●卒業旅行の最中に……
3月ともなれば、卒業の時期となる。
卒業を迎えて、旅行を行う者も多いこの時期、今津・和良は1人、京都の街中を彷徨っていた。
「鳳凰ってのが、不死鳥伝説と関わりあると思うんだよな」
ネットで囁かれる根も葉もない噂話。だが、和良はそれを信じ、その目撃証言らしき場所を幾つか回っていた。
だが、当然というべきか、そんな物は見つけることが出来ない。すっかり辺りは暗くなり、別行動をしている仲間との集合時間も迫ってきてしまう。
「参ったなあ……」
嘆息しながら、路地を歩いていく和良。その彼の背後にいつの間にか、ボロボロの黒い衣装を纏い、ひどく病的な肌をした魔女が立っていた。
今津が驚く間すらなく、魔女は大きな鍵でその胸を穿つ。何が起こったのかが理解することなく、彼はその場に崩れ落ちてしまう。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『興味』にとても興味があります」
そばに伸びる触手のような手は、淡いモザイクに包まれている。それを操る魔女はドリームイーター……第五の魔女・アウゲイアスだ。
やがて、倒れる和良のそばから現れたのは……燃え上がる炎の鳥。その翼はモザイクで包まれている。
「我ハ……誰ダ……?」
そいつは、高く飛ぶことができないのか、低空飛行のままどこかへと向かう。それを見届けたアウゲイアスもまた、いずこともなく姿を消したのだった。
ビルの屋上へとやってきたケルベロスは、ヘリオンのメンテナンスを行うリーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)の姿を発見する。
「皆、ようこそ。ちょっと待っていてね」
皆を運ぶ出来ることのできる翼となるヘリオン。彼女にとって相棒と言える存在だ。
「炎を纏う鳥……不死鳥伝説への興味が夢喰いとなって現れると……」
そこで、集まるケルベロスの中で、リノン・パナケイア(狂気の道へ・e25486)がそんな話を持ちかけるのだが、話の途中ですら彼は居眠りをしてしまって。
「う、うん。そうみたいだね……」
リーゼリットはリノンを起こしつつ、説明を始める。
インターネットで出回る不死鳥伝説について、その存在の有無を確かめようとした男子高校生がドリームイーターに襲われ、その『興味』を奪われる事件が起こってしまう。
「奪われた『興味』を元にした怪物型のドリームイーターが実在化しているよ。この夢喰いが事件を起こそうとしているようだね」
『興味』を奪ったドリームイーターは姿を消している。こちらの消息を追いたくはあるが、今は新たな被害が出る前に現れた怪物形のドリームイーターを討伐したい。
「このドリームイーターを倒す事ができれば、『興味』を奪われてしまった被害者も、目を覚ますはずだよ」
襲われるのは、京都への卒業旅行中に単独行動していた男子高校生、今津・和良だ。
彼は夢喰いに襲われて『興味』を奪われており、裏路地にて昏睡状態にある。無事にドリームイーターを倒した後で介抱してあげたい。
「『興味』から生まれた怪物型ドリームイーターは、繁華街を徘徊しているようだよ」
現れる炎の鳥の姿をしたドリームイーターは1体だけで、配下などはいない。その翼はモザイクが掛かっている為、発見すればすぐにそれと分かるはずだ。
このドリームイーターは不死鳥、鳳凰についての都市伝説を噂したり、信じたりする発言があると、その人の方に引き寄せられる性質がある。これを利用することで相手を誘い出し、有利に戦うこともできそうだ。
「このドリームイーターは、人間を見つけると『自分が何者であるかを質問してくる』よ」
返答によっては、夢喰いは相手を殺そうとするようだ。もし、一般人がドリームイーターと出くわした場合、これによって、命の危機にさらされる可能性がある。
