彼女の果て

作者:陸野蛍

●残りし結い紐
 滋賀県琵琶湖。
 昨年の末、攻性植物の将の1人である『レプリゼンタ・カンギ』により、無敵の樹蛇『ミドガルズオルム』の召喚が成されようとした場所である。
 カンギの策略は、ケルベロス達の手によって完全に防がれた。
 その作戦の際に、この地で行われたケルベロスとの戦いにおいて『カンギ戦士団』のデウスエクス達が多く命を散らしていた。
 そんな地に死を司るシスターは、頬笑みを浮かべ現れた。
「この地で多くのケルベロスとデウスエクスが戦い、縁を結んだのね。あら、この結い紐はまだ形を保っているのね……この子は死の間際、何を思ったのかしら?」
 結い紐を手にし、そう口にするとシスターは宙を泳ぐ怪魚達を手招きする。
「折角だから、あなた達……彼女をサルベージしてあげて下さらない? 彼女と縁を結んだケルベロス達が、どう動くか楽しみで仕方がないわ……あなた達は最後までそれを見届けて……」
 言うと、青白い魔法陣を描く様に泳ぎ始めた怪魚達を残し、シスター……いや、死神『因縁を喰らうネクロム』は、静かに姿を消した。
 数分後……怪魚達が創り出した魔法陣から、1人の少女が現れると生気の無い瞳で、長い黒髪を結い紐でゆっくりと縛った。

●運命に翻弄されし命に終焉を
「みんな、琵琶湖と淡路島で行われた『光明神域攻略戦』は、覚えているよな?」
 ヘリポートに現れた、大淀・雄大(太陽の花のヘリオライダー・en0056)は、そう話を切り出した。
「『光明神域攻略戦』では、大勢の『カンギ戦士団』に属するデウスエクスを撃破したんだけど、そこに目を付けたのか、琵琶湖に死神『因縁を喰らうネクロム』が現れた」
 ネクロムは、ケルベロスによって殺されたデウスエクスの残滓を集め、その残滓に死神の力を注いで変異強化した上でサルベージし、戦力とする死神だ。
「ケルベロスがデウスエクスを倒す度に、死神の戦力が増強されるって言うのが続くのは大きな問題だから、ネクロムの調査は以降も続けるけど、みんなには今回死神にサルベージされたデウスエクスの撃破を頼みたい」
 ネクロムの居場所は追い続けなければならないが、今は、いち早く琵琶湖に向かい、サルベージされたデウスエクスを死神が回収する前に撃破しなければならない。
「今回サルベージされるのは、琵琶湖で『カンギ戦士団』として現れた螺旋忍軍『友野愛』だ」
「愛ですって!? どう言うことです!?」
 雄大の話を聞いていた、中邑・めぐみ(ときめき螺旋ガール・e04566)が驚きのあまり声をあげる。
 そのめぐみを心配する様に、水色の忍び装束を着たビハインドがめぐみを背中から抱く。
「……愛の魂と身体が分かれてしまったと言う事なんですか……?」
 小さく呟くめぐみだが、その様な事情を知らない雄大は、ヘリオライダーとして撃破対象の説明を続ける。
「『友野愛』は元々が螺旋忍軍なんだけど、体術にも優れていた。そして、カンギに侵略寄生された事で、攻性植物の使用も可能になった……かなり手強い相手だ。ただ、愛自身の意識は希薄で、生きていた頃よりは戦略面が弱くなっている。分かっているとは思うけど、会話による揺さぶりや説得も無理だからな」
 死神にサルベージされると言うことは、死神の傀儡に堕ちてしまう事に他ならない。
「愛の攻撃手段は、螺旋掌、フライングニープレス、シュリケンスコール、攻性捕食と幅広いから油断しないでくれな」
 そして、愛の回復を助ける為に3匹の怪魚型死神が後ろに控えているとのことで、こちらも手早く撃破して欲しいとのことだ。
「説明は以上になる。今回の撃破対象である『友野愛』は螺旋忍軍としてカンギと戦い、カンギが言う所の戦友になる為に侵略寄生を受け入れ、死した後も死神に利用されようとしている。デウスエクスとは言え、これ以上彼女の命が他のモノの意志によって弄ばれるのは、あまりにも……酷いと思う。だから、彼女を倒し……二度と目覚める事の無いようにしてやって欲しい。……頼むな」
 寂しげに笑うと、雄大はケルベロス達に彼女の行く末を託した。


