弩級兵装回収作戦~ハック・アンド・シーク

作者:鹿崎シーカー

 突撃と同時に弾丸の嵐が吹き荒ぶ。突如始まった攻撃に驚く間もなくホテルの客やスタッフが肉に、あるいは血煙に変化していく。壁や柱が蜂の巣になり、とっさに隠れた人々もまたオブジェクトごと爆砕される。
『ゆっくり探そうにも、動くものがあったんじゃ目障りだし……まして、それが人間じゃ、まったく必要ないものね』
 ホロディスプレイに流れる虐殺光景を、緑の瞳が冷たく一瞥。退屈そうにガトリングガンを乱射する海色の乙女を無表情で観測するのは、アイスブルー基調の機械パーツを装備した二十代ほどの女性であった。
「第一段階、問題なし。周辺に敵影なし」
 スプラッタ映画めいた映像周囲の映像を確認しながら、淡々と告げる。画面内に補足した通信相手は、聞いているのかいないのかガトリングガンをひたすらに撃つ。
「現状の作戦に変更必要性皆無。資源略奪部隊長ソラネ、殲滅を続けてください」
 無差別破壊に眉ひとつ動かさず、背の機械翼めいたアンテナの感度を調整しながら彼女は見張りを続ける。今現在、屍山血河を呈しただろうホテル外観をあらゆる角度から確認。変化はなし。
「ケルベロスが到着次第、インターラプトに入ります。以上です」
 報告して通信を切り、女性はホロキーボードを叩き始める。ホテル周辺を飛び回るドローンの映像を冷たく精査しながら、スレイヤーシリーズ十三号機『シーカー』は作戦に思考を巡らせた。


「そういうわけで、ダモクレスがまたハデになんかやろうとしてるみたいだね」
 のほほんとした口調とは裏腹に、跳鹿・穫は渋い表情で説明を始めた。
 ケルベロス殺し、量産機による攻撃、実験、虐殺と様々な事件を引き起こしてきた六基の指揮官型ダモクレス。その一角であるコマンダー・レジーナを筆頭に、彼らは新たな作戦を打ちだしてきた。
 今回の作戦は、地球に封印された『弩級兵装』と呼ばれるダモクレスの発掘だ。
 弩級兵装はひとつひとつが重巡級ダモクレスに匹敵するパワーを誇り、さらに兵装同士での合体も可能という超兵器だ。
 この凶悪兵器の発掘をコマンダー・レジーナが直接指揮する……のだが、一方で弩級兵装運用に必要なグラビティ・チェインを回収するためディザスター・キングと踏破王クビアラによる都市襲撃作戦が平行して行われるという情報が入った。
 ディザスター・キングと踏破王クビアラは、今までの戦闘経験からケルベロスの迎撃を見越し、互いの部下にタッグを組ませて作戦に当たらせるという。
 皆にはこのタッグを相手取り、市街地の防衛をしてほしいのだ。
 ダモクレス側の作戦はこうだ。まず、ディザスター軍団のダモクレスが市街地を襲い、その迎撃に来たケルベロスとクビアラ軍団のダモクレスが対峙。そしてフリーになったディザスター軍団が市街地の襲撃を続けグラビティ・チェインを奪取する。
 この場合、一チームだけでは市街地の防衛は不可能と言ってもいい。ならば、こちらもタッグを組んで迎撃するのみ。すなわち、ケルベロス二部隊による連携作戦である。
 皆にお願いしたいのは、クビアラ軍団配下の『SR13シーカー』の迎撃だ。
 今回の作戦の流れは、市街地襲撃に来たディザスター軍団のダモクレス『資源略奪部隊長ソラネ』と二、三分戦い、救援に来た『シーカー』を撃破するというもの。『ソラネ』の方は別部隊が戦闘するため、『シーカー』の相手に集中してもらって構わない。
 肝心要の事件発生地点だが、岩手県盛岡市にある大きなホテルだ。人が大勢集まるロビーにソラネが突撃、銃を乱射しながら虐殺しつつ客やスタッフ殺害を企てている。
 クビアラ軍団担当・ディザスター軍団担当の両チームはロビーに待機し、『ソラネ』が来た段階でクビアラ担当がソラネと相対、ディザスター担当が避難誘導に当たり、『シーカー』が救援に入り次第クビアラ担当は『シーカー』の相手に回る、という形だ。
 『ソラネ』はガトリングガンを武器に周囲の被害もお構いなしに弾丸をばらまきまくり、『シーカー』は偵察用と重火器搭載型のドローンの操作やハッキングに長けた電子戦を行ってくる。
 『シーカー』は本来後方支援で前線には出ないが、今回に限りケルベロスを引きつけるためホテル内に侵入してくる。『ソラネ』、『シーカー』の両方と戦うと混戦になるため、ホテルの外に『シーカー』を誘き寄せて戦うと良いだろう。
 ホテル外はスクランブル交差点となっており、駅前近くということで人や車の通行も確認される。それ以外のオブジェクトは特にないので、一般人にだけ注意して戦ってほしい。
「弩級兵装に、虐殺作戦に、他チームと連携攻撃。色々シビアだと思うけど、みんなならできるよ。頑張ってきてね!」


