●語られる作戦
「釧路湿原で事件を起こしていた死神、テイネコロカムイが、ケルベロスの皆さんによって、見事、撃破されたようです」
白日・牡丹(自己肯定のヘリオライダー・en0151)は告げる。
「加えて、判明したことがあります。まず、テイネコロカムイの目的が、グラビティ・チェインを略奪して、牢獄に幽閉されている仲間を脱獄させることであったこと。それと、牢獄に幽閉されていたのは、死者の泉を見つけ出したとも伝えられる、古のヴァルキュリア・レギンレイヴとその軍団であったこと、です」
ケルベロスによる釧路湿原の探索結果を、興奮気味にまくし立てた牡丹。その表情が、憂いの色を帯びた。
「長い長い間、幽閉されていたレギンレイヴは、世界の全てに対する復讐を望んでいます。彼女が解き放たれたなら、『多数の一般人が殺され、その魂からエインヘリアルが生み出される』……そんな事件も起こり得ます」
牡丹はさらに懸念を語りだす。
「テイネコロカムイの撃破によって、レギンレイヴ達がすぐに地上に出てくる危険はなくなりました。けれど、この牢獄も完全ではありません……テイネコロカムイが脱獄していましたし、ね。何かしらの理由で牢獄の壁が壊れ、レギンレイヴ達が解放される可能性があります。それに、彼女らの存在が他のデウスエクスに知られたら、彼女らは利用されてしまうかもしれません。中でも、エインヘリアル勢力が彼女の力を手に入れてしまったなら、その勢力は一気に拡大してしまうことでしょう」
牡丹の瞳がケルベロス達に向けられる。確かな信頼を宿した瞳が。
「この危険を未然に防ぐために。この牢獄を制圧し、牢獄のヴァルキュリアと死神達の撃破を。どうか、お願いします」
牡丹は続ける。
「テイネコロカムイを撃破した際に入手した護符があります。これを使えば、牢獄のある場所へ移動することができます。移動先には、40以上の牢獄が『鳥篭』のように浮遊しており、その一つ一つに、ヴァルキュリアまたは死神が1体ずつ幽閉されています。牢獄に幽閉されている者はこの鳥篭の外には出られないようですが、ケルベロスの皆さんは外を自由に移動できます。皆さんは、まずテイネコロカムイが幽閉されていた鳥篭に転移してから、攻撃目標の鳥篭に潜入し、幽閉されている敵の撃破をしてください」
それと、と牡丹は説明を付け加える。
「鳥篭の外から内部への攻撃は、一切通じないようです。よって、内部に潜入するまでは敵への攻撃はできないのですが……中から外へは攻撃が可能なようです、威力はかなり落ちますが。鳥篭への潜入に手間取れば、その間攻撃を受け続けてしまうかもしれません。特に、特定のチームが約40体のデウスエクスによる集中砲火を受けたりしたら……威力が落ちていても、耐えられない可能性もあります。……そこで、です」
牡丹は依頼内容を述べる。
「皆さんには、チームごとにそれぞれ1体の敵を担当していただきます。その相手を挑発するように近づいて、攻撃を自分達に向けさせるよう、工夫してください。それぞれの鳥篭で戦闘が始まってから、レギンレイヴを攻撃するチームが彼女の鳥篭に向かうようにすれば、レギンレイヴを攻撃するチームが集中攻撃を受けにくくなるでしょう」
それから牡丹は、少し困った顔をした。
「それで、皆さんに狙っていただく敵なんですが……ええと、触手が絡まり合っていて、巨大なイクラのようなものを二つ抱えていて、こう、目玉がうにょーんって突き出ている……そういう外見の死神です。スイミング・パスタ・モンスター、という名前があるようです」
敵の容姿をなんとか説明した牡丹は、気を取り直したように続けた。
「戦闘能力については、目からビームを広範囲に撃つものと、巨大イクラを投げつけてくるもの、それに触手で突き刺してくるものの、3種類の攻撃を使ってくるようです」
さらに、牡丹は言う。