参加者
ミリアム・フォルテ(緋蒼を繰る者・e00108)
天谷・砂太郎(怠惰なる白き雷光・e00661)
ユスティーナ・ローゼ(ノーブルダンサー・e01000)
中邑・めぐみ(ときめき螺旋ガール・e04566)
ティーシャ・マグノリア(殲滅の末妹・e05827)
円谷・円(デッドリバイバル・e07301)
黒木・市邨(蔓に歯車・e13181)
ジョー・ブラウン(ウェアライダーの降魔拳士・e20179)

■リプレイ

●親友との再会
 頭上の月を映し、琵琶湖は穏やかに水面を輝かせていた。
「……まさか、こんな形でまた……この場所に来る事になるとはね。ホント、死神ってのはロクな事しねぇよな……」
 煙草の煙を吐き出しながら、明らかに不機嫌な口調でそう呟くのは、白いスーツを纏った、天谷・砂太郎(怠惰なる白き雷光・e00661)だ。
「ホントだな……ここに来るのが、こんな形とはな。……『友野』か。……今度こそ、しっかりと眠りにつかせてやらねえとな」
 カンガルーのウェアライダーである、ジョー・ブラウン(ウェアライダーの降魔拳士・e20179)の機嫌も良く無く、相棒のビハインド『マリア』からも悲哀が感じられる。
「まだ、たった3ヶ月しか経ってないのに……死神も貪欲だね……」
 リボンをあしらった灰のふわふわのウイングキャット『蓬莱』を胸に抱く、円谷・円(デッドリバイバル・e07301) の表情も浮かない。
「……めぐみ、大丈夫?」
「……ええ、ご心配いりません。わたくしもケルベロスとしてここに来ています。想う事はあっても……きちんと依頼はこなします」
 円の問いかけに、やはり眼鏡の奥の瞳の色が揺らいでいる、中邑・めぐみ(ときめき螺旋ガール・e04566)が静かに答える。
 めぐみの表情を窺う様に『光明神域攻略戦』の後にめぐみを護る為に契りを交わした、水色の忍び装束を纏ったビハインドの『トモノ・アイ』がめぐみの表情を覗く。
「……本当に大丈夫でしてよ……アイ」
 微かな笑みを浮かべ、めぐみはアイにそう伝える。
 今回この場に集まったケルベロスは、8人。
 その半数の4人……砂太郎、円、ジョー、そして……めぐみは、『光明神域攻略戦』の際に同じチームのメンバーとして、この琵琶湖で行動を共にしていた。
 これから対峙する事になる、死神の傀儡に堕ちた『友野愛』を撃破したメンバーと言う事だ……。
「それにしても、死神は何をやろうとしているのやら……」
 表情を変えず言う、ティーシャ・マグノリア(殲滅の末妹・e05827)の視線の先に青白い鬼火の様な灯りが見え始める。
「お出でになった様だね――」
 穏やかな表情は崩さず、 黒木・市邨(蔓に歯車・e13181)が仲間達に伝える。
 青白い薄気味悪い光を纏った巨大な怪魚を引き連れて、姿を現した少女。
 瞳は空虚で何も映していない……けれど、口元に薄く笑みを浮かべ『友野愛』は、現れた。
「……デウスエクスとはいえ……死後をこうして利用されるのはあまりいい気分ではないわね」
 表情を変えず、クールにユスティーナ・ローゼ(ノーブルダンサー・e01000)が呟く。
(「……ましてやそれが自分と縁のある相手だったと考えれば……複雑なものだろう。……私が同じ立場にたった時、こうして敵として向かい合えるかしら……」)
 強い自分を演じながら、ユスティーナの胸の内では気弱な自分が不安に脅えていた。
(「……めぐみの心中は推し量れない、今回は支援に徹する……。決着をつけるべきは彼女なのだろうし……」)
 心の中で誓うと、ユスティーナは仲間達の護りとなるドローンを飛ばす。
「……また厄介な相手が出て来たもんだ。相手は使われているだけ……こちらとの因縁の糸など、とうに途絶えてしまっているのも、面倒ね……それでも、ケルベロスとして戦うけどね」
 大鎌を構え、あくまでめぐみのカバーを第一にと、ミリアム・フォルテ(緋蒼を繰る者・e00108)が、一歩前に出る。
「まさか、愛が死神にサルベージさるただなんてね。今のあなたに、わたくしの言葉は届かないかもしれないけれど、愛……あなたの魂はこのわたくしと、もう一人のあなたである『アイ』の手で、必ず安らかな眠りに付けます。……だから、今だけはあなたとの最後の死合を致しましょう!」
 共に苦楽を共にした愛を前に、めぐみはケルベロスとして、親友として……愛の前に立ち塞がった。

