湿原の牢獄~囚われしは破滅の踊り手

作者:千咲

「みんな。もう話は伝わってるかも知れないけど……」
 そう前置きして話し始めたのは、赤井・陽乃鳥(オラトリオのヘリオライダー・en0110)。
 話というのは他でもない。釧路湿原で事件を起こしていた死神、テイネコロカムイの撃破に向かったケルベロス達が、無事、撃破に成功したらしいという事実。
 さらに、テイネコロカムイの目的は、グラビティ・チェインを略奪し、牢獄に幽閉されている仲間を脱獄させる事にあったらしいということ。
「牢獄に幽閉されていたのは、死者の泉を見つけ出したとも伝えられる、古のヴァルキュリア・レギンレイヴと、その軍団。でも……悠久ともいえる永い間幽閉されていたレギンレイヴは、世界の全てに対する復讐を成そうとしているの。もしも、彼女が解き放たれれば『多くの一般人が殺害され、その魂からエインヘリアルが生み出される』ことになるかも知れない」
 と、予見される最悪の未来を語る陽乃鳥。
「でも、テイネコロカムイを撃破してくれたお陰で、彼女たちがすぐに地上に出てくる危険だけは回避できたの。と言ってもテイネコロカムイ自身が脱獄できたように、この牢獄も完全と呼ぶには程遠いみたい。もしかしたら、なんらかの理由で牢獄の壁が壊れ、レギンレイヴ達が解き放たれる可能性もないとは言えないわ」
 現状、即座に危険に陥る可能性がないとは言え、大きなリスクを孕んでいることに変わりはない。彼女達の存在を、他のデウスエクスが発見して利用しようとする可能性も否定できないのだから。
「特に……万が一、エインヘリアル勢力が彼女の力を手に入れたりしたら、その勢力は脅威を超えて、恐ろしいものに成りかねないもの。それを防ぐためにも、何とか今のうちにこの牢獄を制圧し、囚われているヴァルキュリアと死神達を撃破しないと……」
 と、さらなる懸念を示したのだった。
 そうして、ケルベロスたちが頷きながらも口元を引き締めるのを見ながら、戦場となる牢獄についての説明に移る。
 たしか……テイネコロカムイを撃破したときに護符を手に入れたはず、と。
「護符を使えば、牢獄のある場所へ行けるの。そして、行った先には40以上の牢獄が『鳥篭』のように浮いてる。そして、その一つ一つにヴァルキュリアか死神が1体ずつ幽閉されているの」
 この牢獄に幽閉されている者たちは、基本的に『鳥篭』の外へ出る事はできないようだけど、外部の者であるケルベロスならば、内外を自由に移動する事ができる。
「つまり……みんなには『鳥篭』に転移した後、それぞれが攻撃目標とする『鳥篭』に移動して内部に潜入、幽閉されている敵を撃破して欲しいの。お願いできる?」
 そう言って、皆の反応を窺う陽乃鳥。
「ちなみに、鳥篭の外から内部への攻撃は一切不可能なので、残念ながら、内部に潜入することなく攻撃して……って訳にはいかない。ただし、鳥篭の中から外へは、威力こそ弱まるものの、攻撃が可能みたい。なので、もし鳥篭の中に潜入するのに手間取るようなことがあると、その間は攻撃を受け続けてしまうことになるから気をつけてね」
 特に、万が一、特定のチームが外に残って、40体のデウスエクスに集中攻撃を受けるような事があれば、威力が弱まっていたとしても耐え切れないかも知れない……などと、不穏なことを告げる。
「そこで、そう言った状況を防ぐため、チームごとに1体の敵を担当してもらい、その相手を挑発するように近づいて、攻撃を自分達に向けさせるというのが今回の作戦なの」
 と、陽乃鳥はようやく今回の作戦概要について、一通りの話を終えたのだった。

