「テイネコロカムイが、無事撃破されました」
釧路湿原で事件を起こしていた死神テイネコロカムイ。
その撃破が成されたというのに、河内・山河(唐傘のヘリオライダー・en0106)の顔には緊張が色濃く浮かんでいる。
「グラビティ・チェインを略奪し、牢獄に幽閉されている仲間を脱獄させるいうのが、テイネコロカムイの目的やったようです」
それによって判明したことがもう一つ。
「牢獄に幽閉されていたのが、古のヴァルキュリアであるレギンレイヴと、その軍団だということです」
レギンレイヴは死者の泉を見つけ出したとも伝えられる、古のヴァルキュリアだ。
永き時間にわたり幽閉されていたレギンレイヴの目的はいたってシンプル。
世界全てに対する復讐を遂げること。
ゆえに――。
「彼女が解き放たれてしまえば、『多数の一般人が殺害され、その魂からエインヘリアルが生み出される』ような大変な事件が起こりかねません」
緊張をほぐすように、山河は小さく息を吐いた。
「テイネコロカムイが撃破できましたから、レギンレイヴ達がすぐに地上に出てくる危険はなくなりました」
せやけども、と山河は続ける。
「この牢獄も完全ではありません。テイネコロカムイが脱獄していたのがその証拠です。なんらかの理由で牢獄の壁が壊れ、レギンレイヴ達が解き放たれてしまう可能性もあります」
あるいは。他のデウスエクスが彼女達を発見すれば、利用しようとする可能性もある。
特に、エインヘリアル勢力が彼女の力を手に入れてしまえば、その勢力を一気に拡大させるだろう。
「せやから、これらの危険を未然のものにするために、この牢獄を制圧して牢獄のヴァルキュリアと死神達を撃破せないけません」
山河がそこまで言うと、ざっと冷たい風が横切った。
唐傘で風を凌いだ山河は、毅然とした眼差しをケルベロスに向ける。
「テイネコロカムイを撃破したときに入手した護符を使えば、牢獄のある場所へ移動できます」
移動先には40以上の牢獄が『鳥籠』のように浮いていて、その一つ一つに1体のヴァルキュリアもしくは死神が幽閉されている。
牢獄に幽閉されている者は、『鳥籠』の外に出ることは出来ない。
しかし、ケルベロスは別だ。外を自由に移動することが可能である。
「皆さんには、テイネコロカムイが幽閉されとった『鳥籠』に転移した後、それぞれ攻撃目標とする『鳥籠』まで移動して内部に潜入、その敵の撃破をお願いします」
注意しなくてはいけないことがいくつかある。
まず、『鳥籠』の外から内部への攻撃は一切不可能であること。その為、内部に潜入するまでは、こちら側から攻撃出来ない。
それに対し、威力は大分弱まるものの、中から外への攻撃は可能だ。
目標の『鳥籠』への潜入に手間取れば、その間攻撃を受け続けることになるだろう。
1つのチームが40体のデウスエクスに集中攻撃を受けるような事態になれば、威力が弱まっていたとしても耐えきれないかもしれない。
「せやから、1つのチームにつき1体の敵を担当してもらいます。相手を挑発するように近づいて、意図的に攻撃を自分達に向けさせるようにしてください」
「うちからお願いするんはヴァルキュリア。名前を『ヘルパー』と言います。三対の白い翼の、肉感的な女性です」
翼を強く羽ばたかせることで治癒と状態異常への耐性を。
複数の大将の足元に蠱惑的な香りの花を咲かせ、眠りへ誘う。
そして冷気を帯びた手刀。
この3つのグラビティがヘルパーの攻撃手段だ。
「彼女らは、この牢獄から脱出する為のグラビティ・チェインを欲しがってます。せやから戦闘中であっても……皆さんからグラビティ・チェインを奪い取るチャンスを狙ってきます」
戦闘不能になった者を後回しにせず、トドメを優先してくる危険性があるということだ。
山河はギュッと、唐傘の柄を強く握りしめる。
