「……はい、了解いたしました。コマンダー・レジーナ」
夕闇の中秘めやかに、艶やかな唇が呟きを零して。不意に吹き付けた風に靡く髪をかき上げながら、立ち尽くす淑女は慈愛に満ちた笑みを浮かべた。
雪のように白い肌、纏う上品なドレスも清廉な白。薄手のヴェールから覗く瞳は、うつくしき白に映える紅だ。ああ、まるで聖母のようだと――彼女を目にした者は思ったかもしれない。
「長き潜伏のときも、間もなく終わるのですね。……愛しい息子たちを見出し、『改造』出来なかったのは悔やまれますが、最後に糧を得るくらいならば許されるでしょう」
けれど紡がれる言葉は、その姿から余りにもかけ離れていて――否、良く見れば、裾には鮮やかな紅の飛沫が飛び散り、おぞましくも艶美な模様を描いていた。
「わたくしは、殺人鬼の母……であるならば、いずれ生まれる子供たちの為に殺しましょう」
鈍色の靴が踊るように地を蹴れば、紅の瞳は甘美な愉悦にきらきらと輝く。今やその色彩は、酸化していく途中の血の如き赤を思わせて、聖母は優しい子守唄をうたいながら桜並木の道を進んでいった。
――通りを歩くひとびとが異変に気付いたのは、既に生命が断たれた後のこと。女の腕の一振りで肉体は破壊され、まるで柘榴が飛び散ったように辺りを紅に染め上げていく。
聖母の名は、ミシェーラ・マールブランシュ。それはひとの姿を模した、背徳のダモクレスだった。
指揮官型ダモクレスの地球侵略は、未だ続いている――エリオット・ワーズワース(白翠のヘリオライダー・en0051)は沈痛な表情を見せたものの、直ぐに毅然とした様子で顔を上げて、予知の内容を語り始めた。
「今回の事件は、指揮官型の一体である『コマンダー・レジーナ』の配下が起こすんだ」
この、既に地球に潜伏していた多くの配下は、彼女の着任と同時に行動を開始したようだ。その多くはそのまま撤退したようなのだが、中には行きがけの駄賃のようにグラビティ・チェインを略奪するものも居り――今回は桜が見頃の公園にダモクレスが現れ、居合わせた人々を虐殺しようとするのだとエリオットは言った。
「敵はアンドロイド型のダモクレスで、一見すると普通の女性にしか見えない。しかも柔和な顔つきで、優しそうな雰囲気を漂わせているから、相手が警戒心を抱く前に一気に襲い掛かるみたいなんだ」
ダモクレスの名はミシェーラ・マールブランシュと言い、その姿は聖母さながらだ。しかし、その本性は地球人をアンドロイドに改造し、殺人を行わせることを目論む邪悪なもの――但し今まで潜伏していた為、事件を起こすのは今回が初めてのようだが。
「ミシェーラは、目についたものから片っ端に攻撃してくるようだから……皆が囮になって最初に接触すれば、そのまま注意を引けると思う」
或いは、彼女のアンドロイドを生み出すと言う目的を利用し、彼女が求める『子供』らしく振る舞う――プログラムされた母性に訴えかければ、よりミシェーラを引き付けられるかもしれない。
けれど淑やかな聖母に見える彼女は、己の子を育てる為に他者の子を喰らうような、苛烈な母性も持ち合わせている。攻守のバランスが取れているようなので、長期戦も覚悟して挑む必要があるだろう。
「彼女を倒さなければ、憩いの地が血に染まるばかりか……誰かが彼女の『子供』にされて、更なる殺戮をもたらすことになる」
――だから、殺人鬼の母を名乗る邪悪な聖母を、此処で倒して欲しい。エリオットはそう言って、祈るように手を組んで皆を送り出した。
参加者 | |
---|---|
ミシェル・マールブランシュ(白翼と雛鳥の護り人・e00865) |
八千代・夜散(濫觴・e01441) |
ジゼル・クラウン(ルチルクォーツ・e01651) |
ミステリス・クロッサリア(文明開華のサッキュバス・e02728) |
