廃病院に潜む、殺人霊メディック

作者:ハル


「ひっ!」
 カラン、コロン……! 懐中電灯の灯りに照らされた薄暗い建物内に、金属音が反響し、少女は肩を竦めた。
「だ、誰もいるはずなんてないのに……やっぱり霊!? 霊がいるのね!!?」
 そこは、県内でも有名な廃病院であった。どうして有名なのかといえば――。
「霊は存在する! 私が正しかったのよ!」
 この廃病院が、心霊現象が多発する場所として、一定の知名度があったからである。
「私を馬鹿にした奴ら、見てなさいよね! あんたらの度肝抜くような写真を撮影して、コント番組みたいな反応をさせてやるんだから!!」
 多少は恐怖が薄れてきたのか、鼻息荒く廃病院を闊歩する少女は、何やら不快な出来事を思い出し、不満を浮かべている。
「……手術ミスをした挙げ句に、病院の屋上から飛び降りて自殺したお医者さんの霊……こんな具体的な噂のある病院なんだから、きっと撮影できるはず! 私には霊感がある! ……と思うから」
 言いながら、少女はカメラを構える。
「今だって霊の気配をムンムンに感じて――ひゃんっ!!!!!?」
 カメラを構えたその瞬間、少女は自分の足音の他に、もう一つ別の足音を聞いた気がした。
「まって、まってまってまってまってまってよ!」
 少女の聞いた音が確かなら、その音はすぐ傍から……。
 いや、むしろ……。
「……う、後ろにいるの……?」
 少女の背後にそれはいた。
「ふふ、はははっ、可愛い子ね……私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『興味』には、とても興味があるのよ?」
 そして、足音に次いで少女の耳に届いた明確な第三者の声に、少女はゾワリと肌を逆立てて真っ青になった。
 一人でやって来た事を後悔する暇さえ与えずに、少女の胸を貫く鍵状の何か。
「…………ぁ」
 力なく崩れ落ちる少女の変わりに、廃病院にはメスから血を滴らせる医者の怨霊が現れるのであった。

「またしても、第五の魔女・アウゲイアスの関わった事件が起きてしまいました。今回の事件は、祟・イミナ(祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟・e10083)さんからの報告で判明しました」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、残念そうに眉根を寄せる。だが、起きてしまったものは仕方がない。
「元凶となったアウゲイアスは、すでに姿を消しています。ですが、噂を元に生み出されたドリームイーターは、件の廃病院を徘徊しているはずです。どうか被害が出る前に、このドリームイーターを撃破して下さい!」
 そうすれば、『興味』を奪われてしまった被害者も、目を覚ましてくれるだろう。
「ドリームイーターは、メスのような、ナイフのような刃物を武装しているとのことです。その職業柄か、ヒールの頻度が多い事も特徴のようですね」
 ドリームイーターは自分の事を信じていたり、噂している人が居ると、その人の方に引き寄せられる性質がある。
「廃病院という事もあり、いろんな機材や薬品が、そのまま放置されてあります。待合室などの広い場所を整理してから戦闘を始めれば、戦いやすくなると思います」
 そこまで説明を終えると、セリカは資料を閉じる。
「今回現れたドリームイーターですが、その噂の元となった方が、いろいろと曰く付きの人物だったようです。病院の先生といえば、尊敬され、信頼されるべき立場。悪評を流布する者を放っておく訳にはいきません!」


参加者
ハンナ・リヒテンベルク(聖寵のカタリナ・e00447)
捩木・朱砂(医食同源・e00839)
ゼノア・クロイツェル(死噛ミノ尻尾・e04597)
風魔・遊鬼(風鎖・e08021)
祟・イミナ(祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟・e10083)
ジャスティン・ロー(水玉ポップガール・e23362)
猫夜敷・千舞輝(ネコモドキ・e25868)
レーヴ・ミラー(ウラエウス・e32349)

