Tボーンステーキ! Tボーンステーキ!

作者:なちゅい

●1つで2度美味しい!
 とある建物の一室。
 その部屋は、肉の焼ける美味しそうな匂いで包まれていた。
 そして、そこにいる若者達は挙って目の前の料理を食べている。皿に乗っていたのは肉厚のお肉。しかも、T字の骨がついたTボーンステーキだ。
「2種類のお肉が一緒に食べられるなんて……」
「本当欲張りな食べ方ね。お肉が口の中でとろけるわ」
 Tボーンステーキは、後ろお尻よりの背中の肉であり、左右にサーロインとヒレの2種を同時に食べることができる。脂身の多くてジューシーなサーロインと、非常に柔らかくて口の中でとろけるヒレ。それぞれに特色があり、食べ比べることができるのは嬉しい。
 皆、恍惚とした表情でナイフとフォーク、あるいは箸を使ってそのステーキを食べる。その手は止まらない。
「そうだ、どんどん食うといい。Tボーンステーキ。これ以上の食べ物など存在しない……!」
 そう主張するのは、やや下腹部を丸くさせた男、玉置・佑。その全身は羽毛に包まれており、ビルシャナと成り果てていた。この場の若者達は皆、玉置の信者と成り果てており、彼の容姿に違和感を持つ者は誰もいない。
「さて、新たな信者を獲得せねばな。……Tボーンステーキの素晴らしさを存分に語ってこよう」
 信者と成り果てた若者達は拍手喝采し、ビルシャナ玉置を送り出すのである……。

 とあるビルの1フロアにて、営業されている焼肉店。
 その客席の1つで、リーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)が皿に盛られたお肉を満面の笑みで食べていた。
「お肉はどうして、これほどまでに人を幸せにしてくれるんだろうね……」
 テーブルには、ほぼ食べ終わりかけているTボーンステーキが置かれてある。彼女がそれを美味しく頂いていると、店外から彼女を見つけるケルベロスの姿が。
 リーゼリットはそそくさとそれを食べ終え、店の外へ。すると、エピ・バラード(安全第一・e01793)が目を輝かせて叫ぶ。
「Tボーンステーキ! Tボーンステーキですよ!」
「場所を変えようか」
 叫ぶエピに、リーゼリットは慌てて屋上のヘリポートへの移動をケルベロス達へと提案した。
 ――10分後。
 ヘリポートにやってきたケルベロス達。リーゼリットは改めて依頼内容を話し始める。
 鎌倉奪還戦の際に、ビルシャナ大菩薩から飛び去った光の影響で、悟りを開いてビルシャナになってしまう人間が後を立たない。今回のビルシャナもその1人だ。
「ビルシャナとなった男性が肉を手にして、自身の教義を繰り返し語っているんだ。彼が大勢の信者を獲得する前に撃破して欲しい」
 ビルシャナ化している人間の言葉には強い説得力がある為、放っておくと一般人は信者……配下になってしまう。現場到着時には、10人ほどの若い男女が信者となりかけてしまっているようだ。
「ビルシャナの主張を覆すようなインパクトのある主張を行えば、周囲の人間が配下になる事を防ぐことができるかもしれないよ」
 ビルシャナに同調してしまった人々の目を覚まさせるのは、簡単ではない。ただ、説得ができなければ、この若者達はビルシャナ撃破までビルシャナのサーヴァントのような扱いとなり、戦いに参加する。配下が多いと戦闘で不利になる為、できるなら事前に説得しておきたいところだ。
 今回討伐すべきビルシャナは、玉置・佑。30代男性のサラリーマンだ。
「夕方、滋賀県大津市の大津駅前に現れたビルシャナは、『Tボーンステーキ! Tボーンステーキ!』と繰り返し叫んで、信者の取り込みを図っているよ」
 ビルシャナは10代から20代の肉好きな男女を取り込み、自らの教義に同調させている。
「ビルシャナの教義に共感できない人達は、この場から避難しているようだね」
 ビルシャナは自身の主張に意を唱える相手……ケルベロスに対しては、経文、孔雀炎といった手段で襲い掛かってくる。時に、用意したTボーンステーキで、自身や信者の体力を回復することもあるらしい。
 また、戦いが始まるまでに説得できなかった信者も、ビルシャナを守ろうと動く。この地点で残っていた信者は倒してしまう他ないので、予め認識しておきたい。
 お肉を食べ終えたリーゼリットは満足そうな表情をしているが、焼肉店を前にしてヘリポートへとやってきているケルベロス達はお腹を空かせている者もいる。
「事件を解決して事後処理を終えたら、皆もお肉を食べてくるといいよ」
 滋賀県といえば、近江牛。ビルシャナの主張するように、Tボーンステーキがいかなる味かを実際に体験してみるのも悪くはない。
「それでは、お肉の為にも頑張ろうか」
 彼女はにっこりと笑い、ケルベロス達にやる気を出すよう促すのである。


