湿原の牢獄~爛れた愛は鳥篭で唄う

作者:質種剰

●先手を打つ準備
「釧路湿原で事件を起こしていた死神、テイネコロカムイの撃破へ赴かれたケルベロスの方々が、無事テイネコロカムイの撃破に成功なさいました」
 小檻・かけら(藍宝石ヘリオライダー・en0031)が説明を始める。
「更に、テイネコロカムイの目的がグラビティ・チェインを略奪し牢獄に幽閉されている仲間を脱獄させる事であったのも判明したであります」
 しかも、牢獄に幽閉されていたのは、死者の泉を見つけ出したとも伝えられる古のヴァルキュリア・レギンレイヴと、その軍団であることも突き止められた。
「悠久ともいえる時間幽閉されていたレギンレイヴは、世界の全てに対する復讐を遂げる事を目的としているらしく、彼女が解き放たれれば『多数の一般人が殺害され、その魂からエインヘリアルが生み出される』ような、大変な事件が起こってしまうかもしれないのであります……」
 そう眉を顰めるかけら。
「ですが、テイネコロカムイが撃破された事で、レギンレイヴ達がすぐに地上へ出てくる危険はなくなったであります」
 しかし、テイネコロカムイが脱獄していたように、この牢獄も完全ではない。
「なんらかの理由で牢獄の壁が壊れ、レギンレイヴ達が解き放たれる可能性もありましょう」
 ましてや、彼女達の存在を他のデウスエクスが発見して、利用しようとする可能性も無いとは言えない。
「特に、エインヘリアル勢力が彼女の力を手に入れてしまえば、その勢力を一気に拡大させる事でありましょう。それらの危険を未然に防ぐためにも、この牢獄を制圧し、牢獄のヴァルキュリアと死神達を撃破しなければなりません」
 かけらはそう断じた。
「牢獄のある場所へは、テイネコロカムイを撃破したときに手に入れた護符を利用すれば、移動できるであります」
 移動を終えると、40以上の牢獄が『鳥篭』のように浮いていて、その一つ一つに1体のヴァルキュリアか死神が幽閉されている。
「牢獄に幽閉されている者は、この『鳥篭』の外へは出られないみたいでありますが、牢獄の外から来たケルベロスの皆さんならば、外を自由に移動できます」
 そう補足するかけら。
「皆さんは、テイネコロカムイが幽閉されていた『鳥篭』に転移した後、それぞれ攻撃目標とする『鳥篭』に移動して内部に潜入、幽閉されている敵を撃破してくださいませ」
 鳥篭の外から内部へ向かっての攻撃は一切不可能。
 その為、内部に潜入するまでは、こちらから攻撃を行う事はできない。
「ただし、鳥篭の中から外へは、威力は大分弱まりますが攻撃が可能であります」
 故に、敵の鳥篭の中へ潜入するのに手間取れば、その間攻撃を受け続けてしまうかもしれない。
「もしも、特定のチームが40体のデウスエクスに集中攻撃を受けるような事があれば、幾ら威力が弱まっていたとしても……耐え切れないかもしれません」
 かけらの表情が歪む。
「そこで皆さんには、チームごとにそれぞれ1体の敵を担当して頂くであります。その相手を挑発するふうに近づいて、攻撃を自分達へ向けさせるよう工夫なさってくださいませ」
 ちなみに、レギンレイヴを攻撃するチームは、他の鳥篭で戦闘が始まった後にレギンレイヴの鳥篭へ向かうようにすれば、集中攻撃を受ける可能性を減らせるらしい。
「さて、皆さんに倒して頂きたい古のヴァルキュリアは、『ラブ・フラワー』。色仕掛けを得意として、イケメンな男が大好きだとか……」
 ラブ・フラワーは、その桃色の妖精弓から甘い花のような芳香の矢を放って攻撃してくる。
 『少女の芽吹き』というこのグラビティは、遠くの相手へも命中し、ダメージの他に強い威圧感を与えてくる、頑健に優れた斬撃だ。
 更にはホーミングアローを使いこなし、そのすらっと伸びた足でゲイボルグ投擲法を仕掛ける事もあるという。
 また、ラブ・フラワーはこの牢獄から脱出するための『グラビティ・チェイン』を求めていて、戦闘中であってもケルベロスを殺してグラビティ・チェインを奪い取るチャンスをずっと窺っている。
 もしも戦闘不能になったケルベロスがいれば、執拗に何度も攻撃して殺しにくる危険性があるのだ。