もちろん、ケルベロスとしては見過ごすわけにはいかないので、返答内容に関わらず、早々に討伐してしまいたい。
ドリームイーターはその身の炎を相手に浴びせかけたり、炎のモザイクを飛ばして相手の『興味』を奪ったりして攻撃してくる。また、傷つけば、自らの炎で傷を癒すこともあるようだ。
説明を終えたリーゼリットは、そういえばと言葉を続ける。
「興味を奪うドリームイーターの消息は、未だにつかめていないね……」
直接、その夢喰いを討伐したいのは山々だが、今は危機が迫っている少年の救出、そして、現れたドリームイーターの討伐が先だ。
「ともかく行こうか。少年を救ってあげないとね」
現地へと向かうに当たって準備は大丈夫かなと、彼女はケルベロス達へと問いかけるのだった。
参加者 | |
---|---|
立花・恵(カゼの如く・e01060) |
ヴィンチェンツォ・ドール(ダブルファング・e01128) |
ベルノルト・アンカー(傾灰の器・e01944) |
麻生・剣太郎(全鉄一致・e02365) |
円谷・円(デッドリバイバル・e07301) |
クララ・リンドヴァル(鉄錆魔女・e18856) |
唯織・雅(告死天使・e25132) |
スクナ・ガンダルヴァ(贄送り・e32335) |
●不死鳥伝説とは
ケルベロス達を乗せたヘリオンは、京都府上空に差し掛かる。
「目撃証言がある事自体、なかなかすごいね、古都って」
おっとりとした印象の円谷・円(デッドリバイバル・e07301)は、近づいてくる京都の街並みを目にしながら、呟く。
この地であれば、風水的なものなどと縁深いこともあり、着眼点はいいかもしれないと円は考える。もっとも、本当に見たかと言われれば眉唾物だが。
「Fenice……炎を纏い羽ばたくもの、か」
「……。送り火の季節には、まだまだ早いですね」
ヴィンチェンツォ・ドール(ダブルファング・e01128)が言うのは、イタリア語でフェニックスのこと。彼の言葉で、クララ・リンドヴァル(鉄錆魔女・e18856)が思い出したのは、7、8月頃に行われる、火を焚いて先祖の霊魂を送り出す行事だ。
「不死鳥ですか。不死と訳すよりは再生、の印象が根強く」
ベルノルト・アンカー(傾灰の器・e01944)は率直な意見を出す。彼もまた、伝説に関心を惹かれてしまう気持ちは分かるとのことだ。
「鳳凰、フェニックス……不死の象徴として語り継がれるものの、定番ですね」
麻生・剣太郎(全鉄一致・e02365)は愛用の眼鏡を吊り上げる。ファンタジー世界の産物だと笑う人は多いかもしれないが、何せ自分達ケルベロスがすでにファンタジーだからと、彼は苦笑した。
「不死鳥、か。幾ら死なねぇって言っても、殺し続けてたらいずれ殺されてくれんだろ」
左目のまなじり付近と胸元に傷を持つスクナ・ガンダルヴァ(贄送り・e32335)は、事も無げに首を振る。相手は夢喰いであり偽物。本物でない以上、倒すのに感慨もあったものではない。
「人から興味を奪うか。それは人としての死と変わらない」
「不死鳥が人の命を奪おうとするのは、いただけない」
ヴィンチェンツォの言葉に、剣太郎が真面目な顔で語る。存在を信じる者の夢を壊す存在を跋扈させるわけには行かない。
「伝説を求める心か、探せば実際にいるやもしれないな」
本当のところの真偽はさておき。ヴィンチェンツォは近づく街並みを見下ろしながら、そう感じていた。
ケルベロス達は降下すると同時に、作戦に移る。
すでに辺りは暗くなってきていた。クララはスーパーGPSを活かし、自身の位置を地図で確認する。その上で、戦場に適した人気のない裏路地を探す。
すでに、夢喰いは現れているはず。ならばこそ、街のどこかに倒れているはずの少年、今津・和良の保護をライドキャリバーの鉄騎に跨る剣太郎に任せ、他メンバーはやや開けた路地へと移動していく。
