幽霊屋敷の従者

作者:雨乃香

 街外れの雑木林。
 道は通っているものの、あまりそこを好んで通る人はいないのか、舗装された道の端々には亀裂がはしり、その間から様々な花や雑草が顔を覗かせている。
「いかにも年季が入ってる感じがして、雰囲気が出てるじゃないか」
 その様子を満足げに眺めながら、道を歩いていく若い男は呟きながら、スーツの襟を正す。
 人気のない雑木林に入るには、どこかちぐはぐな格好の男は、しかし、何の疑問も持たずに真っ直ぐに歩いていく。
 進むにつれ道幅は徐々に広くなり、やがて視界が開けた先に、鉄柵に囲まれた大きな屋敷が姿を現す。
「噂に聞いたとおりだ。これなら本当にいるかもしれないぞ、僕の夢見た理想のメイドが」
 どう見ても、寂れ、もはや人の住んでいる様子などないその洋館を爛々と輝く瞳で見つめ、男は嬉々としてその敷地に踏み入ろうとする。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『興味』にとても興味があります」
 鉄扉に手をかけ、力をこめようとしていた男はその言葉にすぐに振り返り、鈍い色の大きな鍵が高く振り上げられたのを見る。
 それが、吸い込まれるように男の胸に突き立つと同時、男はその場に意識を失い倒れこむ。
 その体を、小柄な腕が優しく抱きとめたのを、彼は気づくこともできなかった。

「鬱蒼と木々の茂る場所にひっそりと立つ洋館、ミステリーやファンタジー、ホラーにサスペンス、物語の舞台として昔から重宝される建物ですが、皆さんとしてはどのようなイメージがあるでしょうか?」
 ニア・シャッテン(サキュバスのヘリオライダー・en0089)は部屋へと集まったケルベロス達にそう問いかけ、興味深そうに耳を傾けつつ、頃合を見計らって本題を話し始める。
「今回皆さんに向かってもらう洋館に住むと噂されれていたのは、主人の帰りを待つという従者の幽霊、主人は借金から夜逃げし、それを知らぬ彼女は屋敷で主を待ち続け、やがて金を取り立てにきた人間に楯突き殺されてしまったのだとか……それからこの屋敷には、敷地内に踏み入る者を殺してしまう幽霊メイドが出るようになったのだとか」
 そこでニアは一度話を切り、ゆっくりと、重くしていた口調を普段どおりに戻す。
「とまぁそんな噂から、年老いることのない忠実な美人メイドと夢の生活を! などという夢を見ていた男性がうっかりその屋敷でドリームイーターに襲われて興味を奪われ、噂が実体化してしまったと、なんともまぁ、人の欲望は罪深い……」
 そういったものがニアの生きる糧でもあったりしますが、とどこか妖艶な笑みを浮かべ、ニアはすぐに表情を戻す。
「元となった噂が噂ですので、わざわざおびき寄せずとも、件の洋館へ向かい足を踏み入れば、あちらから勝手に出向いてくれるでしょう。
 ちなみに、すぐに襲ってくるわけではないようで、一応館の主人かどうかは確認を取ってくるようです、本当に健気なことです」
 それっぽい格好でいけば、すぐさま襲われるということは防げるかもしれませんね、とニアは付け加え、目標の姿についても軽く触れる。
 見た目は十代半ばの少女であり、メイド服を身にまとい、手には刈り込みようの鋏を持ちそれを使って攻撃を仕掛けてくるとのことだ。
「被害者男性にしろ、噂のメイドの少女にしろ、過激な愛というのは時に悲劇を生むものです。うっかり何も知らない人が敷地に踏み入るようなことが起こる前に、早めにこのドリームイーターを討伐してしまいましょう」


参加者
アイン・オルキス(誇りの帆を上げて・e00841)
タカ・スアーマ(はらぺこ守護騎士・e14830)
荊・綺華(エウカリスティカ・e19440)
ジャスティン・ロー(水玉ポップガール・e23362)
ルビー・グレイディ(曇り空・e27831)
天原・俊輝(偽りの銀・e28879)
匣猫・イタル(はこのなかにいる・e35941)