「……戦闘不能になった仲間や、或いは、危機に陥った仲間については、牢獄の外に撤退させるなど、殺されない為の工夫が必要かもしれないでありますよ」
 真剣な声でかけらは言った。
「それにしても……死者の泉を発見した古のヴァルキュリア……、遠い伝説の存在だと思ってましたが、まさか、釧路湿原の牢獄に幽閉されていたなんて」
 ただ、と付け加えるのも忘れない。
「悠久ともいえる時間を幽閉されていた彼女らは、かなり狂気的な精神状態にあるようで、説得などは通用しないであります。また、デウスエクスは、定命化した存在を同族とは認識しませんので、元ヴァルキュリアのケルベロスであっても特別な対応は期待できないでありましょう」
 思いつくままにかけらの補足は続く。
「ちなみに、デウスエクスも、少量ですがグラビティ・チェインを持ってるであります。こちらが多数の敵を撃破したタイミングで、残った敵が、奴らより得られたグラビティ・チェインを利用して牢獄から脱出する——なんて可能性も否定できません」
 安全を考えるならば、できるだけ同じタイミングで敵を撃破した方が良いかもしれないであります、と。
「幸い、鳥篭型の牢獄は外から内部を確認できますので、他のチームの戦闘状況などをお確かめなさって、敵を撃破するタイミングを合わせる事もできるはずであります」
 そう告げて、かけらは説明を締め括るのだった。


参加者
愛柳・ミライ(宇宙救済係・e02784)
葛葉・影二(暗銀忍狐・e02830)
ロウガ・ジェラフィード(戦天使・e04854)
螺堂・セイヤ(螺旋竜・e05343)
村雨・柚月(黒髪藍眼・e09239)
ニルス・カムブラン(暫定メイドさん・e10666)
夜殻・睡(氷葬・e14891)
スマラグダ・ランヴォイア(竦然たる翠玉・e24334)

■リプレイ


 釧路湿原。
 ケルベロス達8人は、テイネコロカムイの護符を利用して、奴の居た牢獄へ転移した。
 一行が目指すは、ラブ・フラワーの居る鳥籠。
「何が目的で此処に牢獄を……」
 葛葉・影二(暗銀忍狐・e02830)は、予め教えられた彼女の特徴を頼りに、居並ぶ鳥籠を遠目から確認していく。
「……何れにせよ、人に害を為す前に滅せねばなるまい」
 寡黙で冷静沈着な性格だが、情に厚く、仲間を思いやる優しさも持ち合わせた影二。
 忍者としての生き方に揺るぎない自信を持ち、現状に甘んじる事なく日々修行に明け暮れているようだ。
「できれば妹の援護にも行きたいところだが……こうも同じ牢ばかり並んでいると、見つけづらいものだな……」
 と、スコープを覗き込み、鳥籠の中をひとつひとつ確かめていくのは、螺堂・セイヤ(螺旋竜・e05343)。
 普段は口数少なく理性的な、黒目黒髪が凛々しい人派ドラゴニアンの青年。
 また、親しい者を失う事を酷く恐れていて、却って他者や集団から一歩引いた態度を取ってしまうという。
「遥か昔に、牢獄に閉じ込められたレギンレイヴさんとその仲間のデウスエクスの方々……精神が侵され、最早和解の余地はないのですね……」
 一方、ニルス・カムブラン(暫定メイドさん・e10666)は、双眼鏡を使ってラブ・フラワーの囚われた鳥籠を探している。
 クラシカルなエプロンドレス姿では見た目の幼さが際立つも、私服を着ると年頃の少女らしい大人びた面やスタイルの良さも窺えるメイドさん。
「ならば、何れ来る悲劇を防ぐ為に……戦いましょう」
 悲壮な決意で駆け回る主の隣を、ライドキャリバーのトライザヴォーガーが並走していた。
「哀れだ。只管に哀れだ。時が違えば、もしかすれば友になり得たかもしれぬのに」
 ロウガ・ジェラフィード(戦天使・e04854)も、ニルス同様に双眼鏡をじっと覗き込んでは、別の鳥籠群が視認できる位置へと移動を繰り返していた。
 堅く淡泊な口調と雰囲気から一見孤高に見えるも、本人は無愛想なつもりなどなく至って鷹揚かつマイペースな性格、陽気じゃないにしろ陰気でもないのだとか。
 そんな見た目と内面のギャップのせいか、よく冗談を言っては周りへ意外に思われるようだ。
「古のヴァルキュリアか。定命化した仲間と定命化していない敵……複雑な気分だな」
