星の光を受け輝き駆ける

作者:白鳥美鳥

●星の光を受け輝き駆ける
「……この辺りかなあ」
 ここは街の郊外。雑木林も見えるが、この辺りは草原が多く夜空がよく見える。
「星が瞬いていて綺麗だなあ……。後は現れるのを待つだけかな」
 時計を見ながら、一樹はその時を待っていた。
「……星空から星の光を受けて輝く白い豹が現れる。そして、星空を駆け廻る……凄く幻想的だ。早く見たいな」
 胸を高鳴らせる一樹の前に、第五の魔女・アウゲイアスが現れる。そして、手に持った鍵で、一樹の心臓を一突きした。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『興味』にとても興味があります」
 崩れ落ちる一樹。そして、白く輝く豹が現れたのだった。
●ヘリオライダーより
「幻想的なものって見たくなるよね?」
 そう言ってから、デュアル・サーペント(陽だまり猫のヘリオライダー・en0190)は事件の概要を話し始める。
「不思議な物事に強い『興味』を持って自分で調査しようとしている人が、ドリームイーターに襲われて、その『興味』を奪われてしまう事件が起きてしまったみたいなんだ。『興味』を奪ったドリームイーターは姿を消してしまったみたいなんだけど、奪われた『興味』を元にして現実化したドリームイーターが事件を起こそうとしているみたいなんだ。このドリームイーターによる被害が起きる前に、みんなにこのドリームイーターを倒して欲しい。無事に倒せたら『興味』を奪われてしまった人も目を覚ましてくれると思うよ」
 デュアルは、続けて状況についての説明を始める。
「新月の日の深夜0時頃、場所は郊外の空が開けている草原。暗い事以外は、戦いには支障は無いんじゃないかな? ドリームイーターは星の光みたいに瞬く感じで光っている豹の姿をしている。白い豹が瞬くみたいに光っている……そんな感じかな。このドリームイーターは『自分は何者?』みたいな問いかけをしてくる。それで、正しく対応できなければ殺してしまうんだ。このドリームイーターは、自分の事を信じていたり、噂している人が居ると引き寄せられる性質があるんだ。だから、これを利用すれば有利に戦えるんじゃないかな?」
 デュアルはケルベロス達に最後の言葉を贈る。
「純粋に美しいものに興味を抱く事は当たり前の事だと思うんだ。だけど、その凄く幻想的で綺麗なものが残忍な事件を起こすのは哀しい事だよね。だからこそ、みんなに倒して欲しいんだ。応援しているよ、頑張ってね!」


参加者
十夜・泉(地球人のミュージックファイター・e00031)
絶花・頼犬(心殺し・e00301)
斎・時尾(レプリカマリオネット・e03931)
丹羽・秀久(水が如し・e04266)
水無月・一華(華冽・e11665)
砂星・イノリ(ヤマイヌ・e16912)
マヒナ・マオリ(カミサマガタリ・e26402)
匣猫・イタル(はこのなかにいる・e35941)

