●予知
「今日は食べて食べまくるわよぉ~」
少しぽっちゃりとした女性が、テーブルに並んだケーキを前にして、自分自身に気合を入れる。
今日は女子会。
日頃のストレスを発散するため、やってきたのはケーキバイキング。
どのケーキも一口サイズで食べやすく、甘さも油分も少なめである。
「……そうね。せっかく来たんだから、食べないと……」
痩せ気味の女性が、ケーキを前にして、ゴクリと唾を飲み込んだ。
失恋してから、食事も喉を通らなかったのだが、今日は違う。
同じような気持ちの同志が集まっているためか、ケーキが妙に美味しそうに見えた。
まわりにいる女性達も上機嫌な様子で鼻歌を歌いながら、ケーキを次々とテーブルの上に置いていく。
そんな中、渦巻きのような次元の裂け目が出現し、そこからオークチャンピオン達が現れた。
オークチャンピオン達は血に飢えたケモノのような表情を浮かべると、背中から生えた触手を伸ばして、まわりにいた女性達が泣き叫んでいるのも気にせず、醜く歪んだ欲望を注ぎ込むのであった。
●都内某所
「阿倍・晴明(阿倍王子の玄武・e05878)さんが危惧していた通り、こういった事件が発生してしまうようです。オークチャンピオンとオーク達が、魔空回廊から現れて、多くの女性達を略奪していく事件が発生するのが予知されました。触手などでとらえた女性達を魔空回廊を通って何処かに連れ去って行こうとしています。連れ去られる場所は不明ですが、オークに連れ去られた後は、おそらく悲惨な未来が待っていることでしょう。この悲劇を防ぐことができるのは、ケルベロスだけなのです」
セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
「ただし、襲われるはずの女性達を避難させてしまうと、別の場所に出現してしまい、被害を防げなくなるので、女性の避難はオーク達が出現してから行う必要があります。その代わり、女性が増える分には問題ないので、女性のケルベロスが事前に潜入することは可能です。だからと言って本来その場にいるはずだった女性が居なくなっていい訳ではないので、その点は注意してください。また、一般人にばれないレベルの高度な女装を行った場合、男性ケルベロスも事前に潜入する事が可能です」
そう言ってセリカがケルベロス達に、ケーキバイキングの無料チケットを配っていく。
「どちらにしても、オークチャンピオン達の略奪を許す事は出来ません。皆さんで絶対に女性達を救ってください」
そして、セリカはケルベロス達に対して、深々と頭を下げるのであった。
参加者 | |
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フィオリナ・ブレイブハート(インフェルノガーディアン・e00077) |
テンペスタ・シェイクスピア(バニシングデウスエクス・e00991) |
玉城・キオ(法の守護者・e00992) |
石蕗・陸(うなる鉄拳・e01672) |
シェーラ・バウケット(放浪家・e02327) |
ジルベルタ・トゥーリオ(紫銀の騰蛇・e03599) |
阿倍・晴明(阿倍王子の玄武・e05878) |
南條・夢姫(永久の別れ・e11831) |
●都内某所
「最近、甘いものを食べていなかったから嬉しいわ。オークが来る前に少しくらいは食べたいのだけど……食べれるかしら」
ジルベルタ・トゥーリオ(紫銀の騰蛇・e03599)はエイティーンで18歳の姿になった後、オークチャンピオン達が現れる予定になっているケーキバイキング店にやってきた。
店の中には沢山の女性達で賑わっており、皿いっぱいにケーキを乗せ、上機嫌な様子でテーブルに座っていた。
「それにしても、なんでオークは女の子ばっかり狙うのですかね……」
南條・夢姫(永久の別れ・e11831)が、不思議そうに首を傾げる。
オークが女性を狙うのは、繁殖のため。
それ故に、女性が多く集まるケーキバイキング店をターゲットに選んだ可能性が高かった。
