●指揮官型ダモクレス、出陣
茨城県つくば市の大学は襲来したダモクレス軍団によって瞬く間に占拠された。
構内に市民の姿はなく、校舎は真っ白いドーム状の建物に作り替えられ、ロボット達で埋め尽くされている。
4つある施設の一室から全区画に向けて映像が配信された。
「諸君。此度の『弩級兵装』の発掘は最重要作戦である」
モニターに映る緑のバイザーと特徴的なアーマードレス、そして床につきそうなほどの桃色の髪――指揮官は淡々と演説を続ける。
「量産機によって周辺警備も万全と言えよう。しかし、不測の事態があってはならない。特に『弩級超頭脳神経伝達ユニット』の重要性は皆も認識しているな、このコマンダー・レジーナが陣頭に立つ意味も」
抑揚のない宣言は機械種族達の思考回路を強烈に刺激する。
「発掘した『弩級超頭脳神経伝達ユニット』の転送準備は鋭意進行中だ。万一のときは不完全でも転送させるが、それはあくまで最終手段だ。エキドナ・ジャスティス、製造番号012375640号、記録参謀『マスター』ジェネシス……全てはあなた達の手腕にかかっている」
静聴する全てのダモクレスよ、ここに指令を下す!
「完全体の弩級兵装を入手するためにも全力を尽くせ――総員、奮起せよ!」
●ご武運を
「指揮官型ダモクレス達が新たな作戦を開始したようですわ、彼らは地球に封印されていた強力なダモクレスである『弩級兵装』の発掘を行おうとしています」
『弩級兵装』はその名の通り、重巡級ダモクレスを越える力を持つ兵装。オリヴィア・シャゼルが言うには現存する弩級兵装は4つ。
「それら全ての『弩級兵装』が完全な力を発揮すれば、ダモクレスの戦力は数倍……いえ、数十倍に引き上げられると予測されています。見過ごす訳にはいきませんわね?」
前置きを済ませたオリヴィアは大規模作戦の遂行を通達する。
「今回は『弩級兵装』の発掘施設を警護する量産型ダモクレスに対して別のチームが攻撃を加える隙に、複数のチームが潜入・連携して『弩級兵装』の破壊を試みますわ」
――そして、このチームは指揮官ダモクレスの1体『コマンダー・レジーナ』の直下部隊を狙う。
「皆様の担当は『弩級超頭脳神経伝達ユニット』です、この『弩級兵装』の発掘を『コマンダー・レジーナ』が直々に指揮をとっていますわ。指揮官が自ら陣頭に立つほどです、最重要兵装である事は確実ですわ」
極めて熾烈な戦いになるだろう、しかし完全体の弩級兵装を入手させる訳にはいかない!
「完全破壊ならずとも、弩級兵装に損害を与えて能力を発揮させないようにする必要があります。非常に重要性と危険性の高い任務になりますわ、心して挑んでくださいませ」
作戦はレジーナ部隊が占拠し、改造した研究施設に乗り込む。このチームは総大将『コマンダー・レジーナ』のいる施設へ向かう。
「レジーナは一等大きな施設の地下最奥部にいるようですわ。皆様は量産型ダモクレスが交戦している間に、施設内へ突入して、レジーナの元へ向かってくださいませ」
また施設間はかなり離れており、アイズフォンを含めた通信連絡は一切不可能な状態だ。オリヴィアは『全ては8人の手にかかっている』と鋭い眼光を向け、作戦概要を伝える。
「『弩級超頭脳神経伝達ユニット』は非常に複雑な兵装で、修復はレジーナ自身が担当しています。ですがレジーナは非常時に備え、自身が撃破されたと同時に『弩級超頭脳神経伝達ユニット』が転送されるよう設定しているみたいですわ」
他にも転送手段は用意しているようだが、いくつか手順を踏む必要があり、ケルベロスとの戦闘中に行うことは出来ないだろう。
「レジーナを手早く撃破してしまうと『弩級超頭脳神経伝達ユニット』の修復は出来ませんが、完全に破壊することも出来なくなりますの。かと言って、時間をかけすぎれば量産型ダモクレスが増援として現れ、作戦が失敗する危険性もあります」
――8人に託された使命はそれだけリスクの高いものだ、オリヴィアは一呼吸おいて作戦目標を告知する。
「このチームの主任務は『いかにコマンダー・レジーナとの戦闘を継続させるか』です。戦い続けるということはそれだけ負担も大きくなりますので、撤退するタイミングもよく考えてくださいませ」
