どうして尼で水着なの、不思議が多すぎたお店の終わり

作者:ほむらもやし

●ある夢の終わり
 午後の陽光が差し込む和風の店内で、尼姿の婦人がテーブルにうな垂れていた。店の中心には大きなベッドがひとつ、他に更衣室やソファも備え付けられていて、あちこちに骨格模型や人体の神経系の構造を表すポスターや、難しそうな本が見える。
「絶対に水着になったほうが、いいのに……」
 婦人は心を落ち着かせるような音楽に耳を傾けながら寂しそうに呟くと、手にしていたスクール水着の感触を確かめるようにしながら折りたたむ。
 どうやら、ここはお店で、身体のゆがみをなおしたり、リラックスできるようなマッサージを提供していたらしい。
 但し、このお店で施術を受けるには、水着になる必要があり、それがいかがわしいお店と混同されて、お客が近寄らなくなってしまった。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『後悔』を奪わせてもらいましょう」
「あら? これは立派な、肩こりはひどくありませんか――」
 婦人は、声の主、第十の魔女・ゲリュオンの姿を認めると同時、大きな胸に目を奪われた。直後、魔女ゲリュオンの突き出した鍵が婦人の年齢の割には小さな胸を貫いた。
 次の瞬間、婦人は倒れ伏して、動かなくなり、その脇に頭巾と僧衣を纏ったドリームイーターが出現した。
●依頼
「長年準備して、ようやく夢を叶えたのに、その夢であった店を潰してしまうのは、とても悲しいことだよね。そんな後悔に暮れる人がドリームイーターに襲われ『後悔』を奪われる事件が起こる。対応をお願いできるかな?」
 ケンジ・サルヴァトーレ(シャドウエルフのヘリオライダー・en0076)は、話を聞いてくれそうなケルベロスたちに駆け寄ると話を切り出した。
「今回の事件の元凶、第十の魔女・ゲリュオン――『後悔』を奪ったドリームイーターは、既に姿を消していて接触は出来ない。だけど、奪われた『後悔』を元に生み出されたドリームイーターは動き出している。だから被害が出る前に撃破して欲しい」
 生み出されたドリームイーターは1体。戦場となるのはお店の中。
 何も知らずに、訪ねて来た者を店の中に引き入れて、過激なサービスの提供により、その者を死に至らしめようとしている。
「お店は古い民家をリフォーム感じで、お寺の本堂を意識したような作りだよ。戦うには十分な広さがあるから、多少のことは気にせずにそのまま戦って良いと思うよ」
 水着になってマッサージというのは、流石にいかがわしいサービスと誤解されると思ったのか、単なる趣味だかはハッキリしないが、その誤解を払拭するように、内装にはお寺のような落ち着いた気配がある。
 それだけに、真顔で水着になってマッサージをと言われれば仰天してしまうのであるが。
「実はお客としてサービスを心の底から楽しんであげると、それに満足するのかドリームイーターの戦闘力が減少する。そしてドリームイーター撃破に成功した場合、意識を取り戻す被害者にもよい影響がある」
 ドリームイーターが企てる過激なサービスの詳細は不明だが、おそらくはマッサージの延長にあるものだろう。ひどい目に遭うことだけは間違いないから、いためつけられたり恥ずかしい目にあったりすることに悦びを覚える趣味も無いのに、サービスを受けようとする場合は、相応の覚悟が必要だ。
「サービスを楽しむ必要は別に無いから、店に乗り込んですぐに戦いを仕掛けてもいいよ。ドリームイータの攻撃手段は巨大な鍵を繰り出して心を抉る。様々な形状に変化するモザイクを飛ばす。言葉で罵りながら平手打ちをしたり踏みつけたりする。それから、サービスを楽しんであげなかった場合は、万全の戦闘力を保持したドリームイーターとの対決となるから、それは忘れないでね」
 後悔を奪われ、被害者となった婦人はテーブルの脇で、ゲリュオンに襲われた時と同じ状態で意識を失ったまま倒れ伏している。
「ドリームイーターを撃破して、婦人が目を醒ました時に、お店に何が欠けているかに気づき、新たな一歩を踏み出せれば皆幸せかもね」
 まっとうな人生を歩んでいた者が、好奇心から特殊な性癖を開発されて、次第にその色に塗り替えられてしまうことがある。くれぐれもそんなことにならないようにと、注意を呼びかけると、最後まで話を聞いてくれたケルベロスたちの顔を再度見つめ直して、ケンジは丁寧に頭を下げた。