「これはもうオークの本能と言うか、煩悩と言うか……そういった類のものでしょうね、きっと……。しかし、こちらもヤられる訳にはいきません。オークなんかに絶対、負ける訳にはいきませんからね」
阿倍・晴明(阿倍王子の玄武・e05878)が、自分自身に気合を入れる。
とりあえず、オークチャンピオンが現れる前に、腹ごしらえ。
空腹状態では戦いに支障が出てしまうため、オークチャンピオンが現れる前に、胃袋を満たしておく必要があった。
「うう……、緊張するな」
石蕗・陸(うなる鉄拳・e01672)が、女装した姿で深呼吸をする。
オークチャンピオンに警戒されないようにするため、長袖にロングスカート、ウィッグを着用して化粧を施したものの、先程からまわりの視線が気になって仕方がない。
「大丈夫、とても似合っているから」
フィオリナ・ブレイブハート(インフェルノガーディアン・e00077)が超ミニのセーラー服姿で、スイーツ好きの女子高生に扮して、陸の事を励ました。
陸自身は納得していないようだが、シェーラ・バウケット(放浪家・e02327)がメイクを手伝ったため、完成度はなかなかのもの。
一見すると、女性にしか見えないため、オークを騙す事も容易だろう。
次の瞬間、魔空回廊からオークチャンピオン達が、ムックリと姿を現した。
オークチャンピオン達は興奮気味に鼻息を荒くさせ、品定めをするようにして、ゆっくりと辺りを見回した。
「きゃああああああああああああああああ、化け物よおおおおおおおおおおおおお」
それに気づいたぽっちゃりした女性が、悲鳴を上げて我先にとばかりに逃げていく。
「みんな逃げて!」
すぐさま、フィオリナが大声で叫び、さりげなく女性達を押しやるように出口に向かわせる。
まわりにいた女性達も悲鳴を上げて逃げ出したものの、オークチャンピオン達に逃げ道を塞がれ、パニックに陥っていた。
「折角、甘いものをいただこうとしている時に、不届きですねぇ。いつならいいというものでもないですが……。とりあえずご退場願います!」
シェーラがムッとした表情を浮かべて、こめかみを激しくピクつかせる。
ようやくケーキを選び終え、テーブルに座って食べようと思った矢先、オークチャンピオンが現れたため、当然の反応かも知れない。
こうしている間も、制限時間が過ぎていき、ケーキを食べる時間が無くなっているのだから……。
「ケーキバイキングとは言え、人の食事を邪魔するとは万死に値する」
テンペスタ・シェイクスピア(バニシングデウスエクス・e00991)もイラッとした様子で、オークチャンピオン達をジロリと睨む。
だが、オークチャンピオンはそんな事などまったく気にせず、テーブルに置かれたケーキを乱暴に掴み取り、口の中に運んでいた。
「あなたにはケーキではなく、こちらをご馳走しましょう。極寒の力、味わいなさい」
それと同時に玉城・キオ(法の守護者・e00992)が、オークチャンピオン達に攻撃を仕掛けていく。
少しでも早くオークチャンピオンを倒して、テーブルの上に置かれたケーキを食べるために……!
●オーク達
「今のうちに、女の子達を逃がさないと……」
夢姫がオークチャンピオン達を牽制しつつ、女性達が逃げるまでの時間を稼ぐ。
陸もライドキャリバーのヴォーテクスを使って、逃げ遅れた女性達を速やかに避難!
「オイ、コラ! 勝手ニ女達ヲ逃ガスナ!」
オークチャンピオンが不機嫌な表情を浮かべて叫ぶ。
だが、目当ての相手が残っていたのか、夢姫達の行く手を阻んでニヤリと笑う。
「正直、気が乗らないわぁ。タコとかイカもそうなんだけど……苦手なのよね。こうやっているだけでも、鳥肌が立っちゃうもの」
ジルベルタが嫌悪感をあらわにする。
ウイングキャットの『ネロ』も、牽制ムード。
近寄るものなら『キシャアー!』と鳴き声を響かせ、引っ掻いてきそうなほどだった。
「オオ、ソノ表情……ソノ反応……ソノ態度……タマラネェナァ!」
それとは対照的に、オークチャンピオンは大興奮!