「戦えんくなった人や危機に陥った人を、その……殺させへんように対策を練っておいた方がええと思います」
説明を終えた山河は傘を閉じた。
「永い時間を囚われていた彼女、いえ、彼女達は狂気的な精神状態にあるようです。説得はできへんと思うてください」
デウスエクスは定命化した存在を同族とは認識しない。ゆえに、ヴァルキュリアのケルベロスであっても、グラビティ・チェインを持つ獲物としか見ないだろう。
「他のヴァルキュリアや死神が倒れれば、そちらのグラビティ・チェインを利用しようとするかもしれません。撃破のタイミングは出来るだけ合わせた方がええでしょう」
鳥籠型の牢獄は外部から内部を確認できる。他のチームの状況も窺えるはずだ。
山河はこつり、傘の石突でヘリポートを叩いた。
「ご武運を」
参加者 | |
---|---|
岬守・響(シトゥンペカムイ・e00012) |
ベルンハルト・オクト(鋼の金獅子・e00806) |
萃・楼芳(枯れ井戸・e01298) |
ミルフィ・ホワイトラヴィット(ナイトオブホワイトラビット・e01584) |
アルケミア・シェロウ(罠仕掛け・e02488) |
百丸・千助(刃己合研・e05330) |
パーカー・ロクスリー(浸透者・e11155) |
ライラット・フェオニール(旧破氷竜姫・e26437) |
●籠の鳥
テイネコロカムイの鳥籠からケルベロスは次々に飛び出した。
ケルベロス達の存在に気付いた途端、他の鳥籠からグラビティが雨のように注がれる。
「定命の者共めっ!」
「贄となりに来たか」
「我らに糧を! グラビティ・チェインを!」
「っ……!」
身に受けた衝撃でベルンハルト・オクト(鋼の金獅子・e00806)は僅かに眉を顰めた。
覚悟していたよりも痛みは遥かに小さい。
しかし、戦闘とはいえないこの状況下では回復による加護を得ることは出来ない。一方的に攻撃を受け続ければ、危うくなる。
「モシリシンナイサムがこんなに眠っていたなんて、ね」
モシリンナイサム。それは『外から来たもの』を意味する言葉。
岬守・響(シトゥンペカムイ・e00012)は先のテイネコロカムイとの戦いに参加していたこともあり、この場に来るのは2度目だ。
囚われている敵の数が多く、どこに今回の相手がいるかまでは覚えていない。
しかし、ヘリオライダーから聞いた特徴を頼りに8人で探せば――。
「見つけた……あの鳥籠だな?」
言い終えるや否や、ライラット・フェオニール(旧破氷竜姫・e26437)は古代語の詠唱に入る。
「反撃が来るからな! 鳥籠につくまではあたんなよっ!!」
無傷ではいられぬと分かっていても言わざるを得ない。ライラットは声を張り上げ、光線を鳥籠の1つへと放った。
鳥籠に着弾した光線は霧散するも、永劫とも言える時間をこの空間で過ごしてきた白き翼は気だるげな眼差しを寄こしてきた。
「ヘルパー!」
百丸・千助(刃己合研・e05330)は古のヴァルキュリアの名を叫んだ。腰に提げた鞘から刀を抜き放ち、切っ先を向ける。
徒ならぬ気配を放つ刃に体を晒すように、ヘルパーは向き直った。
「同士でない者に名を呼ばれるなんて、随分と久しぶりね」
言い終えるや否や、ケルベロスの足元に花が咲く。蠱惑的な香りが広がる。
その香りを振り切るように、8人は走る。
周囲を警戒していたミルフィ・ホワイトラヴィット(ナイトオブホワイトラビット・e01584)だが、敵の殆どはそれぞれ別の班に引き付けられている。
流れ弾ともいえるグラビティは飛んでくるが、あえて他に意識を向けまでも無いと断じ、ミルフィはヘルパーのみに意識を傾けた。
「そんな隠れながらの攻撃しかできないんですの? それではわたくし達からグラビティ・チェインを摂るなんてどだい無理ですわよ」