■リプレイ

●星の光を受け輝き駆ける
 場所は街の郊外で、星空の良く見える草原。
「一般の方はいらっしゃらないようですね」
 十夜・泉(地球人のミュージックファイター・e00031)は、周囲をぐるりと見渡しながら、そう言う。ざっと見渡した限りでは人はいないようだ。
「念の為、殺界形成をしておこうか。うっかり誰かが入ってきたら大変だからね」
 絶花・頼犬(心殺し・e00301)は、殺気を放って人を寄せ付けない様にと、戦闘場所の安全を確保した。
 夜空を仰ぐと美しい星が輝き瞬いている。
(「綺麗な星空ですね、駆け巡りたくなる気持ちもわかります」)
 丹羽・秀久(水が如し・e04266)はそう思う。とはいえ、事件を起こされては困るのは確かだ。見過ごすわけにはいかない。
 同じく、夜空を仰ぐ水無月・一華(華冽・e11665)も思う。
(「星の瞬きは、やはりいつ目にしても美しいものですわ。この美しい輝きは美しいまま……血で汚れるなど、以ての外です」)
 豹に思いを馳せるのは匣猫・イタル(はこのなかにいる・e35941)。
(「オレ、豹って見た事ないんだよな、動物園とかも行ったことないし。でっかい猫だよな? ……それがキラキラしてるとなると、確かに興味は沸くな」)
 被害者である一樹の気持ちが分かるような気がする。イタルも同じく見て見たいのだから。
 泉は、用意しておいた温かい紅茶を皆に手渡す。他にも望遠鏡の設置もして。そして、泉は踵をコツ、コツ、コツ、とさせる。それは、この暗い夜が明けるようにというおまじないだ。
 噂話を切り出したのは、マヒナ・マオリ(カミサマガタリ・e26402)。
「星の光を受けて輝く白いヒョウ……想像するとすごくキレイだよね」
「わたくしも聞いたことがございますわ」
 一華も、同意しながら頷く。
(「星は好きです。道を照らす星が、人を襲うなど……そのような夢殺し、あってはなりません。この早く鋭過ぎた星は、早くお空へお帰り願いましょう」)
 彼女の心は固く決まっている。これから現れるドリームイーターへ向けて。
「星のきれいな夜、豹はどこを駆けているんだろう? 星空を駆けるのって気持ち良さそう。走る姿も、とても美しくて格好いいんだろうな」
 星空を駆ける豹を思い浮かべながら、砂星・イノリ(ヤマイヌ・e16912)は語る。イノリは山育ちの山犬。相手はドリームイーターだけれど、話せたら嬉しい、そんな事も思いながら。
「光ってたら、すぐ見つけられそうなもんだけど」
 イタルは空を見上げながら、そう言う。
「まさか、流れ星みたいに一瞬すぎて、見逃してたりって事は無いよな……」
 彼がそう続けて言った時、ぼんやりと光る何かが近寄ってきた。
 そこに立っていたのは、白い豹。すらりとした姿に、淡く綺麗な白い光を纏っていた。それはとても綺麗で……星空の中を駆けたら美しい、そう感じさせる。
「流石に、流れ星程の速さはないですね。だから、見る事は出来ますよ?」
 語り口は穏やかで、怖さより見た目の優美さに合った話し方をする。
「こんばんは。星空の美しい夜にお会いできるとは嬉しい事ですね。……皆様は、私の事を何者だと思いますか?」
 ふわりと、穏やかに紡がれる言葉。
「それは星の光に輝く白豹。星空を駆けるものですよ?」
「アナタは……星みたいに瞬いてる、おっきなネコさん?」
 正解と正解に近い答えを返す泉とマヒナ。それに、満足そうに頷く白豹。
「……おお、本当に出た、これが豹か? すげー……なあなあ、写真撮っていい?」
「ええ、私で宜しければ」
 はしゃいでスマートフォンを向けるイタルにも、穏やかに答えて、撮影に応じる。
 何だか、このまま和やかに話が進みそうな所で、一華が言葉を投げかけた。
「流れ星、かしら。早く瞬きのうちに走り去るあなたによく似ているわ」
「キミは、空を翔ける事のできないまやかしの夢。残念だけど、ここで消えてもらうよ」
 そう言うとイノリは構える。それに白豹は哀しそうな顔をした様に見えた。