触手から溶解液を撒き散らし、むせ返るほど異様な臭いを撒き散らす。
「くっ……、凄い臭いですね」
シェーラが口元を押さえて、後ろに下がっていく。
まるで腐った卵のような臭い。
そこに磯の香りが混ざったような独特な臭いが辺りに漂っていた。
「や、こないで」
その途端、フィオリナが超ミニのセーラー服姿で、怯えるフリをして生足をチラつかせる。
そこから見えたのは、まばゆいばかりの純白パンツ!
「コリャア、タマラネエナ!」
それに気づいた小太りのオークが、鼻息を荒くさせる。
「モ、モウ、我慢デキネェ!」
薄毛のオークも興奮気味に、白濁液を撒き散らす。
「……というか、なんだこの生臭い液体は。気持ち悪い」
それをモロに被ったフィオリナが、嫌悪感をあらわにした。
「ヨシ、ヤッチマエ!」
次の瞬間、オークチャンピオンが、まわりにいたオーク達を嗾けた。
「誰にも邪魔されず自由で救われてなきゃあダメな時間に出てくるな」
すぐさま、テンペスタがすべての怒りをぶつける勢いで、オークチャンピオンにフォートレスキャノンをぶっ放す。
「ぶはああああああああああああっ!?」
その一撃を食らったオークチャンピオンが派手に吹っ飛び、まわりにいたオーク達を巻き込んで倒れ込む。
これにはまわりにいたオーク達も身の危険を感じ、警戒した様子で身構えた。
「覚えておきなさい。【ガルド流殲闘術】。それが、あなた達を倒す流派の名前です」
その間にキオがオークチャンピオン達の前に陣取り、ファイティングポーズを取った。
「グヘヘ……、ナラバ俺達ハ、オ前ノ身体ニ、俺達ノ証ヲ刻ンデヤロウ……!」
オークチャンピオンがむっくりと立ち上がり、いやらしい笑みを浮かべる。
「お前達の相手は、相手はこの俺だっ!」
それと同時に陸がカツラをひんむくと、両袖を捲り上げ、ネクタイを緩めてから、ゆったりと空手の構えを取った。
「グフフ……、オ前、美味ソウダナ。キット、オレニヨク似タイイ子ヲ孕マセテヤル……!」
小太りのオークが、舌舐めずり。
その場で下半身を丸出しにすると、自慢のモノを見せつけた。
「ちょっ……! な、何か勘違いをしていないか!?」
陸は思った。
『ちょっと、待て』と……。
ここで襲われたとして、何の得があるのか、誰に需要があるのか、運命の女神の胸倉を掴んで問いただしたかった。
もしかすると、それなりに需要があるのかも知れないが、ハッキリ言ってお断り。
お断りだが……、この状況はヤバイ!
「貴方達の相手は、こちらですよ」
それに気づいた晴明が、小太りのオークを挑発!