「隠れる……? ふふっ、面白いことを言うのね。隠れる……隠れる……ふふふ」
くすくすと白き翼は笑う。
唇に指をあて、肢体を捩る姿は艶めかしい。
「素晴らしいスタイルしているじゃないか。ちょっと相手してくれよ」
トリガーに指をかけ、くるりと銃を弄ぶパーカー・ロクスリー(浸透者・e11155)の声音には嘲りの色。
途端、ヘルパーの表情が変わった。
何千年、何万年という時を奪われた古のヴァルキュリアの顔が、慈愛に満ちる。優しく、母性すら感じるほどの柔らかな笑み。
「ええ、よくってよ。ここまでいらっしゃいな、定命の者達。惨たらしく殺してあげるから」
●鳥の翼
アルケミア・シェロウ(罠仕掛け・e02488)は先陣切って走る。目当ての鳥籠まで真っすぐに駆けているが、もともとの距離があるせいで時間がかかりそうだ。
ヘルパーの狙いは鋭く、構えたところで避けることは叶わない。
しかし、鳥籠からの攻撃はぬるい。軽微と言っていいほどだ。回復に費やす時間すら勿体無いと、暗黒色の外套を翻しながらただただ駆ける。
「堪えろ」
足元に花が開いた瞬間、萃・楼芳(枯れ井戸・e01298)は短く言い放つと、ぐっと加速する。そしてライラットへ体当たりを仕掛けた。
意図を察したライラットは前へと向かう勢いを利用し、先を行く。花の香りが遠ざかる。
ライラットの分まで攻撃を引き受けた楼芳だが、やはり足は止めない。
テイネコロカムイの鳥籠から時間にして5分。
ついに8人はヘルパーの鳥籠に辿り着いた。
千助が扉に飛びつく。手応えはあるが1人では無理だ。
すぐにアルケミア、響、他の面々も続く。
そうしている間にも花が咲くが、構ってなどいられない。
キィッと、耳障りな音が鳴った。
「開いた!」
ライラットの声に応じるように、8人は一斉に鳥籠に乗り込んだ。
「いらっしゃい。歓迎するわ」
それを見計らっていたかのようにヘルパーは片手を上げた。冷気を帯びた手刀が振り下ろされた。
ミルフィを庇うべく跳ねたミミック『ガジガジ』が、ぽてりと地に落ちた。
すぐにガジガジは起き上がったものの、響の表情が険しくなる。鳥籠の外で受けた攻撃とは比べ物にならないほどの威力だ。
「偉大なる蝙蝠のカムイ。あなたの智慧と、力をお貸しください」
縛霊手を振りかざし、紙兵を散布する。
その紙兵が届くよりも前に楼芳はヘルパーに迫った。紙兵の加護を得るのと、鉄塊剣を振り下ろしたのはほぼ同時。
しかし、突如咲き乱れた花が刃を阻んだ。
元よりある楼芳の眉間の皺が深くなる。
古のヴァルキュリアは微笑む。
「憎しみにまみれた今の貴女を……外へ解き放つ訳には参りませんわ……!」
ミルフィの時計仕掛けの兵装が火を噴いた。
無数のレーザーが雨のように降りかかるも、ヘルパーは隙間を縫うように躱していく。
そんな女に、ライラットは言う。
「なあ……一つ聞いていいか?」
全身をオウガメタルで覆い、鋼の拳でヘルパーを打つ。
女がゆるりと視線を投げた。
「この鳥籠って檻なんだろ? ならお前たちの罪ってなんだ? 死者の泉を見出したことか? 世界の全てに復讐することか? ……それとも……」
「さあ、何かしらね? そんなこと、今更どうだっていいわ ああ、でも、そう。お返しはちゃんとしないと。世界に、ちゃぁんとね」
「ばぁ~~~っかじゃないの?」
吐き捨てるようなアルケミアの声音。
仲間達が攻撃を重ね、続く連携に彼女も応じて走る。
捉えた一瞬は逃さない。踊るように跳びあがったアルケミアの膝が女の顔に見舞われた。
軽やかさとは裏腹の、重い一撃だがヘルパーは痛がる素振りすら見せない。
「復讐なんてそんなモノ、癒しになんてなりはしないッての。ましてや世界だ? 馬鹿も休み休み言えよ? そんなこと出来やしない、意味さえない!」