■リプレイ


 緑の葉をた木々の枝が道にまで伸びる鬱蒼とした雑木林。
 所々舗装が剥がれ、荒れた道を連れ立って歩く八人のケルベロスの集団。
 そんな彼らの服装は人気のない寂れた道を行くにはいささか不向きなものが多かった。
 燕尾服にメイド服、祭服にスーツとまるで中世のような出で立ちのものが半数近く、そこに普段どおりの姿のものも混じっており、見るものがいれば奇妙な一団に映ったことだろう。
 彼らが迷いなくその道を進んでいくと、やがて道が開け、鉄柵に囲まれた広大な敷地と、その鉄柵に守られるようにたつ、立派な洋館が姿を現す。
「なんだか話しに聞いてたより、ずいぶんと手入れが行き届いてるようだねー」
 足を止め、大きな洋館に一時息を呑んでいたケルベロスのうち、ルビー・グレイディ(曇り空・e27831)はしげしげとその洋館を眺めた後、ポツリとそうつぶやく。
「噂話や事前にお聞きした話からして、ドリームイーターとして実体化したメイドさんが手入れをされたのではないでしょうか?」
「律儀なもんだ、これで人に迷惑かけないなら、放っておいてもいいだけどな」
 マリー・ブランシェット(銀朱・e35128)の言葉に携帯端末に映し出された、手の入る前の洋館の写真と目の前のそれを見比べていた匣猫・イタル(はこのなかにいる・e35941)はどこか呆れたようにいいながら、携帯端末をしまう。
「どの道デウスエクスである以上はそういうわけにもいかないでしょう」
 燕尾服姿の天原・俊輝(偽りの銀・e28879)がそう言って一歩踏み出すと、他のケルベロス達も連れ立って正門のほうへと回っていく。
「もうすぐ綺麗なメイドさんにあえるんだよね、わくわくしちゃうなぁ」
 言葉通りにジャスティン・ロー(水玉ポップガール・e23362)の足取りは軽く、対照的に落ち着いた足取りのタカ・スアーマ(はらぺこ守護騎士・e14830)はすぐ横を流れていく鉄柵に切り取られた風景を見つめながら誰にともなく呟く。
「しかし洋館に美人のメイドか、まるで海外のテレビドラマの世界だ」
 その呟きをなんとなしに聞いていた荊・綺華(エウカリスティカ・e19440)は顔を上げ、タカに興味深そうに問いかける。
「ハウスメイドというのは……やはり男性が憧れるものでしょうか……」
「人によるだろうな、少なくとも私は特に魅力は感じない」
 一時すらも考える素振りもなくそう返すタカの態度に綺華は「ですか……」と小さく納得したように頷いて、隣を飛ぶばすてとさまの頭を優しくなでる。
 そうして歩き出してそれなりの時間がたって、ようやくケルベロス達は正門の前へとたどり着く、大きな両開きの鉄扉は周りの鉄柵と同じ格子になっており、その隙間からはやはり、事前の情報とは食い違う手入れの行き届いた庭園が広がっている。
「さて、それではいこうか」
 鉄扉の前、振り返りそう声をかけたアイン・オルキス(誇りの帆を上げて・e00841)は仲間達の頷きを確認すると、再び正面を向いて扉へと手をかけた。