参加者
バレンタイン・バレット(ひかり・e00669)
エピ・バラード(安全第一・e01793)
アーティラリィ・エレクセリア(闇を照らす日輪・e05574)
セレネテアル・アノン(綿毛のような柔らか拳士・e12642)
一津橋・茜(紅蒼ブラストバーン・e13537)
ルソラ・フトゥーロ(下弦イデオロギー・e29361)
霧鷹・ユーリ(鬼天竺鼠のウィッチドクター・e30284)
寺井・聖星樹(爛漫カーネリアン・e34840)

■リプレイ

●お肉は美味しいけれど……
 滋賀県を目指すヘリオン。
 その中で現場到着を待つケルベロス達の話題といえば……。
「今日は……、お肉を食べに……。Tボーンステーキ! Tボーンステーキ!」
 ルソラ・フトゥーロ(下弦イデオロギー・e29361)はこの依頼に当たって、アイズフォンでTボーンステーキを検索していた。一目見たその時から、食べたくて仕方ないと両手を頬につけてうっとりとしてしまっている。
 普段、ゲームしてばかりの寺井・聖星樹(爛漫カーネリアン・e34840)も同じく、アイズフォンでまじまじと見ていたようだ。
 一応、メンバーの目的はTボーンステーキと言うより、それしか認めないと豪語するビルシャナの対処なのだが……。
「Tボーンステーキしか食えないとか、むしろ地獄じゃないかの……?」
 これまた通風になりそうな奴だと呆れているのは、頭に燦然と輝くヒマワリの花を揺らす、アーティラリィ・エレクセリア(闇を照らす日輪・e05574)だ。肉ばかりならば飽きてしまうと、彼女は両手を上げて首を振った。
「Tボーンステーキ? ……って、ただの肉とはちがうのか」
 こちらも、あまり興味なさそうにしている仔ウサギのウェアライダーのバレンタイン・バレット(ひかり・e00669)。肉よりも野菜のほうが大好きだと、チーム唯一の男性は主張する。
 そこで、バレインタインが仲良しのエピ・バラード(安全第一・e01793)に視線をやると。
「お肉のために、あたしがんばります!」
 こちらもアイズフォンで直に映像を目にしたのか、ビルシャナ討伐に意欲を見せていた。
 そんな主人を、テレビウムのチャンネルはじっと見守っていた。
「……おいしければ、なんでもよさそうだな」
 バレンタインもまた、年上ながらも同い年のようなエピを微笑ましそうに眺めていた。
「異なった部位が同時に食べられるとか、確かに素晴らしいとは思いますけどね~」
 こちらは、猫のウェアライダーの一津橋・茜(紅蒼ブラストバーン・e13537)。他にもいっぱい美味しい部分があるだけに、たった2部位しか食べられないなんて。なんとも嘆かわしいと、肉が大好物である彼女は叫ぶ。
「……ということで、今回は自称ミートマスターのこのわたしが教えてあげます!」
「たっぷりお肉をいただくであります!!」
 燃え上がる茜に、ルソラはその教授に預かるつもりのようだった。