レジーナは本来、前線に立つタイプではないが、戦闘能力は配下を大きく凌ぐとオリヴィアは警告する。
「武装は両肩部装甲に備えた無線式光学兵器のみですが、彼女の高速演算処理能力と空間把握能力が加わることで強力な武器となっています。攻撃対象も単体から広域まで選べる上に、分析による照準補正も可能としています。ポジション編成は慎重に決めた方が良いですわ」
指揮官型ダモクレスと対峙する好機だが、同時に手を引くタイミングも求められる。
「皆様の頑張りが他チームの支援にも繋がりますが、欲張って危機に陥っては本末転倒です。……全員揃って帰還してくださいませ、お待ちしておりますわ」
参加者 | |
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マキナ・アルカディア(蒼銀の鋼乙女・e00701) |
バーヴェン・ルース(復讐者・e00819) |
流星・清和(汎用箱型決戦兵器・e00984) |
峰岸・雅也(ご近所ヒーロー・e13147) |
鏡・胡蝶(夢幻泡影・e17699) |
卜部・泰孝(ジャンクチップ・e27412) |
ダリル・チェスロック(傍観者・e28788) |
ジジ・グロット(ドワーフの鎧装騎兵・e33109) |
●発掘戦陣要塞
陽動にかかった量産機が戦闘音を聞きつけて次々と進出する、統率された動きは軍隊と呼ぶに相応しい。
曲がり角を覗く藍髪の少女と反対方向を見ていた念珠を掛けた青年がハンドサインを出す。それを見てジジ・グロット(ドワーフの鎧装騎兵・e33109)は声を出しそうになり、慌てて口元を押さえた。
(「うー、おはなしでけへんのメッチャしんどいわぁ!」)
だがここは我慢のしどころ。喋りたい衝動をグッと堪えて後続のケルベロス達を手招きする。
しかし大人数で行動をしていては、隠密気流を以てしても目立ってしまうのは致し方ないだろう。
「……っ!」
接近する敵機をマキナ・アルカディア(蒼銀の鋼乙女・e00701)が如意棒で殴りつけ、黒手袋を着けた金髪の美女が追撃して装甲を叩き割る。もう1体を相手取る銀髪のアホ毛を揺らすシャドウエルフの少女に続いて峰岸・雅也(ご近所ヒーロー・e13147)が【妖刀】刹那ですかさず両断。
体躯の良い赤髪のサキュバスが3体目を仕留め、支援要請する隙も与えず場を収めるとすぐに進行を再開する。
(「誘導班のおかげで予想以上に侵入しやすくなっていますね」)
物陰から様子を窺うダリル・チェスロック(傍観者・e28788)は心の中で感謝していると、新たな量産機が推進器を吹かせて前方を通過していく。その様子をバーヴェン・ルース(復讐者・e00819)は険しい表情で眺めていた。
(「――ム。これは……予想以上に厳しいかもしれんな」)
量産機の性能は予想を上回っている――想像以上に足止めできる時間は少ないかもしれない。
数度の遭遇があったものの、無事に敷地内へ潜りこむと流星・清和(汎用箱型決戦兵器・e00984)は最も大きなドームに目を向けた。
(「あそこが本丸やな、なんも特徴がないってのも不気味だわ」)
ドームから出現する量産機が途切れ、好機と見たマキナが先陣を切ると卜部・泰孝(ジャンクチップ・e27412)が後に続く。
(「ほかのチームのみなはんも、ボンヌ・シャンス☆」)
別れ際、他の施設へ向かう面々にジジは親指を立て、ある者は唇の仕草で、ある者は視線で返事して離れていく。
(「……必ず全員で戻るわ、8人で」)
誰も倒れさせはしない、鏡・胡蝶(夢幻泡影・e17699)は決意を胸に突き進む――ここから先は互いの無事を祈るしかない。
●コマンダー・レジーナ
施設内を進んでいくと地下に向かう巨大な螺旋階段を見つけ、転がるように下階へ駆け下りていく――その先に待ち構えていたのもまたドーム状の空間だった。
中央にはぽっかりと穴が開き、その中にいくつも伸びる巨大なロボットアーム。その先を見下ろすコマンダー・レジーナは、自身のヘッドホンデバイスと端末を数本のケーブルで接続している。
おそらく自身の電子頭脳で弩級超頭脳神経伝達ユニットの情報処理を行っているのだろう。
「襲撃から307秒、およそ5分か」
