
●バブバブー
「バブー! バブバブバブ、バブゥゥーバブバブブ!!!」
「バブバブ! バブー」
「バブー……バブバブブー……」
ひどいありさまである。ビルシャナと10人の信者たちが集った民家はひどいありさまである。
彼らは紙オムツを着けて床に寝転がり、赤ちゃん言葉で何事かを話しあっていた。あおむけで膝を曲げながら脚を浮かせているのは赤子のポーズを気取っているのだろうが、完全にひっくり返って戻れないセミやカブトムシにしか見えない。超みっともない。
「バブバブー!」
「バブア、バッブバァーー」
「あうー」
バブバブ言うのが飽きたのか、信者のひとりが別の音を出しはじめた。だがとんでもなくバカであることにまったく変わりない。
ビルシャナが掲げる教義、それは『なにからなにまでお世話される幼児って最高! だから幼児退行しよう!』というものだった。その結果、幼児を越えて乳児にまで到達してしまったようだ。なんてこった。
「バブー! バブバブー!」
「きゃっきゃっ」
「あーいーあいあいー」
飛びかう、大の大人の赤ちゃん言葉。野太いバブバブ。
地獄絵図である。
●急募、親
「今日もまたビルシャナが現れたのですが、なんというか、ひどい状況です。そのビルシャナは『なんでもお世話してもらえる幼児は最高である』と考えて、一般人を巻きこんで赤ん坊まで退行することを試みています。民家を1件占拠して、そのなかでバブバブ言っているのです」
白羽・佐楡葉(紅棘シャーデンフロイデ・e00912)の聞くだけでもひどい画が浮かぶ報告を、ケルベロスたちはしごく平然とした顔で聞いていた。いったいその顔の裏ではどんな気持ちが湧きおこっているのだろう、使命感? 脱力感? 早く帰りたい?
依頼の流れについては、黒瀬・ダンテ(オラトリオのヘリオライダー・en0004)から説明があった。
「皆さんには民家に踏みこんでビルシャナを倒してきてもらいたいんすけど、信者たちは戦闘になれば自分たちもビルシャナと一緒に戦おうって気でいるみたいっす。ちょっと厄介っすけど、でも戦う前に信者たちを心変わりさせるほどの主張ができれば、戦わずに彼らを無力化できるかもしれないっすよ」
ビルシャナを倒せば信者は正気に戻るので救出自体は可能らしいが、戦いにおいて敵の数が少ないに越したことはないだろう。まずは信者たちの説得に力を尽くしたほうがよさそうだ。
「ビルシャナっすけど、完全に赤ん坊になりきっていて、戦うときもまるで赤ん坊のような動きをするみたいっす。でも体は普通のビルシャナサイズっすからね……けっこうひどい映像になるっすね!」
ダンテがわくわくした声を出す。なにを期待しているんだ。
「信者たちもビルシャナの教えに賛同して、頑張って赤ん坊になりきっているっす。でも……残念ながら皆さん大人なんっす。だから心のうちではわかってるはずなんすよ……もうあの頃には戻れないってことを! 信者たちが間違った道を歩み、痛恨の社会的ダメージを受ける前に、現実を再認識させてやってほしいっす! あと別に大人も悪いことばかりじゃないっすよね!」
わかっているならやるなよ……と言いたくなるところだが、今更言っても始まらない。とりあえず現場に突入しておっきな赤ん坊どもにお仕置きをかましてこいということらしい。
「ビルシャナになってしまった人はもう本当に末期だからどうしようもないけど、それ以外のことはまだなんとかなるはずです。これ以上ひどい状況にならないように、ビルシャナ退治をよろしくお願いします」
淡々と依頼説明を締めくくり、佐楡葉はケルベロスたちを送り出す。