遠矢・鳴海(駄目駄目戦隊ヘタレンジャー・e02978) |
塔ヶ森・霧人(灰楼霧の隣人・e14098) |
ラグリマ・ラエティティア(雛鳥・e23352) |
クリュー・シルバーベル(骼花・e34165) |
●母を模倣するもの
身を切るような冷たさも大分和らいだ風が、咲き初めの桜の花弁をふわりと運んでくる。春の訪れを告げるような光景の中、穏やかなひと時を惨劇に変える存在は、ゆっくりとだが確実に忍び寄っていた。
――それは、地球に潜伏していたダモクレスであるミシェーラ・マールブランシュ。殺人鬼の母を名乗る彼女は、優しい子守唄をうたいながら次々に人々を虐殺していくのだと言う。
(「逢いたかった。……できるなら、会いたくなかった」)
相反する感情を抱えた、ミシェル・マールブランシュ(白翼と雛鳥の護り人・e00865)の表情は常と変わらぬ無機質なものだったが、その心の裡では嵐が渦巻いていた。ミシェルはずっと彼女を探していたけれど――いざ再会の時を迎えると、見つからなければよかった、見つけなければよかったと後悔ばかりが沸き上がって来る。
(「だって会ってしまえば、疑念が確信に変わってしまうから」)
――母様、と呟いた声は誰にも届かぬまま、空に溶けていく筈だった。しかし、その苦しげな声を聞きとがめたラグリマ・ラエティティア(雛鳥・e23352)は、大きな紫の瞳を瞬きさせて、ことりと首を傾げる。
「かあさま……パパの? じゃあ、ラグリマのおばあちゃんのこと?」
「そう、ですね――」
わぁ、と無垢な笑顔を浮かべるラグリマを見つめるミシェルは、最早迷っている時ではないと、ミシェーラを止めることを改めて誓った。自分も今は父となり、守るべき大切な娘が出来た――一方で八千代・夜散(濫觴・e01441)は紫煙を燻らせつつも、着々と装備の点検を済ませていく。
「血染めの桜は見たく無ェ。其れに地球人を狙うなら尚更、野放しにしてはおけねえな」
此処で仕留めさせて貰うと呟いて、夜散の握りしめた棍が唸りを上げて鮮やかに空を薙いだ。そんな中、クリュー・シルバーベル(骼花・e34165)は気怠げな吐息を零しつつ、何処か艶めいた仕草で風に揺れる己の髪をかき上げる。
「理解不能だわ。誰かにとっての母親を、勝手に名乗るなんて」
家族に愛されて育った彼女は、歪なミシェーラの母性には嫌悪感すら覚えていた。もう、自分を愛してくれた母親はいない――けれど今も母は大切で、クリューにとって尊敬の対象であり続けるのだ。
(「だから、今は過去となった母親という存在を貶められているようで……そう、大変気に食わないの」)
決然と胸を張る彼女は、確りとした信念を持ってダモクレスに立ち向かおうとしている。けれど、遠矢・鳴海(駄目駄目戦隊ヘタレンジャー・e02978)の胸中には、ほんの少しの切なさが入り混じっていた。
「事情は分からないけど、ミシェルは彼女の子、なんだよね」
鳴海もまた、普通に母親に愛されて幸せに育ったし――今回みたいな親子で戦う、なんて状況は想像も出来ない。けれど息子である彼に対しても、彼女の愛は歪んだままなのかと、鳴海は自問せずにいられなかった。
「……どちらだとしても、なんだか悲しい、ね」
――だけど今は先ず、ミシェーラの凶行を止めなくてはならない。紳士然とした声音で語るジゼル・クラウン(ルチルクォーツ・e01651)は、仲間たちを交えて状況を確認することにした。
「ミシェーラは人々の中に溶け込み、警戒されるより早く目的を遂げてしまうだろう。故に私達が囮となり、先に彼女へ接触する」
囮となる者たちは手分けをして、彼女が現れる地点で接触を試みる――その後は塔ヶ森・霧人(灰楼霧の隣人・e14098)らが、一般人が巻き込まれないよう避難を誘導する手はずだ。
(「私はあくまで、ミシェーラに心があるのかを確かめたいの」)