参加者
篁・メノウ(わたの原八十島かけて漕ぎ出ぬ・e00903)
月枷・澄佳(天舞月華・e01311)
太田・千枝(七重八重花は咲けども山吹の・e01868)
シエラ・シルヴェッティ(春潤す雨・e01924)
橘・楓(メイプルワルツ・e02979)
牧島・奏音(マキシマムカノン・e04057)
カーネリア・リンクス(黒鉄の華・e04082)
シュテルン・プラティーン(天衣無縫フルメタルクルセイダ・e09171)

■リプレイ

「……やっぱり、人多いな」
 茶をすすり、篁・メノウ(わたの原八十島かけて漕ぎ出ぬ・e00903)は硬い声でつぶやいた。
 岩手県盛岡市の駅前のシティホテル内。ホテルマンや宿泊客のさざめきが聞こえる中、サービスの緑茶を一口含み太田・千枝(七重八重花は咲けども山吹の・e01868)はうなずいた。
「都市部のホテルですからね。駅も近いですし、お仕事や観光で来る人も多そうです」
「ほんとにお構いなしだよねー……周り気にする敵なんていないけどさ」
「そうでしょうね。元より、気にかける義理もありませんから」
 ぼやく牧島・奏音(マキシマムカノン・e04057)と月枷・澄佳(天舞月華・e01311)がゼリーをつつく。薄黄色の寒天菓子をつるりと飲み込み、澄佳は付近を見まわした。
「それはそうと、シルヴェッティさん達はどちらに? 姿が見えないのですが……」
 心配そうな澄佳の隣で、茶と菓子を平らげたカーネリア・リンクス(黒鉄の華・e04082)が耳を動かす。
「もうすぐだし、そんな遠くには行ってないだろ。……あ、いたいた。ほら、あそこ。売店んとこ」
 リングをはめた指が、売店の方を指し示す。一同の視線が向いた先、ぬいぐるみを持たされた橘・楓(メイプルワルツ・e02979)が赤い顔で引っ張られていた。
「ねえねえ見て見て! これ可愛い!」
「えっ……あ、あの……」
「あ、試食やってる。これ黒もちって言うんだ! こっちは……ごま、ごまなんとかダックワース? ん! おいしい!」
 ご満悦なシエラ・シルヴェッティ(春潤す雨・e01924)と目で助けを求める楓を遠くに、シュテルン・プラティーン(天衣無縫フルメタルクルセイダ・e09171)は乾いた笑顔を浮かべた。
「自由ですね。フフフフフ……」
 歓声に、六人は半ば呆れて茶器を置く。奏音は開けたギターケースを、思い切りぶん投げた! 同時にマズルフラッシュが閃きケースを破壊。その向こうで千枝、メノウ、カーネリアは己の剣で弾幕を迎え撃つ!
「篁流剣術ッ!」
『「蝕・日喰み」!』
 神速の剣閃が虚空を刻み、銃弾全てを跳ね返す。射手たる青い乙女が驚き、機関銃の両手を交叉。だが弾はガードを破らずその全身にくっついた!
「なっ……」
「篁流格闘術! 『深雪』ィッ!」
 狼狽する少女にメイド装甲そう着けたシュテルンが掌底を打つ! さらに左ももをシエラの金装飾ヒールがうがち、体勢を崩した。少女は翼を広げ機銃を掃射しつつ回転。竜巻から放たれた弾が二人を払い立ち尽くす一般人に殺到する!
「あの日差し出された手、必ず守り抜くから。この光を信じて……」
 歌声が響き、純白のオーロラが鉛弾を受け止めた。極光のカーテンを飛び越える奏音!
「たとえ化物になろうと、君から託されたもの、それだけは離さない」
「冷たい大地を歩き続ける。遥か彼方に、僕の道があると信じて」
 デュエットが冷気となって銃に収束。装填された氷柱弾を少女の眉間めがけて発射する!
「篁流射撃術、『樹雨』っ!」
 少女は身を反らして氷柱を回避! 砲火が止まった一瞬で千枝が跳び、業火に包まれたカーネリアが疾駆し接近。交叉した銃剣を真下の少女に突き刺した!
「『落月』!」
「『寒月』ッ!」
 続けて青い炎をまとう刀が腹を横薙ぎに斬る。他方、呆然とする一般人に、メノウ、奏音、青くタイトなドレス姿に変じた楓は声を張り上げた。
「皆さん、ケルベロスです! ただいま戦闘中なので、今すぐ避難をお願いします!」
「落ち着いて避難して! ここはあたしたちが引き受けるっ!」
「上に……!」
 少女が頭突きで千枝を弾き機銃を乱射! 銃撃を受けながらも飛び下がる前衛の背後で澄佳は厳かに舞う。
「我が身に纏うは、神薙ぐ乙女の戦装束」
 まとわる紅白の光を払い、機械装甲に変じた澄佳が狙撃銃を連続発砲。真紅の光が翼に風穴を穿った。
「鬱陶しいっ……!」
 苦く吐く少女に金のナイフを抜いたシエラが飛びかかる。機銃掃射に腕先のフリルが千切られていくも蝶めいて不規則な軌道で接近!
「ふふん! あなたたちの好きになんてさせないんだからね!」
「シエラさん! 上っ!」
 奏音の叫びに面を上げる。青髪の斜め上、テッポウウオめいた形のドローンが光線を放ち飛び退くシエラの足元を焼く! 青髪の少女は振り向き、怒気を込めた瞳でにらんだ。
「遅い……何してたのよ、シーカー」
「早く入れば巻き込まれました」
 淡々と言い、女性が扉を潜る。床を踏む無骨な脚部に翼めいたアンテナとヒレ型のイヤーデバイス。クビアラ配下・SR13シーカーを前に、八人は素早く目配せして頷き合う。
「まだ外に人たくさんいるし、避難させにいかないと!」
「だな。こっちは終わったし、行くぞ!」
 シエラとカーネリアが言い放ち、全員が身をひるがえした。ヨタローに乗ったシュテルンが壁を突き破って脱出! エクソダスめいた列の最後尾、千枝が肩越しに発語する。
「来なければ……その間に、出来る事をするだけですよ?」
 消える背を冷たく見つめ、SR13シーカーは淡々と告げた。
「あちらは私が対処します。資源略奪部隊長ソラネ、殲滅を続行してください」
 返事を待たず、ドローンを率いて後を追う。外の光がホログラフィの画面を照らした。


