貧乳を広めるため、女性はサラシを付けるべき！

■リプレイ

●教会前
「ビルシャナは季節が変わっても通常運転よね。ある意味、感心するけど……」
　ローゼンシア・エストファーネ（吸血姫・e03662）は、仲間達と共にビルシャナが拠点にしている教会の前にやって来た。
　ビルシャナは教会に女性信者達を集め、貧乳が恥ずかしくない事を広めるため、女性はサラシをつけるべきだと訴えているようだ。
　そのため、女性信者達はみんなサラシを巻いており、何処か誇らしげにしているようである。
「巨乳とか貧乳とか、こだわるよりも、もっと重要な事があると思うのですが……」
　ラピス・ウィンドフィールド（天蓋の綺羅星・e03720）が、どこか遠くを見つめた。
　しかし、ビルシャナは貧乳に対して、異常なほどのこだわりがあるらしい。
「相変わらずビルシャナだけど、巨乳好きのビルシャナと貧乳好きのビルシャナが出会ったらどうなるのかな？」
　ユーロ・シャルラッハロート（スカーレットデストラクション・e21365）が、何気ない疑問を口にする。
　しかし、ビルシャナ同士で干渉し合う事がないため、間違ってもケンカになるような事はないだろう。
「貧乳は嫌いじゃないんだが、開き直られるとなぁ。からかって恥ずかしがるのが貧乳の可愛いところだろうが……」
　七種・徹也（玉鋼・e09487）が、不満げな表情を浮かべた。
　このまま、ビルシャナの教義が広まれば、徹也にとっては間違いなく脅威。
　そう言った意味でも、此処で手を打っておく必要がありそうだ。
「……と言うか、鳥に女性の胸のなにがわかるというのか。まぁ、大きければいいというものではないでしょうが。……ええ、決して大きければいいというものではありませんがっ！　……まぁ、全員でさらしを巻けば公平というか。胸の大きさでどうこうという心配もなくなるかもしれないというか……」
　神桜木・光理（雷光剣理・e36081）が今のところ大きな成長が確認されていない自分の胸を、ほんの少しだけ心配した。
　おそらく、もう少しすれば……もしくは、しばらくしたら、大きくなる……はずである。
「それにしても、何故サラシという発想になったのでしょうか……？」
　祝部・桜（残花一輪・e26894）が、不思議そうに首を傾げた。
　桜は絶壁とまではいかないものの、どちらかと言うと小さい方なので、少し気にしているようだ。
「それ以前に、サラシってよく分からないんですけど……。胸の大きい女性が胸をしっかり固定するために着けるもの、ですよね。胸の小さい女性が着ける意味ってあまり無いような気が……」
　ロージー・フラッグ（ラディアントハート・e25051）も、キョトンとした表情を浮かべる。
　地球居住歴1年ちょっとのヴァルキュリア故に、そう言った疑問を感じるのかも知れないが、その理由をビルシャナ達が説明したとしても、理解できない可能性が高かった。
「まあ、アリシアにとってはどちらでもいいことですが……。このまま暴れられるのも困るので、速くこの世からご退場願いましょうか」
　そう言ってアリシア・クローウェル（首狩りヴォーパルバニー・e33909）が、仲間達を連れて教会の中に入っていった。