●そればっか食うってのも
 現場となる滋賀県大津市。
「Tボーンステーキ! Tボーンステーキ!」
 大津駅前にはビルシャナと成り果てたぽっちゃり体型のサラリーマン、玉置・佑が声高らかに叫んでいる。
 教義を語るに当たって、玉置は高価なはずのTボーンステーキを実際に用意する徹底っぷり。すでに彼は10人ほどの若者達を自らの教義に同調させていた。
「お肉ばっかりじゃ、飽きない?」
 そこで、最初に玉置へと声をかけたのは、大きな目をぱちくりとさせ、きゅるんとした見た目のレプリカント、聖星樹だ。たまには、野菜やパンを挟むほうが、お肉の旨みをより引き立てることができると彼女は主張する。
「あとほら、やっぱり肉ばっかだと……太るよね」
 聖星樹はビルシャナへと視線を向けた。お腹の出た彼は、もうメタボに足をつっこんでしまっている。
「将来はこうなりますよっていい見本だよね」
 聖星樹はにっこりと微笑むと、若者達の表情が見る見るうちに陰る。
「Tボーンステーキ! Tボーンステーキ!」
 だが、ビルシャナは力づくで、若者達を自分の下へと引き寄せてしまう。
「Tボーンステーキが美味い事は認めるが、それだけで食事は辛くないかの?」
 若者達を見上げるアーティラリィも胸を張り、彼らを説得すべく問いかけた。
「皆さん、この資料を見てください!」
 そこで、霧鷹・ユーリ(鬼天竺鼠のウィッチドクター・e30284)がグルメ雑誌を広げ、Tボーンステーキのページを信者達へと見せ付ける。
「とっても美味しそうなTボーンステーキが載っています! ところが、お値段を見てみてください……」
 安いところでも3000円台。一食に使うにはとてもお高く、お財布に直撃する超贅沢品である。
「しかし、ビルシャナはTボーンステーキ以外を認めてくれません! 果たして、皆さんのお財布は生き残ることができるのでしょうか!?」
 ユーリの言葉に、若者達は財布の中身をちらりと覗いて我に返りかける。中には、それでも食べると豪語する猛者もいたが……。
 財布の中身を気にする若者達へ、アーティラリィがさらに問いかけた。
「人は肉のみに生きるにあらず、じゃ。ご飯や付け合せ、サラダとか無いとキツくないかのぅ?」
 さすがに、寝起きの朝食や体調の悪い時にまで牛肉では、あまりにも胃に重い。その時に合った、食うべき物を食べるべきとアーティラリィは説く。
「食べ物は強要するものじゃなかろうて。その時に食いたい物も人それぞれじゃろうしな」
 少し言葉に戸惑いを見せる若者達。もう一押しだとケルベロス達は感じているのだが、ビルシャナが「Tボーンステーキ!」と繰り返し、またも同調させようとするから面倒だ。
「……うわっ、なんて肉くさいトコロなんだ」
 そこで、バレンタインがこの場に漂うお肉の匂いに、思わず顔を顰める。
「そんなに肉ばかりをたべていたら、おまえらも肉みたいになっちゃうぞう! ぽよんぶよんって……ねっ、エピ!」
 お腹を強調し、バレンタインは友人に同意を求めると。
「そうです。ずーっとお肉ばかりだと、あご疲れちゃいません?」
 頷くエピが、用意していたイチゴのショートケーキを一口。甘く、ふわふわの触感。口の中で、生クリームはまろやかに溶けて。
「わけてあげてもいいですけど、お肉しかいらないんですよね……残念です」
「肉がすきなのは、いい。でも、そればっかりじゃあいけないぜ」
 それに、羨ましそうに見つめる若者の女性へ、バレンタインは更に続ける。
「おまえたち、野菜はたべているかい?」
 みずみずしくて、さっぱりとして、シャキシャキとしたあの歯ごたえ。お肉ばかり食べていた中では、徐々に恋しくなる触感だ。
「それに、ウサギだけじゃあなくて、ヒトのからだにもよいだろうね、野菜をたべたくなっただろう!」
「バレンタイン様、実は野菜のケーキもあるんです!」
 エピが出したのは、ニンジン、かぼちゃといった野菜を混ぜ込んで作ったケーキ。見た目も華やかで実に美味しい。
「うん、美味しいぞう!」
 ニンジンケーキに、彼もご満悦である。
「んんんっ、さぁ、ここに取り出したるは新鮮なみかん!」
 ルソラはフルーツで攻める作戦。こちらも瑞々しく、弾けるようなジューシーな味わい。そして、体に良い成分がたくさん含まれている。
 ビルシャナの傍のステーキに目をやりつつも、ルソラは首を振ってなおも主張する。
「皆さん! 世の中には色々な食べ物があるであります! 狭義に捉われる事なかれ!」
 みかん、美味しいでありますとにこやかに食べるルソラ。この場にはないが、伊勢海老など、他にも美味しいものはたくさんあると彼女は若者達に訴えかけた。
 若者達の中には我を取り戻す者が出だしていたが……、それでも、半数あまりが未だビルシャナとケルベロスの主張の間で、煩悶としてしまっている。
 そこで、セレネテアル・アノン(綿毛のような柔らか拳士・e12642)が別の切り口から、若者達の説得に当たる。
「Tボーンステーキは確かに2種類のお肉を楽しめますが、それだと特定部位しか楽しめませんよっ」
 どうせなら、2か所に拘らず、もっとたくさんの種類を楽しむべきとセレネテアルは語る。
 仲間達が主張する間に。茜は用意した肉焼き用セットで肉を焼いて見せていた。ネック、肩ロース、リブロース、ランプ、ハツ、ミノ、カイノミ……サーロイン。この場のお肉の匂いはこれも影響していたのだ。
「ランプはもも肉の特に柔らかい部分で、肉のきめは細かく柔らかな赤身肉としては貴重です!」
 茜が焼く脇から、セレネテアルがお肉を摘まんでパクリ。やや脂は少ないものの、赤身肉は柔らかく、ハマるとやみつきになりそうだ。
「ん~! このお肉もタンとは違う食感で美味しい~♪」
「カイノミはバラの一部でヒレの近くにある部位で、とても柔らかく、牛肉本来の旨味を味わえます!」
 切り出した肉の形が『貝の身』に似ていることがその由来。こちらも脂はさほど重くなく、柔らかい中にも噛みごたえがあるお肉だ。貴重な部位だが、茜はとあるお肉店で強奪……こほん、譲ってもらったのだとか。
「私のオススメとしては、タンですねっ」
 セレネテアルは比較的知名度も高いタンを推す。Tボーンステーキでは味わえぬ食感。レモンや塩など、他の部位と違った味付けが楽しめる。
「2種類のお肉の違いを楽しめる『通』な皆さんなら、それぞれの部位にしかない良さ・楽しみ・味わいも分かりますよね~?」
 セレネテアルは用意したタンをおかずに、ご飯と一緒に食べる。その間も、茜は団扇で扇ぎ、匂いで若者達を誘う。
 お肉はTボーンステーキだけではない。若者達は幅広いお肉に釣られ、1人、また1人とビルシャナの元から離れ、全員が姿を消してしまう。
 これには、ビルシャナ玉置もお冠である。
「なぜだ、なぜ、これ以上ないTボーンの素晴らしさが分からない……!」
 憤るビルシャナはその身を燃え上がらせ、孔雀の形の炎と成してケルベロスへと投げ飛ばしてくるのだった。

