少年が缶を手放して仰け反る。すると甲高い音を立てて床に落ちた缶から布が勝手に起き上がる。折り畳まれていたのが開いてゆき、風船の空気が入るように膨らんでいく。するとそこに現れたのは40cm程の柴犬だった。
「お化け犬だ!!」
 少年が叫んだところで夢は終わり、少年は炬燵で目を覚ます。
「犬……の夢? あー変な夢みたー」
 上体を起こし脱力したように寝汗を拭う少年。その胸から鍵が突き出た。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『驚き』はとても新鮮で楽しかったわ」
 突然背後に現れた女が鍵を引き抜く。すると少年は意識を失い、現れたのと同様女は忽然と姿を消す。
「ワォンッ」
 そしてその場に柴犬が突如として現れた。窓を開け、体より狭い隙間の柵を体を軟体動物のように変形させて素通りし、外へと飛び出した。

「動物のドリームイーターを調べていただいたのでございますが、どうやら人を驚かせる犬のドリームイーターが現れてしまうようですね」
 ケルベロス達を丁寧に出迎えた鴻野・紗更(よもすがら・e28270)が新たな事件の発生を告げる。
「第三の魔女・ケリュネイアによって驚く夢を見た少年が、『驚き』を奪われてしまいました」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が詳細を説明し始める。
「『驚き』から新たに生み出されたドリームイーターは、人々を襲いグラビティ・チェインを集めるようです」
 そうなれば見境ない虐殺に多くの人が犠牲になってしまう。
「その前に皆さんにドリームイーターを倒し、少年を眠りから救ってあげてほしいのです」
 ドリームイーターを倒せば、眠りっぱなしの少年は目覚める。
「皆さんが戦うドリームイーターは柴犬の姿をしています。ですが普通ではなく、まるで液体のように体が柔らかく、曲げたりできるようです」
 その柔軟性で小さな入れ物に入ったり、狭い隙間を通ったりできるようだ。
「敵は夜の住宅街、少年の家の近くで驚かす獲物を待ち構えているようです」
 夜の人通りは少ない、周辺を封鎖して探索すれば一般人が先に襲われる事ないだろう。
「驚きから生まれたドリームイーターは、人を驚かせる事に執着があるようです。ですので驚かせても反応の薄い相手を優先的に狙います」
 上手くその執着を利用できれば、攻撃を集中させる事が出来る。
「見た目は普通の柴犬ですが、人を襲い殺してしまう怪物です。少年を助ける為にも見た目に騙されずに退治してください」
 お願いしますとセリカが頭を下げ、ヘリオンへと向かう。
「軟体のような犬でございますか……夢から生まれたならばそのような不可思議な犬も存在できるのでございますね。興味深い相手ですが、人の害となるのであれば退治するといたしましょう」
 穏やかに微笑む紗更の言葉に頷き、ケルベロス達も出発の準備を開始した。


参加者
朝倉・ほのか(ホーリィグレイル・e01107)
ケーシィ・リガルジィ(黒の造形絵師・e15521)
鴻野・紗更(よもすがら・e28270)
日御碕・鼎(楔石・e29369)
佐伯・誠(シルト・e29481)
須藤・花(ベリル・e29482)
アリアンナ・アヴィータ(日陰のハミングバード・e32950)
マリー・ブランシェット(マグメルの落とし子・e35128)

■リプレイ

●夜道
 街灯が照らす夜の人通りの減った住宅街にケルベロス達が降り立つ。
「よもやわたくしの予測どおりに折り畳み犬なるものが現れるとは思いもしませんでしたが」
 鴻野・紗更(よもすがら・e28270)は自分でも本当に居るとは驚いたと肩をすくめる。