他でもない自分自身が知っていること。それを証明して見せると、アルケミアは豪語した。
ヘルパーは不思議そうに小首を傾げ――失笑した。
パーカーが放った竜砲弾が着弾するも、女の笑い声は止まらない。
ベルンハルトは顔を顰めた。
「何がおかしい」
「ふっ、ふふふ。ふふふふ。だって、ねぇ、だってそうでしょ? 復讐すれば、私達の、レギンレイヴ様の気がすむじゃない。他に何が必要だというの?」
瞳に狂気の色が煌いた。
響の眼差しが揺れる。同じ金の瞳でも、こちらに浮かんでいるのは憐憫の色。
「同情はするけど……私はあなたたちを赦す訳にはいかない」
応じるようにベルンハルトは刀を構え、姉に教えてもらった和歌を暗唱する。それは男を待つ女の歌。
途端、光り輝くオウガ粒子が最前の仲間を包んだ。
「悪でないのならば心苦しいが、互いの理解も及ばぬならば斬らねばならん。いざ参らん」
●翼の白
照明弾が上がった。8人が認識していたのは撃破に関する連絡だけであったが、時間的にそれは考えにくい。
持参した無線機が通じないことは牢獄に来た時点で気付いていたので、ミルフィは他の鳥籠に視線を走らせる。
どこも戦闘が始まったばかりの様子。ゆえに、レギンレイヴ班の戦闘が始まった合図なのだろうと判断した。
1度目の合図から時間は刻々と過ぎていった。
ヘルパーの傷は着実に増えているが、それはケルベロスにも言えること。
ただ倒すだけであれば、彼らの傷はここまで深くはならなかった。
しかし今、ケルベロスはじりじりと2度目の合図――レギンレイヴ撃破の報を待っている。
蠱惑的な香りが広がった。パーカーの体がぐらりと傾ぐ。踏みとどまりながらも舌打ちする。
弄んでいた銃から指先を離す。宙にあったのは一瞬で、パシリという音と共に銃はパーカーの手中に収まる。
銃口から放たれた光線に撃たれ、ヘルパーは体をくの字に折り曲げた。その動きで豊満な肉体が強調される。
「確かに目の保養にはもってこいだな。つっ立ってるだけならなおいいんだがな?」
そう言うパーカーに対し、千助は肉感的な女の体に何の反応も示さない。
代わりにあるのは高揚感。
強敵と戦っているからこその感情。だからこそ、逃がしてはならない相手だという思いが強くなる。
ヴァルキュリアというのが引っ掛かりはするが――。
「手加減はっ、しねえぞ!」
足裏に強く力を入れ、踏み込む。空の霊力を帯びた刃が女の傷口を正確に切り広げる。
傷から血が散る中、楼芳が肉薄した。
「穿て、【四奪】!」
ダンッと音を立てて床を踏みしめ、鋼のように真っすぐに伸ばされた手で、性質変化させたグラビティの杭を打ち込む。
笑みを浮かべたまま女はカハッと血を吐いた。
かつて不死であった異種族が定命を得た、それよりも遥か昔。グラビティ・チェインの枯渇よりも古から存在する女めがけて、ベルンハルトは駆けた。
金の三つ編みがたわむ間もないほどに、真っすぐに。体から流れ落ちる血が軌跡を描く。
「貴様の想い、あちらへと持っていくがいい」
達人の一撃は放てない。その構えが無いから。
その代わりに繰り出すのは雷の刃。周囲の物質をプラズマ化した雷刃で、敵を焼き斬る。
何千、何万という年数を重ねた女は笑みを深くした。
「ふふ、おやすみなさい。いえ、さようならかしら?」
手刀が振り下ろされた。冷気を帯びた一打がベルンハルトとガジガジを床へと誘う。
その体が倒れ伏す前に、ライラットが受け止めた。ばっと身を翻し、鳥籠の端にベンハルトを寝かせてやる。意識はあるが、戦える状態ではない。
千助はぐっと奥歯を噛みしめた。ガジガジの姿はもうない。千助が無事であるならまた会えるが、だからといって何も感じないわけではないのだ。
響は逡巡した。特に傷の深い楼芳のみを癒すか、複数人の傷を癒すか。
