湿原の牢獄~忠信のアナスタシア

作者:のずみりん

「釧路湿原で事件を起こしていた死神、テイネコロカムイは無事に撃破できたようだ。ただ……」
 労いを挟みつつ、リリエ・グレッツェンド(シャドウエルフのヘリオライダー・en0127)は集まったケルベロスたちに新たな問題がある、と告げた。
「テイネコロカムイを撃破した際にその目的が判明したのだが……奴はグラビティ・チェインを略奪し、自身が捕まっていた牢獄に幽閉されている仲間を脱獄させようとしていたらしい」
 牢獄に捕らえられているデウスエクスは、『死者の泉』なるものを発見したという古のヴァルキュリア・レギンレイヴの軍団、ヴァルキュリアと死神の混成軍という。
「テイネコロカムイが撃破されたことで、ひとまず牢獄が破られる心配はなくなったのだが……テイネコロカムイ自身が脱獄をしているように、牢獄も完璧ではない」
 悠久ともいえる時間を幽閉されていたレギンレイヴは、世界の全てに対する復讐を遂げる事を目的としているらしく、彼女らが解き放たれれば世界に未曽有の危機……多数の一般人が殺害され、その魂からエインヘリアルが生み出されるような大事件も起こりうる。
 また彼女達の存在を知れば、利用しようとするデウスエクスも出てくることは想像に難くない。幽閉されているとはいえ、それは薄氷のような不安極まりないものでしかない。
「幸い、テイネコロカムイを撃破した時に手に入れた護符により、我々も牢獄の空間へと侵入が可能となった。彼女らの悪意が解き放たれる前に牢獄に向かい、撃破してしまってほしい」
 
 テイネコロカムイから手に入れた護符を使用して移動する先は40以上の牢獄が『鳥篭』のように浮いており、その一つ一つに軍団のデウスエクスが一人ずつ幽閉されているという。
「牢獄に幽閉されている者は鳥かごの外に出られない……まぁ牢獄とはそういうものだが。だが幽閉の対象でない我々は檻を気にせず自由に出入りできるそうだ。ただ、外から中を攻撃することはできないそうだから、牢獄に踏み込んで戦う……という形になるな」
 ただ少々厄介な点もあるとリリエはいう。
「グラビティ、攻撃なのだが……外から中は攻撃できないが、檻の中から外へは攻撃ができてしまうらしい。威力はかなり弱まるそうだが、集中的に攻撃されると接近する前に倒される可能性もある」
 防ぐためには牢獄の空間へ侵入後、全員で素早く担当するデウスエクスの牢獄へと同時に向かう事だ。つまり準備などなしの真っ向勝負になる。
「これは首魁のレギンレイヴに向かうケルベロスたちへの援護にもなるはずだ。戦闘に入ってしまえば、外のことまで気にする暇はないからな」
 他の鳥篭で戦闘が始まった後、レギンレイヴに挑むものが進めば彼らは戦いに集中することができるというわけだ。
 
「皆に頼みたい担当だが……この『アナスタシア』というヴァルキュリアだ」
 資料にあるのは褐色の肌、白銀の長剣を携えたヴァルキュリアだ。
「彼女は我々と縁があるともいえるかもしれない……女神ヴァナディースにかつて仕えていたヴァルキュリアだそうだ」
 女神ヴァナディースを救出するために戦い、幽閉されていた彼女は女神の死を知らない。知れば……どのようなことになるだろうか。
「どの道、倒すしかない相手だろうが……判断は皆に任せる。言えることは、彼女が強者ということだ」
 彼女が白銀の長剣……ゾディアックソードから繰り出される剣技はヴァルキュリアのなかでも群を抜き、更に魔法による治癒、補助もそつなく使いこなす。
 敵であろうと実力を認めた相手には一定の敬意を払う……という性格は、強さの一つの証であろう。
「それと気を付けてくれ。アナスタシアに限らずだが、彼女らは牢獄を破るためのグラビティ・チェインを欲している。戦闘不能になった相手でも確実に殺しにくるから、必ず引き際を考えておいてくれ」
 危険な場合は檻の外にほおり出せば追撃される事はないだろうが、心に留めておくべきだろう。
「……これは考えすぎかもしれないが、デウスエクスたち自身もわずかながらグラビティ・チェインを持っている。デウスエクス同士で死亡時のグラビティ・チェインを回収し、脱獄を図るものが出るかもしれない」
 撃破するタイミングを合わせるなどすれば防げるが、問題は敵がそれを許してくれるかだ。申し訳ないがと前置きし、作戦は任せるとリリエは言葉を濁した。
 