●教会内
「やはり、サラシは美しいッ！　まるで、お前達の美しさを際立てる貴金属のようだ！　だからこそ、俺はお前達にこそ、サラシが相応しいと思ったんだ。そして、お前達がそれを証明してくれたッ！」
　教会の中にはビルシャナがおり、サラシを巻いた女性信者達を前にして、満足げに涙を垂れ流していた。
「こんな何の飾りっ気もない細長い布……可愛くも何ともないものに何故拘るのでしょうか？　可愛くて胸をしっかりカバーしてくれるブラが、いっぱいあるといいますのに……。胸が小さいのであれば、尚更可愛い下着は沢山ありますよ。やっぱり女の子ですから、おしゃれすることを忘れちゃいけないと思うんです！それが例え、下着であっても！　サラシなんてものは、胸の大きさに関係なく、おしゃれを投げ捨てて女の子としての魅力を損ねるだけの無意味なものだと思います！」
　そんな中、ロージーが自分で服を肌蹴させ、青白ストライプ柄のブラに包まれたＳカップの胸を揺らす。
「う、う、うるさいわね！　余計なお世話よ！」
　それを目の当たりにした地味目の女性信者が、悔しそうな表情を浮かべて反論した。
　この様子ではロージーの胸を見て、敗北感に包まれてしまったのだろう。
　それが原因で素直な気持ちになる事が出来ず、逆に強がっているようだ。
「……と言うか、サラシでぎゅうぎゅうに締め付けて……胸……痛くないですか？　おっぱいは大きさより形だと思うんです。このブラなんか補正効果付きで体のラインを美しく魅せるんですよ～。レースや花柄、シフォンにサテン……可愛いのからセクシーなのまで、はっきり言って、いいことずくめです！　慎ましくとも全体的に見て均整の取れた肉体が美しくないですか？」
　ラピスが諭すようにして、女性信者達に語り掛けていく。
「そ、そんなモノ、いらないわ！　だってワタシ達にとってのブラはコレだもの……！」
　長髪の女性信者がサラシを自慢するようにして、必要以上に胸を張る。
「……言っておきますが、別にさらしを巻いて小さく見せたところで、あなた達の胸は大きいままですからねっ！　自然体が一番だというのに、嘘の姿を誇らしげにしてる貴方達が滑稽でしょうがありませんっ！」
　光理がぷんすかと怒った様子で、女性信者達を無意識に傷つけた。
「こ、これが自然体なの！　普通なの！　そ、それなのに……、ば、ば、馬鹿にしてえええええええ！」
　眼鏡を掛けた女性信者が涙目になって、恥ずかしそうに胸元を隠す。
　まわりにいた女性信者達も同じように涙を浮かべて、『……と言うか、サラシを巻かなくても、胸は大きくないからッ！』と叫ぶ。
「でも、サラシ付けてたら、窮屈じゃないの？　それに、締め付けてたら、大きくならないと思うけど……。私はまだ大きくなりたいし、何より窮屈そうで嫌。サラシって可愛くないし、小さいサイズのブラの方が可愛いデザイン有るよね。私の大きさだと、可愛いデザインのがなかなか無いから、そーゆう点は小さい人が羨ましいかも……」
　ユーロが自分の胸を自慢するようにして、Ｈカップの胸を張る。
「う、うるさい！　うるさい！　うるさい！　アタシ達はサラシさえあればイイの！　他には何もいらないの！　だってサラシはアタシ達、貧乳のために存在しているモノだから！」
　そのせいか、褐色肌の女性信者が敗北感に襲われ、必要以上に強がった。
「貧乳のためにサラシが存在していると言うが、そうでもないだろう？　だって貧乳にはサラシすら必要ないじゃないか！」
　それでも、徹也は怯む事なく、傷口に塩を塗る勢いで言い放つ。
「それに、サラシを巻いても貧乳が広まるわけじゃないのよ。そもそも伝染病じゃないんだし、サラシを巻けば貧乳が増えるって発想自体がおかしいわ。その辺をきちんと考えて行動しなさいよね。あなたみたいなのがいるから、貧乳が誤解を受けてるのに、いい加減気づきなさい」
　ローゼンシアがラブフェロモンを使い、女性信者達を叱りつけた。
「誤解しているのは、そっちよ！　みんな胸が大きいだけで有難がるのも、巨乳好きが多いのも、みんなアンタ達が悪いのよ！　そうよ、きっとそうだわ、間違いないわ」
　病的なほどやつれた女性信者が、嫌悪感をあらわにする。
　まわりにいた女性信者達も、『そうよ、そうよ』と連呼した。
「みなさん、おちついてください。そのサラシ、今の時期はいいやもしれませんが……、夏になったら、大変ですよ？　暑い……と思います。すごく。肌荒れとか……。心配です。それに、その。サラシって、胸を潰すためのもの……ですよね。苦しいですし……。あと、朝の準備でサラシを巻く時間って……捻出するの、結構大変ではありませんか？」
　桜が言葉を選びながら、女性信者達に語っていく。
「そんなの苦じゃないわ！　だって、無駄じゃないモノ。必要な事だから……！」
　赤髪の女性信者が、使命感にも似た空気を漂わせ、サラシの重要性を訴えた。
　その間もビルシャナは、傍観モード。
　まるで子供の成長を見守る親の如く、女性信者達の言葉に、耳を傾けていた。
「……とは言え、世の中の男性の80％は、巨乳のほうが好きなんですよ？　古事記にもそう書いてありますし……」
　そこに追い打ちをかけるようにして、アリシアがトドメの一言を言い放つのであった。