●憎むべきは死神
「めぐみ、あなたのフォローはいくらでもアタシがしてあげるよ。だから、アンタはアンタの想う通りに……彼女と戦いな!」
 操り人形の様に機械的に動く愛の螺旋の一撃を腹部に受けながらも『虚』の力を纏った大鎌で愛の身体に浅い傷を付けながら、ミリアムが叫ぶ。
「……ありがとうございます。行きますよアイ! わたくし達で愛の全てを受け止めますわよ、アイ!」
 めぐみが一気に愛との距離を詰めエルボーを放てば、アイもチョップを繰り出す。
 どちらもグラビティはこもっていない為、直接的なダメージにはならない。
 敢えて、めぐみが選んだプロレス技は愛の意識を……記憶を少しでも取り戻す為だ。
 ……それが僅かな可能性しか秘めていなかったとしても、めぐみは愛と共に磨いた技で彼女を取り戻したかった。
 めぐみがそんな思いで愛を見ると、愛はフライングニープレスの体勢を整えていた。
 ……一方。
「――友達同士の語り合いに死神の合いの手は無粋というもの。――御前達の相手は此方。さあ、掛かっておいで」
 市邨の言葉に怪魚達が牙を剥き出し威嚇する……ネクロムから、言い渡された愛のバックアップ……いや、監視以上の事をする気が無いのかもしれない。
「全く……自分の手を汚さないで、誰かの運命を操ろうなど、随分悪趣味なことだ。……死神も、困ったものだね」
 怪魚達の動きに辟易しながら呟くと、市邨は瞳を冷めたものにし、相貌を細める。
「――さあ、蔓、出番だよ。往っておいで。――手向けの花を」
 自身の相棒である攻性植物に市邨が声をかけると、怪魚の内の1体の視界が数多の花で埋め尽くされ、風に舞う花弁が葬送歌を奏でる様にひらりと舞う。
「まずは、一斉掃射から始める」
 静かに言うとティーシャは、全身からからミサイルポッドを出し、怪魚達に大量のミサイルを放つ。
「私達の相手に……お魚はお呼びじゃない、んだよ! めぐみ、すぐにお魚は終わらせるから、それまで、頑張って、だよ!」
 攻撃的グラビティの底上げをする電流を放ちながら、円がめぐみに向かって言う。
「蓬莱、ミリアムと一緒に、めぐみのカバーにも入ってあげて、ね」
 死神にクラウンリングを放つ蓬莱は、円の言葉をすぐに理解したのか『にゃ~ん』と鳴く。
「マリア! とにかく、さっさと死神共を終わらせるぞ。こいつらに生きてる価値なんてねえ! ……下っ端の死神が調子に乗ってるんじゃねぇぞ。まずはテメー等からぶっ潰す!」
 黒鎖の陣を敷き終わったチェインを手繰り寄せると、ジョーは得物をバスターライフルに変え、冷気の光線を撃ち放つ。
「……神様ってのはお前らが大嫌いだとさ」
 砂太郎がスーツに忍ばせたライトニングロッドを死神の頭上に投げつけると、ライトニングロッドは、大気中のグラビティ・チェインと融合し、雷雲を呼ぶと死神に向かって断罪の『裁きの雷』を降らせる。
「あなた達の相手をしてる暇は無いのよ。……めぐみの想いにケリを付けさせてあげるんだから。……果てなく譲れないこの思いを胸に。さあ、はじめよう」
 言って、ユスティーナは、 魂と肉体に旋律をシンクロさせると、自身の最大の力を死神にぶつける。
「……この旋律は、あなた達を黄泉へと送る為の序曲よ」
 碧の瞳で死神を見つめながら言う、ユスティーナは言葉で自身を奮い立たせ、ケルベロスとして戦場をしっかりと観察するのだった。