「彼らは脱出のためのグラビティ・チェインを求めており、戦闘中であってもケルベロスを殺してグラビティ・チェインを奪取しようとします。戦闘不能になった仲間や、危機に陥った仲間は、牢獄の外に撤退させるなど……殺されないための工夫が、必要かもしれません」
牡丹は、それにしても、と呟いた。
「死者の泉を発見したヴァルキュリア……まさか、釧路湿原の牢獄に幽閉されていたなんて、思ってもみませんでした」
改めてケルベロス達を見やり、彼女は続ける。
「皆さんが戦うスイミング・パスタ・モンスターも含め、悠久とも呼べる時間を幽閉されてきたデウスエクス達は狂気に陥っています。説得は通用しないでしょう。また、デウスエクスは定命化した存在を同族とは認識しませんので、ヴァルキュリアのケルベロスであっても、特別な対応は期待できないと思います。それと……」
牡丹は一旦言葉を切り、こう述べた。
「少量ながら、デウスエクスもグラビティ・チェインを持っています。多数の敵を撃破したところで、そこで得られたグラビティ・チェインを利用し、残りの一部の敵が脱獄することもあり得るかもしれません。幸い、牢獄の外部から内部を見通すことはできますので、他のチームの戦闘状況なども確認し、できるだけタイミングを合わせて撃破した方が安全かもしれません」
最後に牡丹は、祈るように手を組んだ。
「どうかご武運を。信じています」
参加者 | |
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ペテス・アイティオ(くしかつ・e01194) |
デジル・スカイフリート(欲望の解放者・e01203) |
霧島・カイト(凍護機人と甘味な仔竜・e01725) |
アイヲラ・スレッズ(羅針盤の紡ぎ手・e01773) |
星野・優輝(戦場は提督の喫茶店マスター・e02256) |
綺羅星・ぽてと(耳が弱い・e13821) |
エージュ・ワードゥック(未完の大姫・e24307) |
百目鬼・命(眼鏡に総てを懸ける者・e25832) |
●いざ、挑発
バールのようなものが宙を舞った。
ペテス・アイティオ(くしかつ・e01194)の武器、『エクスカリバール・ウーロン』である。
それは、スイミング・パスタ・モンスター(以下、SPM)が幽閉された鳥篭に当たり、弾かれた。ダメージは通らないが、それでいい。気を引くのが目的なのだから。
「む……?」
狙い通り、SPMはペテスの方を見た。目が合う。
(「わたしと魂の波動がそっくりですね。キャラ被りは殺しましょうです」)
SPM側はどう思ったか不明だが、少なくともペテスはそう考えた。
「えらい不味そうな色合いね。SPM改め、SNM、スイミング・生ゴミ・モンスターって名乗った方が良いんじゃない~?」
綺羅星・ぽてと(耳が弱い・e13821)は、毒のある言葉を放ち、挑発する。
「……生ゴミ? 生ゴミだと? 今、我を生ゴミ呼ばわりしたのは貴様か!」
ぽてとに向かって巨大イクラが飛んだ。べち、と当たる。
「鮮度の悪そうな魚卵ねぇ~、こりゃ値段付けられないわぁ~。全身余すとこなく生ゴミだわ~、よっ! 流石SNM!」
「ぐぬぬ……!」
鳥篭内から外への攻撃であるため、大した負傷にはならない。余裕ありげなぽてとを見て、SPMは悔しげだ。
「どうした、その程度か?」
「てめぇの力はそんなもんかよ」
星野・優輝(戦場は提督の喫茶店マスター・e02256)や、百目鬼・命(眼鏡に総てを懸ける者・e25832)も、挑発を試みつつ、鳥篭へ近づいていく。
霧島・カイト(凍護機人と甘味な仔竜・e01725)と、彼のボクスドラゴン『たいやき』、それにアイヲラ・スレッズ(羅針盤の紡ぎ手・e01773)は、ディフェンダーに陣取り、庇うことによる被害の軽減を試みる。
「うわわ……すごくキモイ。こんなの見たことないけど……なんとなく臭そう」
エージュ・ワードゥック(未完の大姫・e24307)も悪口を言ってみる。
