「よーし、ダンジョンたんさくだ!」
一人の少年が意気揚々と懐中電灯を照らして、もう誰も使っていない廃ビルへと侵入する。日の差す外とは違い、中は薄暗く視界は悪い。
既に放置されて久しいビルは埃だらけで、人が出入りをした様子はなかった。その埃に足跡を残しながら少年は中を探検する。
「んーうわさじゃあウサギモンスターが出るって話しなんだけどなぁ」
どこにいるのかと一階の部屋を隅々まで探してみるが見当たらない。
「上のほうは……行けないかぁ」
少年が非常階段に向かうが、扉が施錠されていて開かない。エレベーターも当たり前のように動かなかった。
「あーあー行き止まりだ。どんな相手もシャキシャキ―ンッていちげきでやっつけるウサギ見たかったのにー」
最近やったゲームのモンスターを思い出しながら、少年は懐中電灯を剣のように振るう。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『興味』にとても興味があります」
その時だった背後で女性の声が聞こえたと思うと胸に鍵が突き出る。
「だ……れ?」
少年は振り向くことなく意識を失い懐中電灯が地面を転がる。同時に鍵を手にした魔女も姿を消した。
その後にぴょこんと動く白い物体。落ちた懐中電灯の光に姿を浮ばせたのは小さな可愛らしいウサギ。だがそのウサギが口を開けると、獰猛な肉食獣のような牙が剝き出しになった。
『シャァッ』
ウサギは懐中電灯を真っ二つに噛み砕く。闇夜に包まれた部屋に、ウサギの赤い眼だけが輝いた。
「調べたところ、ドリームイーターの殺人ウサギが現れて人を襲う事件が起きてしまうようです」
そう言って御船・瑠架(紫雨・e16186)が集まったケルベロス達に声をかけた。
「第五の魔女・アウゲイアスが奪った『興味』から怪物型のドリームイーターを生み出し、人々を襲わせようとしています」
説明を引き継いでセリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が詳細を話し始める。
「その怪物型ドリームイーターが人々を襲い犠牲者が出る前に、撃破してもらいたいのです」
今ならば犠牲者が出る前に敵と接触できる。
「ドリームイーターは白いウサギの姿をしています。ですがその戦闘力は見た目とは違い高いものです。気をつけてください」
可愛らしい見た目に騙されれば痛い目に遭うだろう。
「敵が現れるのは使われていない廃ビルです。皆さんがビルに侵入した事に気づけば、1階の何処かに潜んで奇襲を仕掛けようとするようです」
明りの無い廃ビルだ、小さな敵を見つけるのには工夫が要るかもしれない。
「見た目は可愛いウサギですが、少年のイメージしたウサギは人を食い殺すようなモンスターのようです。どうか油断はしないでください。少年を目覚めさせる為にも、よろしくお願いします」
セリカが一礼して出発の準備へ取り掛かる。
「ウサギですか……モンスターと言われても緊張感の無い相手ですが、気を付けていきましょう」
暴れるウサギもやっぱり可愛いイメージしかできないと瑠架は首を傾げながらも、油断大敵と気を引き締める。それにケルベロス達も頷き、少年を救うため作戦を練り始めるのだった。
参加者 | |
---|---|
フィーベ・トゥキヤ(地球人のガンスリンガー・e00035) |
ルリナ・アルファーン(銀髪クール系・e00350) |
斬崎・霧夜(抱く想いを刃に変えて・e02823) |
因幡・白兎(非情食・e05145) |
池・千里子(総州十角流・e08609) |