そして、クララが隣人力を使って通行人にこの場を離れるよう説得し、ベルノルト、円が路地にキープアウトテープを張り巡らせてから、一行は夢喰いの誘い出しを始める。
「不死鳥伝説は世界中に存在します……」
「不死鳥の伝説って、色んな国で聞くよね」
なんでも、中国の鳳凰は存在そのものが治世の前兆とされたという。
帽子のつばをつかんだクララが仲間に視線を向けつつ、以前、図書館で目にした本の話を語る。すると、オカルト好きな円が早速、興味深げに相槌を打つ各地に伝承があるのならば、本当にいるのかもしれないと。
「鳳凰は……確か。つがいの存在、でしたよね……?」
おかっぱ髪から長い耳を覗かせる唯織・雅(告死天使・e25132)もまた、聞いた知識を確認するようにして仲間へと問いかける。
「鳳凰、東洋の不死鳥ですか。神格化された鳥としては同一視される説も多く」
それに、ベルノルトが小さく唸って返答した。同一視されるそれは、雅の語る存在と同じものかもしれないし、全く異なるものかもしれないと。
話はさらに続く。後には、宇宙論においても竜に並ぶものとして扱われ、四方位と関連づけられた四神が一柱、即ち朱雀と呼ばれるようになったと。
「四神相応の地、京都……。これほど不死鳥の降臨に相応しい街は、日本に二つとありはしないでしょう……」
「不死鳥伝説か……。古来より京都にはそういった伝説があるんだし、その中に本物があったっておかしくないよな」
クララの噂話を受け、ここに来る途中で空から見えた五重塔を示した立花・恵(カゼの如く・e01060)がその上を不死鳥が飛んでいた噂を口にする。彼女は……失礼、れっきとした男性の彼は、輪廻転生の伝説も数多いとも話した。
「不死鳥っつーと、やっぱアレか? 戦闘不能から復帰できる羽とか、落としてくれるのか?」
どこぞのゲームでのことをスクナは思い出していると……、メンバー達が身構え始める。低空飛行をしながら、こちらへと突っ込んでくる鳥の存在に気づいたからだ。
「燃えるもの、か。どことなく幻想的だな」
「……乗ったら熱いのかな?」
ヴィンチェンツォ、円が向かい来る敵の姿にそれぞれ、そんな感想を抱く。モザイクのかった炎の翼を羽ばたかせたドリームイーターは、テープを突き破って路地裏へと侵入してきた。
「不死鳥の噂より、生まれた割に。些か、みすぼらしいですね……」
雅はそんな本音を漏らす。少年の創造から生み出された産物。彼女が思ったよりも陳腐な姿をしていても、仕方のないことだろう。
「我ハ……誰ダ……?」
やや片言の日本語で、その鳥は問いかけてくる。
しかし、誰も返答しない。答えたのは唯一、恵だけだった。
「少なくとも、お前のことは知らねぇな。俺が知ってるのは、お前の興味を生み出した不死鳥伝説だけだぜ!」
その答えは、夢喰いが望んだものではなかったのだろう。一声、鳥とは思えぬ鳴き声を上げると、そいつはその身の炎を燃え上がらせたのだった。
●さすがに、不死とは行かず……
路地裏で特攻して来る炎の鳥。そいつはモザイクで包まれた炎の翼を羽ばたかせると、燃え盛る炎を広範囲に放ってくる。
炎の鳥を迎撃しようと身構えるケルベロス。そこで、ライドキャリバーに乗った剣太郎が駆けつけてくる。
「どうやら、間に合ったようですね」
目的の少年の身柄を、傍の路地に退避させてきた彼は勢いを活かして仲間の正面へと出た。
正面から飛んでくる炎はモザイクでなく、熱を持った本物の炎だ。
普段、のんびりしている剣太郎もぼやぼやしてはおれず、まずはカラフルな爆発を起こして仲間の士気を高めていく。
炎は広範囲に及ぶ。チームメンバーの半数が前衛にいることもあり、雅と彼女のウイングキャット、セクメトもまたそれを浴びることとなっていた。
セクメトが翼を羽ばたかせて邪気を祓おうとする中、雅は砲撃形態としたドラゴニックハンマーを構え、火の鳥……夢喰いへと竜砲弾を叩き込んでいく。少しでも、その動きを抑えておきたいところだ。