「彼女らは伝説になるほどの時間を釧路湿原の牢獄で過ごしてきた……かなり狂気的な精神状態だ。同情するものもいるかもしれないが……」
 デウスエクスは定命化した存在を同族とは認識しない。今の彼女らにしてやれるのは倒すことだけだろう。


参加者
シェラーナ・エーベルージュ(剣の舞姫・e00147)
アリス・ティアラハート(ケルベロスの国のアリス・e00426)
小山内・真奈(おばちゃんドワーフ・e02080)
ウォーレン・エルチェティン(砂塵の銃士・e03147)
マイア・ヴェルナテッド(咲き乱れる結晶華・e14079)
水無月・実里(彷徨犬・e16191)
アトリ・セトリ(翠の片影・e21602)
豊田・姶玖亜(ヴァルキュリアのガンスリンガー・e29077)

■リプレイ

●鳥籠の中の過去
 転移した光景はあまりにも現実離れしていた。
 あまりにも何もない殺風景な世界に、無数の牢獄と住人が浮かびあがる。それは悲しくも幻想的であった。
「……予想通り、通信はダメだね」
「まぁ牢獄やもんねぇ……お、おったおった。ずいぶん奥ゆかしいみたいね」
 確認し、任務用トランシーバーをしまうアトリ・セトリ(翠の片影・e21602)に、うんうんと頷きながら小山内・真奈(おばちゃんドワーフ・e02080)は見つけた訪問先を望遠鏡で指す。
 中心たるレギンレイヴに近い、だいぶ奥だが檻同士の距離はそう遠くはない。これなら連携もなんとかなるだろう。
「こんな所でヴァルキュリアにお会いできるとは驚いた。敵同士というのは残念だけど」
 泣かせるねぇ、と豊田・姶玖亜(ヴァルキュリアのガンスリンガー・e29077)は飄々と通り過ぎる鳥籠を見やる。
 攻撃の集中を避けるよう、レギンレイヴに向かう仲間を紛れさせたケルベロスたちに檻から攻撃が降り注ぐ。罵倒するもの、観察するもの、反応は様々だ。はたして一行の目指す先、戦乙女アナスタシアは。
「……っと!」
 マイア・ヴェルナテッド(咲き乱れる結晶華・e14079)めがけ衝撃が爆ぜた。攻撃の意志に結晶花たち共生者がざわめく。
 受け流した腕に大した傷はないが、殺意は本物だ。
「戦乙女アナスタシア、武人肌の方と聞いてましたけど……そんな所で一方的に攻撃ですか……」
 アリス・ティアラハート(ケルベロスの国のアリス・e00426)は責めるように挑発しつつ翼をはばたかせる。飛び乗った牢獄のなか、アナスタシアは剣を手に待ち構えていた。
「その姿と数……解放に現れた装いでもないでしょう」
「それを言われちゃ返す言葉もねぇ……実際、そのとおりだ」
 ウォーレン・エルチェティン(砂塵の銃士・e03147)は悪びれた様子もなく、からからと笑う。周囲では既に剣戟が響きだしている。先手を打つのも当然の判断だろう。
「……しかし、非礼は詫びましょう。先ほどは手が先走りました……因縁の再会に」
「因縁……心当たりはないけれど、それはどうも」
 生真面目なアナスタシアの礼にマイアは曖昧に言葉を濁す。自分ではない、とすれば親族かあるいは定命化前の先祖に何がしかあったのか?
「謝る必要なんてないよ、君とはどのみち殺し合いだ」
 さっさと始めればいい、水無月・実里(彷徨犬・e16191)は興味なさげに刀を引く。邪魔ならば消す、彼女の行動原理は明快だ。
「その答え、感謝しましょう。私にも守るべき誓いがある……二度と顔向けできぬ身なれど、あの方を救うまで手段は選ばない……!」
「……主君に剣を捧げた心高きものよ……」
 シェラーナ・エーベルージュ(剣の舞姫・e00147)は斬霊刀『真達羅』を抜く手が力む。彼女へ今を伝えるのは自分たちの目的、レギンレイヴたちの撃滅にとって特に意味はない。だがその意志を見るたび、シェラーナは心に重圧を感じる。
「……あなたの想いには応えられないけれど、せめてここで解き放ってあげるわ」
 血肉、誇り、刻……アナスタシアが全てを投げ出した主、女神ヴァナディースは、死んだ。
 それを知った時、このヴァルキュアの忠信はどこへ向かうのだろうと考えてしまう。