既に状況を把握しているようだ。レジーナはケーブルを引き抜き、無機質な瞳を向ける。
(「…………なんでしょ、この妙な気分は」)
初めて遭遇したハズだ。だが、この湧き上がる既視感はなんだ? 異様な感覚に清和は顔をしかめたがレジーナが気にかける様子はない。
「犬は鼻が利くと言うがあなた達も同じか?」
「無駄話をしに来た訳ではない……汝らの謀り事、ここで絶つ!」
戯れな問いを一蹴してバーヴェン達は得物を手に突撃する。その様子にレジーナも機械的な言葉を口に含んだ。
「戦術プログラム、起動。戦力解析、システム最適化――――武装展開」
両肩部装甲から球状の無線ユニットが放たれる。浮遊する一つ目の球体は鋭角な軌道を描きながら雅也達に迫る。
「貴方の思考、怒りで釘付けにさせて貰うわ」
軍団長自らの出撃は千載一遇の好機! 意気込むマキナが形成したビームキャノンを最大射程から構え、注目を引きつけようと攻性エネルギーを乱れ撃つ。
無線ユニットが放つビームのシャワーを胡蝶が受け止め、射線上にバーヴェンが割り込む。
「その武装、封じさせてもらう」
放たれる暴風に光学兵器の軌道が乱されるが、すぐに姿勢を制御して一斉射撃を見舞う。バーヴェン達の足がビームに含む電磁波で止まりかける。
「私の演算処理装置を封じるには足りないな」
マントを翻すレジーナは眉ひとつ動かさず。モニター代わりのバイザーに分析した情報を表示させ、更新情報を受信した光学兵器が散開する。
「ダリル、泰孝、こいつを使え!」
「焦りは禁物よ、確実にいかないとね」
ビームをかわしながら雅也がグラビティで生成した小細工を投げ渡し、胡蝶もオウガ粒子でバーヴェン達の感覚を研ぎ澄まさせる。受け取った泰孝は偽りの金貨と合わせて振りかぶり、
「こいつを喰らいな!」
愚か者の金貨は放物線を描く。
チリン――落着した衝撃を引き金にレジーナの脚部装甲に絡みつき、黄鉄鉱は重しとなって重心を偏らせる。
(「これでは、アラームを気にする余裕が……っと!」)
経過時間を気にしたダリルは移動中にタイマーをセットしていたが、降り注ぐビームの嵐に音を気にしている余裕がない。
「……いえ、量産機が来たら既に危険な状況です。今は戦線を維持しませんと」
自身の役目を全うすべくダリルは守護星座を足元に描き、護法を展開させる。
今回の作戦はキャスター2人がレジーナを引きつけ戦闘時間を継続させることにある。清和は態勢が整うまで妨害しようと肉薄し、持ち味の空間把握能力の阻害を試みた。
「デコイのつもりか?」
「邪魔する気はあるんやけどね……死ぬ気はないです、っとぉ!」
数発の被弾を受けつつも清和は轟竜砲の引き金を引く。砲弾はビームで弾道を逸らされレジーナの右肩に僅かな損傷を与えながら、熾烈な撃ち合いを繰り広げる。
(「マドモアゼル・レジーナ、ほんまごっついわ……けどな、うちらかて負けられまへん!!」)
立体的な機動を見せる攻撃に固唾を飲むジジは鉄塊剣を指先で数度小突く。自身の幸運を願い、身の丈を超す大剣を担ぎ上げると勢いのまま飛びかかる。
「Je touche du bois!」
最上段から迫る無骨な巨剣をレジーナは両腕で受け止め装甲に傷をつける。ジジの着地の瞬間を狙い、背後に引き戻した光学兵器で一斉掃射をかけた。
「ダコード☆ まだまだ動けマースっ」
「もう一撃よ!」
痛烈な痺れに顔をしかめたくなるが間合いをとったジジは気炎をあげ、マキナが再びN.E.M.E.S.I.Sを放つとレジーナが無線ユニットを射線に集めて熱線を相殺。同じ攻撃を繰り返せば相手に見切られてしまう、当たるまで仕掛けるのは分の悪い賭けをするに等しい。
「く、さすがに動きを読まれますか!」
ダリルがメタリックバーストを放ち、精神集中と同時に異常状態の解除を図っているとレジーナの視線が動く。
――敵性体、命中率把握。攻略対象、選定――優先順位確定。
「まずは目障りなあなたから」
レジーナの戦術を反映すべく光学兵器が一斉に清和の元に殺到する。
「っ!? やらせないわ!」
降り注ぐビームの嵐に胡蝶が飛び込み、続く攻撃にバーヴェンも果敢に割り込む。しかし、光学兵器は執拗に追いすがる。確実に、着実に、狩人の命を受けた猟犬のように……!