参加者
八代・社(ヴァンガード・e00037)
殻戮堂・三十六式(祓い屋は斯く語りき・e01219)
ルリカ・ラディウス(破嬢・e11150)
イーリス・ステンノ(オリュンポスゴルゴン三姉妹・e16412)
伊庭・晶(ボーイズハート・e19079)
月影・環(神霊纏いし月の巫女・e20994)
エメラルド・アルカディア(雷鳴の戦士・e24441)
フィオナ・リースフェルト(弟大好きブラコンお姉さん・e35917)

■リプレイ

●いざ入店
「きっと素晴らしいサービスなんだろうね〜♪ 評価もそうだけれど、こういうのは女性の第三者の視点も必要だろうからしっかりと見ていようかな♪」
 軽いノリで殺界形成を発動、建前の思いを口にしながら、イーリス・ステンノ(オリュンポスゴルゴン三姉妹・e16412)は店内に向かう、4人の背中を見送りつつ、持参したカメラを起動する。
 ぱたんっ。
 日常とそれと違う世界を隔てる、物理的には数センチの扉の閉まる音が響く。
「尼さんに寺で水着姿でマッサージされる……。どう考えてもエロいのしか想像できないんだが」
「……水着に何のこだわりがあったんだろうな。まあ、知りたいとはあんまり思わんが」
 ヘリオライダーがわざわざ指摘しなくとも、容易に想像できる事態を口にする、伊庭・晶(ボーイズハート・e19079)に応えるように、八代・社(ヴァンガード・e00037)は、青い空を見つめながら呟いた。
(「きゃはっ、とっても嫌な予感がするんだよね。でもどんなサービスは楽しみたいんだよね」)
 店の中をなんとしても覗いてやろうと、場所を探すイーリスの様子はとても怪しかったが、人払いは済んでいるから通報される心配は無い。
(「フィオナは初仕事だったか。これがトラウマにならなきゃいいんだが……」)
 そんな様子を、殻戮堂・三十六式(祓い屋は斯く語りき・e01219)は静かに見つめていた。