「世の中は不思議なことだらけでございますね。しかし人に危害を加えるものならば見過ごせないものでございます。しっかりと任務をこなして参りましょう」
 その言葉に仲間達も同意して、油断なく周囲へ鋭い視線を向ける。
「折り畳み犬……初めて聞きましたが、シュールというか何というか……」
 マリー・ブランシェット(マグメルの落とし子・e35128)はあまりにも変わり種の敵に、毒気を抜かれたような気分になる。そして緊張感を保たなくてはと頭を振った。
「人を驚かせる犬、わんこ、可愛いです」
 朝倉・ほのか(ホーリィグレイル・e01107)は可愛らしい犬を想像して頬を緩ませる。
「と言っても実はドリームイーターというならこのままは危険です。第三の魔女ケリュネイアの仕業らしいです、何とか食い止めましょう」
 そう言って顔を引き締めるが、わんこは可愛いと良いのになと緊張を保てずにいた。
「また、驚きを喰うドリームイーター、ですか。シツコイです。ね」
 日御碕・鼎(楔石・e29369)は今まで戦ったドリームイーターを思い浮かべる。
「そろそろ本体が出て来ても良いのです、けど。……。出て来る必要も無さそう、なんですよね……。……。方法を考えないと。先ずは、目先の事を片付ける事にしましょうか」
 ともかく今は目の前の事件に集中しなくてはと気持ちを切り替える。
「みんなと一緒に探してれば、向こうから脅かしにくるって聞いたにゃ。にゃのでみんなで一緒に探すにゃー」
 楽しそうにケーシィ・リガルジィ(黒の造形絵師・e15521)は、人の居ない夜道を散歩するように歩き出す。
「先輩っ犬好きですか?」
「犬は好きだぞ。……普通のやつな」
 キープアウトテープを張りながら顔を向けた須藤・花(ベリル・e29482)の問いかけに、流石に化犬はゴメンだと佐伯・誠(シルト・e29481)は苦笑する。
「こんなんでも捨て置くわけにもいかないか。須藤、気を抜かずにやるぞ」
「市民の平和を守るのが警察とケルベロスのお仕事ですから、頑張りましょっ、ねっ、先輩!」
 誠の言葉に花は元気に返事をして仕事に取り掛かる。
「ドリームイーターとは、いっても……びっくりな、犬さんです、ね」
 情報で聞いた犬を想像してアリアンナ・アヴィータ(日陰のハミングバード・e32950)はひっそり微笑む。
「可愛いなら、倒したくなくなりそうです、けど……しっかり、倒さないといけません、ね」
 犠牲者が出るならば可愛くても放ってはおけないと、小さな手をぎゅっと握った。

●折り畳み式
 そうして道を歩いていると、カランカランと道の真ん中をジュースの空き缶が転がる。そしてケルベロス達の前まで来て止まった。見れば缶の蓋はまるっと切り取られ、中に何かぎゅうぎゅうに詰まっている。警戒したケルベロスの足が止まると、空き缶の中からするっと布のようなものが飛び出してくる。
「ワンッ!」
 それはぷぅっと膨らみ40cm程の柴犬へと変身した。
「平べったいのがわんこになったにゃー!?」
 ピンッと猫耳を立てたケーシィが大袈裟に驚いてみせる。
「……。吃驚して、息が、止まってしまいました」
 無表情ながらも鼎は手を上げて何とか驚いたポーズをしてみせる。
「わっ。これはカワイイというか何というか、判断に悩みますね……!?」
「ワォン!!」
 マリーが素直に驚くと、満足そうに犬は吠える。
「きゃっ、わ、私は食べられませんよ!?」
 驚きに胸を押さえたほのかはうろうろと動揺して動き回る。
「ワンワンッ!」
 気分良く犬が吠え、調子に乗って今度は空気が抜けるように萎み布のようになって折り畳んでいった。
「思っていたより……凄い光景だな」