ミステリス・クロッサリア(文明開華のサッキュバス・e02728)が抱くのは、科学者としての知的好奇心――とは言え、心を得たダモクレスはレプリカントに変じるのだから『そう思われるように振る舞っているに過ぎない』のだろうが。
(「それでも、彼女を止められないなら……どの道、壊すのね」)
●囮の重責、その覚悟
夕暮れの桜並木の道を、迷子のような足取りでラグリマが歩いていく。その手に抱きしめるのは、パパに良く似たテディベアのみー君で――ひとりこうして彷徨うのはちょっぴり心細いけど、少女は囮になることを決めたのだ。
(「おばあちゃん……止めなきゃ……。止めて……ママのクッキー……一緒に食べるの……!」)
ざあっ、と春風が辺りの木々を震わせ、舞い散る桜の花弁がはらはらと夕陽を受けて煌めいている。一瞬目をつむったラグリマが、次に顔を上げた時――彼女の近くには、ヴェールを目深に被った優しそうな女の人が居た。
「ぱ……パパ……いなくなったの……」
――忽然と姿を現したように見えた女性は、柔和な笑みを浮かべてラグリマに手を差し伸べる。おどおどとした様子で親を探す娘の姿は、母性を刺激するには十分過ぎる程。そんなラグリマは、相手が――ミシェーラが一緒に父親を探してくれるのだと、純粋に信じて手を繋ごうとしたのだ。
「パパと……似てる、ね――?」
なら皆と合流するまでは大人しくしていよう、そう思ったラグリマの声が不意に途切れた。ミシェーラが掴んだのは自分の手ではなくて、ほっそりとした首で――ダモクレスの怪力によって宙づりになったラグリマは、自分に何が起こったのかも分からず、只々呼吸をしようと懸命に咳き込む。
「お、ばあ……ちゃ……!」
救いを求める彼女の声にも、ミシェーラは優しげな微笑を返すばかり。そして、その胸元から覗く無機質な砲口が狙いを定めるや否や――其処から放たれた破壊光線は、ラグリマの身体を無情にも貫いていた。
「母さん! 僕はここだ。ずっと探してた」
――出会い頭に攻撃を受けるなどと思ってもみなかったラグリマは、まともに一撃を受けて崩れ落ちて。遠くから響いてくるミシェルの声に、それでも少女は彼の名を呼ぼうと唇を震わせた。
「もしここにいるなら、姿を見せて――っ!?」
と、其処でミシェーラの姿を見つけたミシェルは、同時に血だまりの中で苦痛に耐えるラグリマをも目にすることになる。既に凶行に及んでいたミシェーラへの葛藤より何より、彼は必死に娘の元へと向かい、彼女を護ろうと立ちはだかった。
(「ラグリマに囮をさせるのは、危険すぎたか……?」)
――ダモクレスであるミシェーラ・マールブランシュの目的は、人々を殺害しグラビティ・チェインを奪うこと。その為、囮になることは彼女の狙いを自分に引き付け、自分が最初の標的になることを意味する。つまり真っ先に攻撃を浴びつつ、それを受け止める必要があったのだ。
けれどラグリマは、ミシェーラに襲われることに思い至ってなかったようで――彼女にパパとママが如何に大好きかを、懸命に伝えようとしていたのだ。
『パパはかわいくてかっこよくてかわいくて……ママは優しくてご飯美味しい』
任務を開始する前、ラグリマが嬉しそうに喋っていた内容を覚えていた鳴海は、ようやく合流した場所で繰り広げられていた惨劇に思わず歯を食いしばった。思いっきり叫んでやりたい所だけど、今自分が行うべきことは皆の補佐を行うこと――ミシェーラの注意を引けたのなら、後は一般人の避難を滞りなく行う為に体を張るのみだ。
「はぁい、ママ。こんな歳食った娘じゃ御不満かな?」
――極力家族の間の事に水を差さないように。鳴海は只、この憩いの場を守る為に戦うことを誓った。
●絶望的なまでの差異
(「私も彼女との因縁は無いが、母を求める子の振る舞いでもしてみようか」)