 村雨・柚月(黒髪藍眼・e09239)も、ラブ・フラワーの桃色に輝く光の翼なら籠の外側からでも目立つだろうと考え、それを目印に鳥籠を探した。
 年末年始はバイトやら依頼やらで忙しかったらしく、今はのんびりとしたペースでデウスエクス退治に励んでいる模様。
 だが、情勢に敏感で、ひと度特定のデウスエクスの情報収集を始めればとてつもない行動力を発揮、全精力を傾ける一面がある。
「え……と、古のヴァルキュリアの中でもピンクの羽をしたのはラブ・フラワーだけだよね。見つけ易い気はするけど、流石に死神と合わせて40体以上もいると、探すだけで大変かな」
 夜殻・睡(氷葬・e14891)は、気怠げな声と裏腹に、鳥籠探しを真面目に続けている。
 無表情に思える眼鏡の奥、凍てついた眼差しには深く根ざした諦観と恐怖が見え隠れしている睡。
 と言うのも、実は女性恐怖症であり、側へ到底近寄れないのだそうな。
 しかし、決して女性が嫌いな訳ではないので、問題なく会話できる上に、戦闘中などの緊張状態なら発症しないという。
 双眼鏡やスコープを使用した面々が、未使用の面々より格段に見つけ易くなったとは思えないが、気分だけでも少しは違うのだろう。
「あっちだ」
 最初に声を上げたのはセイヤ。仲間達が彼を追う形で走り出す。
「一体、どんな罪を犯せば、悠久をこんなところで過ごさなきゃいけないの? コギト玉ですらないなんて……誰に、こんなことをする権利があったのか」
 愛柳・ミライ(宇宙救済係・e02784)は、皆と共に鳥籠へ向かって駆けながら、湧き上がる憐憫の情を吐露した。
 滑らかに光を跳ね返す銀髪と愛嬌づいた藍色の瞳が特徴のオラトリオ。
 白いボクスドラゴンのポンちゃんを連れた、宇宙を救う大望抱きしミュージックファイターである。
「理不尽なのは、嫌いだ——同情してる場合じゃないけれ、ど」
 どうやらミライの意識は、ラブ・フラワーを始めとしたレギンレイヴ一派を幽閉し続けた存在への憤りで占められているようだ。
 ロウガは、薄布の簡素な白装束を纏って月桂冠を被り、左手に大盾を持った最終決戦モードへ変身。
 本人曰く、少しでも格好良さを水増しして男好きなラブ・フラワーの気を引く心算のようだ。
「きゃーっ、誰だか知らないけど助かっちゃった!」
 ラブ・フラワーの方でも籠の中から8人を視認した途端、妙にテンション高く猫撫で声を出した。
「そこの美男子なおにーさん! お願いっ、アタシをここから出して!」
 まるで女子大生のようなノリは、一見ラブ・フラワーの精神が比較的正常なのでは、と思わせるが。
「お願い出してくれたら何でもするわ、アタシの大事なトコ見ても良いからぁ……!」
 恐らく8人の中でも男性しか目に入ってない様子の彼女は、ロウガや影二、セイヤ、柚月、睡に対して、誘惑にしては露骨な表現を躊躇なく連呼して捲し立てる。
 レースのミニスカートをゆっくりたくし上げて、上目遣いに見つめてくる様子だけを見ると、可愛いのは可愛いのだが。
「こんなにお願いしてもダメ? アタシを好きにして良いのよ。どんな体勢が好き?」
 本気で男をオトそうと思ったら——たとえ一夜限りの関係を楽しみたいだけだとしても——絶対言わないだろう単語の連発に、ニルスやミライがドン引きして足を停めかける。
 間違いなく狂気に駆り立てられているラブ・フラワーは、脱獄したい気持ちばかりが先走り過ぎて、無垢に見せかけて男を垂らしこむような計算高さを、完全に失っていたのだ。
「……フッ、とんだ恥知らずだな」
 影二は、走りつつも鼻で笑うや、あえて冷たい態度を取る。
「はぁ!?」
「貴様のような淫乱と情交する趣味は無い」
 ロウガも、強く憎まれて注意を引く為に、わざとこっ酷くフってやった。
「悪いが、オマエの下手な色仕掛けに引っかかってたら、妹に顔向けできないんでな……。定命化してから出直して来い……」
 セイヤの挑発は、彼の紛れもない本音故か、演技と思えぬ自然さがある。
「ピンク髪の女は正直気持ち悪い」
 柚月の返答も簡潔ながらすげなく、大層冷たくあしらっている。
「センスとか、言葉は兎も角として。髪色とかの生まれつきの部分で挑発するのは、味方とてダメなのです!!」
 ミライが思わず叫ぶも、
「……いえ、自己投影してる場合じゃない、のだけれ、ど……」