「臭そうだとぉ!?」
SPMの意識がエージュに向いた。ビームが後衛に浴びせられる。
「調査に来てクーデターの筆頭になっちゃうとか……」
デジル・スカイフリート(欲望の解放者・e01203)もまた、SPMへの挑発を行う。
「ちょっと頭お花畑過ぎない? レギンレイヴちゃん」
殺気がデジルに向けられた。それはSPMからだけではなかった……ようにも思われる。
ともかく、挑発自体は成功した。一同は軽傷を負いながらも、SPMの鳥篭の近くにたどり着いた。
●バーサスSPM
最初に、ペテスとエージュが鳥篭に入る。
「縄梯子なしでも入れそうだ! 先に攻撃を始めていてくれ!」
外から、優輝が声を上げて2人に告げた。
「わかったです! ……おっと危ないです!」
自分の頭部を狙って突き出された触手を、ペテスは回避。
「こんな気が狂ってる死神はさっさと倒しちゃおうです!」
ペテスは、スマホに存在する自身のコピー人格にアクセス。グラビティアプリを起動。
「闇夜に輝く深淵の銀、影を司る真円の銀、落ちよ!」
グラビティ的にコピーされた月が、SPMの頭上から落ちてきた。
「おのれ!」
月のようなものに潰されつつも、再びふわりと浮くSPM。
「SPM……どう見ても浮いてるけどどの辺がスイミングなんだろ……」
呟いたエージュが、大器晩成の一撃をSPMに放つ。
「空間を泳いでいるであろうが! 我こそはSPM、我こそはSPMであるぞ!」
言い返すSPMの突き出た両目が、ぼう、と光を帯びる。
「ビームが来ますです!」
警告し、身構えるペテス。
「させない」
鳥篭に飛び込んできたカイトが割り込み、ペテスを庇う。たいやきは優輝を、アイヲラはデジルをSPMのビームから庇いながら、同様に鳥篭の中に入り込んだ。
「くっ」
SPMのビームに耐えるカイト。下げたバイザー越しにSPMを見据え、それから彼はブレイブマインで前衛の士気を高めた。たいやきが、鯛焼き属性をインストールしてカイトを癒す。
(「……しかし、たいやきですら食わなそうな見た目の色だな。パスタと名乗る資格もないんじゃないのか」)
カイトは調子を狂わされそうになっていた。大食いのたいやきも、この相手には、さすがに食欲がなさそうである。
ぽてととペテス、優輝による攻撃が重ねられる。それに続いたデジルの一撃は、一見して、回避されたように見えた。
「避けられた、なんて思った? 魂の残滓、刹那の精霊を作り上げなさい」
「……!?」
SPMが振り向いた時には遅い。疑似ビハインドによる奇襲――『オルタストライクアナザー』。
「ありがと、支援機ちゃん♪」
消え去る疑似ビハインドへと声を掛けて、デジルは、レギンレイヴのことを想う。
(「復讐って欲望は否定しないけど、それを許すつもりもないから。ここは私達の、それを防ぐって欲望と、勝負といきましょ♪」)
ぺろりと自分の唇を舐める、欲望の解放者――デジル。
「オウガさん、おねがーい!」
エージュが、自分が身に纏うオウガメタルに頼んで、前衛の仲間達を、光輝くオウガ粒子で包む。
「いくら海産物でも、残飯にも劣る食物もどきに変わりはありませんのよ!」
料理を愛する乙女たるアイヲラには、ゲテモノ料理なSPMを許すことができない。
「いっせーのー、せいっ!」
『連続平手打ち(ビンタビンタレンダ)』。べべべべべっちーん、と、ものすごく痛そうな音が出た。
銃声がそれに続く。銃弾を放ったのは、命だ。彼は眼鏡のレンズ越しにSPMを睨む。
「てめぇらをここから出すわけにはいかないんでな」
恋人をデウスエクスに殺された彼は、彼女の形見たる武装を構えながら言った。SPM達が解放され、多数の一般人が殺される未来など、彼は決して望まないがゆえ。
●戦いは続く
別の鳥篭から、照明弾が上がった。優輝やペテス、ぽてとがそちらを見る。
「あれは、レギンレイヴ班だな」
「向こうは見た感じ、戦いが始まったばかりっぽいですね」
