枯れかけた白百合の甘い花園

作者:塩田多弾砲

 紅代菖蒲は『後悔』していた。
「……今度こそ、上手く行くと思ったのに」
 その場所は、広いカフェスペース。
 あちこち飾り立てられた内装は、まるで花園。白い百合をくまなく植えているかのよう。
 が……内装はあちこちに、薄く埃が積もっていた。
「……百合カフェ、このあたりだったらリピーターも付くだろうし、絶対上手く行くはず、だったのに……」
 カフェ内の食卓に着いた彼女は、絶望したかのように突っ伏した。
「……そりゃ、わたしも悪いとこはあったわよ。金勘定がいい加減とか、女の子のケアが不十分とか、夢と理想ばかり見て無茶ばっかりしてたとか……」
 やがて、すすり泣きの声が。
「……なんでいつも、わたしってこうなんだろう。上手く行くと思ったら、自分のポカでいつも失敗。せっかくまた、百合喫茶をオープンできたってのに……」
 後悔の念がこもった言葉が、彼女の口から漏れた。
 が、
「……えっ?」
 菖蒲は何者かに、背中から『貫かれている』のを知った。
 目前の窓ガラスに映るのは、菖蒲の後ろに立つ人影。
 人影は、頭に二本の角を生やし、派手な衣装を着た魔女のような姿。杖または錫杖のようなものを手にしており、菖蒲はそれに貫かれていたのだ。
 その胸部には、なにやらモザイク模様が。
「私のモザイクは消えないけれど……」
 魔女の言葉を、菖蒲は呆然としつつ耳にする。
「あなたの『後悔』……奪わせてもらいましょう」
 魔女が錫杖……に見えた、大きな『鍵』をひねると、菖蒲は意識を失い、崩れ落ちた。
 そして……菖蒲の脇に。
 人影が立った。それは、白く清楚な制服を着た、少女のようなシルエットをしていた。
「……以前に、『百合』……いわゆる『ガールズラブ』という意味でのことですが、それに関する依頼がありましたよね」
 セリカ・リュミエールが、君たちに今回の依頼内容を述べ始めた。
「黒岩・りんご(禁断の果実・e28871)さんらの活躍で、ちょっと前の案件は解決しました。ですが……今回もまた、似た案件が発生したのです」
 簡単にその概要を述べると、
「この、紅代菖蒲さんは、いわゆる百合趣味がありまして。そのようなガールズラブ喫茶を夢見て、それを実現したわけです。ですが、経営手腕はお粗末。この百合喫茶も自分のやり方のまずさで潰してしまい、後悔していたところ……その後悔の念を襲われてしまったわけです」
 魔女ゲリュオンは、菖蒲からドリームイーターを産み出し、そのドリームイーターが百合喫茶を改めて経営しようとしている。強制的にサービスを与え、最後には殺すような喫茶店を。
 故に、これを倒さねばならない。
 敵ドリームイーターは、仮称『百合店長』。白百合をイメージさせる、ウェイトレスのような制服を着用している。顔も白塗りの美少女。
 しかし、戦闘時にはその顔を変化させ、口は大きく裂けて牙をむく。手足も野獣のそれのように変化し、素早く動き回り襲い掛かるという。
 また、服のあちこちには百合の蕾めいた装飾が為されているが、戦闘時にはそれを開き、内部から花粉を噴出。それを煙幕に用いたり、吸った者を呼吸困難にさせたりもできる。
「お店に乗り込んでいきなり戦闘をしかける事も可能ですが、『お客』として入店し、サービスを受けて楽しんでくれると、満足して戦闘力が若干半減します。また、『満足させたうえ』で倒すと、被害者が意識を取り戻した際に、彼女が『前向き』な心情になれるので、皆さん一考くださいね」
 店の位置は、PCやフィギュアなどのショップが近くにある電気街の、人通りが少ない裏通り。そして店内も元は倉庫だったのを改良したために、それなりに広く、動くのに不自由はしないようだ。
「この菖蒲さん。確かに経営手腕は良くなかったでしょう。でもだからといって……このような状況を放っておくわけにもいきません。『後悔』を奪われてしまった彼女の為にも、どうか皆さん、ドリームイーターを倒して、この菖蒲さんを助けてあげてください」