●意志と応酬
 レギンレイヴに向かった仲間たちの照明弾が鳥籠を照らすなか、戦士たちが激突する。
「お前さんが、自分の使命を果たそうとするように……俺ァ、俺の夢物語の理想のために。お前さんを倒させて貰うぜ」
「っ」
 あびせ蹴るようなウォーレンの旋刃脚を、アナスタシアは半身のスウェーで流した。返事は刺突。
 倒れそうな体勢から戦乙女の片翼がひらめき、滑るように必殺の突きが急所を突く。咄嗟、割り込んシェラーナが刃を割り込ませるも、巧みに変えた流れは彼女を深く裂いた。
「強い……!」
 捕らえたとみるや一気に踏み込んでくる。十二神刀に数えられる『真達羅』とそれを操る技をもすり抜け、白銀の剣が傷を更に抉り抜く。
 彼女がもし女神ヴァナディースの傍にいたとしたら、もしあの時、対峙することになっていたら……それはありえない話だが、張り詰めたアナスタシアの殺気をアリスは悲しく受け止めた。
「アナスタシアさんの今のお姿……ヴァナディースさんも……悲しまれます……」
「承知の上。ヴァナディース様を解き放つためならば、我が身、心、地の底でも喜んで這いずりましょう」
 想いを振り払うように、宝鎚から迸った轟竜砲が切り裂かれる。勢いのまま、アナスタシアの身体が攻撃へと滑空する。
「その心意気はさすがや。でも、こっちも負けてられんのや。ほら、立て直すんや! 今のうち!」
 溜めた気合を吐き出し、真奈は小さな体を盾にぶち当たる。決死のカバーが生み出す隙に、アトリは頷き、ウイングキャット『キヌサヤ』を投げた。
「よろしく!」
「引き受けたよ……さぁ、一仕事だ!」
 応える姶玖亜の声に重なる伊、鳥籠に響き渡る銃声。煙と光が、アナスタシアと打ち合う仲間たちを幻想的に遮っていく。
「目くらまし? そのような搦め手……!」
「いや、もう終わってる」
 振るう剣が風を呼ぶ。アトリの『煙中潜伏』をアナスタシアはあっさりと切り払ったが、既に『再起の号砲』が実里を動かしている。ぶつかりあう刀と長剣、その交差する脇でもキヌサヤの黒翼が清浄な追い風をケルベロスたちに送り続けていた。
「あなたの信念には勝てそうもないから……悪いけど、群れで狩らせてもらうわ」
「同じ言葉を聞きましたよ。本当に、よく似ている」
 マイアのペトリフィケイションの閃光から身を引くアナスタシア。張り詰めた彼女の顔立ちは変わらずだが、マイアの位置からはわずか、戦乙女らしい戦いへの笑みが漏れみえたように見えた。