「そうね、作戦通りでいいかしら?」
SPM班の作戦……すなわち、『基本的には長期戦を狙い、レギンレイヴ班に合わせて撃破する。ただし、戦闘不能者が出た場合、速攻で倒して、自分のチームの鳥篭を安全地帯にする』というものである。
「ふやけ過ぎたパスタもどきでは、私を痛めつけることはできませんわ!」
「ほざけ! 食らうがいい!」
アイヲラを狙って触手を放つSPM。
高威力のその一撃は、そのまま食らえばあっという間に倒れかねないものだった。しかし、斬撃に耐性を持つ防具を纏い、ディフェンダーとして立つアイヲラには、比較的、効果が薄い。
「何!?」
(「狙い通りですわね」)
死者が出ることがアイヲラには何よりも怖い……だからこうして、挑発と、怒りの付与によって、自分への近接攻撃を誘ったのだ。
「キェェェイッ!」
シャウトで負傷を吹き飛ばすアイヲラ。
自分の死で相手が強化されるようなことがないのなら、己の限界を省みず立ち続けたいと、アイヲラは……幼き淑女は、そう強く願う。
「今日はどんどん行くよー!」
エージュが大きなエネルギーの球体、『回復球(ヒーリングスフィア)』を取り出し、アイヲラに投げつけた。それは、強いヒールエネルギーを放出し、消える。
たいやきによる鯛焼き属性のインストールと、命のドローンによるヒールも行われる。
優輝は、緑縁の眼鏡の中央を軽く押さえて位置を直すと、右手を前に伸ばし、掌をSPMに向けた。竜語魔法の詠唱と共にドラゴンの幻影を放ち、彼はSPMを炎に包んだ。
戦闘は継続する。そろそろ、作戦開始から10分近く経つ頃か。
「さて、これの使いどころね☆」
ぽてとがエクスカリバールから釘を生やし、フルスイングで殴りつける。ジャマーによる、ジグザグ攻撃。それは、SPMの攻撃力や防御力を低下する効果のはなはだしい増幅、ならびに炎の勢いの急激な増加など、劇的な効果をもたらした。
「アクセス:エクリプスセレネ!」
ペテスが『アクセス:真輪太陰』によって、再びコピーの月を落とす。
デジルが高く跳んだ。彼女のしなやかな脚が、弧を描いてSPMの体に鋭く打ち込まれる――旋刃脚。
「戒めるは凍気、滅するは破軍の加護、斬り裂くは蒼き氷刃! 『氷獄刃:破軍』、我が下に現れよ!」
カイトが凍気を練り上げて、氷の刃を生み出す。カイトの攻撃用氷魔術の一つ、『氷獄刃:破軍(コキュートエッジアルカイド)』。その冷たい刃は、SPMを正確に斬り裂いた。
「おのれ、おのれ貴様ら! 我を誰だと思っている! 我こそはSPM、我こそはSPMであるぞ! 崇めよ、称えよ!」
SPM側の負傷はかなり大きいということが見て取れる。
あとは、このまま長期戦に持ち込めれば……そう思われた。
●ケルベロスの危機
だが。
「我が一撃、受けるがいい!」
「……っ!!」
SPMによる巨大イクラの投擲をもろに食らったアイヲラは、鳥篭の床にバウンドして、そのままぐったりと動かなくなった。
「スレッズ!」
「アイヲラさん!」
ケルベロス達が思わず声を上げる。
『連続平手打ち』による怒りの付与で、アイヲラが攻撃を引きつけ続けた代償は、ヒール不能ダメージの蓄積という形で顕在化したのだ。長期戦には、耐えられなかった。
「誰か、アイヲラを!」
カイトはたいやきと共にSPMへの攻撃を加えつつ、仲間へと叫んだ。
それを受けて、すかさず命がアイヲラに素早く近寄り、その体を抱き上げた。
「絶対に、殺させはしない……!」
それは決意であり、誓い。命は、アイヲラを鳥篭の外に退避させた。
「こうなったら……優輝君」
「ああ、綺羅星」
ぽてとと優輝は視線を交わす。作戦通り、速攻で撃破する方針に切り替えるしかない。
ぽてとのチェーンソー剣が唸りを上げてSPMをズタズタにし、優輝の竜の幻影はSPMの身を焦がす。
「そのアルデンテをオーバーボイルドにして、焼きそばの麺にしてやるです!」