「おお! すげえ! ぐにゃぐにゃしてる!」
 聞いていたより実物で見た犬の異様さに誠は目を瞬かせ、隣の花は楽しそうに驚きの声を上げた。
「畳めるわんこにゃー!?」
 その犬の機能性にケーシィは半ば本気で驚く。
「本当に存在したのですね、折り畳み犬……まさに摩訶不思議というほかありません」
 紗更も目を見開いて驚いたそぶりを見せた。
「ぜんぜん……びっくりしない、です」
 そんなリアクションの中、ナノナノを抱きしめて俯き、驚きを我慢したアリアンナが上目遣いに犬と視線を合わせる。
「……ワン?」
 何故驚かないのかと犬は首を傾げ、するするっと犬は平べったい体でアリアンナに巻き付いてくる。それに対してナノナノがばりあを張って守りを固めた。
「……っびっくり、して、ません」
 息を殺したアリアンナはオーラを纏った腕で受け、反撃に拳を鼻面に打ち込んで仰け反らせる。
「ワォン!」
 すると犬はひらひらと紙のように衝撃を逃がし、驚かせてやろうともう一度巻きついてくる。
「いざ、参りましょうか」
 そこで紗更が振り抜いたバールの先端を尻に突き刺し、皮膚を抉るように破ると、犬は悲鳴を上げて飛び退いた。
「キャンキャン!」
「戦いを始めます」
 続けて踏み込んだほのかの手が月光に包まれ剣を生み出し、鋭く薙ぐと敵の胴を斬り裂いた。
「折り畳みわんこ! これにゃらでっかいわんこも飛行機に乗せれますにゃ! ……冗談ですにゃ、生き物は箱に詰めて運んじゃダメなのにゃー」
 そんな冗談を飛ばしながらケーシィはミミックのぼっくんを放り投げ、噛みつこうとするぼっくんを犬が避けたところへ漆黒のバスターライフルから凍結光線を放った。すると光を浴びた犬の体が凍っていく。
「ワンワォンッ!」
 犬が普通のサイズに戻って駆けてくると、対抗するようにオルトロスのはなまる号が立ち向かう。2頭が衝突しようという時、犬がまた身体を薄くして衝撃を逃し、はなまる号に巻き付いて締め上げた。
「此処はお前が居る場所じゃない。去ね、夢喰い」
 触ってみたいのを我慢して鼎は札を取り出すと、炎を放って犬の尻尾に火を点けた。
「キャンッ!?」
 慌てた犬が離れて身体を地面に押し付けるようにして火を消す。
「味方の援護に専念するぞ」
「了解ですっ! ほむら丸も一緒にがんばろー!」
 誠が手にしたスイッチを押すと、カラフルな爆発が起こり仲間の士気を高める。花も溜めたオーラを放ってはなまる号の傷を癒した。そしてボクスドラゴンのほむら丸も元気に炎を吐き出す。
「ワンッ!!」
 薄っぺらい犬は吠えてするりと電柱を登って頭上を取ると、ふわりと宙を浮いて襲い来る。
「実物もシュールですね……はっ、のんびり眺めている場合ではありませんね」
 勢いをつけて跳躍したマリーが飛び蹴りを浴びせて迎撃する。
「バウッ」
 衝撃を受け流した犬の体が浮き上がってふわふわと宙を浮く。
「普通にしてると、可愛い犬さんです、ね」
 だが倒さなくてはならないとアリアンナの背中の翼が輝き、全身を光の粒子に変えて敵に突っ込んだ。逃れようとする犬を追い撥ね飛ばす。
「可愛いわんこが相手でも容赦はしません……!」
 迷いを振り切ってほのかは光剣を振るい、宙にいる犬の傷口をさらに抉るようになぞる。
「しかし便利そうなわんこにゃ、置き場所に困らないにゃ」
 軽口を叩きながらもケーシィの足元から黒い液体が広がり、ふわりと着地する下から槍のように犬の足を貫く。
「手荒なのは好きではありませんが……やむをえませんね」
 動きを止めたところへ、少々申し訳なさそうにしながらも、紗更は躊躇いなく大鎌を振り下し犬の背中を斬り裂いた。
「ワンッワオーン!」
