湿原の牢獄~狂気が渇望する旋律

作者:雨音瑛

●ヘリポートにて
「釧路湿原で事件を起こしていた死神『テイネコロカムイ』を、ケルベロスたちが無事撃破したようだ」
 ウィズ・ホライズン(レプリカントのヘリオライダー・en0158)が、タブレット端末片手に言葉を続ける。
「さらに、死者の泉を見つけ出したとも伝えられる古のヴァルキュリア・レギンレイヴと、その軍団が牢獄に幽閉されていたことも突き止められた」
 悠久といっても過言ではないほどの時間を幽閉されていたレギンレイヴは、世界の全てに対する復讐を遂げることを目的としているらしい。もし彼女が解き放たれれば『多くの一般人が殺害され、その魂からエインへリアルが生み出される』といった事件が起きてしまうかもしれない。
「テイネコロカムイが撃破されたことで、レギンレイヴたちがすぐに地上に出てくる危険はなくなった——が、テイネコロカムイが脱獄していたように、この牢獄も完全ではない。なんらかの理由で牢獄の壁が壊れ、レギンレイヴたちが解き放たれる可能性もありえる」
 さらに、他のデウスエクスが彼女たちを発見して利用する可能性もある。万が一エインへリアルたちが彼女の力を手に入れてしまえば、その勢力を一気に拡大させることだろう。
「このような危険を防ぐためにも、牢獄を制圧し、牢獄のヴァルキュリアと死神たちを撃破しなければならない」
 作戦の流れは、と、ウィズがタブレット端末の画面を切り替える。
「まずは牢獄への移動だが、これはテイネコロカムイを撃破した際に手に入れた護符を利用すれば、牢獄のある場所へ移動することが可能だ」
 移動した先には、40以上の牢獄が『鳥籠』のように浮いている。さらに、その一つ一つに1体のヴァルキュリア、あるいは死神が幽閉されている。
「牢獄内に幽閉されている者は『鳥籠』の外に出られないようだが、牢獄の外から来たケルベロスならば、外を自由に移動できる。君たちには、テイネコロカムイが幽閉されていた『鳥篭』に転移し、その後に攻撃目標とする『鳥篭』に移動して内部に潜入、幽閉されている敵を撃破してほしい」
 注意して欲しいのは、とウィズの指が端末の上を滑る。
「鳥篭の外から内部への攻撃は不可能。つまり、鳥籠内部に潜入するまでは、ケルベロス側から攻撃を行うことはできない」
 ただし、鳥籠の中から外へは、かなり威力が弱まるものの攻撃が可能。もし鳥籠への潜入に手間取れば、その間に攻撃を受け続けてしまう危険もある。
「特定のチームが40体のデウスエクスに集中攻撃を受けるようなことがあれば、耐えきれないかもしれない。——そういうわけで、君たちにはチームごとに1体の的を担当し、相手を挑発するように近づいて攻撃を自チームに向けさせるよう、工夫してほしい」
 その挑発する相手は、と、ウィズは敵の外見を説明する。
「『マエストロ・サルヴァトーレ』。60歳ほどの白人男性で、音楽家のような西洋貴族の格好をしている。戦闘時は3つの攻撃を使い分けるようだな」
 絶対零度を想起させる音楽を奏でる攻撃、対象を包囲するような曲を奏でて灼熱の炎に包む攻撃、狂気を帯びた瞳で睨み石化させる攻撃であると、ウィズが指折り説明する。また、マエストロ・サルヴァトーレは断末魔が最高の旋律だと考えている、とも。
「彼らは、この牢獄から脱出するための『グラビティ・チェイン』を求めている。戦闘中であっても、ケルベロスを殺してグラビティ・チェインを奪う機会を狙ってくる」
 戦闘不能になった仲間、あるいは危機に陥った仲間は、牢獄の外に退避させるなどの「殺されないための工夫」が必要になるかもしれない、とウィズは説明を終えた。
「デウスエクスも、少量だがグラビティ・チェインを保持している。安全を考えるならば、可能な限り同じタイミングで撃破できるようにした方が良いかもしれないな」
 くれぐれも気をつけて、と。ウィズはケルベロスたちをヘリオンへと促した。