弾丸を受けて少し怯む火の鳥へ、ヴィンチェンツォが迫る。彼は敵の弱点となりそうな胸部を狙い、グラビティを乗せた弾丸を撃ち込んでいく。
その様子を見ながら、ベルノルトは腕から伸ばす攻性植物が実らせた果実を輝かせ、仲間に進化を促す力を与えていた。
不死鳥と言う割には普通の鳥にも近しい姿をしたドリームイーター。ベルノルトもまた、首を傾げていたようである。
「興味から出来ただけあって、なかなか『らしい』感じじゃねーか」
しかしながら、恵は敢えて、挑発するように敵へと呼びかける。
確かに、普通の鳥には見えるが、優雅に翼を舞わせた姿、長く靡かせた尾。一見するだけならば、それらしい鳥に見えなくもない。……もっとも、翼のモザイクが残念なことこの上ないが。
「けどよ……。その興味はあいつのもんだ、返してもらうぜ!」
恵は火の鳥よりも高く跳躍し、流星の煌きを宿した蹴りをそいつの体へと食らわせた。
次なる敵の攻撃が来る前にと、後方のクララが前のメンバーの手前に雷の壁を構築させていく横で、円は敵の動きを観察していた。
「鳥だし、動きは素早さそうだね……」
夢喰いは機動力を活かした戦法を取るようだ。それなら、狙撃に徹して確実に攻撃を。円はウイングキャットの蓬莱に盾と回復を任せつつ、その背後に位置取る。
「炎・飛行タイプは岩4倍だったよね。岩を持ってないのが悔やまれるー」
こちらもどこぞのゲームを思い出していた円がファミリアロッドを操り、魔法の矢を放って火の鳥の体を射抜いていく。
「保護も済んでんのなら、容赦はいらねぇな」
スクナは敵の背後へと回り込んで敵の体に触れる。確かに焼け付くような熱さを感じはしたが、負けるわけにはいかない。スクナは螺旋の力で敵の体を内部から破壊していく。
再び、嘶く火の鳥。まだまだ交戦は始まったばかりだ。
最初こそ前方に炎を浴びせてきた火の鳥……ドリームイーターだが、その後は比較的、後方にいた恵を狙っていたようにも見えた。やはり、戦闘前の問答の影響があるのだろう。
その彼をディフェンダー陣が守ることになるのだが、クララは彼らを効率的に癒すことが出来るようにと、メンバー達に幸福感と閃きを与え、霊薬にも勝る作用をもたらす。
「炎を纏っているなら、意外と効果はあるかもしれません」
そのうちの1人、剣太郎はバスターライフルを構え、敵の翼目掛けて凍結光線を発射した。命中した傷をグラビティの力で凍りつかせはしたものの。燃え上がる炎の威力を弱めるとは行かないようだ。
後方の円が捕食モードとしたブラックスライムに、火の鳥の体を食らいつかせていると、敵がまたも大きな声で咆哮を上げた。
不死鳥として生み出された相手だが、あくまでドリームイーターだ。翼のモザイクを発することで、ケルベロスの興味をも奪ってくる。
後方の恵を狙った一撃だったが、セクメトがしっかりと受け止め、雅は重力を乗せた一蹴で敵の動きを鈍らせていく。
セクメトに返礼していた恵は全身に闘気を込めて、神風の如く敵に接近する。そして、リボルバー銃「T&W-M5キャットウォーク」を敵の後頭部へと突きつけた。
「一撃をッ! ぶっ放す!!」
零距離からの弾撃。彼が離脱すると同時に、その弾丸は敵の脳裏で破裂する。
されど、不死鳥として生み出された夢喰いは倒れない。全身の炎を燃え上がらせ、体の傷を癒していたのだ。
だが、ベルノルトにとって、その姿はあまりにも滑稽に見えて。
「不死鳥なれば、気高く雄雄しい姿をしなくてはなりません」
どうやら、敵は高く飛べないらしい。そんなはかない翼を持つ不死鳥では、気落ちしてしまおうというもの。
仲間にオーラを飛ばし、癒しの雨を振りまくなど、回復メインで動いていたベルノルトもまた、敵の劣勢を察して攻勢に転ずる。本来、彼の戦闘スタイルは刀剣を使うもの。斬霊刀を抜いた彼は颯爽と敵に刃を振るう。