●マッサージ
 店内の様子はお寺の本堂のようだった。
 身体のツボが描かれた人体模型の顔やポーズが力強く拳を構える不動明王だったり、背骨の構造を示すのに、どうして釈迦如来座像を引用するのか。コンセプトには賛否両論がありそうだが、発想は悪くない。
「このスクール水着、胸のあたりがきついですね」
 フィオナ・リースフェルト(弟大好きブラコンお姉さん・e35917)が、胸の下あたりで両腕を組み、こぼれ落ちそうな大きさの双丘を支えれば、月影・環(神霊纏いし月の巫女・e20994)はわくわくした様子で胸を張る。
「わ、フィオナさんとお揃いですね。でも、何ででしょう。この敗北感は」
 だが、水着の色も形も全く同じなのに、その見た目には歴然とした格差があることに環は気づいていた。
 女性美の優劣を胸の大きさで計る悪辣な思想。確かに女性の胸から腰、臀部に至るS字形状は古代より人体美の象徴とされる。しかしそのけしからん美意識は人類史に暗い影を落とし続けた。
 フィオナのシルエットは角度によっては跳び上がるイルカのようにも、躍動する白鳥のようにも見える。ダイナミックな美しさを備えた大人の体型だ。一方、環の天空に向かって伸びる杉の如き直線美はどうだ。どちらが優れていて劣っているなどとは言うべきでは無い。
「待ちなさい。あなた、どのようなことをされるのか、わかっているのですか? この状況……え、えっち……なことをされるかもしれないのですよ。これから成長する幼女に過激サービスを受けさせるわけには断じ参りません」
「心配してくれてありがとう、です。でも、これもケルベロスのお仕事ですから」
 真心から心配してくれる、フィオナの言葉に、環の頬が熱くなる。
「あ、あのフィオナさん」
 しっとりとした環の指先の温度を感じるが、返す言葉がうまく出てこない。
「マッサージとはいえ、弟以外の人に、あなたの身体を触らせるなんて……許しませんからね」
 だから、年上である私が頑張らないと……!
 ――と決意を抱くものの。
「これが学生達の着る水着か……なるほど、水泳をよく考えた素材と形状だな……ん?」
 ベッドに大の字に寝かされた、エメラルド・アルカディア(雷鳴の戦士・e24441)の手首と足首に、幅10センチほどのナイロンのベルトが巻かれる。
 ベルトは巻き上げ式のウインチに繋がっていて、引っ張ることで、身体を伸ばし、骨の歪みを矯正するらしい。
「……なるほど。ぶわっ!」
 とりあえず解説に頷いた次の瞬間、柄杓で甘茶を掛けられた。
「あなたはこれからお釈迦さまとして生まれ変わるのです。すばらしい人生が待っているのですよ!」
 尼のドリームイーターは甘茶を掛ける、ウインチを巻くを繰り返す。両手足に繋がったベルトが少しずつ巻き上げられて、ロープが張り詰める。そして容赦の無い引っ張り力に身体が軋み始める。
「けほけほ、うっ、痛、痛い……うぐぅ! うあああぁ!!」
「これくらいでいいかしら?」
 ウインチが止まって、ひと息を突く。が、マッサージが開始される。身体に掛けられた甘茶は肌に纏わり着くようなぬめりを帯びていて、肌が敏感になっている。そこにモザイクに覆われたドリームイーターの指先の動きが襲い来る。それはまるで皮膚を失った体内を直接揉まれているような感触だ。
 敵を弱体化させられるなら、日頃の疲れも取れれば、もうけもんだし、マッサージを受けてみようと軽い気持ちでいた、ルリカ・ラディウス(破嬢・e11150)の決意は悲鳴が轟く度に大いに揺らぐ。
(「……わぁ、声聞いてるだけで、痛そう。それになんだかえっち、です……」)
 痛みがだんだん気持ち良さに変わってくる展開ですか、いかがわしい本にありそうな展開って現実にあるのですかと、環は、他人ごとのように胸を高鳴らせ、一方、いろいろと警戒をして、ワンピースタイプの水着で防御を固めて来たものの、おそらく次は自分の番だと覚悟する、ルリカの額には嫌な汗がにじむ。
(「これは、マッサージじゃないです。拷問です。私だって、ぎりぎりなで耐えたいと思っていました……が。やっぱりダメです」)
 ウインチを巻き、甘茶を掛け、指圧してを繰り返す。牽引によりぎりぎりまで引き延ばされた、エメラルドの肢体は完全に自由を奪われて、もはや痙攣でしか反応出来ない。
 それでもなおマッサージを続ける、ドリームイーター。その指技は幸いモザイクが掛かっているため、よく見えない。だがモザイクに覆われた指が蠢く度に、意識を曖昧にしているエメラルドは骨の内部に侵入した蛇が暴れ回るが如き激痛に襲われ、苦痛の連続から生み出された身体の火照りは、愛撫によってもたらされるものと似た感覚を燃え上がらせていた。
 それは異常なことではなく正常な身体の反応だったが、ドリームイーターは崖っぷちに追いやった羊を弄ぶように残酷な言葉を投げかける。
「そんな、ちが……ああうっ!」
 少なくない依頼をこなし、充分な経験を重ねたエメラルドではあったが、まだまだマッサージは続くと告げられ、意識が途切れそうになる。ここから先いったい何が起こると言うのか、目に入ったワゴンの上のステンレス器具の冷たい艶を目にして、絶望に潤む瞳を閉じる。
 ——嫌な予感しかしない。本当にさせて良いのだろうか? ドリームイーターが次の準備に入った刹那、冷静さを取り戻したエメラルドは、この状況を心から楽しめていない自分に気がついた。
(「いっ、いやっ……だ、こんな……ものを喜べるのは真性のマゾ、ガチで変態だけだ」)
 皆の為になるならばと、限界までがんばるつもりであったが、もはや心の底から楽しめないし、戦いでの痛みのほうがずっとましだろうと、ついに堪忍袋の緒が切れる。
 その様子を凝視していたフィオナも豊満な肉体が引き延ばされて、蹂躙される様を想像し、直ちに討つべしとの結論に至る。そして最後までされるつもりは無くても、ひとたびそれが開始されれば途中で終わるなどあり得ないと気ふぁづいた、ルリカも戦いへの覚悟を決める。