「ナラバ、遠慮ナク戴クゾ!」
次の瞬間、薄毛のオークが晴明の後ろに回り、背中から触手を伸ばして動きを封じ込めてきた。
「くっ……不覚! でも、オークなんかに絶対、負けたりしません!」
晴明が悔しそうに唇を噛む。
「グヘヘ、コリャアイイ!」
小太りのオークも、自慢のモノを押しつけ、晴明の頬をベロリと舐めた。
しかも、薄毛のオークが調子に乗って、晴明の敏感な部分を激しく攻め立てた。
「や、やめて! そんな事をしたら、やっ、そ、そこは……ひぎいっ! アッー!」
そして、晴明は2体のオークに攻め立てられ、白濁液まみれになってグッタリとした。
●オークチャンピオン
「ヤレヤレ、オ前ラ興奮シ過ギダ」
オークチャンピオンが苦笑いを浮かべて、自らの下半身を露出する。
だが、ソレはチャンピオンにあるまじきほどのサイズ。
「チャンピオンというが、意外とそうでもないな。ソレ」
フィオリナが思わずそう口にしてしまうほどの残念なモノだった。
「バ、馬鹿ニスルナァァァァァァァァ! オ前ラ、容赦ハスルナ」
途端にオークチャンピオンがブチ切れ、まわりにいたオーク達を嗾けた。
オーク達はコトを済ませた後だったため、しばらく放心状態であったが、オークチャンピオンに蹴飛ばされ、やれやれと言わんばかりに立ち上がる。
「ナラ、俺ハ、アイツガイイ」
小太りのオークが、陸を見つめてニンマリと笑う。
「……って、また俺かよ!」
陸が納得の行かない様子で愚痴をこぼす。
しかし、小太りのオークは執拗に陸を狙い、今にも飛び掛かってきそうな勢いであった。
「何か勘違いをしているようだが、俺は男だっ!」
陸が小太りのオークに釘をさしつつ、紫電脚を炸裂させる。
その一撃を食らった小太りのオークが派手によろめき、ずでーんと地面に突っ伏した。
「ダガ、ソレガイイッ!」
小太りのオークが無駄に決め顔で答えを返す。
おそらく、小太りのオークは繁殖を繰り返す中で、新たな世界を知ってしまった存在なのだろう。
倒れている間も陸の生足を舐めるように見ているため、色々な意味で鳥肌モノ。
「調子にのっているブタは嫌いなの。単純に触手を絡ませるだけなんて気持ち悪いだけよ。そんなので女の子が喜ぶと思っているの? もっと相手を喜ばすように使えないのかしら」
ジルベルタが小太りのオークを踏みつけ、激しく言葉攻め。
しかし、小太りにとっては、御褒美以外のナニモノでもなかったため、そのまま頭を踏み潰した。
「マ、マサカ、アイツガヤラレルトハ……。ダガ、ソノ方ガ何カト都合ガイイ!」
薄毛のオークがニヤリと笑って、背中から生やした触手を伸ばす。
「ほらほら、ここにイイ女がいますよ」
それに気づいたシェーラが、薄毛のオークを挑発しながら、ロックオンレーザーを放つ。
「導きましょう、貴方の在るべき場所へ!」
それと同時に晴明が最期の力を振り絞り、【黄金の融合竜】を使って、薄毛のオークにトドメをさす。
薄毛のオークはブクブクと血の泡を吐きながら、白目を剥いて倒れ込み、そのままピクリとも動かなくなった。
それを見届けた後、晴明もすべてをやりつくした様子で、その場にペタンと座り込む。
「ヤレヤレ、モット強イ奴ヲ連レテクレバ良カッタカ。ダガ、オ前達ナド俺デ十分!」
そう言ってオークチャンピオンが唸り声を響かせ、襲い掛かってきた。
「――ガルド流殲闘術 蒼弓式 壱之型 降霜!」
それを迎え撃つようにして、キオがオークチャンピオンを攻撃!
「グワッ!」
オークチャンピオンが派手によろめき、背中から生やした触手が見当違いな方向に伸びていく。
「必殺ぅうっ!! レプリカントキック!!」
それと同時にテンペスタが素早く飛び上がり、無駄に洗練された無駄の無い無駄な動きでオークチャンピオンを蹴り倒した。
「ウグゥ……」
オークチャンピオンはそのままケーキの棚に突っ込みと、ありったけの白濁液を撒き散らして絶命した。
「それにしても、あのオーク。どうして、男の人まで……。ひょっとして……、女性狙いではなくて、かわいい人間狙い……?」
夢姫が気まずい様子で汗を流す。
おそらく、陸が狙われたのは、可愛かったせいだろう。
あのまま誰も助けにくる事が無ければ、それこそ取り返しのつかない事になっていたかもしれない。
そう考えると、色々な意味で恐ろしい気もするが、仲間達の助け合って最悪の事態を避ける事が出来た。
だが、オークチャンピオンが最後の最後でマゾッ気を出して果てたため、とてもその場でケーキを食べる気にはならなかった。
そして、夢姫達はケーキを食べる事が出来なかった悔しさを胸に秘めつつ、その場を後にするのであった。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2015年10月12日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 2/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 7
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