参加者
ヴィヴィアン・ウェストエイト(バーンダウンザメモリーズ・e00159)
大弓・言葉(ナチュラル擬態少女・e00431)
スプーキー・ドリズル(凪時雨・e01608)
ヴィヴィアン・ローゼット(色彩の聖歌・e02608)
サラ・エクレール(銀雷閃・e05901)
遠之城・鞠緒(死線上のアリア・e06166)
五嶋・奈津美(地球人の鹵獲術士・e14707)
穂村・華乃子(お誕生日席の貴腐人・e20475)

■リプレイ

●牢獄を照らす歌
 テイネコロカムイの鳥籠へと移動を終え、ケルベロスたちはあたりを見回す。
 無数の鳥籠が浮かぶ空間の中で、今回の敵——マエストロ・サルヴァトーレの幽閉されている鳥籠を探し、レギンレイヴ班とタイミングを合わせて撃破するのが今回の作戦だ。
「ヴィヴィ、緊張してる? わたしはちょっとしてるかな。でも頼りになる味方がこんなにいるんだもの。きっと成功するわ」
 五嶋・奈津美(地球人の鹵獲術士・e14707)の言葉に、ヴィヴィアン・ローゼット(色彩の聖歌・e02608)は表情を和らげる。ウイングキャットのバロンもボクスドラゴンのアネリーに寄り添い、優しく背中を叩く。
 そんな微笑ましい光景を、特にヴィヴィアンの方を見てぽつりと呟くのはヴィヴィアン・ウェストエイト(バーンダウンザメモリーズ・e00159)。
「ヴィヴィアン、か。いい名前だ」
「ありがとう、ウェストエイトちゃん♪」
 照れつつ微笑む少女に、男は皮肉めいた笑みを向けてテイネコロカムイの鳥籠から出た。
 他の者も、続々と鳥籠から出る。
「ヴィヴィちゃん、素敵なセッションにしましょうね!」
「もちろん♪ 音楽家には音楽で対抗、だもんね!」
 遠之城・鞠緒(死線上のアリア・e06166)が両手を広げ、大きく息を吸う。ヴィヴィアンは恋人から送られた「パールホワイト・ギター」を奏で、音を乗せた言葉を紡いだ。
 スプーキー・ドリズル(凪時雨・e01608)もまた、スコープが付属したエレキバイオリンの弦に弓を当てる。そこへ大弓・言葉(ナチュラル擬態少女・e00431)の元気なハンドベルの音が加わる。
 奏でられるは「ヘリオライト」。
 マエストロ・サルヴァトーレを挑発するのはもちろん、これから戦う仲間たちに勇気を届けられるように。鈴の転がるような声で、鞠緒が歌い上げる。
 ウェストエイトがマエストロ・サルヴァトーレを発見するが早いか、割り込みヴォイスを使用した。
「断末魔なんて、プライド高そうなヤツの方がよく鳴きそうじゃないか。——アンタのことだよ、マエストロ」
 いかにも音楽家といった格好をしたマエストロ・サルヴァトーレは、不愉快そうにケルベロスたちに視線を向け、グラビティを放ってきた。
「……御眼鏡に適ったようだね、では競奏を始めようか」
 海軍の音楽隊員だったという亡き妻のお墨付きの音色はどこか切なく、力強い。グラビティによるダメージを受けつつも、スプーキーは演奏を止めない。マエストロ・サルヴァトーレの鳥籠に侵入し、戦闘を仕掛けるその時まで。
 そうして、ヴィヴィアンのギターがいっそう強く響く。彼女もグラビティによるダメージを受けつつ、まるで怯まない。
「あたしたちの音楽は、あなたの狂気になんて負けないから!」
「こんなに素敵なレディを前によそ見は失礼じゃない?」
 穂村・華乃子(お誕生日席の貴腐人・e20475)は攻撃を受ける者を分散しようと挑発するのだった。
 数分ののち、ケルベロスたちはマエストロ・サルヴァトーレの鳥籠へと侵入に成功した。
「此方は若く素晴らしい奏者が揃っているよ、聴き応えは満点だろう?」
 スプーキーが演奏の手を止める。
 全員が鳥籠に侵入するが早いか、マエストロ・サルヴァトーレの狂気を帯びた瞳が奈津美を捉えた。
「聴き応え、だと……? 冗談は止したまえ、君たちは音楽の何たるかをまるで理解していないッ!」
 マエストロ・サルヴァトーレは大袈裟な動作で嘆き、指揮棒を振り上げた。鳥籠の中に、絶対零度を想起させる曲が響き渡る。
 不快で、不愉快な旋律だ。それでも、ヴィヴィアンには不思議と馴染みのある音のように聞こえた。