●その肉はいただけない
 向かい来るビルシャナ玉置の前に、エピが立ち塞がる。
「皆様をお守りします!」
 彼女と共に前に出たテレビウムのチャンネルが、孔雀の形の炎を受け止める。
 すると、隣のバレンタインが戦場を跳び回り、手にする簒奪者の鎌でビルシャナの体を薙ぎ払う。
「はい、それじゃあルソラの攻撃順でありますよー!」
 後方からはツインテールを揺らすルソラがビルシャナを狙い、ドラゴニックハンマーを砲撃形態として竜砲弾を叩き込んでいく。
 序盤はビルシャナも経文を唱えるなど激しく抵抗するが。
「野生パワー全開! わに! わに!」
 ユーリが両手を合わせて、パクパクとさせる。一見すれば遊んでいるようなモーションにも見えるが、それは、かつて自身の病魔だった巨大ワニを具現化させる為のもの。ユーリは仲間達へと野生の力を送り込み、代謝能力を強化し、経文に耐える力を与えていく。
 ケルベロス達は次々に攻撃を仕掛ける。
「紅王ネイガルブルート――赤の手により鮮血に染まれ」
 腕輪の封印を解いた茜。そこから解放されたのは、紅獣の力だ。彼女はそれによって赤いオーラを纏い、残像と共に颯爽と戦場を駆け回って爪の形のオーラで敵の体を十字に切り裂いた。
「冷凍保存したお肉を、適度に叩いて柔らかくして……」
 聖星樹はグラビティを伴う一撃で、打撃箇所を凍りつかせ、炎を纏った蹴りを食らわせる。
「しっかり焼けば、出来上がり~」
 肉の焦げる臭いが漂う。だが、先ほどの肉とは違い、全く持っておいしそうには思えぬ臭いだ。
「なめるな……!」
 再び、燃え上がる孔雀の炎を発するビルシャナ。ただ、聖星樹がしっかりとそれを防ぎ、綿毛が舞うように戦場を駆け巡っていたセレネテアルが聖星樹の体に氣を纏わせ、残像を発生させていた。
「はい、これで安心ですよ~」
 にっこり微笑むセレネテアル。氣を操る彼女の施術で、多少のダメージも安心だ。
 ケルベロスの優勢が崩れることはなく、あっという間にビルシャナを追い込む。そして……。
「そんなに好きならば、じっくりウェルダン風に焼いてやろうぞ!」
 叫ぶアーティラリィ。彼女と言えばヒマワリ。ヒマワリと言えば太陽だ。
「天に届くと慢心せし者には、一切の慈悲を無く太陽は照りつける」
 それは、蝋の翼で太陽に近づこうとした者の詩。彼女はその太陽の炎を自らの体に再現する。
「それでもなお昇ろうとするのであれば、燃え尽きるまで叩き落すであろう!」
 灼熱の炎は、誰一人としてその光から逃れられない。ビルシャナの体を業火の炎が焼き払い、全てを燃やし尽くしてしまう。
 ビルシャナの沈黙を確認したアーティラリィは大きく胸を張り、鼻を鳴らしてから仲間の方へと振り返るのだった。