 犬は今度は風船のように丸くぱんぱんに膨らんで風に流され、予測できない動きで翻弄する。攻撃を受けても風圧で体を揺らして躱してしまう。
「折り畳みとは、怖いと思っていましたが、面白い犬です、ね。……。どこまで膨らむのでしょう」
 だが見ている訳にもいかないと、接近した鼎は優しく撫でるようにして札を張り付ける。すると犬の体が凍結を始めた。重さに犬の体が落下し地面をコロコロと転がる。
「ちょっと痛いですけど、我慢してくださいね」
 チェーンソー剣を取り出したマリーは地を這うように刃を唸らせ、アスファルトに火花を散らしながら犬を切り裂く。高速回転する刃が凍った犬の身体を削り取っていく。
「ワンッグルルゥ!」
 唸った犬は萎むようにして平べったくなってそれ以上の攻撃を避け、チェーンソーを掻い潜ってマリーに纏わりつこうとする。
「それは、ダメです……」
 そこへ庇おうとアリアンナが割り込むと、犬はアリアンナの上着の裾から中へとするすると入り込み、身体に巻き付くとボンっと膨張して内部を圧迫しながら上着を吹き飛ばし、その勢いのまま一緒に飛んで風船のように空を舞った。
「おい、2人でやるからといってサボるなよ」
 じろりと隣を見た誠は纏う鋼からオウガ粒子を放出し、仲間達の傷を癒すと共に超感覚を呼び起こす。
「サボりませんって! はい、お仕事がんばりまーす!」
 視線を受けてビシッと背筋を伸ばしてた花は、はきはきと動き傷ついたアリアンナにすぐにオーラを分け与える。

●収納自在
「ワンッ」
 ふわりと犬は塀の上に着地して、ケルベロス達を見下ろす。
「貴方を壊す」
 下段からほのかが光剣を振り上げ。塀ごと斬り裂き犬の腹を斬りつけた。
「折り畳みわんこなんて珍しいものが見れたお礼に、ぼくの世界も見せてあげるにゃ!」
 ぼっくんの蓋が大きく開き巨大な鉛筆が飛び出す。それを手にしたケーシィはブラックスライムを纏わせてのびのびと振り回した。すると宙に犬の戦士のイラストが描かれ、それは命を持ったように躍動して手にした剣で敵に襲い掛かった。
「ハッハッ」
 ひらりひらりと薄っぺらくなった犬はその攻撃をいなす。
「自在に体を膨らませたり薄くしたりできるとは、まるで風船のようですね」
 紗更はその体を鋭く蹴り上げ、浮いたところをバールに巻き付けて塀に叩きつけた。
「キャンッ」
 しゅるしゅると布が落ちるように犬はバールを離れ、道路端の溝の中へと入っていく。
「犬は好き、なので、そうして怪物らしい姿の方が、戦い易いです、ね」
 鼎が札を宙に打つとぬうっと鬼が現れ、その刃物のような爪で溝の蓋を破壊し、それごと犬を切り裂いた。
「先輩、あれ見てると犬飼いたくなりません?」
 援護に花が弾丸を撃ち込み、溝から這い出た犬の足を凍らせる。
「いや、あんなのはいらん……それに……」
 誠の視線がちらりとじーっと不安そうにつぶらな瞳で見つめるはなまる号に向けられる。
「お前が一番だから、そんな目で見るな。大丈夫だから、ほらほら前向け」
 そう優しく声をかけながら誠は爆煙で敵の視界を遮った。はなまる号もやる気を見せて駆け出し、追われる犬は嫌がって電柱を這い上る。
「見失わないように追いかけます」
 その後を追いローラーダッシュで加速したマリーは、電柱を駆け上がって犬を追い抜くと、炎を纏った足で犬の胴を蹴り落とす。するとひらりひらりと犬が落下していきた。
「犬さん、こっちです」
 挑発するように手を叩くアリアンナに犬が突っ込んでくる。そしてまた服の中に入ろうとするのをオーラを纏った両手で押し留める。
 そこへイラストの犬が剣を手に犬を追いかけると、犬は諦めて溝へと再び入り込もうとする。
「逃さない。……。此処で、尽きろ。夢は夢のまゝで終わるべきだ」