参加者
キーラ・ヘザーリンク(幻想のオニキス・e00080)
リーフ・グランバニア(サザンクロスドラグーン・e00610)
ラインハルト・リッチモンド(紅の餓狼・e00956)
デジル・スカイフリート(欲望の解放者・e01203)
九条・櫻子(地球人の刀剣士・e05690)
ガラム・マサラ(弱虫くノ一・e08803)
神居・雪(はぐれ狼・e22011)
黒岩・りんご(禁断の果実・e28871)

■リプレイ

●一輪の黄百合(偽り・陽気)
 店の扉が開く。
「あら、いらっしゃいませ」
 店長……メイド服に近い、百合の蕾の装飾が施された制服を着た、肌が異様に白い美少女が、少女たちを出迎えた。
「ふふ、こんにちは。ねえ、中々良さそうなお店じゃなくて? キーラさん?」
 まず迎え入れたのは、藍色の瞳と長い髪を持つ、色白の美少女。着物姿の少女。彼女……黒岩・りんご(禁断の果実・e28871)は、隣の少女へ声をかけた。
「え、ええ。あちこちに、百合の花のオブジェがありますね。りんごさん」
 声をかけられたもう一人は、りんごと対照的に、金色の瞳と銀の長い髪を有した少女。
 彼女……キーラ・ヘザーリンク(幻想のオニキス・e00080)とりんごは、互いに腕を組み、まるで寄り添う恋人同士。
 その後ろからも……、
「……ちょっと興味あったから、来てみたが。どんな店だ?」
 蝦夷狼のウェアライダーの少女、神居・雪(はぐれ狼・e22011)。
「さて……どんなサービスなのでしょうか。楽しみですね」
 淑やかさを漂わせるドラゴニアンの少女、ガラム・マサラ(弱虫くノ一・e08803)。彼女の足下にはボクスドラゴン『マンダー』の姿が。
「ええと……初めまして……」
 雪とガラムが入店して、少し間を置いたのち……おどおどしつつ、やはり漆黒の長い髪を持つ、眼鏡の少女が。
 九条・櫻子(地球人の刀剣士・e05690)は、眼鏡の奥のその視線を、店内のあちこちへと向けていた。
 元倉庫らしいが、広さと天井の高さは充分。壁には百合の花柄の壁紙。
 テーブルとイスが並び、奥の方にはソファ席が。
 やがて、さらに二人の客が。
「ふふっ……百合は良いもの。押さえつけるなんてもったいないからねっ……」
 二人のうち、一人の少女は小さくつぶやくと、
「あ……あの……よろしくおねがい、します……」
 サキュバスのデジル・スカイフリート(欲望の解放者・e01203)は、態度を変え、もじもじしてみせた。
「ふふっ……ここは、花園なのだろう? 丁度いい……」
 もう一人は、気取った口調と仕草とで店に入り、優雅に店長へと歩み寄った。
「花を探しに来た……そして、花の周囲で舞う妖精とともに、語らいたいところだな」
 店長の前で立ち止まり、まるで中世の麗人のように頭を下げる。
「私はリーフ、リーフ・グランバニア(サザンクロスドラグーン・e00610)。以後、お見知りおきを」
 長い黒髪のドラゴニアンの少女は、まるで本物の騎士のよう。
「さて、君の名は?」
 リーフに問われて、
「白百合の館の主……リーリエ、とでも」
 百合店長は返答した。改めて聞くと、どこか虚ろな響きの声だった。
 七人の美少女たちが、店内に入り、扉を閉めたところ。
「……皆さん、入店しましたね」
 店外の道端。そこに一人待機しているのは、ウルフドッグのウェアライダーの青年。
「まあ、あれですよね。僕も事前に入ったら、白い目で見られる、って事になりかねませんよね」
 などと考えながら、ラインハルト・リッチモンド(紅の餓狼・e00956)は待ち続けた。
 どうか皆さん、大変でしょうが、ご無事で。
 思いつつ、彼は祈る様に目を閉じた。