オートマタのような見た目の自分ならば、機械仕掛けの聖母を慕う様子はさぞ絵になることだろうと、ジゼルは微かに自嘲しつつ腕を伸ばす。
「Mom……私だけ、私だけを愛してくれる?」
まるで本当の幼子のようだと溜息を吐き、遠い昔に置き去りにした言葉を、まさかこんな形で口にするとは――と彼女は皮肉な巡り合わせを、それでも受け入れていた。
(「彼女の母性を惹きつけることが、そう上手くいくかは分からないけれど」)
一方のクリューも、こうなれば自分も囮をやるしかないと覚悟を決め、嫌悪を甘い毒で包みつつ意味ありげな視線をミシェーラに向ける。
「私にとってのお母様は、一人しかいないから。あなたのことは――お母さん、と呼んだ方がいいかしら」
ああ――と、己を母と呼ぶ存在に慈悲深き笑顔で答えて、ミシェーラは娘たちを手に掛ける喜びに打ち震えているようだ。彼女の細い腕に仕込まれていた刃が荒れ狂う中、夜散と霧人は囮となった皆へ相手を任せ、自分たちは一般人の避難誘導に専念しようと行動を開始していった。
「此処は危険だ、落ち着いて向こうへ避難してくれ」
隣人のような親しみやすい印象を与えつつ、夜散は喧噪の中でも良く響く声で、人々を戦場の反対方向へと誘導していく。一方の霧人は人混みに紛れながら、子供が居たら真っ先に助け、ケルベロスカードを提示して避難誘導を行っていった。
「……人払いも済ませましたし、後は大丈夫でしょう」
立ち入り禁止のテープを貼って、これ以上近づかないよう対策を済ませてから――手際良く避難を終えた二人は皆の元へと合流をする。其処では赤子の人形を抱えたミステリスが、傷つきながらもミシェーラへ問いかけている所だった。
「貴女の子供はどこにいるの?」
「今は未だ、此処には居ないわ」
ミシェーラの視線はミシェルを素通りし、此処ではない遠くを見つめているようだ。嗚呼、彼女はレプリカントであるミシェルを、最早息子だと認識していない――恐らく、改造を行いアンドロイドとなった人間のみを、彼女は自分の子供だと主張するのだろう。
「親にとって、子供は代えの利かない物。子供は自分に母親という役割を与えるための道具じゃないの」
ミステリスの言葉は正しいが、その常識がダモクレスに通じるとは限らない。レプリカントの捉え方もそうだし、幾らひとを真似ようと根本的な在り方が違っているのだ。これならば、ミシェーラがミシェルの母親を騙る存在だと言われた方が、まだ救いがあるかもしれない。
「……子供は自分を満たすための道具、それよりももっと軽い存在だと思っているなら、貴女は母親じゃないの」
きっぱりとミシェーラを断じたミステリスは、ライドキャリバーの乗馬マスィーン一九と共に、皆の盾となるべく立ちはだかった。しかし、彼女が守護星座の加護をもたらすより早く――ミシェーラの砲口は真っ先に、傷つきながらも懸命に戦おうとするラグリマを狙う。
「――……っ、……」
仲間の回復や庇おうとする行動も間に合わず、経験が浅いラグリマはその一撃に耐えきれず意識を手放した。最後に彼女はそれでも、みんなで暮らしたいとミシェーラに呼びかけて――心を得て欲しいと願っていたけれど。
「おばあちゃん……一緒に帰ろう……?」
――その声にミシェーラが反応することは無く、ラグリマの声は其処で途絶えた。
●母との別れ
「……殺戮は何も生み出さねえ」
敵を仕留めて、全員無事に帰りたい――その願いが潰えたことに夜散は苛立たしげに髪を掻きつつ、それでも魔術を紡いで昇華円環を現出させた。
「子を危険に晒して、誰かの命を奪う。誰も幸せにならねえやり方が気に入らねえ」
――それは母性とは言わないと告げる彼は、せめて最良の結果へ繋がるように尽力しようと誓い、ミシェーラへ高速の銃弾を叩き込もうと動く。しかし、その初撃は回避され――命中を強化する必要があると判断したクリューは、装甲から溢れる光の粒子で以って、仲間の超感覚を覚醒させていった。