●戦い
 次の瞬間、カッ! と目を見開くと、エメラルドは力任せにベルトを引きちぎる。
「彼の者は来たれり! 見よ! 空を穿ち、大地を揺るがし、海を割りて、今ここに凱旋するべく奮い立つ! 我らが英雄の不敗たるを称えよ!」
 叫びは勇壮な歌の響きとなり、店内、そして店の外で突入の機を伺う仲間たちの胸中にある熱き思いに火を灯す。
「マッサージ自体はいいことだと思う、です。私も普段のメイド仕事の疲れ癒したくなりますし、受けて気持ちよくなろうと、です、けれど」
 初めての依頼なのに、自身よりも自分を気遣ってくれるフィオナに辛い思いをさせない。環は小さな胸の中の思いを整理して、決意する。そして後ろに拳を引くと同時、攻性植物を蔓触手形態に変形させる。
「でもこれは違う、です。ハッキリ、イヤと言える、です」
 蔓触手となった攻性植物の奔流が瞬く間にドリームイーターを捕らえて、強かに締め付ける。そこに、巨大なトラバサミの如き捕食形態と変わったフィオナの攻性植物が追い打ちを掛けるように食らいつき、毒液を注入する。
 次いで斬音。ルリカの放ったオーラの刃に斬り開かれた傷にモザイクが咲く。
「誰もこの刃からは逃れられないんだから!」
 予測外の攻撃に驚くドリームイーター。
 そこに、激しくドアが押し開かれて、カメラを手にしたままのイーリスが突っ込んで来る。
「サクサクっと倒してしまいましょうか。ファイアー!!」
 次の瞬間、御業の放つ炎弾が飛び行き無防備のドリーム―ターの背中で爆ぜる。僧衣に燃え広がる炎に苛まれてドリームイーターは悲鳴を上げる。
 社は、水着の女性ばかりの店内に真っ直ぐな視線を前に向ける。
「今日は日差しが暖かいぜ」
 視線を向けられた甘茶まみれのスクール水着姿のエメラルドが、今日の天気を口にする社の額に浮かんだ冷や汗に気づいて、複雑な心境を察したと同時、ドリームイーターとの間合いを一挙に詰めた社の技が唸る。
「M.I.C、総展開! 終式開放ッ!!」
 それは魔導発勁の実質的極致。敵の打撃力、銃の反動、推進力、制動力、落下エネルギー等の、自身に作用するありとあらゆるベクトルを一方向に集約。それを破壊の魔力へと換えた光弾である。
「早速で悪いな。くたばれ」
 艦載用レールガンの撃力を凌ぐとも言われる、輝きが拳から放たれて、敵を打ち貫く。光が爆ぜて爆炎と衝撃波が、窓を破って外へ抜けて行く。
「やった。か?」
「八代、不味くないか? 早すぎる必殺技は負けフラグだ」
 煙の中の影を見定めて、三十六式は電光石火の蹴りを繰り出す。瞬間、急所を貫く確かな手応え。だが気を良くすることなく、気を引き締めると倒れている筈の被害者を探す。
「おらぁ!」
  それと同時、身体を覆うオウガメタルを鋼の鬼と化した、晶は拳に力を込める。艶めく銀色に光が伝い振り抜いた拳はドリームイーターの顔面を捉え、その勢いに吹き飛ぶ身体は壁に激突する。
 一気に倒せるかもしれない。そう思えたのは一瞬。
 軽く払う様なモザイクの腕の動きに続いて前列を狙って放たれたモザイクの嵐が豪雨のように吹き荒れる。
 変な素質があったから、水着にしちゃったのだろうか。甘茶を掛けるからなのか。想像不能の被害に遭ったお客の戸惑いは良く理解できる。
 モザイクの嵐に打ち据えられながら、ルリカは見知らぬ被害者に思いを馳せる。そして抱く思いを一挙に燃え上がらせるように古代語を詠唱する。直後、生み出された極太の光条が攻勢に出るドリームイータを直撃した。
 全身からモザイクを散らし、スパークするような音がする。強烈な一撃に攻勢か守勢かを葛藤するドリームイーター。その隙も見逃さないと、イーリスは、イリス――七色の刃を纏いし伝書鳩を召喚する。
「狙った獲物は、逃がさないかな♪」
 硬く澄んだ音を立てて、刃纏いし七色鳩は飛び行き、色味を失った戦場に鮮やかな描線を曳いてドリームイーターを切り裂く。仲間たちの意識が攻勢に傾く中、エメラルドはライトニングウォールを展開する。明るい気配と共に仄かな光を帯びた障壁が現れて、前列の5人に癒しと加護が届けられる。
「此処は月の庭、私の領域、です」
 揺らめくような環の魔力が、蔓草を茨の棘と変える。動物の如き生気を纏い動き出す茨の奔流。ずらりと並ぶ棘が、ドリームイーターの身体にがちりと食い入って、強かに締め上げる。
 その攻撃に重ねてフィオナの繰り出す、半透明の御業が前方を横切る。ドリームイーターは避けようを床を踏み込むが、茨に捕らえられたままの身体では間に合わない。
 隠しきれないダメージを表すように、ドリームイーターは全身からモザイクを散らす。
「っと、油断禁物だな」
 瞬間、ほんの間近に現れた巨大な鍵の先をギリギリで躱しながら、晶は舌打ちすると、鋭く軸足を踏み込んでハイキックで応じる。直後、電光石火の蹴りはドリームイーターの首筋を直撃して、その身体を大きく揺らめかせる。
「カタシハヤ、エカセニクリニ、タメルサケ、テエヒ、アシエヒ、ワレシコニケリ」
 ドリームイーターから目線を離さないまま、三十六式は詠唱する。護符を道しるべのように一直線に展開、蠢く妖怪達の行列、その幻影を呼び寄せる。出会ってはならぬ者に囲まれて、ドリームイーターは追い詰められて行く。
「些か想定とは違うが、終わらせて貰う」
 威力には自信があった。社はドリームイーターに肉薄すると、手にした二振りの刃を乱舞させる。
 刃を舞わせる度に血のような赤のモザイクが吹き上がった。
 左の刃が僧衣を裂けば、続く右の刃が胸部を深々と斬る。細やかな罅がドリームイーターの全身に走り、次の瞬間、身体は微塵に砕けた。
「おっさん、ナイス!」
 ドリームイーターが消て行く様を目の当たりにして、イーリスが、にやっと笑って社に突きかかる。
 思わず苦笑いを浮かべる社、現在26歳。己が最年長だと気がついて、壊した箇所にヒールをかけ始めた。