「皆に相手を務めてもらうことになるのは、死神『伊邪那美ノ静禍』。白拍子のような恰好に身を包んでいて、一見すると、物腰穏やかそうに見えるの。でもその実は他者を見下し、同列には見ていないみたい。そのことは彼女の話を聞けば、なんとなく伝わると思うけど……」
 一風変わった印象ではあるものの、その戦い方は、舞うような足捌きから生まれる打撃あるいは斬撃がメイン。ただし、状況に応じて暴風や雷を召喚することもできると言う。
「彼女は、牢獄から脱出するために『グラビティ・チェイン』を求めているの……ゆえに戦闘中かどうかに関わらず、常にケルベロスを殺してグラビティ・チェインを奪い取るチャンスを狙ってると思ってね」
 つまり、倒れたら狙われない……という訳ではない、ということ。
 戦闘不能になった仲間や、或いは危機に陥った仲間については、牢獄の外に出さないと、危険かも知れない、と陽乃鳥は付け加えた。
「どれだけの時を幽閉されていたのか……その境遇自体には同情の余地も無い訳じゃないけど、かと言って復讐を看過するわけにもいかないもの。デウスエクスも少量ながらグラビティ・チェインを持っているんだけど、多数の敵を撃破した所で残りの一部の敵がそれを利用して牢獄から脱出する可能性も否定できないわ。だから……安全を考えるなら、できるだけ同じタイミングで敵を撃破できると良いのかも」
 細かくは任せるね……と、ヘリオライダーは小さくお辞儀したのだった。


参加者
メリルディ・ファーレン(陽だまりのふわふわ綿菓子・e00015)
ペトラ・クライシュテルス(血染めのバーベナ・e00334)
ミオリ・ノウムカストゥルム(銀のテスタメント・e00629)
ティーシャ・マグノリア(殲滅の末妹・e05827)
リリス・セイレーン(ちょっとこリリ太郎・e16609)
ディオニクス・ウィガルフ(ダモクレスの黒剣・e17530)
リョクレン・オルヴィアグレス(殲華の終獄・e19000)
仁王塚・手毬(竜宮神楽・e30216)

■リプレイ

●鳥籠
 ――湿原の牢獄。
 どこまで拡がるとも知れぬ空間には、鳥篭と呼ばれる個々の牢が幾つも並ぶ。
 それぞれの籠に囚われしは、鳥ならぬ、ヴァルキュリアもしくは死神たち。
 はるか釧路湿原を経て、彼の地への侵入を果たしたケルベロスたちは、何かに導かれるかのように、各々が目的とする鳥篭へ。

 途中、幾許かの攻撃を受けながら8人がたどり着いたのは、死神『伊邪那美ノ静禍』が囚われた鳥篭。
「目標確認。オープンコンバット」
 ミオリ・ノウムカストゥルム(銀のテスタメント・e00629)が小さく告げた。彼女らが見つけたのは、黒き和装を身に纏い、達筆ゆえに不吉極まりない『滅』の文字が描かれし扇を携えた女性型の死神。
 そんな死神に対して口火を切ったのは、もちろんティーシャ・マグノリア(殲滅の末妹・e05827)。
「無様だな、伊邪那美! 貴様とあろうものが籠の中に引きこもるとはな!」
 浅からぬ因縁があるのだろう。そこには、ただならぬ意思が込められていた。
「あらあら、どなたかと思えば……。わざわざご足労頂かなくとも、暫くお待ちくださればこちらから伺いましたのに。あっ、定命の貴女はそんなに待てないのでしたかしら?」
「相変わらず癪に障る物言いだな。昔から変わらない!」
 吐き捨てるように告げ、鳥篭の中へと飛び込むティーシャ。
 ……言葉を交わせば交わすほどに理解から遠く離れてしまう相手など、そうは居まい。そんな存在ゆえ、外と内で話していることにはデメリットしか感じられなかったから。
 他の7人は、いきなり飛び込んだことに驚きつつも、すぐに続いて飛び込んでゆく。
「こんなところに延々と閉じ込められていた気分はいかが? 永遠の命を持つあなた達にとっては少しの時間に感じるかも知れないけれど、このままここで滅びることになるなんて……最高に惨めねぇ」
 ペトラ・クライシュテルス(血染めのバーベナ・e00334)が、嘲りを込めて笑いながら入ってゆく。
 しかしながら静禍の方は、そんな嘲弄に顔色を変えるどころか、いっそう柔和な笑みを浮かべ、両手の扇を交差させるように振るう。
「そうですわねぇ。長いこと囚われの身でおりました。確かにこのまま滅ぶなんて惨めですわね。まぁ、このまま滅ぶとしたら……のお話ですけれど」
 振るった扇から激しい風が吹き荒び、雷の轟音が鳴り響くと、ぺトラを超え、後衛の面々に降り注いだ。
 いきなりの激しい攻撃。狙いをかわしたミオリが生真面目さ故に挑発を続ける。
「見下しているつもりかも知れませんが、籠に閉じ込められていた事実を前にすると滑稽ですよね」
 すぐに何かを返そうとする静禍に対し、これ以上向こうに話させてはいけないと間髪入れずにリリス・セイレーン(ちょっとこリリ太郎・e16609)が言葉を継ぐ。
「貴方も舞手のようですけれど、それにしては言葉と態度に美しさが足りないわ。もっと修行でもしたらどうかしら?」
 さらにはディオニクス・ウィガルフ(ダモクレスの黒剣・e17530)も続ける。
「イイねェ。しかし、そんな態度のくせに囚われている気分はどうだ? 籠の中でせいぜい良い声を聴かせてくれよ白拍子! ……さァ、狩りの始まりだ」
 己の拳を打ち合わせると共に、漆黒の業炎が立ち上り、黒焔の縛霊手を形作った。
 すると恋人のリョクレン・オルヴィアグレス(殲華の終獄・e19000)も、
「……誰に飼われているのやら。鳥篭という名の墓場、哀れな舞姫に引導を渡してやろう」と言葉を紡いで敵を抑える。