●白豹型ドリームイーター
 白豹のドリームイーターは、身軽に走り回る。その速さを目で追うのは大変だ。高速に走って勢いを付けると泉に向かって、跳びかかって噛みついた。それを泉は何とか受け止め、惨殺ナイフを突き立てる。その攻撃に対して跳ねる様に回転すると、白豹は距離を取る。
「一緒に頑張ろうね、栞さんっ」
 頼犬はビハインドの栞に声をかけると、彼女の前に出る様に立ち位置を取り構える。そして輝きを伴う蹴りを放つが、綺麗な弧を描く様にして白豹は跳びあがりかわした。だが、そこを狙って、栞によるポルターガイストによる攻撃が襲い掛かる。
「流石、栞さんっ」
 頼犬の言葉に、栞の姿は得意げに見えた。
 マヒナは紙兵を泉達へと飛ばしていく。彼女の相棒であるシャーマンズゴーストのアロアロは祈りを捧げて泉の怪我の回復に努めた。
 その間に秀久が白豹に突撃をしかけるのだが、それよりも早く白豹が動き回避する。
「やはり速いですね……」
 流石、豹の姿を借りているだけあり、動きは俊敏な大型ネコ型動物。狩猟に長けたその俊敏な動きは淡い光と共に美しく妖しさも感じさせた。
 一華は、アロアロと同様に泉の回復の為にオーラを放つ。
「ボクも走るの好きさ。夜風を切って、草の上を跳ねて、キミに追いつくよ」
 素早いイノリは白豹と並走するように走る。
「あなた、素早いですね。私と競争、という所でしょうか?」
「うん、だけど負けないよ」
 白豹の言葉にイノリは頷くと、白豹の足元を狙って輝きを伴う重い蹴りを放った。
 斎・時尾(レプリカマリオネット・e03931)と、彼女のビハインド、一刀は共に並ぶ。まるで一刀の方がマスターの様に見える動き方をする二人。時尾は白豹を狙って蹴りを放ち、それがかろうじて何とか命中する。続き、一刀の鋼糸を使ったポルターガイストを引き起こして動きを制限させていった。
「おお、キラキラ合戦だな。キラキラならこっちも負けてねーぜ」
 イタルは全身に纏ったオウガメタルを放って秀久達に繰り返し重ねていく。
 白豹のドリームイーターは跳びあがった。その姿は美しく、まるで星空を駆けていく白く美しい生き物で……秀久は視線を奪われそうになる。そこを、頼犬が秀久を庇い、彼の意識は引き戻された。
「ありがとうございます」
「いえいえ、どういたしましてー」
 お礼を言う秀久に、頼犬は笑顔で答える。
 その間を縫って泉は音速で殴りかかるが、白豹が上手く動いたために、きちんとダメージが入らなかった。しかし、捕まえる様に栞の金縛りが襲い掛かる。
 秀久がオーラの弾丸を撃ち放つが、白豹は身体を反転するように飛び上がると見事にかわした。この攻撃は、先程の攻撃よりも命中率が厳しいらしい。
 一華は直ぐにオーラの弾丸を放って頼犬の傷を癒す。アロアロも続いて祈りを捧げていった。
「クルーン、力を貸して!」
 イノリはクルーンと名付けているオウガメタルを自らの身体に纏い、その拳で白豹を殴りつける。
 時尾はドローンを展開してマヒナ達に守りの壁を作り上げ、一刀の方は鋼の糸で白豹を縛り上げようとするが、こちらは俊敏な動きでかわされてしまった。
「速いなー。オレもしっかり支援しないと」
 素早い白豹に感心してばかりもいられない。イタルは再びオウガ粒子を放って泉達の神経を研ぎ澄ませていった。
「私も全力でいきますよ」
 白き豹は、纏っている光を更に輝かす。淡かった光は段々光の強さを増していく。勿論、攻撃をしかけられない為に、俊敏な動きはそのままだ。しかし、その光は余りにも引き込まれ飲み込まれる感覚がイタルを引き込んでいく。恐らく、サポート役としてやっかいだと判断したのだろう。しかし、それはこちらにとっても重要だ。急いでマヒナが庇った。
「イタル、大丈夫?」
「助かったよ、ありがとー」
 自らの役目を理解しているイタルは、マヒナに礼を伝える。それに、マヒナは笑顔で頷いた。
「受け取った力、しっかりと活かしますよ」
 泉は素早い白豹に狙いを定めると、惨殺ナイフを突き立て切り裂く。その激しい切り裂きで、飛び散った鮮血が泉を赤く染めた。続き、頼犬の放つ漆黒の弾丸が何とか白豹の身体に当たる。更に栞のポルターガイストが襲い掛かった。
「流石、栞さん」
 頼犬の言葉に、栞は当たり前だと言うように振る舞う。
「その太刀筋、水の如し……」
 秀久は水の様に体勢を変えながら、白豹に狙いを定める。その攻撃は刀の刀身を手の指で挟み、溜めによる斬撃。それは見事に白豹へと攻撃が決まった。
 一華は、秀久が攻撃している間にマヒナへとオーラを放って回復をしていく。マヒナのアロアロも主人の為に必死で祈りを捧げていった。
「行こう、クルーン」
 イノリはクルーンに呼びかける。クルーンによって創られた足場を元にイノリは白豹に襲い掛かった。直接感じるふわりとした白豹の毛が、ドリームイーターであっても、その温かさを感じた様な気がした。
 時尾はガトリングガンを構える。その一斉放射による弾丸は炎の様に燃え上がらせ、一刀は時尾の動きに呼応するように白豹の背後を取り、斬りつけた。
「よーし、最後の仕上げといこうぜ」
 イタルは、最後のオウガ粒子を泉達に放つ。確実にドリームイーターを仕留めて貰うために。
 白き豹は、もうぼろぼろなのだろう。しかし、その表情は凛としている。誇り高い、そんな表情に仕草。跳びあがるとケルベロス達の周りを駆けまわる。今までと変わらぬスピードで。そして、高く跳び、泉に向かって飛びかかる。それを頼犬が庇い、栞が足止めの攻撃をかける。
「泉、最後は頼むよ」
「はい、任せてください」
 頼犬に礼を言うと、泉は白き豹に向かって右手に惨殺ナイフlarkspurを構える。
「この一撃は迷い子を元の居場所へ送る葬送の舞ですよ?」
 その動きは速く、重く、正確に。無駄一つない、確実な攻撃。それは血の華を咲かせる葬送だった。
 攻撃を受けた白き豹のドリームイーターは、星が瞬く光の様に美しく空へと昇り消えていった。