阿鼻叫喚の、バブバブハウスへと……。
参加者 | |
---|---|
![]() 天霧・香澄(ヤブ医者・e01998) |
![]() ルーチェ・プロキオン(魔法少女ぷりずむルーチェ・e04143) |
![]() 篠宮・マコ(夢現・e06347) |
![]() メレアグリス・フリチラリア(聖餐台上の瓔珞百合・e21212) |
![]() 伊織・遥(血の轍を振り返らず・e29729) |
![]() 鈴森・要(ホワイトナイト・e30620) |
![]() ユーシス・ボールドウィン(ウェアライダーの鹵獲術士・e32288) |
![]() エイス・レヴィ(ワールドイズユアーズ・e35321) |
●準備が大切
ケルベロスたちはとりあえずコンビニに寄った。
「唐揚げ、お菓子……あ、炭酸もよさそうです」
「これとかどうかな?」
ルーチェ・プロキオン(魔法少女ぷりずむルーチェ・e04143)が作戦物資を調達。篠宮・マコ(夢現・e06347)はそれを手伝うフリをして自分がほしい物をこそこそとルーチェの買い物かごに投入している。金を払わないスタイル。
「念のため消臭スプレー買ってくか」
「異臭騒ぎって……ビッグの方かリトルの方かでも大違いね」
天霧・香澄(ヤブ医者・e01998)はビルシャナちゃん対策のために日用品の棚をあさり、ユーシス・ボールドウィン(ウェアライダーの鹵獲術士・e32288)は彼の行動を見つつ敵の戦力予想中。もしかしたらダブルかもよ?
そして買い物が済むと、一行は気が進まないながらもてくてくと現場へ。
「大人の世界は楽しそうなことがたくさんあって、とてもわくわくするのに……なぜ、子供のままでいたいのでしょう……?」
「バブみを感じる気持ちは解らなくはないけどぉ……いてッ!?」
汚れを知らぬ純真少年、エイス・レヴィ(ワールドイズユアーズ・e35321)は逃避する大人たちの思考を理解できない。対して鈴森・要(ホワイトナイト・e30620)は少しばかりいけない共感をほのめかしたところで、テレビウムの白夜くんにバールでどつかれた。
「あぁん、ウソウソ。大丈夫。白夜くんは母性とか欠片もないもんね……って、いたいいたい! いたい!」
「……わかりません。世の中は不思議です」
白夜くんにボコボコ殴られる要は、しかし少し嬉しそうな表情。横で見ているエイスはそれもやはり理解できず、首をかしげる。
殴られすぎて要が黙った頃、一行は現場の民家に到着していた。
ドアの向こうに奇声を聞きつつ、そーっと扉を開く。
「あーう、あー」
「バブー!」
……無数の醜い虫たちが転がっていた。
「これはひでぇな」
「……一般人の救助が最優先です……決してこの状況に目を背けては……」
香澄は惨状を前にしても冷静なものだったが、伊織・遥(血の轍を振り返らず・e29729)は独り言をぶつぶつとつぶやき、自分を奮い立たせている。常に仮面のような笑顔を崩さない遥だが、今回ばかりはひきつっているゾ☆
「うーん……確かにひっでえ光景だけど、幼児退行って普段のストレスがハンパねー人達が陥る性癖なんだよな……」
メレアグリス・フリチラリア(聖餐台上の瓔珞百合・e21212)はある種の憐れみを込めた目で信者たちをながめる。ストレス社会の闇ですわ。
「うわあ、本当にみんな紙オムツはいてる……帰りたくなってきた……ぴろー、なんかもう、あとよろしく……」
マコは後事をウイングキャットのぴろーに託そうとしたが、もちろん愛猫は許さない。ぐいぐい引きずられるかたちで、マコは強制入場と相成るのです。
●赤子でいいのか?