「歪んだ母性、ね。あれが母親というのは、子にとっては不幸でしかない」
斃れて貰うと囁く彼女に頷き、テレビウムのレーシィは閃光を放って敵の関心を惹こうとしているようだ。更にミシェルが爆発を生んで、爆風を背にした味方の士気を高めていく。
――隊列全てに作用し、且つサーヴァントを従える代償故に、その付与は運頼みのもの。それでも何とか加護を得たジゼルが、虚の力を纏った大鎌を振り下ろして。その後方からは霧人が、古代語魔法による石化の呪を撃ち出し、ミシェーラの身動きを封じていった。
(「子の為に懸命に尽くす母の姿を、私は憶えている。その瞳が映す先が私では無かった事も」)
刃を振りかぶり殺戮に走る、狂気を湛えたミシェーラ――彼女に鋼の腕を斬り裂かれながら、それでもジゼルは在りし日の思い出を胸に立ち続ける。そう、もう過ぎ去ってしまった時間でも、古い歌にもあるように――その全てを彼女は愛してきたから。
「ここの見事な桜も、皆の命も。たった一つだって散らせない!」
鳴海の構えた二刀より生まれる衝撃波がミシェーラを追い詰める中、ミシェルのシャーマンズゴーストであるカエサルは、物言わぬ祈りで仲間の傷を癒していく。しかしミシェーラも御包みを抱きしめると、自身の肉体を瞬く間に修復していったのだ。
――回復に長けバランスの良い性能を持つ彼女は、明確な弱点を持たない厄介な相手だ。一見そつがない敵にどう対処するのか――それが今回の戦いの重要な点だったのだが、一行にはその具体的な戦術が欠けていた。
見切りに気を付けて、最も命中の高い攻撃を行うと言う行動は共通していたが、裏を返せばそれしか無かったのだ。堅実な敵の守りをどう打ち崩すのか、どんな状態異常を蓄積させ此方に有利な状況に持ち込むか――彼らの戦いからはそれが見えて来ない。
命中を重視するのなら、序盤に足止めや捕縛を積み重ねていく方法もあっただろうし、確実に狙いを高めるべく付与に集中することも出来た。しかし、ただ漠然と攻撃を繰り返しているだけで勝てる相手ではないし、事実ミシェーラの回復力は想像以上で、確実な手応えを感じられぬまま戦いは長期戦にもつれ込んでいた。
(「薄紅色の景色に、毒々しい深紅は不似合いです」)
母親の真似事すらもできていない者に、子供を育てることができるとは到底思えない――それが霧人の想いであり。ミステリスは、貴女はただの機械人形であり人形遊びは同族同士でやってろと、ミシェーラに啖呵を切ってやるつもりだった。
しかしこの状況ではそんな余裕も無く、また幾ら彼女を断じようと、その言葉は空虚に響くだけだろう。最早どちらが先に倒れてもおかしくない状況の中で、鳴海の繰り出した刃が幸運にもミシェーラの急所を貫いた。今を逃せば止めの機会は失われるだろうと、音速を超えるジゼルの拳が、その加護ごと彼女の生命を打ち砕く。
「おやすみMom、どうか良い夢を」
――もしかしたら、葬歌をうたわれるのは此方であったかもしれない。けれどミシェルは、自分達をこの世に産み落としたすべての存在――ハハへ向けて、想いのすべてを旋律に乗せて歌を紡いだ。
作者:柚烏 |
重傷:ラグリマ・ラエティティア(雛鳥・e23352) 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年3月11日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 2/感動した 1/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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