●お肉、お肉!
 ビルシャナを倒したケルベロス達。
 まずは、戦闘によって荒れた大津駅周辺を、ヒールに当たる。
「体を貫く氣の流れ……、いつまでも感じてっ!」
 セレネテアルは広範囲に自らの気を流し込み、迅速に街の修復を行う。
 ユーリもまた戦闘時と同様に両手をパクパクし、周囲に力を与える。茜は満月にも似たエネルギー光球を破壊箇所にぶつけて、グラビティの力で幻想を象り、破壊箇所を埋めていく。
 幻想交じりに修復できた街を眺め、アーティラリィはうんと頷いていた。
「おつかれさまだ!」
「終わったらステーキだよね!」
 バレンタインも、戦闘、事後処理と動く仲間達を労う。聖星樹は待ちきれず、もうお腹ペコペコだと腹の音を鳴らしていたようだ。
 メンバー達は店員が戻ったことで開店した店に入り、早速Tボーンステーキを注文する。ケルベロス達の来訪と言うことで、存分に振舞ってくれる心積もりのようだ。
 運ばれてくるステーキの載った皿。それにエピは目を輝かせる。
「こ、これがTボーンステーキ……」
 庶民にはなかなか手が出せぬ高級料理。エピはそれを食べていいのかと仲間達に同意を求める。
「ああっ、とってもいただきますであります!」
 仲間全員分が運ばれ、ルソラはにこやかな顔で一口。
「ああ……とろける……あまーい」
 口の中に広がるまろやかな肉の味に、聖星樹は思わず頬を緩ませる。
「すっごく美味しいです! ほっぺがすと~んとしちゃいます!」
 ユーリもセレネテアルも、その肉の味にナイフとフォークを動かす手が止まらない。茜は持参した様々な部位のお肉と交互に、そのステーキを口にしていた。
「みんな、肉をたべるの? それじゃあ、付け合わせの野菜をわけてほしいなあ!」
「はい、どうぞ!」
 バレンタインは肉よりも野菜の方が欲しいらしく、エピが快く分けていた。
「まぁ、豪勢なディナーも……たまには悪くないがの」
 アーティラリィも折角だからと、美味しくお肉を頂いていたようである。

 心行くまで、お肉を堪能した面々。
「ごちそう様でした! もうお腹一杯ですよぅ!」
 ユーリは鬼天竺鼠の姿に変身したユーリはごろりと床に転がる。
「ものすごく美味しかったです!」
 それでも、やっぱり毎日Tボーンステーキだけと言うのは困りものだと、彼女は呟く。
「こんなに美味しいのに、飽きてしまったらもったいないです」
 これだけ美味しいものだからこそ、たまに食べるのが丁度いいとメンバー達は改めて実感するのだった。

作者:なちゅい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年3月20日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 4
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