■リプレイ


「……廃墟って、どうしてこんなに、そのまま、なのかしら」
「そりゃもちろん、廃墟だからだろう」
 廃病院にて、ハンナ・リヒテンベルク(聖寵のカタリナ・e00447)とゼノア・クロイツェル(死噛ミノ尻尾・e04597)は、乱雑に積み上がった荷物や機材を壁際に寄せていた。
 空間になれた様子のゼノアとは違い、時折鳴る物音に、ハンナは若干ビクビクしている。
「いや、怖いわー」
 そんなハンナの女の子らしい仕草を見習うように、猫夜敷・千舞輝(ネコモドキ・e25868)が皆に聞こえるように言葉を発するが、隠しきれぬ棒読み加減に誰も反応はしれくれず、頰を膨らませていた。
「で、キープアウトテープは張れたのか? こっちは一応殺界形成を放っておいたが」
「ええ、そちらは私と、遊鬼様、ハンナ様の方で問題なく」
 カウンターの引き出しに、文具類など凶器になりそうな物を詰め込み、さらにガムテープで封印しながら捩木・朱砂(医食同源・e00839)が言うと、レーヴ・ミラー(ウラエウス・e32349)がふわりと笑みを浮かべて応じる。
「……さて、このくらいでしょうかね」
 あらかた片付け終わったロビーに視線を這わせ、黒ずくめの青年……風魔・遊鬼(風鎖・e08021)は静かに息を吐いた。
「……蟠った残留思念を感じる」
 白装束を未だ冷たい外気に揺らしながら、ポツリと祟・イミナ(祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟・e10083)が呟く。彼女がそういうのであれば、何故か間違いなくこの場にそういった存在がいるのだと確信できるのが不思議……ではないか。当然の事のように思えてしまう。
「え、ええっ、それってユーレイがいるって事!? ユーレイだけは駄目だよ!」
 イミナの発言に、ジャスティン・ロー(水玉ポップガール・e23362)は、ピローを胸元で強く抱きしめる。「……がうがう」と、少し苦しげにピローが鳴いているのにも気付かないくらい、ジャスティンは怖がっていた。
「あちらさんが来るまで待機やな。待ちサマーソルトモヒカンやなー!」
 ならばと、千舞輝はこの恐怖をドッカンドッカン笑いに変えてやろうと、渾身のギャグを繰り出すが――。
 返ってきたのは、イミナの澱んだ赤い瞳を中心にした視線と、さらに冷たさを増した風のみであった。