●破滅の踊り手
 しかし、この敵はそれすらも相手を卑しめるためのネタにする。
「さすが威勢の良ろしいこと。若いというのは、まさに怖いものを知らないということですわね……」
 声を出して笑いそうになるほどだったらしい。耐えて仰け反りそうになったところで思いとどまる。
 そんな風に、噂に違わず逐一癇に障る静禍に対し、仁王塚・手毬(竜宮神楽・e30216)の傍に控えし御芝居様が、顔面から閃光を放って注意を引いた。その間に、言葉で対するのを諦めたメリルディ・ファーレン(陽だまりのふわふわ綿菓子・e00015)は攻性植物による実力行使を図った。
「いつまでも、そうしているがいい」
 呆れたように言ったティーシャが竜砲弾を撃ち込むと共に、リリスは次なる攻撃に備えるかのように、ひらひらと舞い散るような雪の精霊たちを呼ぶ。儚げな光を纏う小さな者たちがケルベロスたちに暖かな気持ちを蘇らせた。
「過日の幻、薄暮の現、黄昏の夢、宵闇の真――汝が脳裏に刻まれし、棄て去れぬ者の面影よ……。今一度、会い見える時――……さァ……魘獄煉爪夢(オモイダセ)!」
 そんな中で周りに流されることなく詠唱を唱え切ったディオニクスが、一片の感情すらも向けることなく両方の爪で静禍に斬りつけ、地獄の炎を流し込んでゆく。
 こちらは暖かな気持ちなどではなく、かつてのトラウマが蘇り、精神に傷を付けた。
「さすがケルベロスどのは心の中に侵入る事まで達者と見える」
 皮肉を飛ばしながら、両手の扇を振るう静禍。目の前にいたディオニクスが鮮血を撒き散らした。
 すぐさま、身構えていた手毬が竜神の神楽鈴を鳴らし、奉納するような舞の中、カラフルな爆炎とともに自身ともども前衛の面々の士気を鼓舞。さらにペトラやミオリも回復を兼ねつつ敵の攻撃を防ぐ盾代わりに無数のヒールドローンを飛ばした。
 そうした仲間の援護に安堵したリョクレンは、改めて敵に向かい、舞踊を競うのも一興かと、流麗な剣舞で対抗。その舞いの中で捕食形態のブラックスライムを放ち、丸呑みを狙うもさすがにそこまでは難しかった。
 が、舞いで対抗するのは少なからず静禍の琴線に触れたようで、言葉が幾らか減って舞いに集中し始める様子が窺えた。
 が、そうした敵の変化は、標的として、先ほど派手な爆発を起こした手毬に向けられた。静禍の、優雅に舞う足捌きで彼女のすぐ目の前まで来たかと思った瞬間、勢いよく鉄扇を打ち据えた。
 すかさず響くリリスの熱唱。そのメッセージで勢いが萎えそうになる仲間たちの気持ちを前に向ける。
 その間に敵を惹きつける役割を担うのがティーシャ。
 わざわざ、「喰らえっ!」などと声を上げつつ力を中和するような光弾を放つ。が、これは躱されようと問題はない。
 本命はミオリのHiVeL。
「砲撃パラメータ問題なし、セイフティリリース……撃ち方、始め!」
 小さく抑えたそれと同時に、小型のレールガンが一閃。静禍の身体に風穴ならぬ弾痕を穿った。
 そしてペトラは如意棒をヌンチャクのようにつなぎ、慣れた手捌きで回しつつ、隙を突いて一撃を加え、さらに他の面々も勢いに乗って立て続けに攻撃を繰り出してゆく。
 が、ある時は鉄扇でいなされ、ある時は着物の一部を傷付けるような形で思うように一気呵成に……という風には運ばない。
「舞比べ、などと言って応じる殊勝な性質にも見えぬが――かといって、遅れを取るわけにもいかんの」
 手毬が舞うは神楽舞。人の裡に棲むという竜を昂らせ、命の輝きを取り戻す賦活の舞。
 その力により復調したディオニクスは腕に本来の力を宿し、思い切って拳を放つ。それを彩るようにリョクレンの紡いだペリュトンのような姿の御業から炎弾が飛ぶ。
 さらにはメリルディがそれ以上に派手な、小さな『流星』を召喚し、静禍に向けて降り注がせた。
 力と力のぶつかり合いは、次第に激化していく様相を呈しており、まだまだ終わりは窺えそうにない。
「そんなものですか? あなたがたケルベロスの『力』は。それなら私1人でも十分戦えそうですわねぇ」
 言いながら両方の扇を振るい、風雷を召喚。さらにこちらの力を引き出そうとしているのか。それすらも楽しそうに、依然、他を見下しつつ語る伊邪那美ノ静禍の性質は、ティーシャが言うように、囚われし後も本当に変わっていないようだった。