 外では、道行く人々が困惑のどよめきとともに避難していた。徒歩の者は駅へ、ドライバーは車を乗り捨て走り去る。逃げる人々には目もくれず、シーカーは冷淡に問いかけた。
「出来ることは終わりましたか」
「ん。おかげさまで」
 挑発的に言い、メノウが刀の柄をつかむ。盾から分かれた五枚光刃を展開し、澄佳は突撃銃を向けた。
「全員無事に避難しました。次は貴女の番です」
「そうですか」
 無表情にキータイプ。次の瞬間、どこからか大量のドローン来たり、八人をドーム状に取り囲む。機械結界の外側で、シーカーは静かに宣言する。
「では始めましょう」
「楓さん! 合わせて行こう!」
「うん……!」
 奏音が銃口を天に向け、楓が小さく歌い始める。機甲の軍に命令を放った。
「全機、目標を殲滅せよ」
 全方位から一斉掃射! 光の洗礼が一点めがけて降り注ぐ!
「あの日差し出された手。必ず守り抜くから、この光を信じて」
「この手は決して離さない。一緒に輝く明日まで」
 光線の軌道が曲がり、立てた銃口に吸い込まれていく。六人は光の隙間に身を沈めて駆けだした。先頭に奏音は銃口を向け直す! ほとばしる光芒!
「篁流射撃術、『餓鬼雨』ッ!」
 レーザーが集るドローンを吹き飛ばした! ヨタローに乗って加速するシュテルンの正拳!
「『雪狼』! ……っ!?」
 突如ヨタローが横転。飛び降りたメイド服型装甲に連続で光線が命中し電光を散らした。見ればドローンのドームはばらけ、番犬の道をなぞる回廊となっている。赤いマントをはためかせ、千枝は光芒放つ天井に跳んだ!
「『氷雨』!」
 弾丸二発が二機を貫き空中分裂。肉球型の光が開けた機械群回廊の穴から飛び出す面々。だが回廊は塔に変化し内部にビームの嵐を生み出した! 発射音に混じって肌や服の焼ける音! 掲げた盾周囲の光刃を回転させ、澄佳はドローンを斬り刻むが、多い。
「シルヴェッティさん、手を!」
「任せて!」
 盾に乗ったシエラが両手を広げて回転。手の平からあふれる粒子がドローンをブラックホールめいて吸い寄せ崩壊させる。澄佳は回るシエラを投げ上げ急降下! 狙撃銃を連続で撃ちダイブキックを繰り出した。シーカーはトンと背後に下がって回避。カーネリアとメノウが疾駆する!
「ほう」
 無表情につぶやきさらなる指令を出すシーカー。カーネリアは黒着物と銀長髪を振り乱して集るドローンを焼き刻み、メノウは刺突連打を繰り出す。舞い踊るプロミネンスめいた熱波と炎、カマイタチのごとき飛ぶ剣戟!
「篁流剣術、『暁月』ッ!」
「射撃術、『卯の花腐し』!」
 シーカーの周りに控えたドローンがレーザーを照射する。カーネリアに向かう分は澄佳と奏音が狙撃で相殺。一方直撃したメノウの姿が水面のごとく揺らめいて消え、すぐ脇に現れた!
「『幻月』……からの!」
「!」
 さっと横飛びする脇腹に剣閃が走った。青い瞳に振り抜かれた刃が映り、脇腹が裂ける!
「『朧月』! 今ッ……!」
 メノウの両膝を光線が割る。翼を広げ手をかざす楓!
「君の声が地図になる。大丈夫、もう迷わな、きゃっ!」
「危なっ!」
 奏音が首を狙ったビームをかばってかわした。高速ビートで連射される光弾がその背を焦がす。
「損傷二〇%。支障なし。分析及び戦闘続行」
「センパイ、澄佳! 回れッ!」
 シーカーの進行方向に紅鉄の翼を広げた澄佳と千枝が回り込み、シュテルンとカーネリアで挟撃を仕掛け、シエラはハイキックを打ちに行く! シーカーは視線を巡らせ状況判断。指令を受けた射撃ドローンが空を覆う!
「澄佳さん、五秒お願いします!」
「どうですか? ドライブでも」
「乗ったぜ!」
 撃ち下ろされる閃光の雨! 澄佳は反転しながら跳んで盾で受け止め、ヨタローに相乗りした二人が光の中を駆け抜ける。身を焼かれながらのデスパレートな突撃!
「君のこころと共に奏でる。この奇跡を胸に、さあまだ見ぬ未来へ」
「さあ歌おう、この想い伝えるために。さあ奏でよう、大切なモノのために!」