「バブー! バブー!!」
ぞろぞろと家のなかに入ってきたケルベロスたちに、わらわらとむらがる虫もといベイビーズ。面倒見てくれる人キター。
ひっぱたくわけにもいかないので適当に相手をしながら、ユーシスは小さなため息をついた。
「全く……自分の子供だって大変だって言うのに、何で大の大人を……っと、何でもないわ」
「自分の……?」
ユーシスの意味深発言に仲間たちは興味をかき立てられたが、彼女は追及から逃れるように部屋に進み入り、コンビニ袋から剃刀を取り出した。
「さ、ママが剃り剃りしてあげるわ。赤ちゃんらしく、全身つるっつるにね……んふふ。上の毛から下の毛まで、キレイキレイしまちょーねー」
「バブ!?」
剃刀の刃がきらりと光を反射させ、信者がびくっと体を震わせる。まさかの剃毛。
「バ、バブゥ……」
「イヤ? なに言ってるの。赤ちゃんはそんな……ヒグマみたいに歴戦のモッサモサじゃないわ? 剃られたくなければ、大人だと認めて退場する事ね。それとも、剃られたい趣味がおあり?」
ふるふると首をふって、イヤイヤする信者に、ユーシスは厳しき母の面持ちで迫る。かわいがるだけでなく時には叱る、これも面倒を見るということですから。
ユーシスがオムツを脱がしにかかると、信者はいっそう強く首をふった。助けて、剃毛はやめて。そう言っているかのようだった。
そんな彼の哀願を受けて、エイスはかがみこんで信者に語りかける。
「バブ……バブ……」
「ちゃんと大人の言葉で話してくれないと、わかりませんよ?」
「あ、はい」
エイスの真面目なトーンに、急に気恥ずかしさを抱いたのかもしれない。信者はようやく赤ちゃん言葉をやめる。
「赤ちゃんになるなんて、なにかつらいことでもあったんですか?」
「実は……」
エイスに促されるまま、信者は実社会で受けつづけた多大なるストレスを語り聞かせた。10歳の少年に紙オムツをはいたおっさんが人生を語る。
「それはつらかったですね。よくがんばりましたね。えらいえらい」
「どうも……」
すべて聞いたエイスが頭をよしよしとなでてやると、信者は照れ笑いを浮かべる。ダモクレス時代に幼子みたいなわがまま指揮官の相手をしていたので、エイスにとってこういう対応はお手の物なのだ。
「でも、ずっと赤ちゃんのままでは、いずれ褒めてあげられることもなくなってしまいます。……もう少しだけ、大人をがんばってみませんか? 1週間大人をがんばったら、1日だけ僕がパパになってよしよししてあげます」
「1週間ですか……そう、ですね。1週間なら」
小さな目標を提示された信者は、なんとなく気が軽くなったようだった。ほんわかムードでひとりの信者が改心。
しかし周囲ではユーシスが有無を言わさぬ剃毛で信者の心を折ったり、あるいは喜ばせていたし、メレアグリスに至っては作り出した巣のなかに信者を引きずりこみ、完全にプレイに興じていた。
「はあい、おっきしましょうねえ。おしゃぶり、すきでちゅかあ? ミルクのおじかんでちゅよお。さあ、おむつもかえましょうねえ」
「バブーバブー!」
期せずして遭遇したお色気ママに、信者は大興奮。
メレアグリスはその反応を見てすかさず指摘を入れる。
「……ホントの赤ちゃんなら反応なんざしねーよなぁ? でも自分が大人だって認めるなら、更にすげーコトもしていいぜー?」
「バ、バブゥ!?」
はしゃいでいた信者の動きが止まる。それは究極の選択だった。
赤ん坊としてお世話されまくりライフを送るか……それとも大人として生きることを選び、ある意味お世話されまくりなひとときを過ごすか……。
「とっくに成人していますが、なにか?」
即断である。目の前の餌に迷うことなく食いついている。
しっかり言質をとったところで、メレアグリスはふっと笑い、褒美を与えてやることに。
「さぁそいつを脱ぎな! あたしがこの手でしごいておっきさせてやるぜ!」
「おおお!!」
「ほーれ、激しく丹念にこうしてやる! あ、それともあたしのをいじるほうがいいか?」
「うおおおおお!!」
「さあ、後は……ちょい待て」
「あの、それなんすか?」