ペテスは手加減攻撃ではなく、投げバールを選ぶ。SPMの柔らかそうな頭に、エクスカリバール・ウーロンがぶっすり刺さった。
「怒りも恨みも、ここで終わりにするわ。行くわよ、支援機ちゃん」
デジルが、再度『オルタストライクアナザー』。疑似ビハインドと共に攻撃を加える。
「なんの、まだだ……我はSPMであるぞ……!」
息も絶え絶えだが、まだ、SPMは生きている。
「しぶといにゃあ。ん~~っと。ほいっ」
エージュが『回復球』を取り出し、カイトの傷を癒す。
「我は、我は我は我はっ……!」
SPMが怨嗟に満ちた声を上げる。今や、優輝がSPMに付与した炎は、勢いを百倍近くまで増し、SPMの全身を包んでいた。
追い詰められた様子のSPMは、触手をねじって鋭く尖らせ、勢いよく伸ばす。――ペテスへと。
「あっ」
ペテスは瞬間的に直感する。まずい――。
……ズシャア!!
という音がしたが、触手はペテスの目の前で止まっていた。ペテスの前に出たたいやきが、身代わりになって触手に貫かれたのだ。
「あんこパスタ……ではなくてですね、たいやきさん!」
一瞬の混乱の後、ペテスは我に返った。
「たいやき!」
たいやきは駆け寄るカイトに視線を向けてから、消滅していった。
「……よくも……」
カイトはSPMに向き直り、鳥篭の床を蹴って跳躍した。
「受けろ!」
カイトの肘から先が、モーターの音を立てながら高速回転する。ドリルのようなそれを鋭く突き出す――スパイラルアーム。鋭く冷徹なその一撃が、SPMの体を抉る。
「あっあぁっあっあっ、わっ我は我はわわわわ……われ、は……」
くたりとSPMの触手がしおれ、べちょ、という湿った音を立ててSPMの体が落下した。
●決着、さらばSPM
戦いは終わった。カイトはバイザーを上げる。
「たいやき……」
項垂れるカイト。あえて、彼に声をかける者はいなかった。
「え、え~と。これで、この鳥篭は安全地帯だね~」
空気を変えるよう、エージュが言う。
「うん、そうだね。信号弾で知らせよう」
「ああ。やっておこう」
命が頷き、優輝が信号弾を打ち上げた。
「でも、見た感じ、戦闘不能者については各チームで対応できている感じなのかな?」
「そのようね。でも、やっておいて損はなかったと思うわ」
アイヲラを鳥篭内に戻しながら、ぽてととデジルが言った。このチームの、『他チームの戦闘不能者を安全地帯に収容する』という心遣いは、称賛されてしかるべきものだったと言って過言はないだろう。
「それにしてもです。……死神ってひょっとしたら、ビルシャナと並ぶネタ種族ですか?」
ペテス、爆弾発言。
なお、彼女の手には、SPMの死骸からもぎ取った触手が握られている。
「ん、ん~っと……それ、何に使うのかにゃ~?」
恐る恐る尋ねるエージュ。
「お守りにしようと思いますです」
「お守り!?」
爆弾発言その2。
次第に平和な空気になりつつある鳥篭内であったが、SPMを倒してから7分ほど経過した時、その平穏は打ち崩された。
レギンレイヴ班から撃破の合図である照明弾が上がると共に、牢獄の空間そのものが歪み、崩壊を始めたのだ。
「まずい、急いで撤退するぞ!」
優輝が仲間達へと叫ぶ。
気を失っているアイヲラを連れ、至急、テイネコロカムイの牢獄へとケルベロス達は向かった。
脱出は、無事に成功。釧路湿原の清涼な空気が、彼らを出迎えた。
「綺麗な空です」
呟いたペテスの手の中には、今もなお、SPMの触手が握りしめられていたのだった。
作者:地斬理々亜 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年3月17日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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