 マークするドローンを叩き落とした奏音が楓と歌う。二人の頭上にわだかまる光が拡張し雲めいて仲間達の頭上を覆う。飲まれ、消え失せる銃撃光。弾丸をばらまきながら疾駆するヨタローの上から二人が飛び出す!
「うおおおおッ! 篁流格闘術ッ!」
「『隼六花・襲爪』!」
 間近まで来たボディブローが割って入ったクラゲめいた偵察ドローンを粉砕! 澄佳と奏音の狙撃にかすめられつつドローンを渡るシーカーの前にシエラが出現。バレエのように踊る彼女を中心に花吹雪が渦を巻く!
「逃がさないわ! 歓び謡え、春の花っ!」
 淡色の花弁が旋風に流れてシーカーを飲み込んだ。ホログラムの窓が花びらに荒らされてぶれる!
「く……」
「其は全ての疵を癒す加護の反転。呪いと罪は我が身を蝕み、我が瞳に映る怨敵にも等しく災厄を与えん」
 花嵐を抜けんとする身に黒猫型のアザが顕現。奇声を放つその顔面部分に澄佳は飛び蹴りを叩きこんだ!
「せいっ! 篁さん!」
 弾かれるシーカーにメノウが突進! ドリルめいた貫手を構え、白霧に包まれた足で加速する!
「篁流格闘術、『霙雪』!」
 冷静にスキャンと指令を下すシーカー。だが対峙するドローンをシエラの花吹雪が押し流す。狙いすました一撃が腹部を穿った! 寄せたドローンの援護射撃でメノウを退けバックステップ。
「損傷率四二パーセント。詳細不明のバグあり、残存機体六七パーセント。……」
 分析のかたわら、画面のひとつを横目で確認。炎の刃に貫かれ、灰と崩壊するソラネを見止めたそこへ澄佳の光刃が飛来。ガードに入るドローンを斬り裂く。
「油断大敵です!」
 後続の狙撃とかすめながら、滑空キックをギリギリ回避したシーカーを冷たい濃霧が包み込む。直後、連鎖爆発が彼女の全身を打ち据えた! 爆炎の星と澄んだ歌が、その場にぬいつける。揺れるスノードームのごとく暴れる細雪!
「明けない冬でも、僕の道は閉ざせない。いつかこの手にあるものを、君の想いを繋ぐまで……」
「今だッ! 篁流、四連撃ィ!」
 奏音が叫んで銃を捨て、スタンドマイク型ロッドを振り回す。飛び立つムササビが降らせる光を、濃霧周囲を疾駆するメノウ、千枝、カーネリアの刃が冷気もろとも巻き取っていく。薄く見えた影に一斉に斬りつける三人。一瞬交錯した背後で、絶対零度の爆発が膨れ上がった!
『終冬清月!』
「……ッ!」
 霜に覆われゆく中、シーカーの鉄面皮がひび割れた。ノイズに荒れるホロウィンドウを制御し、ドローンを足場に高度を目指す。白く変色した猫のアザが呪詛のように鳴き凍結を広げる。
「損傷率七〇パーセント、システムに異常及びソラネの敗北。作戦続行不可につき撤退。全機、自爆シークエンスを決行せよ」
 表示された警告を叩く。頼りなく浮遊する足元でドローン群が赤く発光。激しいビープ音をかき鳴らしながら流星群めいて襲いかかった! ステップを踏み回り始める。渦巻き始める花弁の竜巻!
「逃がさないんだから! これで終わりよっ!」
 すっと回転を止め、指を鳴らす。直後竜巻が槍のごとくシーカーに伸び、墜落するドローンと激突! 当たる端から破壊するも竜巻の勢いは減り、青い背中は遠ざかる。だが儚く散り行くその槍に、シュテルンはヨタローごと飛び乗った。爆走の後を澄佳が追う!
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!」
 流星を音速のラッシュで粉々にして上昇! 他の爆発は無視して拳を打ち込み、竜巻の終わりを目指す。息を飲むシーカーの顔が見え、槍の先端から飛翔!
「行ってください澄佳さん。……オラァァァッ!」
 最後のドローンを殴り潰し、爆砕! 重力に引かれて落ちるシュテルンの拳と盾を突き合わせ、フリーズしたシーカーの額に照準を合わせた。
「馬鹿な。……理解不能」
「貴女を逃がすわけには行きません。終わらせます」
 銃が深紅の髑髏めいた光芒をまとい、解き放つ。魂食らいの髑髏は凍りつくシーカーに迫り、無慈悲に噛み潰した。