ふと中断し、メレアグリスは数冊のエロ本(コンビニで買った)を取り出し、読みこむ。あくまで真面目です。真面目に快楽エネルギーを摂取する術を確認しているんです。
彼女には、女子力とかエロ力とかがなかった。致命的なほどに。
●大人でもいいんです
淫靡(?)な時間が流れるかたわら、ルーチェや遥も別の切り口から、信者たちを大人に戻さんと奮闘していた。
「はーい、ご飯ですよー」
「あーいあいー」
ドン引きする心を必死に抑制して、ルーチェは手を叩いてベイビーたちを招く。そしてコンビニ袋からいろいろな食べ物を出した。唐揚げ、菓子、ジュース等々……。
「はーい、あーん」
「あーう」
脂ジュワァな唐揚げを串で刺し、信者の口に運びかけたところで、ルーチェは「あっ」と声をもらしてその手を止める。これは乳児に食べさせるわけにはいかない。
「これはまだ早かったね、ごめんねー?」
「あうー……」
おあずけをくらい、ベイビーは体をゆすって駄々をこねはじめた。おっさんがぐずるさまは、とてつもない(精神的)破壊力だったが、ルーチェは強靭な覚悟で笑顔を崩さない。
「ごめんね、大人になってからいっぱい食べようね?」
「あーうあーう……」
よしよしと、ルーチェは信者をなだめる。食べたいなら早く大人に戻ってきなさい、ということであり、信者も彼女の言わんとすることは理解していた。少し赤ちゃん言葉にもキレがない。
ではなにを食べさせるのか?
答えは決まっている。乳児に食べさせるものといえば。
それを持ち出したのは、遥だった。何度も、何度も深呼吸をしてから、遥は精いっぱいの笑顔で信者たちにブツを持っていく。
「紙オムツまでつけて本格的に赤子になり果てていらっしゃる様子なので……はい、粉ミルクと離乳食です。もちろん赤ちゃん用ですよ」
「ブァッ!?」
「もっとも、普通の赤ちゃんならともかく貴方がたのようないい大人が摂取すると……粉ミルクは下痢を引き起こす可能性がありますし、離乳食は食べれない事はありませんが基本薄味ですし、量も赤ちゃんに合わせた分量ですので満足できるかどうか……でも、本格的に乳児になりたいなら食せますよね」
「ブァァ……ブァァ……」
哺乳瓶の先を信者の口へぐりぐりあてがいながら、にっこりと微笑む遥。そして必死に左右に顔を背け、避けようとする信者。
「おや、飲めませんか……ではビルシャナ、いってみましょうか。このような教義を掲げるくらいですから余裕ですよね?」
「きゃっきゃっ!」
信者への攻撃を切り上げ、遥が離乳食と粉ミルクを提供すると、ビルシャナちゃんは口にぶっこまれたそれを喜んで飲んだ。そのさまに、遥は蔑みの視線を送らざるをえない。
「あーいあい!」
「堕ちるところまで堕ちるとはこういう事ですか……」
ビルシャナちゃんはどんな物だろうがイケる口のようだ。
だが信者たちは、食の不自由に愕然としているように見える。
ここでデンジャラスな追撃。
「そもそも、泣くしかできねぇ赤ん坊がだ。その時、その瞬間にやってもらいたいことを人にやってもらえてるというわけはないよな」
香澄はそう言うと、ルーチェがあやしていた信者の胸倉を乱暴につかみ、にやりとあくどい笑みを浮かべた。
そして持ちあげる。信者の足が地から浮くぐらい。
「ほらよ、たかいたかいだ」
「んぎゃー! んぎゃあー!!」
『ダイナミックたかいたかい』に信者は大泣き、苦しそうな顔で香澄の手をもぎ離そうとする。
「高度がたりねぇか。赤ん坊って何いってるかわかんねぇんだよな」
愉快そうに笑い、香澄はさらに信者を楽しませてあげようと、上方へとぶん投げた。
「おぉい! やめてぇーー!?」
放り投げられざま、信者がとうとう素で喋りだした。危機が身に迫っているのだ、赤ん坊を装う余裕などなくなって当然だった。
天井にぶち当たって落下したときには香澄がキャッチしてやったので怪我はなかったが、その暴虐の恐怖は他の信者を震え上がらせる。
「なんだ? お前もたかいたかいしてやろうか? 赤ん坊でいるってことぁこういう勘違いも相手にするってことだぜ」
「バ、バブ……」
「うー……あーう……」
じり、と信者たちがハイハイで香澄から遠ざかっていく。その顔からは明らかな動揺が見て取れる!