その迷いを察した楼芳が言う。
「岬守、私のことは構うな」
「ありがと、助かる」
響が紙兵を散布するのに合わせ、楼芳は咆えた。裂帛の叫びが自身の体に活を入れる。
傷が深くなるほどにヘルパーの狂気は剥き出しになっていく。爛々と輝き出した瞳。
「ねえ、ねえ、グラビティ・チェインを頂戴? そうしたら、優しく優しく殺してあげるから、だから頂戴?」
あまりに永く幽閉されていたが為に、憎む事しか出来なくなっている――そんな女の姿に、ミルフィは物悲しくなった。
「せめて……わたくし達の手で安らかに……」
戦乙女の名を冠した槍を携え、ミルフィは前へと飛び出した。
欠けた『守』を補うべく千助も後に続く。
さらにパーカーも前へ出ようとして――気付いた。女の意識が、ベルンハルトに向けられていることに。
「ありがとう、頂くわね」
「っ、ざけんなっ……!」
命を摘み取らんと、花が咲いた。甘い香りが満ちる。
その攻撃でベルンハルトの意識は完全に沈んだが、まだ息はある。
これ以上の追い打ちを許すわけにはいかない。楼芳がベルンハルトを籠の外へと押し出す。
「籠の外にまで届くものが中に届かない道理はない、か」
籠の中から中への攻撃は、威力が落ちない。他の敵も眼前のケルベロスに意識が向いている。それならば、外の方がよほど安全だ。
残った7人の顔に苦いものが生まれる。
その時、照明弾が打ちあがった。
視界に差し込んだ光を合図に、ケルベロス達は堪えることを止めた。
●白の籠
「どうせ籠の中で暇だったんだろ? 最後に思いっきり遊ばせてやるよ!」
ライラットの光り輝く左手がヘルパーを捉え、漆黒の右手でヴァルキュリアの体を砕く。
崩れ落ちそうな体を叱咤するように、ヘルパーは3対の白い翼をはためかせる。
「まさか……そんなっ、レギンレイヴ様……! でも、グラビティ・チェインさえあれば、いえ、でも……ああっ、レギンレイヴ様っ! なんてことを、どうして!」
女の顔から笑顔が剥がれた。
同時に、アルケミアの目から女への興味が完全に消えうせた。
音速を超える拳を叩きつけると、飽きたように言い放つ。
「あー、なんだっけ? それじゃあFarewel、さらば復讐者さん」
「いや……嫌っ、レギンレイヴ様、レギンレイヴさまああああああああああああああ!!」
二振りの刀に霊力を宿らせ、長大で極薄の刃を千助は作りあげる。
「全開でいくぜ!! ――舞え、朱裂!!」
真っ当な思考さえ捨ててしまった白い翼の女を光り輝く刃が切り伏せた。
「狂ってるくせに変なとこで知恵が回る……面倒くさい相手だったな」
やれやれとばかりにパーカーは戦闘でずれた眼鏡を整える。
楼芳はタンッと、鳥籠から飛び降りた。
倒れているベルンハルトの様子を窺う。傷は深い。少し休ませてやれば意識を取り戻すだろう。
だが――。
「急いだ方が良さそうですわ」
辺りを見回すミルフィの表情が険しい。空間が歪み始めているのだ。
「閉じ込める相手がいなくなったからかな。うん、急ごう」
ベルンハルトを楼芳が背負うと、7人は走り出した。
テイネコロカムイの鳥籠に辿り着いたとき、ベルンハルトの瞼がうっすらと開く。
少年はかすかな声でぽつりと何かを呟いた。その言葉は、誰にも聞かれることなく、壊れ行く空間に飲み込まれて消えていった。
作者:こーや |
重傷:ベルンハルト・オクト(鋼の金獅子・e00806) 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年3月17日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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