 今は他チームへ攻撃させない為に手段など選んでいられない、本気で相手を傷つけなければならないと理解していたので、肩を落とした。
「顔は割と好みだが……狂人は趣味じゃない」
 睡は睡で、ミライの心情を多少斟酌しつつも、かなり手酷くぶった切っていた。
「ちょっとぉ、誰が淫乱で狂人よ、失礼しちゃう!!」
 ラブ・フラワーは、苛立たしげにホーミングアローを連射してくる。
「どーせ捕まってこんなトコにブチ込まれたのも、フラレた腹癒せに暴れたとか、そんなしょーもない理由なんでしょ?」
 スマラグダ・ランヴォイア(竦然たる翠玉・e24334)は、やれやれと肩を竦めて、駄目推しとばかりにラブ・フラワーを挑発する。その文言がやたら堂に入っているのは気のせいか。
 地獄化した両耳が碧い焔に覆われたブレイズキャリバーの女性で、名前通りの翡翠色の髪や瞳が爽やかな美しさを感じさせる。
 ツインテールの髪型もよく似合って、清楚な雰囲気の中に微かな色香を漂わせたヴァルキュリアである。
「誰がフラれたってゆーのよ! アンタと一緒にしないでくれる!!?」
 いかに男好きのラブ・フラワーとて、自分の悪口はよく聞こえるものらしい。
 鳥籠へ向かい走ってくるスマラグダをキッと睨めつけて、ホーミングアローを見舞った。


 8人がラブ・フラワーの鳥籠へ辿り着いたのは、転移してから約5分後。
 更に、怒り狂う彼女の弓や槍に耐えながら、鳥籠をこじ開けて侵入するまで、1分を要した。
「アタシで興奮しない男なんか、どれだけ格好良くても要らない要らない! 全員殺してグラビティ・チェインの糧にしてやるわ!」
 ラブ・フラワーは、自分が取り囲まれた事にも気づかないのか、がむしゃらに甘く馨る弓矢を射かけてくる。
「喜べ、イケメンのケルベロス様がお前を殺しに来てやったぞ」
 スマラグダを我が身を盾にして庇った柚月が、腹から血を流そうとも尊大な物言いで不敵に笑った。
「色情に溺れた囚人よ、拙者等が相手致そう」
 手裏剣が螺旋の軌跡を描くようにして投擲するのは影二。
 螺旋力を帯びて飛ぶ辻風は、ラブ・フラワーの携えたピンクの槍に勢いよく突き刺さり、長い柄をへし折った。
「なんとか釣りは上手くいったが、油断はできないな」
 眠そうな声の睡は、手に嵌めている寒椿の祭壇から、紙でできた人形を振り撒く。
 霊力を帯びた紙兵は花びらのように降り注ぎ、前衛陣を守護、彼らの異常耐性を高めた。
「鏡(カエ)しの刃、その羽を断つ!!」
 猛然と言い放つや、戦天使の装束-Traditional Oratorio Style-の金の布をはためかせて跳躍するのはロウガ。
 光の尾を靡かせるエアシューズの足先で、着地の勢いと重力も乗せた飛び蹴りを炸裂、ラブ・フラワーの機動力をごっそり奪った。
「向こうも、もう戦闘に突入しただろうか……」
 セイヤは、妹のいる班の動向が非常に気掛かりな様子だが、頭を振って目の前の敵に集中。
 すらりと抜き払った降魔刀「叢雲」にて緩やかな弧を描く太刀筋を披露、ラブ・フラワーの両足の腱を正確に斬り裂いた。
「……私もLoveなんだ」
 ラブ・フラワーへの感情移入を捨て切れないらしいミライだが、それでも傷ついた仲間の為に「KIAIインストール」を熱唱。
 願望こそ人類の原動力たることを証明する歌詞を歌い上げて、柚月の怪我を治し、もう少し頑張れる状態へと導いた。
「生まれた時と場所が違えば、仲間になってたかもな」
 柚月もラブ・フラワーへは思うところがあるらしく、複雑そうに呟いて、
「まさか巫術がここで役立つとは」
 最近は使ってなかったという半透明の『御業』をけしかけて、彼女の腰を鷲掴みにさせた。
「命のやり取りしか選択肢がないのは、とても残念です」
 ニルスは、敵であるラブ・フラワーへ丁寧に一礼してから、アームドフォートの砲口を向ける。
「でも、私にも守るべき日常があります。だからここで貴方を、あなた方を止めます」
 しかと狙いの定めた主砲を一斉発射、彼女へ砲弾の雨を浴びせた。
 トライザヴォーガーも主の意志に忠実に炎を纏って体当たり、火傷を負わさんと奮闘している。
「このまま全員保つと良いけど、相手が相手だしね……」