「廃墟に出てくる幽霊のウワサとか、正直あるあるすぎて万番煎じやんなー、HAHAHA」
 豪快に笑う千舞輝の周りを、嗜めるように火詩羽が飛び回っている。
 なんにせよ、噂話をして敵を引きつけなければならない。ロビー周辺でマナミの姿を発見できなかったのも、急ぐ要因であった。
「医者はどの辺りに居ると思う?」
 先陣を切って、朱砂が皆の顔を見回しながら問いかける。
「普通に考えれば……手術室でしょうか?」
「自殺した場所って事を考えると、屋上もありえそうだな」
 それに、レーヴとゼノアが答えた。
 懐中電灯をカチカチさせながら、二人の回答に満足するように頷いた朱砂は、手術室か、屋上か……どちらから敵が現れるか賭けでもしないかと提案する。
「意図的に、手術ミス、起こすお医者さんの霊……手術、たくさんして、お金欲しかった?」
 賭けに盛り上がる一部を尻目に、丁寧に敷いたハンカチの上に上品に座るハンナが言った。
「自分が調査した情報によりますと、実は医者は加害者ではなく、手術ミスの責任を押しつけられた……という可能性もありますね」
 それに対し、遊鬼が多角的な視点から得た情報を披露する。
 と、その時――。
 ドサッッ!!
 何かが空から落ちてきて、地面に激突した時のような音が、ロビーに木霊した。
 次いで、カチカチと、金属同士がぶつかる音が断続的に響く。
 ……やがて、ソレはロビーに現れた。血まみれの姿で、今まさに縫ってきたとでも言わんばかりに、身体の至る所に生々しい縫合後を残したままで。
「ギャー!」
 ジャスティンの悲鳴が轟いたのは、ドリームイーターが現れた数瞬後。目尻から涙を溢しながら、彼女はイミナに抱きついて――。
「……うむ、収まりがいい。……祟りたいほど癒されるぞ」
「ギャー!」
 そこで見上げた、長い黒髪の隙間から覗く瞳に、再び悲鳴を上げ、今度はハンナに抱きついた。
「……おいおい」
 ゼノアが、その醜態に呆れたように頭をかく。
「ゼノアくんだって、本当は怖いんでしょー?」
 ハンナに背中を撫でられながら、ジャスティンはゼノアに同意を求めるが、
「いや……別に。というかこいつの方が怖いだろ」
 ゼノアは知らん顔で、イミナを指さした。実際に悲鳴を上げてしまったジャスティンは、「うっ」と図星をつかれたように硬直する。
「……ゼノア、そんなことはない。……ワタシは普通だ」
 イミナも光のない目で、ジーと先の発言を撤回するように求めるが、イミナが普通とはとても言えるはずもない。レーヴですら、苦笑を浮かべるしかなかった。
「まったく、敵が来てるんだぞ?」
 騒々しい面々に朱砂が注意を促すと、その視界に改めて医師姿のドリームイーターが映る。
「イヒ、無視なんて酷いですネ。さて、僕が誰だか、分かりますカ?」
 医師は奇妙な笑みに、奇妙なイントネーションで、ケルベロス達に問いを投げかけてきた。
「オーケー分かっとるで。血のべったりついた刃物、こんな廃墟を根城にする。つまり謎は全て解けた! ジャックザなんとか系の殺人鬼やろ!」
 その問いに、あえて間違った答えを返したのは、千舞輝。
 答えを聞いた医師はニヤッと笑うと、鋭いメスのような凶器で、躊躇なく千舞輝に斬り掛かって来た!
「ちょ、ちょっい待ち! そんなん絶対痛いやん!」
 千舞輝はイチノヒを全身に纏わせると、鋼の鬼と化した拳で必至に応戦するのであった。


「耀く天の煌き、麗しき光の旋律、どうかわたしに、その聲を聴かせて……」
 ハンナだけのために、純白の羽ペンが宙に魔法陣を描き、それと共に響き渡る清廉な音色が彼女に恩恵を与えていく。
(回復が、追いつかない、くらいに!)
 件の医師は、強力な回復手段に、ポジション効果のキュアとブレイクまで備えている。そんな医師を打ち倒すには、ジャマーであるハンナの力は不可欠。
「補助展開コード:鷹の目――千里を見透す眼となって!」
「ハンナ、援護するぞ!」
 それは、仲間達も承知している。ジャスティンが前衛の前に眼鏡に似たホログラフィを展開し、その視界をクリアなものにすると、準備に時間をかけるハンナから敵の注意を引きつけるため――。
「噛み付き流すは蛇の毒。…これもある意味、麻酔かもな」
 ゼノアの袖口から伸びた鎖状にエネルギーが、蛇の如く医師に絡みついて締め上げた。
「イヒヒヒッ!」
 注入される毒に、医師は迷わず傷口をメスで切り開いて治療する。飛び散る血に、グチュッグユという肉が切り裂かれる音を響かせながらも、医師は薄笑いを浮かべたままだ。
「…………」
 自身に治療を施す医師に向かって、そうはさせぬと遊鬼が、火薬で成形作成された棒苦無を突き刺した後、起爆させる。
「少し答えが遅れたな。お前は、自業自得ながらも現世に縋り付く怨霊だ」
 爆風と粉塵の中、白装束を煤で汚しながらも、イミナは医師をそう断じた。
「ヒヒッ、これは手厳しいですネ! ――執刀!」
 イミナの流星の如き飛び蹴りと、医師が振るったメスが交錯し、互いに負傷。イミナの太ももにできた傷口を誇るように、医師はニタリと笑った。
「こっちだ、マッドドクター。今日はあんたが切り刻まれる番だぜ」
 朱砂のライトニングロッドから放たれたほとばしる雷が、医師を容赦なく感電させていく。
「医療従事者にあるまじき凶行と存じます。此の世から潰えなさい」
 さらに続けて、プラレチが尻尾から放った輪に、レーヴの電光石火の蹴りが、医師の両側から襲い掛かる。医師がどちらを優先して迎撃しようか、一瞬だけ迷った刹那!
「火詩羽、ウチの変わりに頼んだで! あっ、そこの幽霊、これから攻撃すんのは火詩羽やからな! 忘れたらあかんでー!」
 千舞輝の声と共に、火詩羽の鋭い爪が医師の顔面を引っ掻いた。
「イ゛ッ!」
 それにより視界を奪われた医師は、両側にプラレチとレーヴの攻撃までもを真面に受けてしまった。