●忠信は抗う
 数の差もあり、戦況はじりじりと押している。だが押し切れない、ケルベロス側にも事情がある。
「まだかかってるのか……!」
 両腕、両足を限界まで獣化させて打ち合う実里がいらだたしげに呟く。事の問題はアナスタチアたち幽閉されたデウスエクスもグラビティ・チェインを有していること。彼女らが倒され、開放されたグラビティ・チェインをかき集めれば戦乙女レギンレイヴや、有力な囚人が脱獄してしまう危険がある。
 それを避けるには、レギンレイヴの撃破を合図にタイミングを合わせて撃破するしかないのだが……。
「気を散らして勝てるとお思いですか! そこ!」
「……くそっ!」
 アナスタシアの剣が刀を弾き、腕を裂く。少しでも引けば攻め込まれ、今度はこちらがすり減らされる。時間稼ぎをするには厳しい相手だ。
「先ほどから……嬲るつもりか、情けのつもりですか!?」
「ふん……あんたも同じ……ヴァナディースは愚かで哀れな女だったな」
 吐き捨てた実里の挑発に答えはなく、鬼気迫る無言の突きが繰り出される。防御に専念し、下がる。これで不自然なくしばらくは稼げるはずだ。
「任せな! ここから出す訳にゃァいかねェンでな。大盤振る舞いだッ!」
「もう少し付き合ってもらうよ、もう少しね」
 飛び掛かるアナスタシアを遮るように放たれたアトリの煙幕弾の向こうから、ウォーレンの呼んだ『砂塵潤す硝煙弾雨』が縦横無尽に襲い掛かる。
 煙幕の四方から打ち込まれる多重十字砲火をアナスタシアは躍るようなステップでさばいていく。かわし、切り払い、受け流す。少なくない傷を負いつつも、ウォーレンへと刃が肉薄する。
「やるじゃあねぇか……けどな、俺には嫁さんが待ってンだ、死ンでたまるかァ!」
 迫る銀剣を、ウォーレンの篭手に刻まれた勝利の黄金獅子が受け流した。双方の身体が流れ、ぶつかるばかりの距離で二人の顔が交錯する。
「……あの方の何を知っているのです、あなたたちは」
「ソイツぁ……な」
 一瞬の問いかけに思案し、ウォーレンは額をぶつけて距離を離す。瞬間、脇腹に鋭い痛みが走る。言葉を交わしつつも、命を狙いあう立場にかわりはけしてない。
 深々と切り裂かれたウォーレンを追おうとするアナスタシアに、アリスは身体でなく言葉で割り込んだ。
「私は、ヴァナディースさんにお会いしました……あの方は囚われ……私達も、助けようとしました」
 カードを『女神のフラワリープリンセスポーチ』をスラッシュし、変身。
『Flowery Princess Vanadialice』
 虹色の花が舞い、デバイスがアリスの変わる姿を告げる。アナスタシアは剣を下ろしていた。
「けど……あの方は死を望み……経緯はどうあれ……私達はあの方を殺しました……」
「……そう……」
 激昂するでなく。戯言と流しもせず。しかし、その瞳は虚ろに揺らいでいた。
「……気づいてた?」
「薄々は……それでも……聞きたくはなかった……!」
 マイアの声に、堰を切ったような言葉が溢れだす。
 聞きたくはない、だが聞かずにはいられなかった。信じたくはない。だが信じるしかなかった。
「許せないなら戦えばいい、同胞。全力を尽くすのが……勇者への礼儀って奴だよ」
「……皮肉なものですね」
 姶玖亜に首を振り、アナスタシアはゆっくりと剣を構え直す。
 仲間への癒しを施し終えたマイアたちも、また。待ち構えたように、二度目の合図の信号弾が鳥籠を照らした。