●二輪のオレンジ百合(華麗、愉快、軽率)
「かわいいっ……ね、キスして、いい?」
『姉』で『先輩』の『リーリエ』が、椅子に座ったデジルを後ろから優しく抱きしめ……耳元でささやく。
「……あ、あの、先輩……恥ずかしい、です……」
 と、身体をもじもじさせるデジル。
『って、結構いいわね。本気でドキドキしちゃっうわよ♪』と、心の中で考えつつ……。
 その手を、そっと握り答えた。
「ふふっ……先輩じゃなくて『お姉さま』、でしょ?」
 ふぅっ……と、耳元に息を吹きかける百合店長。
「ひぁっ……え、えと……優しく、してください……お姉……さま……」
 ちゅっ……と、耳に感触が。
 これは『後ろのささやき』。
 希望の役割を演じるメイドが、座っているお客の後ろからハグし、耳元で愛を囁く……というサービス。希望者には頬や耳にキスしたり、耳を甘噛みしたりもする。
「……マスター、失礼します……」
 次は櫻子に。
「店長、恥ずかしいですわ……」と恥じらう櫻子だが、
「今の私は、あなたのメイドで、あなたは私のマスターですよ……」と、櫻子にそう告げる百合店長。
 そのまま、後ろから頬を擦り付ける。
「マスター、どうしてマスターの髪は、こんなにきれいで、いい匂いなんですか……?」
 同性ながら、その言葉に……櫻子は魅了されていた。
「え……あ……恥ずか……しい……」
 素でそう答えてしまった櫻子。その数刻後に離れるまで、櫻子は少しだけ本気でときめいてしまった事を実感していた。
「……マンガとかで読んだ事はあるけどなぁ……」
「ちょっと、見てるだけで恥ずかしいです、ね」
 照れたように赤くなった雪とキーラが、小声で言葉を交わす。
「ふふっ、それじゃ次は、キーラさんが受けてみては? 雪さんとご一緒に」
「えっ? りんごさん? 私が?」
「って、アタシもかよ?」
 無理と言おうとしたが、りんごのにこにこ顔を見ると断れない。
「じゃ、じゃあ……この『百合ドン』を」
 メニューから適当に選んだ二人は、壁の方へ促された。
 そしてキーラは壁に押し付けられ……店長は壁に手を突き、迫る。いうなれば、『壁ドン』。
「……答えて、キーラお姉ちゃま! 私とあの子、どっちが……好きなの? 私、お姉ちゃまの事が……好き、なのに……」
 要は、壁ドンしての告白ごっこ。だが、妹を演じる店長の顔が迫ると……キーラは一瞬だけ、本気で、目前の子に告白しなければと思ってしまった。
「……雪先輩、ほんとは、怖かったんだから……」
 雪に対しては、『怖いと思いつつ、慕っていた後輩』の役。
「……先輩を、怖いって言うひと多いけど、私は、先輩に嫌われる事の方が……すごく、怖いよ……」
「え……ああっ、な、泣くな! アタシは、その……」
 店長の演技に、思わず雪は彼女を抱きしめる。
「先輩……好きです、大好きです!」
「あ、アタシも……って、えええっ!」
 演技に引き込まれ、雪は思わず答えてしまった。
「あらあら、お二人とも素敵♪」と、その様子を見てりんごはご満悦。
「ふふっ、どうでした? わたくしとどちらがよかったです? お姉ちゃま?」
 キーラへの質問に、
「その呼び方は、ちょっと……」と、キーラは照れつつ顔を伏せた。