●ビルシャナ
「ど、どうやら、貴方達とは仲良くなれそうにないわ。……と言うか敵よ！　間違いなく、敵よ！　あなた達の胸についた余分な脂肪を、ひとつ残さず抉り取ってやるゥ！」
　その途端、いかにもヤバげな女性信者が、ハサミを握り締めて遅いて掛ってきた。
　まわりにいた女性信者達も、『私達のプライドを傷つけた罪は重いッ！』と言わんばかりのノリで、次々と襲い掛かっていく。

「……ですが、胸が大きくなるかどうかは未確定なのに、自分から未来を閉ざすような真似をする意味があるんでしょうか？」
　アリシアが攻撃を避けながら、女性信者達に問いかけた。
「そんな事をしたって結果は同じ！　未来は変わらないの！　私だって分かるわ、そのくらい！　どんなに頑張っても、胸は大きくならないの！」
　眼鏡を掛けた女性信者が、ボロボロと涙を流す。
　この様子ではかなり努力をしたのだろう。
　まわりにいた女性信者達も釣られて泣いていた。
「た、確かに……その……すぐには無理だと思います。時間も……掛かると思いますし……。それに、その。貧乳を広めるためにサラシ……って、ちょっと違うと思うんです……。桜は……もっと胸を大きくしたいです……。胸が大きいと……包容力があって……いいなぁって思いますし……。えっと、だから、桜も、育てるために頑張れたらいいなぁって……。い、一緒に、頑張りませんか。その、豆乳とか、良いらしいですよ」
　そんな空気を察したのか、桜が女性信者達に豆乳を渡す。
「こ、これで胸が……」
　眼鏡を掛けた女性信者が、ゴクンと唾を飲み込んだ。
　まわりにいた女性信者達も、興味津々な様子で豆乳をガン見。
「お、お前ら、何を考えている……」
　ビルシャナが危機感を覚え、女性信者達をジロリと睨む。
「そ、それは……」
　だが、女性信者達は何も答えない。
　激しく目を泳がせ、豆乳を手に取ったまま、放そうとしなかった。
「つーか、貧乳美少女達を誤った道に引き込むんじゃねェ！　この鳥野郎！」
　すぐさま、徹也がグラビティブレイクを仕掛け、ビルシャナを女性信者達から遠ざけた。
「それは違うッ！　誤解だ！　勘違いをしないでくれ！　俺はただ彼女達を正しい道に導こうとしただけで……！」
　ビルシャナが『それこそ心外だ！』と言わんばかりの勢いで、再び女性信者達に近づこうとした。
「しつこい鳥は嫌われるわよ！」
　それに気づいたユーロが、戦術超鋼拳でビルシャナの羽毛を毟る。
「受けなさい！　金色の乱れ髪！　ゴールデンデスヘアーよ！」
　続いて、ローゼンシアが金色の髪をグラビティで伸ばし、ビルシャナの動きを完全に封じ込めた。
「これで終わりにしましょう。ここにいる人達のためにも……！」
　次の瞬間、光理が絶空斬を仕掛け、ビルシャナにトドメをさした。
「わ、私達は一体……！？」
　その途端、女性信者達が我に返って、激しく動揺した様子で目をパチクリさせた。
「まあ、胸の悩みは乙女にとって永遠の悩みなんですよね……。あと少し、あってもいいかな……」
　そう言ってラピスが自分の胸を見た。
　女性信者達も反射的に自分の胸を見て、ションボリムード。
「折角ですので、皆さんで下着を買いにいきましょう！　もちろん、サラシはなしで」
　そう言ってロージーが、落ち込む女性信者達を励まし、買い物に誘うのだった。

作者：ゆうきつかさ	重傷：なし 死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2017年3月22日 難度：普通 参加：8人 結果：成功！
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