「ッ!?」
「大丈夫か……!」
「……ありがとう、大丈夫、よ」
 相手がメディックな以上、ジャマーであるハンナが敵に与えるBSや、それに伴う回復不能ダメージが重要になるのは先述した通り。だが、敵も同様にハンナが危険である事を認識しているのか、ハンナが医師から狙われている節が見受けられた。
 それを今のように朱砂が……そして千舞輝と火詩羽が庇っている状況。
「たとえ、お医者さま、でも……いっぺんに、たくさんは、直せないでしょう」
 だが、医師がハンナを狙うという事は、裏を返せばそれだけ脅威になっている事に他ならない。ゆえに方針を変える必要などなく、ハンナは時空凍結弾を医師に撃ち込んでいく。
「霊とか吸い込める、掃除機みたいな、バスター的なものがあればええんやけどなー!」
 千舞輝の放つ追尾する矢が、避けようとする医師を執拗に追跡し、脚を射貫く。
「医者の霊だが何だか知らないが、とっとと滅びやがれ!」
 矢に脚ごと地面に縫い止められて体勢を崩している医師に、ゼノアは炎を纏った蹴りをお見舞いしてやる。
「ハンナお姉様、頑張って! ピローも頼んだよっ!」
「がうがう!」
 狙われるハンナに、ジャスティンは緊急手術を施していく。その隙を潰すように、任せろとばかりに鳴き声を上げるピローの体当たりが炸裂した。
「痛いですネェ……ヒヒッ、ヒヒヒッ!」
 元から血まみれだった医師だが、今や回復不能な炎やら氷ダメージで、さらに酷い状態になっている。白衣を脱ぎ捨てた医師は、一切の躊躇なく腹部へメスを突き入れ内部をグチャグチャにかき混ぜて、応急処置を測る。
 そんな医師の背後には、遊鬼が文字通りの幽鬼となって接近していた。遊鬼は音もなく、緩やかな弧を描く斬撃で、医師の背中を斬り裂いていく。
「……弔うように祟る。祟る。祟る祟る祟る祟る祟る祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟……封ジ、葬レ……!」
 次いで、間髪入れずに医師に打ち込まれたのは、イミナの呪力が込められた杭。穿たれる度に医師の身体は自由が効かなくなり、だが想像を絶する苦痛だけが脳を全身を這い回るという地獄。
「ギャッ、アガッ、イ゛ヒ!?」
 そのイミナの一撃で、初めて医師の顔から薄笑いが消し飛んだ。
「容赦は致しませんよ!」
 レーヴの両腕に嵌められたバトルガントレットが、光と闇、対極の力を宿して医師を粉砕する。
「……畳み掛けるぞ。遅れるなよ」
 その時、ここが勝負所だと読んだゼノアが、医師に向かって駆けだした。
「ジャスティン! 回復は俺がやる、お前は援護に回れ!」
「分かったよ! 火力を上げてこーー!」
 朱砂は千舞輝に緊急手術を施し、ジャスティンが前衛の後押しをしようと、カラフルな爆発を打ち上げる。
(それにしても、あんなふざけたヤツと同じグラビティを使っているとな……)
 ゼノアの後ろ姿を見送りながら、朱砂はそんな事を思った。人の助けになるはずのグラビティが、穢されているかのように感じてしまうのだ。
 遊鬼の空の霊力を帯びた日本刀が、医師の皮膚を豆腐のように切り裂き、ハンナの稲妻を帯びたゲシュタルトグレイブが風穴を開ける。
「――執刀を始めます、イヒッ!」
 それでも医師は状況を覆すため、再び患者を死に至らしめるために、メスを迫り来るゼノアに突き立てようとして――。
「そうはいかんで!」
 庇いに入った千舞輝に、抑えこまれてしまう。
「ゼノア様、トドメはよろしくお願いします!」
「……任せたぞ」
 レーヴの電光石火の蹴り、そしてイミナの螺旋の氷結に囚われた医師は……。
「イヒッ……アア? 身体が、動かなイ!?」
 ここに来て、駄目押しのパラライズまで発動したのか、その手からメスを落とした。廃病院のロビーの床の上をカランカランと音をたて、メスが滑っていく。
 そして医師は、ゼノアが掌の上に生み出した、「ドラゴンの幻影」に焼かれ、跡形もなく消滅した。
「……ほんものでなくても、想いは、安らかに天へ、還りますように……」
 それでもあの医師は、こうしてハンナが指を組んで祈ってくれただけ、幸運であっただろう。