御船・瑠架(紫雨・e16186) |
枝折・優雨(チェインロック・e26087) |
シンシア・ミオゾティス(空の弓・e29708) |
●廃ビル
日差しの届かぬ薄汚れた廃ビルの入り口。普段なら誰も居ない場所にケルベロス達が集まっていた。
「ドリームイーターさんのウサギさんを探して、やっつけよー!」
みんなで探索するが楽しみで仕方ないと、シンシア・ミオゾティス(空の弓・e29708)が頭のウサ耳を揺らして腕を振り上げた。それに合わせてウイングキャットのネコもぴょんと宙を跳ねる。
「相手は、小動物の俊敏さと攻撃力を兼ね備えている……厄介ですね」
暗い室内をルリナ・アルファーン(銀髪クール系・e00350)が懐中電灯で照らす。
「まずはウサギを見つけよか」
フィーベ・トゥキヤ(地球人のガンスリンガー・e00035)が幾つもの小型のドローンを室内に展開する。
「ふふ、可愛いうさぎさんに会えるのが楽しみです。とはいえ首を頂かれちゃうのは困り物ですね」
御船・瑠架(紫雨・e16186)が小さなウサギをイメージして微笑む。
「見た目はウサギでも、随分と激しい趣味をお持ちの様で。いやぁ、怖いねぇ♪」
全く怖がった様子もなく斬崎・霧夜(抱く想いを刃に変えて・e02823)が埃の積もったビルに足を踏み入れる。
「瑠架くん? 相手が可愛いからって、誘惑に負けちゃダメだよ?」
「……霧夜さんに言われずとも気を引き締めて参りますともっ」
揶揄うような霧夜に、瑠架は反論しながら暗闇に視線を向けた。
「愛らしいウサギのイメージを崩させる訳にはいかないよ!」
白ウサギの人型ウェアライダーである因幡・白兎(非情食・e05145)は、イメージダウンの死活問題だと憤り愛用のマフラーを外す。
「今回は流石にちょっと汚れるかしれないしね」
必ず退治してみせると聞き耳を立てて物音に集中する。
「……そんなゲームもあったわね。そのイマジネーションは他所で発揮してほしかったわ」
枝折・優雨(チェインロック・e26087)が狂暴なウサギの元となったものを思い出して溜息をつく。そしてヘッドライトと懐中電灯で周辺を照らした。
それぞれが耳をそばだて、隅まで注意深く調べていく。
「……ところで瑠架くん? 何かそわそわしてないかい?」
「べ、別にいつも通りです!」
そっぽを向いて瑠架は霧夜に言い返しながらも、久しぶりの一緒の依頼に胸をワクワクと高鳴らせていた。
「あ、あそこ!」
シンシアが指さす先に光に照らされ倒れた少年が見つかる。そこで皆は足を止め、警戒して周囲を見渡す。
「これはウサギの足跡か?」
池・千里子(総州十角流・e08609)が埃に出来た小さな足跡に気づく。だがそれは壁際で途切れていた。
千里子は壁伝いに上へと視線を向ける。すると照明に照らされる小動物の瞳と目が合った。天井に齧って空けた穴からウサギが顔を出していたのだ。
「上だ!」
千里子が仲間を守るように紙兵をばら撒きながら声をかける。それと同時に仕掛けて来たウサギを縛霊手で受け止め弾き返した。
●怖いウサギ
「ウサギさんのことはウサギさんの先輩、シンシアに任せるんよ!」
明りを足元に置いたシンシアがウサギの前に出る。
「さあウサギさん、怖くない、怖くないんよ!」
優しく声をかけるシンシアにウサギが愛らしい仕草で友好的に近づてくる。だが間合いに入るとウサギは本性を露わにして首筋へと飛び掛かった。それをネコが爪で引っ掻いて妨害する。
「危ないんよ!?」
慌てて身を引いたシンシアが手にあるスイッチを押すと、カラフルな爆発が起こり仲間を照らして支援する。