●星空の下で
 発見した一樹にヒールをかけ、暖かい毛布をかけてあげる。泉の持って来た紅茶も、一樹の身体を温めてくれたようだった。
 マヒナは一樹の傍で星空を眺める。マヒナの隣りにはアロアロがぴったりとくっついていた。
「ほら、あの星とあの星と……こうやって結んだら……なんだかヒョウみたいに見えてこない?」
 マヒナは、適当に星を指さしながら一樹に話しかける。それに、一樹は微笑んだ。
「マヒナさんは優しいですね。……そうですね、星座とか……そんな事を考えなかったら……あの星空に豹はいるのでしょうね」
「え、えっと……うん、ありがとう。……星に詳しいのかな? 教えて貰っても良い?」
 優しいと言われてマヒナは照れてしまう。そんな彼らの所に、一華とイタルも現れる。
「わたくしもお邪魔してもよろしいでしょうか」
「オレ、普段はゲーム画面ばかり見てるんだけど、今日は星空を楽しもうと思って。でも、星座とか知らないからさー。良かったら、混ぜて貰って良い?」
 急に賑やかになって、人見知りの所があるマヒナだけれど……星空について語るこの時間は楽しい、そう感じた。
「夜空見ようか、栞さんっ」
 頼犬は栞を誘って夜空を眺める。
「綺麗だねー。昔こうやって二人で外で夜ピクニックしたよね。……懐かしいなぁ」
 栞に話しかける頼犬。昔、頼犬が作った料理等を二人で持って夜のピクニックをしたのだ。……楽しくて切ない思い出。戻れない事は分かっているけれど。
 時尾は一刀を眺める。時尾よりずっと背が高く長身痩躯の50代の男性。時尾と共に存在し続ける存在。一刀には沢山の想いがある。
(「星に祈れば、心の夢を、さびしい日々を、ひかり照らしてくれるのでしょうか……」)
 月の無い星空を楽しむイノリとクルーン。月の無い夜は安心するのだ。
「蟹座はどこかな? ボクの星座だからクルーンと一緒に見たかったんだ」
 そして、再び、イノリは空を仰ぐ。
「クルーン、星が集まっているのがわかるかい? あそこへ魂が登っていくと、昔教わったんだ。あの光のように、優しい場所だといいね」
 そう言って、イノリはクルーンに微笑みかけた。
 秀久は星空の写真を撮っている。この綺麗な星空を記念に。そして、星空を楽しんでいる仲間達の写真も星空と一緒に撮影する。今回の依頼の思い出に、と。
 泉は望遠鏡で夜空を見上げた。夜空にあの豹が戻ったのかを確認する為に。
 迷子を送る歌を小さく口ずさむ。もう二度と迷い込まないように、と――。

作者:白鳥美鳥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年3月19日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 7/キャラが大事にされていた 0
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