●見下せしものの末路
「久しぶりに他人に会って楽しそうだな。なら、俺たちももっと楽しませろよ」
 ディオニクスの腕から炎が躍る。
「ケルス! あの人を捕まえて」
 ついでメリルディの指示を受け、ケルスと呼ばれた攻性植物が静禍の四肢に絡みつく。
「星域結界起動」
 ミオリのコマンドにより皆の足元に守護星座が光る。
「……乗らせてもらおうか」
 わずかな時間差で、リョクレンの守護星座も光を放ち始める。2つの輝きが傷ついたケルベロスたちを癒してゆく。
 加えて、御芝居様のディスプレイに応援動画が再生され――その絵に合わせるように手毬が歌を口ずさむと、リリスがそれに重ねてゆく。
 声質の異なる2人の『声』が調和し、更なる力となる。
「ふっ、さっきは何か言っていたようだが……」
 言いかけて止めたティーシャの台詞に、伊邪那美が耳を欹てる。そんな不意を打って、竜砲弾を撃つ。
「貴様に私たちは退けられん!」
「そうかも知れないわね……でもあなた方も私を斃せない。なら私の勝ちでしょう?」
 そう。今回の条件は一定時間内に倒さなくてはならないのだから。
 しかし、まだ諦めた訳でも時間が来てしまった訳でもない。
「もういいわ。少し……黙っててくれない?」
 ペトラが、空中に星を描く。描いた星の軌跡が光を放つ。光は静禍の足元を照らし、五芒星の中に閉じ込めた。
 そこに、メリルディの召喚した小さな流れ星が一筋、死神の躯を貫いた。
「星に閉じ込められた中で星に当たる気分はどうかな?」
 と、悪戯な笑み。
 が、静禍も邪悪な笑みを浮かべつつ、自らを縛る光を断ち、悠然と束縛を逃れる。そして再び流麗な舞とともに間近にいたミオリに扇を振るう。視界が赤に染まる……。
「いったん退がれっ!」
 ディオニクスが前に立ち、両の掌で挟み込むように静禍を殴る。
 その間に、下がった彼女をリョクレンとリリスが癒す。
 静禍の追い討ちが来ないよう、御芝居様がフラッシュで注意を逸らした。
「一撃で致命傷でも与えぬ限り、儂らを斃すことは無理じゃの……脱獄は諦めよ」
 これまでの戦いで互いの力量を見て取った手毬が告げ、オーラの力を以て更に傷付いた者を癒す。
 今のままの戦いを続ける限り、戦況そのものは、ケルベロスが押し切るのは目に見えている。あとは先ほど言っていた通り、時間との勝負のみ……。
 さしもの伊邪那美ノ静禍も趨勢を察し、ことココに至っては、相手を見下してばかりも居られない。
 それまでの他を見下した笑みはなりを潜め、静禍が滅の扇を振るって暴風を生み、雷撃を轟かせる。
 直撃を喰らいながらも、ペトラは、ヌンチャク型の如意棒でいなすように突き進み、渾身の一撃を叩き込む。
 なかば強引とも言える一撃に怯んだところに、ティーシャの冷凍光線が突き刺さった。
「終わりだ。伊邪那美!」
「……さて。終わるのはどっちかしらね。私はともかく、他がどうなっていることか」
「どこも似たようなもんだろ。所詮、狩る者と狩られる者でしかない」
 すげなく告げたディオニクスの、地獄の炎弾。
 ついでリョクレンは自らのロッドの名を呼ぶ。
「ラティール!」
 名を呼ばれ現れた姿はケツァール。その美しき色彩のままの闘気に身を包み、静禍の胸の辺りを突くように突進、動きを鈍らせる。
 しかし、それでも敵は意識を切ることもなく、先に目の前に来たペトラを打ち据えようと鉄扇を振るう。
 その鉄扇が彼女のこめかみを痛打する寸前、その身を押し出すようにして手毬が位置を代わり、鉄扇の一撃を受ける。
「援護は任せよ。常のように、の」
 そう言って苦い笑みを浮かべる手毬の額から、真っ赤な血が滴り落ちた。
「やはり、貴方は舞手としては相応しくないわ。最も必要な心が欠けているもの」
 そう言って敵を指差しながら、リリスが雪の精霊たちの光を以て、傷口を塞ぎに掛かった。