 ちらつく分身の幻影を巡らせ、スマラグダは己の異常耐性を高めた。


 戦闘開始から1分程経った頃、遠くの鳥籠の上方がピカッと光った。
「あれは……レギンレイヴ班が戦闘を……始めたって合図かね」
 スマラグダが光った方向を眺めて呟く。
「余所見すんじゃないわよ、ムカつくわねー。どいつもこいつも顔が良いだけで草食にも程があんじゃないのォ!?」
 苛立たしげに喚き続けるラブ・フラワーは、ゲイボルク投擲法を繰り出す。
「……痛い」
 睡がニルスを庇う一方、トライザヴォーガーはミライを護って力尽きた。
「忍の妙技、篤と御覧頂こう……!」
 影二は稲妻の霊力帯びし手裏剣へ螺旋を籠めて投げつける。
 辻風がラブフラワーの脇腹を刺し貫くや、あらゆる感覚神経を刺激して、当人の感覚が把握できず混乱する程に全身を鋭敏化、石化に似た状態へ仕向けた。
「……身動きも出来まい」
 彼女の硬直具合へ手応えを感じ、冷たく言い放つ影二だ。
「遥か幻影は失墜し光は灼かれ堕落する。然らば歓喜せよ礼讃せよ。凡ゆる善性を肯定せよ、此処に輝跡有る限り。俺は、世界の盾となる」
 空中に無数の氷鏡を創り出し、己にほんの僅か残っている良心や正義感、信頼の燃え滓を掻き集めて朧に輝く光壁を織り上げるのは睡。
 武装から零れ落ちた仄白い霊力の光粒を幾度も乱反射させて、広範囲の防御を固めた。
「私も、花、だから。……歌いましょう? 叫びましょう? 愛を」
 生きる事の罪を肯定するメッセージを歌に込めて、前衛陣を癒やすのはミライ。
 ポンちゃんは属性インストールを用いて睡を回復した。
「我が劍、万象捻じ曲げる幻妖の刃よ。天光を鎖し、偽りの姿を刻め――玖之祕劍ヘロヤセフ!」
 スマラグダは、九つ目の祕劍にて光を屈折させ、自らの虚像をラブ・フラワーの網膜へと刻みつける。
 偽りの視覚情報に幻惑された彼女は虚像を追い続け、終いには見境を失うだろう。
「ザヴォちゃん……暫く待っててくださいね」
 ニルスは、戦闘不能で消えたトライザヴォーガーへ語りかけてから、バスターライフルの太い銃身を構えてフロストレーザーを発射。
 凍結光線がラブ・フラワーの体温を奪って、凍傷にも似た苦痛を与えた。
 戦闘開始から13分後、再びの照明弾が撃ち上がる。
 それまでの間、8人はラブ・フラワーの消耗具合へ気を配り、数分を回復に費やしたりして攻撃から耐えていた。
 なればこそ、待ちわびていた合図に全員の士気が高まる。
「合図だ! 一気に決めるぞ!」
 レギンレイヴを倒した報せに他ならないと、柚月が叫ぶ。
「支える者、運ぶ者、愛し育む者……過去と未来を司る者!! 刻と生命を為す六つの力、今こそ一つとなりて――此処に示すは調停の刃!!」
 ロウガは、蛇使い座のゾディアックソードを引き抜いて、生命を象徴する黄金の不死鳥の形をした霊力を宿す。
 更に、地・天・火水・闇・光を象徴する五体の幻獣の形をした霊力を宿し、眩い虹色に輝く刀身にて、生み出した分身六体と共に、ラブ・フラワーへ一気に斬りかかった。
「打ち貫け!! 魔龍の双牙ッッ!!」
 全身に漆黒のオーラを漲らせ、利き腕のオーラで黒龍を象って超高速の突撃をかますのはセイヤ。
 渾身の力で破壊の一撃を炸裂させると共に、拳から解放した黒龍のオーラがラブ・フラワーを喰らう様に飲み込み、身体を破壊した。
「空気を圧縮する力だ。苦しいか?」
 柚月は大いなる空の力を秘めたカードを発動。
 周辺の大気圧を操作してラブ・フラワーの近くに真空状態を作り、かまいたちを起こすや彼女の肢体を容赦なく切り裂いて、ついに。
「……もう一度、外に出た、かった……」
 ラブ・フラワーを死へ至らしめた。
 しかし、突然空間そのものが揺らいだ為、8人は感傷に浸る余裕もなく、脱出を余儀なくされるのだった。

作者:質種剰 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年3月17日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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