●三輪の透かし百合(注目を浴びる、飾らぬ美)
「そんなふうに告るとは、大胆だな……だが……嫌いではないよ」
 リーフは、店長を壁に押し付け……その顎をくいっと持ち上げる。
「やっ……恥ずかしい、よ……」
 振り払うふりをしつつ、店長は……リーフを見つめかえす。
 これは『逆百合ドン』。客側が壁ドンするというサービスを、リーフは受けていた。
 シチュエーションは、内気な少女が告白してきたため、告白されたリーフが迫る、というもの。
「子猫ちゃん、それで……どうしてほしいのかな?」
「……他の……他の女の子の事を」
「?」
「他の、女の子の事を見ないで……私の事だけを、見て下さい……」
 静かな口調で、そう懇願する。
「他の、女の子の事を褒めないで……私だけ、褒めて下さい……」
 そして、そっと……彼女は、リーフを抱きしめた。
「私には、あなただけ、なんです……あなたしか、いないんです……」
 まるで、本物の恋人が、告白するかのよう。
『……姫君、ちょっとだけ浮気しちゃうと思ってたけど……』
 内心、リーフは悩んでいた。
『どうか、許して頂戴……』
 一瞬だけ本気で、店長の事を、この少女のドリームイーターを……愛しいと思ってしまったのだ。
 そして、数刻後。今度はガラムとりんごが、猫耳カチューシャを付けて、ソファで膝枕されていた。
「ほーら、猫ちゃん。おねむしましょうねー♪」
『ユリネコ膝枕』。猫耳を付けた女性客を膝枕し、なでなでする、というもの。お客は猫になり、ごろごろと甘えるプレイをする。
「ふふっ……みゃーみゃー、もっとかわいがってほしいにゃー♪」
「み、みゃー……ううっ、これはちょっと……いえ、すごく……恥ずかしいかも……」
 りんご猫とガラム猫は、店長の太ももに頬をスリスリしつつ、甘えてみせる。
「はいはい……二匹とも、甘えんぼの猫ちゃんでちゅねー♪」
 そんな事を言う店長を……りんごは心の一部を冷静にさせ、彼女を見つめた。
「…………」
 そして、一通りのサービスを受け終えて。
「名残惜しいけど……するべき事を、しなくちゃね」
 りんごとガラムは立ち上がり、他の皆も、立ち上がった。

●四輪の桃百合(虚栄心)
「!?」
 扉の向こう側からの音に、ラインハルトは気付いた。
「始まったか!?」
 そのまま日本刀を携え、扉を破り中へ。
 そこには、野獣と化した店長の姿が。先刻に扉の隙間からちらっと見えた、あのメイド姿の少女ではない。手足が肥大化し、獣を思わせる手足になっている。指先には爪。服の百合の蕾も、装飾ではなく本物のそれに。
 そして顔も、口が大きく裂け、牙だらけの口内を見せていた。その眼差しも、赤いそれ。まるで角が無い般若の面を思わせる。
 店内を縦横無尽に飛び回り、走り回るドリームイーターは、空中へと跳躍した。
 そんな彼女の前に、櫻子がまず立ちはだかる。
「古の龍の眠りを解き。その力を解放する」
 櫻子へ『力』が集まりつつあった。敵を討ち、殲滅するための力を。
 鋭い爪で抉らんと、突撃してきたドリームイーターへ、
「……桜龍よ、我と共に、全てを殲滅せよ!『桜龍殲滅斬』!」
 櫻子は、刀を振り下ろした。その一太刀が召喚するは、『桜龍』。
 桜の花びらを纏いし古龍は、ドリームイーターの身体へとしたたかな一撃を直撃させ、その体に致命的な一撃を。
 苦痛の叫びをあげるドリームイーターは、そのままゴロゴロと床を転がり、いくつかのテーブルを薙ぎ払った。
「喫茶店がうまく経営できなかったのは、かわいそうだと思いますが……」
 すかさず、ラインハルトが刀とともに接近する。
「これも、彼女の為です。その首……置いて行ってもらいます!」
 刀の鞘が払われ……居合い斬りの斬撃が、ドリームイーターに襲い掛かる。
 それは、足に命中した。その深い斬撃の前に、跳躍もままならず。ドリームイーターは床を転がり、壁に激突する。
 とどめとばかりに肉薄するラインハルトだが。
 ドリームイーターは、身体の百合の蕾を開いた。
「……!? しまっ……た……!」
 接近したラインハルトは、花開いた百合からの……花粉の噴出をもろにくらってしまったのだ。吸い込み、咳き込んでしまう彼。
 そのまま、ドリームイーターの鉄拳に弾き飛ばされ、後ろざまに吹っ飛ぶ。
「おおっと!」
 が、大事には至らない。リーフの展開させていたヒールドローンが、ラインハルトを受け止めたのだ。
 だが、花粉の煙幕は濃く、ドリームイーターの正確な位置が掴みづらくなっている。
「くっ、どこ!?」
 ガラムが焦るように、マンダーとともに周囲を見回した。が、花粉は晴れる様子を見せない。
「そこか!? いっけーっ!」
 だが、雪の号令を受け、ライドキャリバー……イペタムが、炎とともに疾走し突進した。
 花粉内に突撃したイペタムは、その内部に潜んでいたドリームイーターへと直撃し、跳ね飛ばす。悲痛そうな叫びを上げて、ドリームイーターは再三床を転がった。
 そのまま、デジルの射程距離内に転がり落ちる。
「当てる! はーっ!」
 デジルは跳躍し、そのまま、強力なキックを……ドリームイーターへと放った。
『スターゲイザー』……流星のきらめきと、重力の力。それらを宿した飛び蹴りを放ったデジルは、ドリームイーターへと、確実にダメージを与えている事を実感した。
 再び、立ち上がらんとするドリームイーター。だが……もはやそれは、最後のあがき。
 キーラが最後の審判を下すかのように、その前に立った。手にするは、タロットカード『審判』。
『Is de tijd van het oordeel……(今、裁きの時……)!』。
 その手に持つカードに、キーラの念が込められる。それは徐々に大きく、強く変化していき……強大な雷鳴と雷光をともなう、雷撃の力となって宙に貯まる。
 それは、全てを打ち据える、裁かれし者への一撃。
『審判の時(タイト・ファン・ヘット・オーディール)』
 それが、裁きの雷の名。
 強力な雷撃が、ドリームイーターへ放たれ、直撃した。敵の身体を焼き、貫き、そして……歪んだモザイクを有するその歪みの命も、果てた。
 消えゆくドリームイーターに対し、リーフは店内に飾られている花……白百合を一輪取って、それを差し出した。
「……生まれ変われるなら……白百合の、オラトリオに生りなさい」
 倒れ、力を失っていくドリームイーターの手に、百合を握らせるリーフ。
「……必ず探し出し、迎えに行く!」
 それが、救いの言葉となったかのように。ドリームイーターは蠢き、消えていった。