 ゆっくりと軋む音を経てて開く扉。
 ケルベロス達は一歩踏み出したところで、只ならぬ殺気に足を止める。それは正面の庭園、エプロンドレスを身にまとう美しい給仕の女性から放たれていた。
 彼女はケルベロス達がその場で足を止めたのを確認すると、ロングスカートの裾をつまみ上げ、一礼した後ゆっくりと口を開く。
「団体様連れで一体全体どういったご用件でしょうか?」
 メイドのその言葉に、まず元気よく答えたのはジャスティンだった。
「新入りメイドでーす!」
 彼女の服装は確かにメイド服ではあったが、それは目の前のメイドの身につけているものに比べれると随分と丈が短く、実用的とは言いがたい。
 メイドはやや怪訝な表情を浮かべつつ、視線を他のケルベロス達に滑らせた。
「あなたの言うご主人様の姪っ子だよ。伯父さんには良くしてもらってるし、遊びに来たんだー」
 くるりとその場で回って一礼するルビー。
「新しい執事です、彼女は先ほどの子と同じく新人のメイドの美雨です」
 ビハインドである美羽とともに恭しくお辞儀をしてみせる俊輝。
「秘書だ、主から書類を届けるようにいわれてな」
 そういってレザーバインダーを軽く目線の高さに持ち上げるタカ。
「主人のボディーガードだ、こちらは客人達だ」
「神官です……」
「えっと、覚えていらっしゃらないかもしれませんが……贔屓にしてもらっている商人です」
 堂々と宣言するアインと、紹介され怯えるように小さな声で返す綺華とおずおずと頭をさげるマリー。
 口々に答えていくケルベロス達に対し、メイドは眉を顰め、疑るような口調で問う。
「そちらの方は?」
 そうして彼女が顎で指し示すのは、一人離れた場所に立っていたイタルだった。
「オレ? オレは借金取りだよ。……借金のカタに、あんたでも貰ってくか」
 すぐに指摘されたイタルがそう答えを返すと、メイドは表情歪め彼を睨み付けながら冷静さを欠くことなく、淡々と言葉を並べる。
「それでその様な方々が連れ立ってやってくる理由とは?」
 その冷淡な態度にジャスティンは胸元に抱くピローをぎゅぅっと抱きしめ、身悶えるように体を震わせる。
「はわわ……クールなお姉様、素敵」
 感極まって声を上げる彼女の胸元では呆れるようにピローが鳴き声をあげているが、メイドにご執心のジャスティンは気づく様子もなく、そんな彼女に周囲のケルベロスも、メイドさえも触れないでいる。
「貴様、主人の側近の姿すら見忘れたか」
 その妙な空気を破るかのように一歩進み出たアインが声高に主張すると、一時、メイドは表情を曇らせ、一時の沈黙の後、雑念を振り払うように軽く頭を振って、正面からアインを見据えた。
「仮に貴方が本物だとして……残りの方々はどうでしょう、特にそちらの借金取り、と申されましたか?
 我が主にどう考えても無用な者を側近である貴方がこの敷地に踏み入れさせるというのは、一体全体どのような冗談でありましょうか?」
 イタルは仲間達に向け肩を竦めるようにして軽く舌を出し、頭を下げる。
 最初からだまし通す算段があったわけではない、せいぜい出会いがしらの奇襲を防げれば御の字程度の作戦、その効果は十分に果たせたとケルベロス達は演技をやめ、目の前の敵を打ち倒すべく、臨戦態勢に入る。
「茶番はこれまでにしよう」
 アインが言葉とともに拳を構えると、メイドはケルベロス達を鼻で笑いつつ、対峙するようにその手に刈込み鋏を構える。
「やはりご主人様の眠りを妨げる不届き者でありましたか……一人残らずお帰り願いましょうか」
 鋏の刃が怪しく輝き、その切っ先はケルベロス達へと向けられる。
「女の子相手にあんま気が進まねえけど……まあデウスエクスだしな」
 イタルの言うとおり、見た目こそか弱い女性であっても、その中身はドリームイーターであり、その力は一人でもケルベロス八人と渡り合える化け物なのだから、手加減などする余裕は無い。なめてかかれば、最悪怪我だけではすまない。
「覚悟はいいか?」
「覚悟すべきはそちらでしょう? 仕事には常に全力故、加減できませんよ」
 アインの言葉にメイドがそう返すと、互いに軽く口の端を持ち上げ、両者は同時に地を蹴った。