●親友の最後の言葉
「――さようなら、その報いを受けるといい」
 最後の死神に、竜の幻影を放ち、市邨が呟く。
「光の盾よ! ミリアムに護りの力を!」
 ユスティーナが創り出した光の盾は、ミリアムの痣となった露出部分まで飛ぶと、見る見るうちに痣を消していく。
「悪いね、ユナ。……螺旋の力に優れた体術、攻性植物まで使うか……情報通りだけど、厄介だね」
 魔力を具現化する鹵獲魔術を応用し、その手に黒塗りの弓を作り出すとミリアムは、死角を突く紅き矢をつがえる。
「なら……絶対的な隙を逃しはしない」
 ミリアムの放った矢は、真っ直ぐでは無く……愛の視界から一瞬姿を消す軌跡を描いて、愛の肩口に刺さる。
「『バスターライフルMark9』セット! 照準OK! ゼログラビトン発射!」
 ただ冷静に紫の瞳を愛に向けると、ティーシャはグラビティ弱体化エネルギー光弾を照射する。
「……やはり、今のあなたは死神の傀儡なのですね……愛」
 愛の記憶を……感情を取り戻そうと修業時代の技を繰り出し続けていためぐみも、今は、ケルベロスとしてグラビティによる力で愛を追い詰めていた。
「あの頃の切磋琢磨していた頃のあなたの方が数段……強かったわ、愛。……だから、今のあなたを見ているのは……悲しくて仕方が無いです」
 めぐみの言葉が伝わったかは、分からない……だが、言葉を紡ぐめぐみに向かって愛は攻性植物の牙を伸ばす。
 だが、その攻撃を受けふわふわな毛を散らし、グラビティ・チェインを失ったのは、めぐみの前に躍り出た蓬莱だ。
「めぐみ、あなたの気持ち……私は、全部は……分かってないと思う。それでも、私は、めぐみも愛も助けたいの!」
 月竜を模した『三日月型の鱗』を手にしながら、戦場に響く――切ない――声で叫ぶと円は手にした鱗で月竜の幻影を生み出すと、愛に放つ。
「近づかせない、から……」
 涙に滲みそうになる瞳で、円は呟く。
「俺達は、めぐみ……そして愛、二人を助けに来てるんだぜ。助ける方法が、お前の前で愛をもう一度殺すと言う手段しか無かったとしても……迷わねえぜ」
 掌から雷を放ちながら、砂太郎が叫ぶ。
「友野……こうしてまた、会う日が来るとは思わなかったぜ。だがお前は、もはや誰の事もわからんか……。もういい、休め……中邑もそれを望んでいる。……二度と目覚めぬよう寝かしつけてやる」
 ジョーの言葉が終わらぬ内にマリアが金縛りの力で、愛を縛りつける。
「どうした、その程度も解けないか? 前の方が強かったぞ。……粉々に消し飛びやがれ!」
 カンガルーの獣人だからこその脚力で地を蹴ると、ジョーは愛を蹴りつける。
「……消し飛ぶべきなのが、お前じゃないのは分かってんだよ……俺達もな」
 蹴りの反動で宙を回転し着地すると、ジョーは言葉を零す。
 愛が体勢を立て直そうとした時だった……愛の視界の全てをを白い勿忘草が覆った。
「――生憎、俺は縁もゆかりも無いけれど。君が生命を喰い潰す侵略者となるのなら放ってはおけない。――唯、敵として穿つまで。ただ、決着を付けるべき者は俺じゃない様だ」
 淡々と愛に告げる市邨だったが、緑の瞳に僅かな情が映る。
「――せめて、君の友人に眠らせてもらうんだね」
「……アイ」
 めぐみの小さい声が戦場に響くと、既に愛は背中を小刀で斬られていた……アイに。
「あなたとは、螺旋の力も共に身がいたわね……それでも、最後はわたくしらしく……あなたに止めを刺します」
 言うと、めぐみは掛けていた眼鏡を外す。
「…………愛、これがあなたへのレクイエムです。あなたの魂が来世まで安らかに眠れるように」
 めぐみは助走を付けると、全身を極限までエビ反らせた独特のフォームで愛に膝蹴りを放つ。
(「愛も先程、フライングニープレスを使っていましたね……。技と技の応酬、それが私達の友情の育み方でしたわね……今度こそお別れです、愛」)
 めぐみ渾身のフィニッシュホールドは、遂に愛を地に倒した。
 愛の側で息を整えるめぐみ……その眼前で、グラビティ・チェインを失い粒子となっていく愛。
 その時、消え行く愛が――奇跡かもしれない――顔を上げ、口を開いた。
「…………めぐみ、ありがとう。……アイはあなたとずっと一緒よ……これから先何が……」
 言葉を最後まで言いきれず愛は、暗い闇の中に消えた。
 愛の消えた後に残されたのは、あの日持ち帰ることの叶わなかった結い紐だけが残されていた……。
 その結い紐を手にし、めぐみが苦しげに呟く……。
「……愛……愛……愛……。……ごめんなさい、大丈夫ですよ『アイ』……」
 ビハインドに微笑みを返しながら、めぐみは眼鏡を掛け直した。
 少しでも、瞳の潤みを隠せるように……。