「ブーブー」
小さく鳴いたウサギがちょこまかと動いて死角に回り込もうと駆け出す。
「やれやれ、かわいい外見で殺る気満々か、めんどくさい相手やなあ。その見た目どおりにすごしてればがっぽがっぽ儲けられるやろうに」
壁に身を隠しフィーベは上体だけ出してリボルバー銃を撃ちまくる。踏み出す足元に着弾して驚いたウサギは方向転換をした。
「見た目は本当に普通のうさぎさんですね、ですが倒させてもらいます」
その間に黒き呪詛を纏った瑠架が間合いを詰めてウサギを蹴り飛ばす。するとその勢いを利用してウサギは壁を駆けて頭上を取ろうとする。
「素早く動く敵にはまずは牽制だね」
白兎がスイッチを押すとこっそりと探索時に仕掛けておいた壁の爆弾の一つが爆発し、ウサギを宙に吹き飛ばした。
「目標を駆除します」
ルリナは一気に加速するとウサギに追いつき、斧とギターを一つにしたような武器を叩き込んで床に叩き落とした。
「案外頭も良さそうだね。まずは癒し手の守りを固めようか」
狡猾そうだと判断した霧夜は、優雨の体に幻影を纏わせて分身させ敵の目を惑わせる。
「ブー!」
ダンッと床を蹴って威嚇したウサギが突っ込んでくる。
(「可愛い姿とはいえ、獣は獣というわけか」)
その目の前に千里子が堂々と立ち塞がる。
「血肉を食らうのは獣だけではない。人もまた、血肉を食らう魔と化すことを教えてやろう」
ウサギが跳躍して首を狙う。その口に縛霊手を押し込み、振り払いながらウサギの体を蹴り上げた。
「ブー!」
体を捻って天井に着地したウサギはダンッと蹴って頭上から迫る。庇うビハインドのカッツェが大鎌で防ごうとするが、肩口を大きく噛み切られた。
「耳で首を刎ねたり、前足で心臓抉り出したり、前歯で頭蓋骨砕いてくるあのうさぎか……。本気でシャレにならないわ、他の人とばったり会う前に見つけられただけでも幸運ね」
鋼を纏う優雨がオウガ粒子を周囲に放ち、癒しと共に仲間達の感覚を鋭く高める。
「じゃあ、僕はこっちの歯で対抗しようかな。賢いウサギは文明の利器も使いこなすよ」
白兎はチェーンソー剣を駆動させて高速回転する刃を振り抜く。躱そうとしたウサギの皮膚を掠め肉を削った。
「キュキュッ」
すると怪我をしたウサギが悲しそうな声を出して瞳を潤ませる。
「そんな誘惑には引っ掛からないよ。瑠架くんの方が可愛いからね」
踏み込んだ霧夜は雪のように白い刀を抜き打ち、ウサギの傷口をなぞるように斬りつけた。
「恥ずかしいこと言わないで下さい!」
顔を赤くしながらも瑠架は黒い怨念を撃ち出し、その抉れた肉を喰い千切る。
「キュ―ンキューンッ」
よろよろと憐れみを覚えるようにウサギがふらつき傷を舐める。
「獣の浅知恵だな、知っていれば騙されはしない」
獣のように目をぎらつかせて突っ込んだ千里子が拳の連打を叩き込み、敵に逃れる暇も与えずに殴り続ける。すると一転してウサギの目が鋭くなり千里子を蹴り飛ばして壁に叩きつけた。
「残念やけどネタバレしとるから、見た目に騙されへんで」
フィーベは牽制するように銃弾を撃ち込み、白い毛を赤く染める。
「愛らしい……? 外見で戦闘力を判断できないのは、ケルベロスも同じではないですか?」
無表情に首を傾げたルリナは、体から発射口を展開しエネルギー光線を撃ち出す。光を浴びたウサギが苦しそうに飛び退く。
「ウサギさんを見失わないように気を付けるんよ!」
シンシアがオウガ粒子を放ち、仲間の超感覚を呼び起こしてウサギの速さに対応する力を与える。
「少しの間大人しくしてもらうわ」