●始まりの光
 サラ・エクレール(銀雷閃・e05901)がライトニングロッド「真月神楽」を手に、雷の壁を構築する。対象は、前衛の仲間たちだ。
 異常耐性を高めると同時に、移動時に受けた傷がいくらか癒えてゆく。
 仲間を、マエストロ・サルヴァトーレを見遣り、サラは表情を引き締めた。
(「レギンレイヴ、古のヴァルキュリア、そして世界全てに復讐を遂げようとする者。……ヴァルキュリアは今や私達の良き友人ですが、この様な者が解き放たれれば大きな災いとなるでしょう」)
 それを阻止するために、と。
「達は私達の仕事をしましょう」
「そうね。——ところで、マエストロ・サルヴァトーレ、といったかしら。あなたの演奏、ちっとも素晴らしいと思えないわ」
 翼で清らかな風を送るバロンに続き、奈津美は攻性植物「The White rose of Headhunting Queen」に実らせた黄金の果実で後衛を照らす。同じくヴィヴィアンも黄金の果実を実らせ、前衛に目映い光を当ててゆく。
「本当、断末魔が最高の旋律だなんて趣味の良くない音楽はお断りです。マエストロ・サルヴァトーレ……あなたは自身が狂気に陥った理由を考えてみたことはありますか?」
 鞠緒がマエストロ・サルヴァトーレの胸に手を伸ばせば、本が現れる。
「これは、あなたの歌。懐い、覚えよ……」
 鞠緒の言葉に呼応して本が開かれ、彼女の口から歌がこぼれ出る。それはマエストロ・サルヴァトーレを思索の底へと陥れる歌だ。
 鞠緒が自身の宿敵と戦った際も、ヴィヴィアンは一緒に演奏をしてくれた。その、心強い気持ちを与えられれば。
 ウイングキャットの「ヴェクサシオン」が前衛に向けて羽ばたくと、ウェストエイトの弾丸が仲間の間を縫ってマエストロ・サルヴァトーレへと撃ち込まれる。肩口を抑える音楽家に向かって、言葉が大きく跳躍した。言葉のエアシューズが星の煌めきをこぼしながら、マエストロ・サルヴァトーレに蹴撃を叩き込む。目の前の相手は、親友の宿敵だ。張り切らないわけにはいかない。
「よーし、命中! ぶーちゃんは……最初は遅め、あとは早めに動けたらいいんだけど、そうもいかないよね」
 あとに続くボクスドラゴン「ぶーちゃん」をちらりと見ると、緊張した面持ちでブレスを吐き出していた。
 ブレスが止んだ直後、スプーキーがリボルバー銃「clepsydra」の銃口をマエストロ・サルヴァトーレへと向ける。
「That's original sin」
 音の後に放たれた弾丸の色は、深紅。着弾時に破裂したそれは、鮮血よりも鮮やかな色でマエストロ・サルヴァトーレの衣服を染め上げ、固めた。
 さらに華乃子が急所を狙って攻撃を仕掛けるが、マエストロ・サルヴァトーレは紙一重で回避したのだった。
「そう連続で喰らいはせんよ」
 マエストロ・サルヴァトーレが狂気じみた笑みをこぼすと、照明弾の光が、鳥籠に差し込んだ。ケルベロスたちは、視線を交わしてうなずき合う。
 レギンレイヴに向かった仲間たちが戦闘を開始したようだ。スプーキーは照明弾の上がった方角を見遣り、レギンレイヴのいる鳥籠位置を確認した。