「補助展開コード:鷹の目――千里を見透す眼となって!」
 ジャスティンが虚空を払うように腕を振るのと同時、前へとかけていく仲間達の後姿に重なるように投影される立体ディスプレイそれらは数え切れない文字列を瞬く間にスクロールさせ、順にウィンドウを閉じたかと思うと、対象となった者達の目の前に出現し、その視覚を増幅させるホログラフィとして再構成される。
 その援護を受けたアインは、真っ向から飛び込んでくるメイドの動きをしっかりと見据え拳振るう。
 メイドはその攻撃を鋏で受け、流そうとするものの、降魔の一撃は防御の上からでも容赦なくその魂を喰らう。
 メイドの口から漏れる舌打ち。
 出鼻をくじかれた彼女の前にさらに躍り出るのは綺華だ。先程までのどこか茫洋とした雰囲気とはかけ離れたその機敏な動きから繰り出す蹴り技。
 小柄な体から放たれるその何の変哲もない蹴り、メイドはあっさりとそれを捌き、距離をつめようとして、突如眉間に突きつけられた銃口に咄嗟に回避行動をとる。
 しかしその至近距離からの攻撃に、回避が間に合うはずも無い。
 銃声とともに浮き上がる彼女の体を、タカの放った炎弾が追い討ち、その体を炎で包む。
 庭園の生垣に吹き飛ばされたメイドはしかし、こともなげに服についた汚れを払い立ちあがった。
「もとより汚れるのを想定した服ゆえそれは怒るに値はしませんが……まだご主人様の目にも触れていない庭園を荒らした罪は、その血で償っていただきましょうか」
 言うが早いか彼女は再び踏み込んでいる。
「美雨」
 俊輝はビハインドの名前を短く呼び、すぐにそれをうけ美雨は動く。周囲より浮き上がる小石や朽ちて落ちた鉄柵の金属片、それらが浮き上がり、メイドをめがけ襲い掛かるのと同時、俊輝もまたメイドへと向かい攻撃を仕掛ける。
 翻るエプロンドレスの裾や彼女自身の足をめがけ放たれた無数の礫が彼女の行く手を阻み、俊輝の放った蹴りをメイドは両手を使い防御せざるを得ない。
 重力を宿すそれは彼女の動きを著しく阻害するものの、メイドは一時それらの攻撃を耐え凌いだ後、イタルへと向かい攻撃を仕掛けた。
 首を狙い繰り出されるのは刈込鋏の一撃。
 噴出す鮮血は咄嗟に防御に掲げた右腕から噴出すもの、致命傷ではないが、パックリと開く傷口は浅くもない。
「戦闘メイドの一撃とか、一部の人にはご褒美だろうけどな」
 軽口を叩くイタルに対し、メイドは舌打ちと共に吐き捨てるように言葉を返す。
「仕留め損ないましたか、我が主を侮辱した罪、その首で償っていただこうかと思いましたが――」
 彼女の言葉はそこで止まる、眼前まで迫るルビーの一撃を回避するために意識は自然とそちらへと向く。回避の動きも最小限に、紙一重でその攻撃を避け反撃に移ろうとした彼女の耳に届くルビーの声。
「ごめんね。すこーし、大人しくしててねー」
 攻撃と共にぶわりと大きく放出された霊力の網、紙一重で攻撃を回避したメイドはその網までは避けることができず、まんまとルビーに囚われる形となる。
 そのチャンスに一瞬だけ迷いを見せながらも、マリーは仕掛けた。
 重力を宿すその蹴りの一撃、二重、三重に動きを阻害され、足を止めたメイドに対し、イタルはバールのようなものを振り下ろす。
 お返しとばかりに放たれたその一撃は、エプロンドレスの至る所を裂き、千切り、その白い肌に赤い線を引いた。