優雨は手元から鎖を伸ばしウサギの体に巻き付けた。するとウサギは優雨に向かって矢のように一直線に突っ込んできた。
「こんなんシンシアの知ってるウサギと全然違うんよ!」
シンシアが割り込むとウサギはぴょんっと跳ねてシンシアを蹴り飛ばし、その反動で優雨に向かう。
「小動物の姿をしていようと容赦はしません」
横からルリナがマイクスタンドを振り回してウサギの背中に叩きつけた。
「ウサギのくせに凶悪やな」
フィーベが仲間を護るように次々とドローンを飛ばし治癒と防衛を行う。そのドローンに跳び付いたウサギが嚙み切っては跳躍して撃墜していく。
「速いねぇ♪ でもこっちも負けてないよ」
霧夜は刀に雷を宿すと、閃光のように突きを入れる。ウサギは肩に突きを受けながらも飛び掛かる。
「油断は禁物です」
そこへ瑠架が和傘を差し込んで振り払い、刀を打ち下す。ウサギは身を低くして駆け出し刃を掻い潜って足首に噛みつく。
「私の相手を先にしてもらおう」
肉が引き千切られる前に、千里子は呼び出した御業で口をこじ開けて引き離し、体を握って地面に叩き下ろした。
「深い傷だけど、これならすぐに治せるわ」
優雨は鎖を操って小さな魔法陣を傷口に描き、力を集中させて瑠架の血を止め肉を再生させる。
「ブッブーッ」
口を赤くして駆けるウサギの足元が爆発する。
「ほらほら、そっちも危ないよ」
白兎がスイッチを押すとウサギの進行方向でまた爆発が起こり、爆風に煽られたウサギが吹っ飛ばされた。
●首刈りウサギ
「ブブーー!!」
地面を転がって埃だらけになったウサギが睨みつける。そしてジグザグに動いて攪乱しながら飛び掛かってきた。対抗して飛び掛かるネコが弾き飛ばされる。
「歯と刃の硬さ比べをしようよ!」
ウサギの勢いが弱まったところへ、白兎が牙に刃を当てて押し込むと、まるで金属を削るような硬い感触が手に伝わる。するとウサギは嫌がって距離を取った。
「私の首を刎ねてみせろ、白兎。だが忘れるな、お前の間合いは、私の間合いだということを。恐れよ」
挑発する千里子の首へウサギが死角から突っ込んでくる。予想していた千里子は腕を差し込む。縛霊手を牙が貫通し骨に達する。だがその痛みに声一つ上げずに千里子はウサギの体を壁に叩きつけた。衝撃に口の開いたウサギが地面を転がる。
「その見た目で高い戦闘力を持っているのだから、知らなかったら危なかったわ」
優雨はオウガ粒子を放出し、傷を癒しながら仲間の力を高める。
「キュッ」
ウサギは一度態勢を立て直そうとビルの奥へ逃げようとする。
「逃げようったってそうはいかないんだから!」
飛び跳ねながらシンシアが放つ矢が軌道を修正しながらウサギの尻に命中する。
「あの小さな敵を逃すと厄介です、ここで仕留めましょう」
痛みにウサギが跳ねあがったところへ、狙い定めたルリナが光線を浴びせウサギを壁まで吹き飛ばす。
「ブー――ッ!」
ダンダンッとウサギは壁を駆けるように移動する。
「すばしっこい奴やなあ。けど慣れてきたで」
フィーベが両手に構えた二丁の銃を撃ち続け、ウサギを行き止まりの隅へと追い込んでいく。
「ブッブーッ!!」
追い詰められたウサギはその牙を剥き出しにして襲い掛かる。
「瑠架くんの綺麗なうなじを、ウサギなどにくれてやる訳にはいかないからねぇ♪」
霧夜が弧を描くように刀を振り抜き、宙でウサギの胴を斬り裂いた。
「わ、私のうなじは私の物です……!」
赤くなった首筋を隠し、背後から瑠架も刀で背中を斬りつける。
「ブギィーッ!」
全身を血で赤く染めながらも瑠架の首に牙を突き立てようとする。