 焦げたマントが、今だ冷たい風に吹かれてたなびく。楓が祈るように手を合わせ歌うと、黒い跡が徐々に消えて元の赤に修復される。その様子を肩越しに見つつ、千枝は仲間を労った。
「お疲れ様です。メノウちゃん、足は?」
「んー……まあ大丈夫」
 膝を折っては曲げ、メノウは首をひねった。
「ともかく、皆さんも無事そうで……」
「無事じゃない!」
 頬を膨らませたシエラがばっと両腕を開いた。大きな百合めいた袖はボロボロ。首に結んだリボンを半ば千切られ、赤い布のそこかしこにも焦げ跡が目立つ。
「もう見てよこれ! せっかくの服が台無し!」
「無事じゃん」
「無事ですね」
 口をそろえるシュテルンとカーネリア。むっとまなじりを釣り上げ、首根っこをひっつかんだ。
「なぁーにぃーよー! 二人だって無事でしょ! ほら、道路直したし穴空けた壁直しに行こ。ホテルの人きっと困るよ」
「だぁ、ちょ! なにしやがる!?」
「く、首……あああ、私のドローンが……」
「……行ってらっしゃーい」
 引きずられていく二人に手を振り、奏音は気を取り直してせき払い。
「ともあれ、犠牲は防げたよね。てかコレどうしよ。ギターケース壊れちゃったし」
「一緒に楽器屋さん、見ていきますか? 近くに……あると思いますし」
 千枝の背から楓が顔をのぞかせる。話は土産、観光と巡り、日帰りの計画が持ち上がる。盛り上がる面子をそばに、澄香は魂が溶けた手を眺め、ゆっくりと握りしめた。

作者:鹿崎シーカー 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年3月24日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。