「ご主人様にすら見せたことの無い肌を晒されるとは何たる屈辱、ここで死んでいただきます」
 血の滴る胸元を押さえる彼女はイタルへの殺意を隠そうともせず、鋏を構える。
 対してケルベロス達も傷を受けたばかりのイタルへと追撃はさせないようにと、敵の動きに目を光らせ、綺華はイタルの前に立つ。
「よっし、今のうち、だね。ピローもてつだって」
 睨み合い膠着した戦線、その隙にイタルの傷を治してしまおうとジャスティンはピローに声をかけ、その治療へとあたる。
 すぐに感づき、動こうとするメイド、しかしその前に立ちはだかるケルベロス。
「雑草は、刈り取らねば」
 呟きと共にケルベロス達をまとめてなぎ払わんとメイドは鋏を一閃。
「天におられる……わたしたちの父よ……み名が聖と……されますように……」
 身を挺しイタルに迫る攻撃を庇いつつ、綺華は祈りをささげ、守りの手の届かないアインへと守護を与える。その彼女の行動に、あわせるように、ばすてとさまは翼を広げタカへと迫る攻撃を防ぎ、ケルベロス達の受けた被害は最小限に押しとどめられる。
「受けた分の恩は活躍で返そう」
 アインは言葉と共に反撃へと打ってでる。攻撃を防がれ、苦々しげな表情を浮かべるメイドとの距離を一瞬でつめ、先程イタルのつけた傷口をさらに広げるかのように、胸元へと紫電を纏う武器を突き立て、切り払うように武器を勢いよく引き抜く。
「……慍!」
 大きくよろけたメイドに向かい、タカはステップひとつで間合いへと踏み込み、やはり大きく開いた傷口へと向け容赦のないひじ打ちと見舞う。打ち下ろすような一撃に、膝を崩す彼女。落ちた顎の先をタカの放つ二打目の掌底が掬い上げるように下から的確に打ち上げる。
 そこにさらに追い討ちをかけるのは彼の相棒たるプロトメサイア、合図が無くとも計ったようなタイミングでその渾身の体当たりはメイドの体を捕らえ、遠く強烈に弾き飛ばす。
 止めとばかりに俊輝の放つアームドフォートからの一斉掃射が地に落ちたメイドを周囲の地形ごと容赦の無い砲撃が襲い掛かる。
 庭園に咲くバラの花びらと粉塵が舞い、そこから姿を現した敵の姿は既に慢心相違。
 胸元からは赤い血が流れているのに、肘から先の無くなった右腕は断面にモザイクが覗き、血の一滴も流れていないちぐはぐななその見た目。残った左腕になお彼女は鋏を握り、未だその戦意は失われていないことを雄弁に物語る。
 その様子にマリーは息を飲む。健気にいつまでも帰ることの無い主人の帰りを待ちわびる彼女のその生き様に、複雑な表情を浮かべ思わず動きをめる。
 メイドはもはや体裁もなく、ただケルベロス達をこれ以上館へと近づけまいと、それだけを考え、我武者羅に突貫する。ダンボールちゃんのばら撒く無数の財宝にも目もくれず一直線に進むその軌道はあまりにも愚直。
「せめてご主人の所に行けるように……。最後は、どーんと行くよ」
 その名に相応しい赤毛が風に揺れ、振りぬく蹴りの一撃は流星の煌きと重力を宿す。
 真正面から放たれたルビーの一撃にメイドは防御も応戦もする暇も無く、その一撃に潰されるように、末端からモザイクへと変わり果て、サラサラと消えていった。


 戦いの後、被害者である男性の姿は洋館の綺麗に整えられた一室、ベッドの上で眠っている姿をケルベロス達によって発見された。
 ジャスティンに説教され、ルビーに励まされ、イタルとほんの少しだけメイドについて語った後、彼は、その部屋を出る前に、小さく漏らす。
「なんだか、ともて幸せな夢を見ていた気がするんだ」
 もはや当人も覚えていないその内容を誰も知る由はなく、ケルベロスはそんな暢気な被害者にやや呆れた視線を向けつつも、もう同じ轍だけは踏まないでほしいとだけ告げ、彼をつれて洋館を出る。
 手入れされた状態へと修復された庭園を抜け、門の前で、マリーは一時足を止め、振り返り、すぐにまた歩き出す。
「いってらっしゃいませ」
 去り行く彼らの背にそんな声がかけられた気がしたのは、きっと気のせいだろう。

作者:雨乃香 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年3月26日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 3
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