「まだ寒いってのに、うら若い乙女がこんな床に寝かされちまって……」
 うっすらと意識を取り戻したマナミの耳に届いたのは、彼女を案じる朱砂の声だった。
 声に導かれるようにして、マナミは瞳を開ける。
 すると、
「……ばぁ」
 真っ赤な、こちらを覗き込む瞳と目が合った。白すぎる肌、黒髪、感情のない相貌は、マナミが存在するのだと信じてきた幽霊の姿そのままで。
「冗談だ。……力ない者が迂闊に霊に関わると怖い目に遭うぞ」
 その後に続く言葉が耳に入る余地もない程急速に、マナミはまた意識が遠くなっていくのを感じた。

「悪いな、イミナが脅かしちまって」
「…やっぱ、こいつの身なりはもう少しどうにかした方が良くないか」
「いえ、ちょっとビックリしましたけど、もう大丈夫です」
 目覚めたと思ったら、またすぐに気絶した時はどうしようかとも思ったが、マナミが無事なようで、朱砂とゼノアも安堵している。
「心霊スポット、遊び半分、来たら、祟られちゃう、よ?」
「そうそう、レーカンなんて証明できなくてもいいじゃんか!」
 神様……それに限りなく近い存在が実在する世界だ。最早、霊感がどうこうの次元ではないだろう。どうしてもというなら、イミナを学校に連れていってはどうか? そう提案するジャスティンに、堪えきれないとばかりに、ハンナがクスクスと笑った。
「普通は見えないもの、感じないものを見たり感じとることは、使い方を違えば、身に不幸を招くものと存じます」
 むしろ、今回はデウスエクスで良かったと、レーブが告げる。
「もうマナミ様に本当に霊感があるのでしたら、それは今回のような無謀な事ではなく、マナミ様の身近な人を守るために使ってくださいませ」
「……はい、身にしみて分かりました」
 マナミも、こうして危険な目に合って、自分の愚行を心から反省しているようだ。
「……朱砂、二人で遊びに行く機会があれば心霊スポットもいいな」
 逆に、欠片も反省していないのがイミナであった。
「お、デートか! デートなんか!?」
 そう囃し立てる千舞輝も含めて、朱砂は「こいつらなんとかならんのか?」そう心からの溜息と……。
「心霊スポットだけは勘弁してくれ」
 本音を混ぜらせるのであった。
 その後、遊鬼の提案により、廃病院にはしばらくキープアウトテープが残された。
「効果の程は分かりませんが……それでも……」
 噂が沈静化する事を願うのみだ。

作者:ハル 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年4月1日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 3
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