●五輪の白百合(純潔)
「…………はっ!?」
 菖蒲が目覚めると、そこには……見慣れぬ女性たちと、一人の男性の姿があった。
「わ、私……いったい?」
 混乱しつつも、皆に言葉をかける菖蒲。
「ああ、あなたは怪物に憑りつかれていたのですよ」と、ガラムが伝える。
「ま、簡単に言えばそんなとこだ。大丈夫、アタシらがやっつけたぜ。安心しな」と、雪も続いて伝えた。
「ふう、さっきの花粉が取れませんね……って、そんなに見ないで下さい、恥ずかしいですわ」
 続き、眼鏡をふきふきしている櫻子が。童顔のその顔つきは、眼鏡をしている時には見られないもの。
 頬を赤らめつつ、彼女は菖蒲へと言葉をかける。
「まあ、元気を出してください。まだまだやり直せます。だから……また、遊びに来て良いですか?」
「……来て、下さいますか?」
 菖蒲の言葉に、
「もちろんです!」
 櫻子は強くうなずいた。
 それに続き、
「はい、お茶です」と、リーフは菖蒲に差し出した。
「思うのだけど、先ずパートナーを見つけたらどうかしら?」
「パートナー、ですか?」
「うん。気の合う、出来ればしっかり者の。百合は、一輪だけじゃ咲かないわよ☆」
 彼女の提案に、菖蒲は考え込んだ。
「それと、もう一つ」今度はりんご。
「素敵なお店でしたから……再開するなら、きっとまた来ますよ。約束します」
 笑顔と共に、りんごはそう告げた。
「僕からは、こちらを」ラインハルトは資料の束を、菖蒲の机の上に置く。
「事前に調べられるものは調べましたし、これで同じ過ちは起きないはずです。たぶん」
 ありがたいと、菖蒲はその一つを手にとって、目を通してみた。
「そうね、また……一からやり直してみようかしら。皆さん……有難う」
 菖蒲はしっかりと、皆を見つめながら……そう告げた。

作者:塩田多弾砲 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年3月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 1
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