●氷と炎
 マエストロ・サルヴァトーレの奏でる音楽は、どれも不協和音をさらに不快にしたようなものであった。加えて、石化効果のあるひと睨み。
 厄介な攻撃は、二人のメディックが的確に処置を施していくが、いつも全て消し去れるわけではない。
 ぶーちゃんも主である言葉に属性をインストールし、さりげなくサポートする。消えた炎に安堵しつつ。言葉は地獄の炎を纏わせた簒奪者の鎌を手に、マエストロ・サルヴァトーレへ正面から挑んだ。
「炎と氷を使うのはそっちだけじゃないんだから! ——ぶった斬る!」
 可愛らしい見た目に反して過激な動きで、言葉は鎌を振り下ろす。
 自身の傷を見ながら歯噛みするマエストロ・サルヴァトーレに、ウェストエイトは不敵な笑みを向けた。
「お前を揺さぶってやるよ。80年代のロックンロールみたいにさ」
 きっと趣味は合わないだろうな、と付け足しながら「奈落の詩の語り部・悔恨」を読み上げる。
「死体を積み重ねていけば天国の階段にでもなると思ったのか。救われると思ったのか。振り返ってよく見てみろよ。地獄の門にそっくりだぜ」
 ウェストエイトは、失った記憶を地獄で補った。それを言葉にならない叫びで読み上げると、炎を媒介とした怪物となって顕現する。
 骨、骨、骨。無数の骨で形作られた見上げるほどの門が、厳かに開く。内側で収縮するのは、無限に収縮する炎。発生した超重力でマエストロ・サルヴァトーレを引き込まんと、そして新たな一部にせんと、濃度を増す炎で炙る。
 仲間の与えた状態異常を増やそうと、鞠緒が素早くファミリアロッド「」を赤目の白いハツカネズミに戻した。
「紅音さん、お願いします」
 いくつもの傷を負いながらも、鞠緒は真っ直ぐにマエストロ・サルヴァトーレを見据える。そんな彼女を、奈津美が大きく癒やす。
 そこからも、容赦はなく。スプーキーがエアシューズ「天泣」で蹴り上げた先で、華乃子が エクスカリバールから釘を生やした。振りかぶる直前に仲間を見れば、前衛がより多くの傷を受けていることがわかる。
「マエストロは若い子が好みなの?」
 華乃子はため息交じりに凶悪な一打を加える。そう、盾役はヴィヴィアンと言葉。サーヴァントを除けば、二人とも若い女性だ。華乃子の煽りに、マエストロ・サルヴァトーレは顔をしかめつつ体勢を立て直す。
「好み……だと? 年齢も性別も関係ないのだよ! 最高の旋律——そう『断末魔』を響かせてくれるのならね!」
 指揮棒が掲げられ、奈津美の周囲に炎が渦巻く。防具のおかげで受けるダメージは少なく済んだものの、体には炎が灯ってしまう。
「まだ撃破の照明弾は上がりませんね。まだ先は長い、と見るべきでしょうか……しかし、私がいる限りは誰一人欠けさせません」
 奈津美を一瞥し、サラは大きく息を吸った。
「我が護り貫くこと能わず!」
 何度目かの、護りを施すグラビティ。一度で全員に施すことはできないが、何度か重ねることでほぼ全員に行き渡るようになってきた。今度は、先ほど攻撃を受けた奈津美と自身を含む後衛へと、護りを展開する。
「かなり消耗してきたように見えるわね……そろそろ、攻撃を控えた方がいいかしら」
 マエストロ・サルヴァトーレは、どれだけ傷ついても狂気じみた目でケルベロスを見遣り、曲を奏でるだけ。敵の正確な体力を知ることはできないが、これだけ連続で攻撃を畳みかければ、そう長くは持たないはず。そう判断したローゼットは、サキュバスミストを放出し、華乃子を癒やした。
「ヴィヴィちゃんありがと! これでお姉さん、まだまだ頑張れそうよ」
 華乃子がひらりと手を振って礼を述べ、マエストロ・サルヴァトーレへと向き直った。
 敵も消耗している。
 あとは撃破を報せる照明弾が上がるの待ちながら、持ちこたえるだけだ。