「チィッ!いやらしい攻撃しやがって!!」
「――ム。あの演算処理とやらが厄介そうだな」
雅也が鎖鎌で魔法陣を描く間にバーヴェンが拳を振り上げる。音速の拳を受けてなおレジーナの表情は歪まない。痛みに対する恐怖も、怯えもない……その様相は間違いなく『機械』だった。
――交戦開始から8分、全体の作戦開始から13分が過ぎた。マントに幾多の穴が空こうと、装甲に傷が増えようとレジーナの立ち姿は揺るがない。振り抜かれるジジの鉄塊剣を頭上にやり過ごし、ビームキャノンを向けるマキナごと稲妻走る光線を放つ。
「なんて威力なの……!」
「重唱展開、術式列挙、重力昇華、論理錬成、適解構築」
バーヴェンがジジを庇っている間に、胡蝶が宙に血濡れた指を滑らせレジーナの視界に呪文をねじ込む。泰孝が痺れの残る手で竜槌を砲撃形態に変形させる。
「命をチップにした嬢ちゃんが居るんだ、オレも賭けなきゃ失礼ってモンだろ!?」
元より何処だろうと敵の射程圏内。確実に当てようと狙い定め、指揮官機の足並みを乱そうと砲弾をばら撒く。
しかし、レジーナの猛攻によって治療に手を回す者が増えると同時に攻め手が減る。さらにダリルの動きが止まると異常状態の回復が遅れ、余裕が少しずつ失われていた。
「ムッシュー・ダリル! うごけますやろか!?」
「お気遣い、ありがと、っは、ぁ、回復役が……皆を生きて返さなくて、どうしますか……!」
防衛役の援護があったとはいえ、完全に防ぎきれる訳ではない。空間把握能力を妨害する清和の動きが止まると、レジーナは生命線を担うダリルを狙って支援を絶とうとした。
膝がガクつくダリルは自らの負傷を癒そうと手をかざすが、収束したグラビティ・チェインはシャボン玉のように弾けた。
「定命化した者の弱みだな、死を恐れるあまり保守的な行動が増えている」
冷淡な物言いは『死』の概念に囚われた者への痴がりを微かに含み、挑発にさえ聞こえる。
狙いを集めながら積極的に庇う清和も負傷が激しい、破損した装甲の隙間からコートの切れ端と無数の創傷が見える。纏わりつく痺れを裂帛の叫びを上げて振り払うも癒えぬ傷に体中が悲鳴をあげた。
「壁が崩れるのも時間の問題か」
「その壁…………諦め、悪いんよなぁ……!」
「ならば潔く死ね」
機械に感情論は通じない。レジーナは容赦なくビームの束を放射し――。
「流星さん!」
清和に向かう射線上に胡蝶が立つ。
自身の回復を優先して耐えていたが、防衛に徹したことでレジーナの注意を引き清和に次ぐ負傷を負っていた。照射の勢いに耐え切れず弾かれるがここで倒れる訳には行かない。『誰かが倒れる姿を見たくない!』――その一心で立ち上がろうとした。
「く、ぅ、機械らしい、淡白ぶり……全然、足りないわよ……」
挑発的な言葉を発する胡蝶だが膝を立てるので精一杯、戦線を維持するのが難しくなってきたが雅也も諦めていない。
「策を弄して細工は流々……ってな!」
――恐らくこの場で仕留めることは出来ない。だからといって、予定時間を繰り上げて撤退するつもりはない! ならば『予定通りに事を進めるべき』と雅也は判断しマキナ達の支援に回る。
「くそ、なんてタフな野郎だ! ……くれてやる、拾いな!」
泰孝がハウリングフィストで更新情報を打ち消し、ダメ押しとばかりに投げつけた愚か者の金貨は何枚目か。レジーナにいくつも絡みついた重荷は膝下をほぼ覆いつくそうとしている。
蹂躙せしめんと変貌した鉄塊剣と斬霊刀を携えバーヴェンが一足飛びで踏み込む。
「機械ならば腐食は防げまい」
非物質化した斬撃は電子ウイルスの如く電子回路に蝕み、ゲイルブレイドによる鋭い刃旋風に長い髪が一束切れ落ちる。
(「攻撃型でないにしても、なんて圧倒的な……これが指揮官型ダモクレスの性能!?」)
他の5体はこれ以上かもしれないというの? 桁違いの性能にマキナは肝を冷やしていた。このままでは狙いを引きつける前に前衛がもたない……横目で一瞥するとジジと視線が交わる。
「Code N.E.M.E.S.I.S……lock on!」
「マドモアゼル・レジーナ! うちらも忘れたらあきまへんよ☆」
これが注目を引き寄せる最後のチャンス!