●決意――前に進む為に
「俺達の役目は此処まで。さあ、帰ろうか、蔓」
 依頼を成した以上、自身に出来る事はもう何も無い……市邨は、白き花を咲かせる彼女に声をかけて、ヘリオンへと足を向ける。
(「――今度こそ、彼女の眠りが安らかなものでありますように」)
 願う事しか出来ないけれど……市邨は心の中で呟いた。
「……安らかに眠りなさい。……なんて、言っていいものかはわからないけれど、ね」
 ユスティーナが小さく呟くと、ミリアムが優しくユスティーナの肩に手を置く。
「アタシ達は、アタシ達の出来る事をやった。だから悔やんじゃいけないよ、ユナ」
 ミリアムはユスティーナが、いつも一生懸命気丈に振る舞っているのを知っている。
 そして彼女の優しさも知っている……だから、後悔に押し潰される様な事にだけは、なって欲しくなかった。
「……こういうの、複雑ね。……でも、お疲れ様」
 自分が弱くなれば、ケルベロスとして戦場に立てなくなる……ミリアムの言う様に悔やんでも何も変わらない。
 これからも悲劇を消し去っていくしかないのだと、ユスティーナは胸に誓う。
「死神の目的は見えない……私は闘い続ける……デウスエクスの侵攻が終わるまで」
 死神の目的は、何も分からなかった……悲劇を1つ消しただけ、それでもティーシャは前に進み続ける事を選ぶ。
 そして、ユスティーナ、ミリアム、ティーシャの3人もヘリオンへ向かう。
 ……その場に残ったのは、愛と最初に縁を結んだ4人だけになった。
「めぐみ、大丈夫……?」
 心配げにめぐみに声をかける円。
 蓬莱も円の気持ちとシンクロしたように、めぐみを見つめる。
「……大丈夫ですよ」
 微かに笑みを見せ言う、めぐみ。
「お疲れさん。ずっと、ここにいても仕方がねえぜ。俺みたいなので良けりゃ、泣き言や愚痴とかいつでも聞いてやるから……元気だせって。ほら帰ろうぜ」
 励ます様にめぐみの背中を軽く叩くと、砂太郎も踵を返す。
「中邑、お前はやりたいようにケルベロスを続ければいい。俺も好きな様にデウスエクスを倒し続ける……ただな」
 めぐみに声をかけるジョーだったが、そこで一度言葉を切る。
「……ネクロム、テメーは俺を怒らせた。覚悟しておけ、何時か蹴り飛ばしてやる!」
 月に向かって、ジョーが吠える。
(「皆さん、ありがとう。……わたくしも、その想いは一緒ですよ……ジョーさん。必ずネクロムは倒してみせます。だからその日まで、アイと一緒にわたくしと共にいてね……愛」)
 愛の結い紐を両手でしっかりと握り、めぐみは決意を新たにするのだった……。

作者:陸野蛍 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年3月29日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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