 ――そのとき。遠く、古のヴァルキュリア、レギンレイヴの鳥篭の方から照明弾が上がった。それは、向こうが片付いたという合図。

「こちらも片付けに入りましょう。パラメータよし、セイフティリリース。撃ち方、始め!」
 ミオリの元から一瞬、眩いばかりの閃光が奔り、静禍を貫いた。
 さらにメリルディが手をかざした先から、金平糖と見紛うほどに小さな流星が飛び、死神の躯を穿つ。
 崩れ落ちそうになりながらも堪える死神の足元を、再びぺトラが宙に描いた五芒星の光で照らす。
 苦痛に表情を歪ませる静禍。
 そのタイミングで、鳥篭の中にひときわ高らかな詠唱が響き渡る。
「来よ、来よ、我が祈り、聞き届け給へ」
 流れるように、艶やかな剣舞を奉納するリョクレン――幻想の海と森が広がり、劔の星々が創られてゆく……。そして彼方より顕れしは、角と翼を持った巨大な蒼雷の狼。
「我が敵を贄とせよ」
 その言葉を受け、幻想の獣がすべてを喰らう……。
「まだ終わりません。この鳥篭を脱けるのは、この私……」
 死神の妄執が冷気となって周囲に漂い、を失ったような妖しき舞がティーシャを襲う。
「無駄じゃと言っておるに」
 手毬の神楽舞が、傷付いた仲間を即座に癒す……。
「往生際が悪いぞ、伊邪那美! 最期まで貴様らしくあれ!」
 堂々とした物言いを叩きつけるティーシャ。その腕に装着された破砕アームで死神の躯を挟み込む……。
「もう二度と、貴様の癇に障る声を聞くこともあるまい……」

「空間が崩れるぞ……」
 感傷に浸るまもなく、どこかから声が響く。
 急ぎ脱出せねば、空間の崩壊に飲み込まれてしまうのだろう。8人は、死神が確かに果てたことだけを確かめてから、急ぎ、脱出を図るのだった。

作者:千咲 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年3月17日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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