●戦い終わって
「フィオナは初依頼だったか。まあ無事でなによりだったな……」
 決して目立たないが、細やかな気遣いをしてくれていた、三十六式に気がついて、フィオナはありがとう。と、目を細める。
 そして店内にヒールが施されるのと同時並行で、やたらスッキリした様子の本物の店主を介抱しているのは、晶とルリカ、イーリスだった。甘茶を啜りながら、お店の気づきやどうすればお客が来るかについて話しているようだったが、店の発想は悪くないなどという内容が聞こえてきて、社は、それちがうと、全力で首を横に振った。
「問題多すぎだよな……とりあえず、甘茶とか掛けるのはやめて、水着も押し付けないでもっかい売り出したら?」
「そうですの? 水着の上から触られるのが気持ちいいのに……」
「水着を重視したいなら、内装を南国風な雰囲気に変えた方が良いだろう。やっぱムードって大事だよね?」
 あれやこれやと、皆が言いたいことを言い終えたであろうタイミングを見計らって、着替えを終えたエメラルドが、学級委員長のように手を打ち合わせる。
「任務終了だ。お疲れ様。水着に賛成の者もいるのだな。ならば折角の機会だ。体験して行くがよいだろう」
 嬉々とした表情を見せる、店主に向かって、エメラルドはにこりと笑むと、ゆっくりと頷いた。

作者:ほむらもやし 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年3月30日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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