●残ったもの、残されたもの
「はぁぁああっ……!」
「まいりましょう……覚悟を」
 律儀に名乗りなおす戦乙女に、シェラーナは体内の気を循環させて構えた。対抗するようにアナスタシアの足下から星辰が伸びる。
「その想い、受ける!」
 影をおびて伸びる真達羅の死角打ちをアナスタシアは巧みに受ける。剣戟数合、更に姶玖亜の銃撃が銃握に描かれた鐘の如く、戦い音を打ち鳴らす。
 砕ける星辰、切り裂かれる闘気。シェラーナの美しい緑髪が赤く、青白く、閃光に尾を引いて煌めく。
 受け流した剣が風刃を飛ばし、アトリに迫る。身を盾にした真奈の身体が吹っ飛んだ。
「いつつ……ひとりでも欠けたらあかんで。みんなで帰るんや……」
「わかってる、後は任せて」
 死を求めるような乱舞にあっても、アナスタシアは冷静に止めを狙いにくる。キヌサヤに真奈の退避を頼み、今度はアトリが援護に回る。
「頼むよ、アリス」
「受け取りました、たしかに……!」
 渡された気力を込め、ポーチのデバイスに再びカードを通す。今度は必殺の一撃のために。
「せめて、魂だけでも」
 優しくアリスを包むケープ状のオーラが伸び、気の顎を描いて喰らいつく。咄嗟、身をよじるアナスタシア。背の肉と共に光翼が千切れ、光と散った。
「っぅう……ッ! まだです! まだ……」
「尊敬するぜ、その闘志」
 サイコフォースの一撃にもぶれぬ剣にウォーレンは率直にいった。譲れぬものを背負い戦うものとして……今を勝ち伸びたとして、彼女の願いは既に失われたというのに、死に逃げる事を拒む傷ついた乙女は儚くも美しかった。
「だったら、切り刻む」
「どうぞ、できるものなら」
 最期を決めたのは実里の武刃だった。もはや小細工抜きの正面激突、鋼をも裁断する爪と、高貴に強靭な白銀の刃がお互いの身体を貫きあう。
 武器ゆえに手放されたのはアナスタシアの剣だった。より深く突き立てられたのは実里の身体だった。
「大丈夫、今……」
「ガ、ァ……平気……煩わせないでいい……」
 鳥籠から外に退避させようとするマイアに首を振り、つらそうにだが彼女は指さす。もうそれは必要ない、確実な手ごたえがあったと。
「ハッ……ァ……無様……です、ね……」
 胸甲をぶち抜いた『獣殴武刃』の爪はアナスタシアの胸元から腹まで、肉と器官を深々と抉っていた。心の臓までグラビティ・チェインを打ち込まれ、戦乙女はゆっくりと死につつあった。
「……でも……これでいい……これが、私への……ケホッ」
「よくないわよ……もうちょっとくらい、縁とやらを聞きたかったのに」
 血を吐き横たわるアナスタシアに、マイアは不満そうに言うも手を触れた。
「そんな、満足げに死なせてなんてあげないわ」
 圧縮した快楽エネルギーを送り込む『Sensual disaster』……その止めは痛みなく、激痛の悶死からアナスタシアを解放する。
 安らかに事切れるアナスタシアの唇が何事かを呟くのに、アリスは頷き、短く祈った。

「せめて……アナスタシアさんの魂が……ヴァナディースさんのもとにいけます様に……」
 牢獄から釧路湿原への脱出は間一髪だった。レギンレイヴが撃破された後、牢獄は役割を失ったように空間ごと歪み、崩壊していった。
 牢獄、そしてアナスタシアをはじめとしたデウスエクスたちの歴史と痕跡はもうない。ただ、邂逅したケルベロスたちの手と心のなか以外には。
「それで、なんだったの? 彼女の縁って」
「昔の好敵手? ……よく似てたらしいわ、きっかけになった相手」
 暫し黙祷した姶玖亜の問いかけにマイアは聞けた話と推測交じりで話す。恨んでいたのか、認めあっていたのか……結局、大して聞けはしなかったけど。
「あるのかしらね、運命って」
 束縛されるのは御免だが、時に身をゆだねてやるくらいはいいかもしれない。奇縁と託されたものは、マイアにそんな想いを抱かせた。

作者:のずみりん 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年3月17日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 2
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