これはだいぶ、ベイビーたちの精神もゆさぶられていることだろう。頃合いを見計らっていた要は、大きな鏡を用意して、信者たちの情けない姿を彼ら自身の目に映るようにしてやる。
「いい加減、現実見たら? 君たちのその姿で……良いパパやママに拾われると思うの?」
「バブバブ……バ、ブ……」
「あーうー……あ……」
要に反論しようと顔をふり向けた信者たちが見たのは、大の大人がおぎゃおぎゃしている、この上ないほど見るに堪えない絵面だった。
「きっつ……」
「おえっ……」
絶望である。いい歳こいてバブバブ言っているなんて黒歴史にもほどがある。ましてこんな汚物に、ちゃんと面倒見てくれるような立派なパパママが現れるわけがない。
「赤ちゃんが愛されるのは何故だと思う? かわいいからだよ!!」
「クソが……結局、結局、俺たちは赤ちゃんになれねえのかよ……!」
ぽつり、と信者の口から悲しみがこぼれる。現実を認識してしまった彼らには、いまさら赤ちゃんの真似事などできるはずもない。部屋の隅ではビルシャナちゃんがなおも遥にあやしてもらっているけど、自分たちはそのレベルには達することはできない。
しかしそんな信者たちに、自宅警備のプロであるマコは目の覚めるような助言を与える。
「つらいよねー。大人ねー。わかるわかる。わたしもねー。ハタチになったんだし働けってママがうるさくてねー。も、やんなっちゃうよねー」
「そーそー……こっちは自堕落に生きたいんだよ!」
マコが信者らに理解を示すと、しょーもない文句が次から次へとあふれ出てきた。
しかしプロはそこでこう返す。
「でもねー、だからって赤ちゃんになっちゃうことはないと思うな。大人のまま、嫌なことから逃げてもいいんだよ。働かない大人がいてもいいし、立派じゃない大人でもいいんだよ。大人の心のまま、子供みたいにだらだら生きたっていいんだよー」
「なんと!?」
「ありのままの自分で……衣食住すべてを世話してもらってもいい……?」
「新世界いけるやん」
マコ師の一言はあっというまにダメ人間にとっての金言へと変わり、彼らが人の道を転がり落ちるのを後押しした。
「行くか……実家に!」
その日、新しい10人の真性ダメ人間が誕生した。
●言えない
「ところで子供がどうのと言ってたが、歳は?」
「歳? 何のこと?」
ビルシャナという汚物を処理した帰り道、香澄はユーシスの例の案件に探りを入れたが、彼女の知らん顔は鉄壁だった。隣を歩くエイスがちらと見上げても、涼やかな表情はぴくりともせず。
「お子さん?」
「いい女には秘密がつきものなのよ。あなたも大人になれば、きっと分かるわ」
「? はい……」
なにがわかるのだろう、とエイスはしばらく考えずにはいられなかった。
「どーしたルーチェちゃん、元気ねーな?」
「え!? だ、大丈夫です」
「そっかー」
敵の攻撃の臭いがとれないかと何度もメディカルレインを使用しているメレアグリスは、ふとルーチェの足取りが重いのに気づいて声をかけたが、ルーチェはあわてて手をふって否定した。
(「い、言えません、こんなこと……!」)
言えない。ビルシャナちゃんを抱きしめて葬ったとき、一抹の寂しさを感じていただなんて。
言えない。最初はオークにでも挑むような悲壮な覚悟で臨んでいたのに、段々とベイビーのお世話をするのが楽しくなっていただなんて。
ルーチェは固く、口を閉じた。
作者:星垣えん |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
|
種類:
![]() 公開:2017年3月10日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
|
||
得票:格好よかった 0/感動した 1/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 3
|
||
![]() あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
|
||
![]() シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
|