●新章を奏でて
 合図を、光を待ちながら、ケルベロスたちはどうにか持ちこたえる。やはり厄介なのは、状態異常だ。盾役の言葉も、癒やし手であるサラをサポートするように声を張り上げた。
「可愛くなあーれっ!」
 華乃子の傷を塞ぐのは、リボンやフリル、花といった可愛いパーツ。それらが外れると、なぜか華乃子の傷が癒えていた。
「もう、可愛いのは言葉ちゃんの方がお似合いよ? はい、これはお返し」
 気遣いつつ、華乃子は言葉をジョブレスオーラで包み込む。ウェストエイトと奈津美も気力溜めをスプーキーへと放ち、援護する。スプーキーと鞠緒も前衛へ向けて「ブラッドスター」を歌うことでサポートとする。ふと照明弾が上がっていた方を見遣れば、もう間もなくレギンレイヴが撃破されそうであった。
「そろそろレギンレイヴが撃破されそうだ」
 スプーキーが仲間に告げれば、マエストロ・サルヴァトーレの目が怪しい光を帯びる。レギンレイヴの断末魔を聞きたい、とその目が語っている。
「そんなに断末魔が好きなのかい? では最終楽章は君自身で彩ろうじゃないか。——頃合いだ。ローゼット、トドメを!」
「ふん、この空間のデウスエクスが撃破され次第グラビティを奪い、このような場所からは抜け出してくれるわ! そう、多くの断末魔をこの耳で聞くまで、私は死ぬわけにはいかんのだよ……!」
 マエストロ・サルヴァトーレが遮り、指揮棒でケルベロスたちを指し示す。直後、前衛を襲うのは幾度となく奏でられた氷結の音楽。
「させません、と言ったはずです」
 サラが静かに手を掲げれば、薬液の雨が前衛に降り注ぎ、いくつかの氷を消し去ってゆく。サラはローゼットを見遣り、視線で促す。
 マエストロ・サルヴァトーレは、ヴィヴィアンの宿敵。ヴィヴィアンは大きく頷き、歌い始めた。
「これから進む未来はきっと明るい光が差してる」
 自身の人生経験からくる幸福・博愛・希望の感情を込めて、続ける。
 かつてこの歌は、怨念の篭もった禍々しい曲だった。しかし今では歌い手の心境の変化により、正反対の方向性の曲となっている。ヴィヴィアンはほとんど無意識に首飾りへと触れ、唄を続ける。
「新しい扉を今日も開けて進もう 笑顔の私を見せたいから」
 マエストロ・サルヴァトーレが薔薇の花弁と香りに包まれ、動きを止める。
「そのような旋律など、認めぬ……」
 呻くマエストロ・サルヴァトーレは、もはや立ち上がることさえ適わない。彼に大きな打撃を与えてきたウェストエイトは、見下ろし、告げる。
「俺の名前を憶えて逝きな。ヴィヴィアン、ウェストエイトだ」
「ヴィヴィアン? あたしと同じ名前なの?」
 目を見開くヴィヴィアンに、ウェストエイトは無言でうなずいた。それじゃあ、と、ヴィヴィアンはのぞきこむようにウェストエイトを見る。
「……エイト先輩、って呼んでもいい? 『ヴィヴィアン』の先輩ってことで♪」
「じゃあ、お前はロゼだな」
 と、ウェストエイトが言い終えたその時。無数の鳥籠が浮かぶ空間が、歪み始めた。気付けば、マエストロ・サルヴァトーレも砂となって消え去っている。
「どうやら、レギンレイヴが撃破されたようですね」
 落ち着いた様子のサラが、仲間を見渡す。
「脱出、ね」
 奈津美がうなずき、鳥籠からの脱出を促す。戦場となった鳥籠から抜けだし、テイネコロカムイのいた鳥籠へ。そしてそこから、釧路湿原へ至れば、慣れた地球の空気がケルベロスたちを迎える。
 まだ少し冷える外気と、ようやく訪れた疲労感。ヴィヴィアンは興奮冷めやらぬうちに、ともに戦った仲間ひとりひとりに礼を述べたのだった。

作者:雨音瑛 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年3月17日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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