「せめて、醒めないまどろみの中で、眠るように崩れてゆけ」
斬撃は血流の集まる首を断ち切った。噴き出す血……いや、モザイクに、火の鳥は苦悶する。
「お前は不死鳥だ。人がそう願う限り、幾らでも蘇るのだろう?」
ヴィンチェンツォの言葉にも、敵は反応を見せない。己の修復で手一杯なのだろう。
「安心して屠られるといい、戻るところはあるのだからな」
彼は夢喰いの腹に右手の拳を入れると見せかけ、左手のリボルバー銃で敵の頭を撃ち抜く。
だが、倒れない。再び全身の炎を燃え上がらせようとする敵へと、スクナが問いかけた。
「破壊神の一擲……だなんて、壮大なモンじゃねぇけど」
そう告げた彼が構えたのは、色彩すら把握できぬ光を放つ槍……いや、鋭く尖った何かだ。
「テメェにはこれがお似合いだろ? なあ、ニセモンの不死鳥サンよ」
それで、スクナは敵の体を穿つ。直後、虚無をもたらす柱が上がった。
耳をつんざくような不死鳥の咆哮。そいつはモザイクの一欠片すら残さずに消滅していく。
「Addio」
消えゆく敵にヴィンチェンツォが告げると、恵がくるくると回したリボルバー銃をホルスターへと収めていた。
●伝説はあくまで伝説か、それとも……
ドリームイーターの討伐を完了し、ケルベロス達は周辺の修復に当たる。
剣太郎はドローンを展開し、雅は気力を撃ち出して破壊箇所を幻想交じりに補修していた。
「なんかキレーなモンとか、落ちてねーかな?」
その最中、スクナは夢喰いがいた場所を隈なく探す。不死鳥の残骸などないかと考えて周囲を見回しているのは、彼が虎……猫科のウェアライダー故、光り物を本能的に求めていたのかもしれない。
「不死鳥かぁ、本当にいたらどんなのなんだろうな」
恵がそんなスクナに気づいて呟く。
そして、恵はライドキャリバー、鉄騎が運んできた少年、今津・和良にも関心を抱いていたようで。
「……なんでこいつは、不死鳥伝説なんて調べる気になったんだろうな?」
そもそもの原因も考える恵。本人に聞くことが出来ればよいが。
ともあれ、本人の容態を確認しようと、雅が声をかける。
「……和良さん、気づきましたか?」
きょとんとしている彼へ、クララが薔薇花茶を差し出す。
「ふふ、体が冷えているでしょう。温かいものでも如何……?」
日が沈めば、まだ寒い季節だ。和良もありがたくそれを口にし、体を温める。クララが状況説明をするのを、壁に寄りかかって頭を抑えるベルノルトが何も言わずに見つめていた。
「面白そうなモンに興味を持つのは勝手だがよ。あんまり踏み込みすぎるんじゃねぇぞ?」
「好奇心、猫も殺すと……申します。お気をつけ、下さいね」
何が起こるか、分からねぇからなとスクナは首をすくめる。雅も諭すようにして、和良に釘を刺した。
何気なくネットで囁かれる噂話に興味を抱いた彼も、命の危険すらあったことで今回の一件でかなり懲りていたようである。
「今回は残念な結果になってしまいましたが、僕も伝承や伝説なんかに興味を惹かれる気持ちはよくわかります」
そこで、剣太郎がこんな言葉を彼にかける。
「伝説は伝説のままで。それでもいい気はしますけどね」
だが、ヴィンチェンツォは、逆の主張をしてみせた。
「綺麗なものだった、お前の興味は……求めれば、いつか叶うかもしれんな」
伝説は現実のものとなるのかどうか。この春高校を卒業する少年は、そんな疑問を抱きながら新天地へと旅立つのである。
作者:なちゅい |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年3月10日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 1
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