収束した光の粒子がマキナの砲身から極太の熱光線を放ち、ジジが壁を踏み台にしてより高い場所から一太刀を見舞う。真上から迫る大剣を飛び退くが、熱光線の射線上から逃れきれずに無線ユニットを挟んで直撃を避ける。
「……攻略対象を再設定」
ビームレンズが2人に照準を合わせる。光線が断続的に飛ぶ渦中を必死で回避しようと間隙を搔い潜り――四方に飛ぶ光学兵器はマキナを中心に焦点を集めた。
「くっ!?」
「ぬうううううううううううおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
着弾点めがけて全速力で清和が突撃する。軋む身体を気迫で動かし一か八かの博奕を打つ! マキナを当身で押し退けた直後に全方位からのビームが放たれ、ヒビ割れた装甲が飛散する。
「清和さ――うわ!?」
雅也が近づこうと走りだすと流れ弾に進行を阻まれ、泰孝が狙いの逸れている隙に手を伸ばす。
「しっかりしろ!!」
「……あかん……来て、もうた…………」
直後、パネルが落下してけたたましい音を立てる――泰孝が見上げた先にはチャリオットメイデンが一機、こちらめがけて急速に降下してくる。
――作戦開始から既に15分が経過していた。
このまま居続ければ白銀の衛兵だけでなく黒い番人も殺到し、数の暴力に晒されてしまうだろう。
「……チッ…………撤退だ! 量産機が来たぞぉ!!」
清和を背負って泰孝は声を張り上げる。レジーナ撃破の目標は果たせなくなるが、それは今回限りではない。好機は必ずやってくる!
マキナと雅也が殿に位置しながらレジーナの追撃を阻み、螺旋階段を駆け上がっていく。
雅也達が脱出している最中、レジーナは弩級兵装の接続端末を操作していた。
被害状況を確認すると緊急通信回線を繋ぐ――送信先は製造番号012375640号だ。
「ジェネシス、エキドナ両名の敗北を確認した。012375640号も防衛の任、大義であった……代わりはいくらでもいる、安心して眠るがいい」
既に量産機が散開している、なにも問題はない。応答を待たず通信を終わらせると接続ケーブルを再び自身に繋げる。
――――弩級兵装『超頭脳神経伝達ユニット』、転送準備開始。
目標ポイント設定。転送質量確認。グラビティ・チェイン充填…………システムオールグリーン。
「安全装置解除……弩級超頭脳神経伝達ユニット、転送開始」
ロボットアームが剥き出しの弩級兵装に伸びていく。バチバチ!と紫電を放ちながら膨れ上がった高エネルギーは空間中の影を塗り潰すほど強い閃光を放ち、弩級兵装は姿を消した。
「――コマンダーより各機へ、現時刻をもって施設を放棄する。総員、撤退せよ」
作者:木乃 |
重傷:流星・清和(汎用箱型決戦兵器・e00984) 鏡・胡蝶(夢幻泡影・e17699) ダリル・チェスロック(傍観者・e28788) 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年3月24日
難度:難しい
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 10/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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