 鼎が手にした符から狐を招き、青い焔が犬を覆い尽くす。
「ギャィッ」
 炎から逃れようと犬は方向転換して駆けまわりながら隠れる場所を探す。
「狭いところが好きにゃ、なら用意してあげるのにゃ!」
 ケーシィが黒い液体で小さな箱を作ると、犬は逃げ込むように体を薄くして折り畳みながら入り込む。
「犬というより猫みたいですね。水の刃よ、駆け抜けて!」
 マリーは水の刃を作り出し斬りつける。すると熱が奪われ折り畳んだまま犬は凍りつく。
「これが竜の力です」
 そこへ竜の威を纏ったほのかが間合いに踏み込み、同時に光剣の斬撃を八方向から浴びせた。
「キュゥウン……」
 体中を刻まれズダズダになった犬は、塀の隙間に入り込もうと薄くなった顔を突っ込んだ。
「ごめんなさい、でも……逃がしません」
 塀の向こう側へ着地して立ち塞がったアリアンナが、反転する犬の尻尾を掴み引っ張り出すと塀の向こうの仲間の元へと放り投げる。
「最後まで油断せずにやるぞ」
 誠が花に向かって矢を放ち、当たった矢はその身に魔を打ち破る祝福を与えた。
「キュンッ!」
 膨らんで宙を滑空して逃れる犬、そこへほむら丸がタックルして妨害する。
「よーしよし! お礼のご飯は弾みますよ!」
 それを褒めながら花は気弾を撃ち込み、吹き飛ばした犬を塀に叩きつけた。
「どうぞ、おやすみなさいませ」
 紗更の周囲にほの光る青い雨粒が浮かぶ。それを己が身に集め敵を指し示すと、一筋の閃光と化して犬の胸を撃ち抜いた。
「ギゥ……」
 穴の空いた風船のように犬は萎み、小さくなってやがて何も残らず消えてしまった。

●犬の次は
「あの、お疲れ様でした。皆さん大丈夫ですか?」
 ほのかが仲間の無事を確認してほっと胸をなでおろす。そして次に周囲に目をやり戦闘で破損した箇所にヒールし始めた。
「お疲れさま、でした。男の子、無事だと、いいんです、けど……」
 おどおどしながらもアリアンナは夢を奪われていた少年の無事を願う。
「きちんと眠れていると良いのです、けど。……。好い夜を。好い夢を」
 戦闘の後を綺麗に直した終えた鼎は、少年の眠る家を見上げた。
「いい汗かきましたね! 先輩、今日はもう仕事終了ってことで帰……」
「終了? 溜め込んだ書類あったよな? 無いとは言わせないからな?」
 テープの回収を終えて帰ろうとする花の肩を誠が掴んで冷たい視線を向ける。
「……忘れてませんよ。書類残ってますよね……忘れてませんって……」
「手伝ってやるからさっさと帰るぞ。全く……戦闘よりこっちの方が疲れそうだ」
 しぶしぶ頷く花に、仕方ないと誠が溜息を吐いて背中を押した。
「畳めるわんこ……にゃんかそんなサーヴァントがいてもいい気がしますにゃ!」
 ケーシィがそんな妄想をすると、傍でぼっくんが蓋をぱかぱかさせて自己主張する。だがケーシィはオルトロスもウイングキャットもいいと妄想に夢中で気付かない。ゆえにぼっくんはその足に歯形がつく程度に甘噛みした。
「収納の便利な道具なんて売れるでしょうか……」
 悲鳴も聞こえないように、収納犬からマリーは新たな商品のアイデアを考え込む。
「折り畳み犬が存在したことですし、他にも不思議な動物が現れるかもしれませんね」
 紗更は子供の夢という突拍子もない想像力なら何でもありえると、優しく微笑んだ。

作者:天木一 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年3月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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