「本性むき出しやな。そんな恐い顔してたら儲け話も逃げてまうわ」
フィーベがその顔に銃弾を撃ち込み、ウサギの牙を砕いた。
「どのような姿をしていようと関係ありません。人を害する敵は倒すのみです」
ルリナが上からマイクスタンドの台座部分を押し付けてウサギの動きを止める。
「悪いウサギさんはお仕置きだよ!」
その隙に跳んだシンシアは鋼を纏った拳を叩き込んだ。
「ギュッ!」
暴れるウサギは跳躍で戒めを押し退け、壁や天井を立体的に飛び跳ねる。
「どうした、首を刎ねるのではなかったのか?」
首を晒してじっと待ち構える千里子に、ウサギは背後から襲い掛かる。だがその牙が後僅かで届くというところで動きが止まる。見ればその足には鎖が巻き付いていた。
「残念だけど、この場で狩られるのはあなたよ」
優雨が死角から鎖を蛇のように地を這わせウサギの脚を捕らえた。そこへ千里子が拳の連打を浴びせる。
「ブギッ!」
その飛んでくる拳にウサギが牙を立て、骨まで達する傷を刻む。だが千里子はそれでも殴り続けて壁に叩きつけた。
「とっておきをお見舞いしちゃおうかな」
ここで勝負を決めようと立ち止まった霧夜が刀に力を集める。だがウサギも最後の力を振り絞って飛び掛かる。
「その間は私が時間を稼ぎます」
瑠架が傘で防ごうとすると、ウサギは傘を噛み破ってすれ違いながら腕に深い傷をつける。血を流した瑠架は『畏れ』を刃に降ろし、童子切を再現した刀で斬りつけ、刃はウサギの片脚を斬り飛ばした。
「ブキュー―――ッ」
だがウサギはそれでも留まらずに飛び続け、守ろうとしたカッツェの首の肉を抉った。そして血塗られた顔で反転して今度は背後から襲い掛かる。
「月まで送り届けるよ、ウサギちゃん♪」
そこへ極限まで力を練り上げた霧夜は刀を振り抜き、光の奔流を解き放つ。光に呑まれたウサギが吹き飛び壁にぶつかってずるずると滑り落ちる。満身創痍となった体でウサギは出口へと這いずり始めた。
「このチェーンソー剣で止めだよ! ……なんてね」
白兎がチェーンソーで襲い掛かる振りをして放り出すと、思わずその行方に視線を向けたウサギに向かって飛び掛かる。そしてお株を奪うようにその小さな首筋に噛みついた。
「キュゥーッ!」
ウサギの首がまるで斬撃を受けたように刎ね飛ばされ、幻のように消え去った。
●少年の冒険
「ウサギさん怖かったね」
ウサ耳を垂らしたシンシアは疲れたとネコを抱いてしゃがみ込む。
「一緒に商売できたら儲けられたんやけどなあ、残念やわ」
フィーベは何でも噛み切るウサギとして売り出せたのにと惜しく思う。その隣ではカッツェが首の傷を晒し、優雨に向かって名誉の負傷だと見せつけてニヤッと笑う。
「分かった、その鎌貸して。首無しでも笑っていられるか、試してあげるから」
その態度にイラっときた優雨が手を差し伸べた。そんな騒がしさに介抱されていた少年の目が開く。
「? あれ、確かウサギモンスターを探しに……」
「大丈夫ですか? 意識ははっきりしていますか?」
ルリナが目覚めた少年に尋ねる。
「うん、大丈夫だよ」
起き上がった少年はキョロキョロと見渡す。
「その冒険心は悪いものではない。だが危険な場所に入るのは無謀というものだ」
「ごめんなさい」
今後は気を付けて行動しろと、淡々とした口調の中にも優しさを滲ませて千里子が忠告する。
「危ないですから、もう来ちゃダメですよ?」
「う、うん」
瑠架が諭すように声をかけると少年は目を泳がせながら返事をした。
「無事で良かったね? ウサギに会ってたらうっかり首を失くしてたかもしれないよ? ふふふ♪」
意味ありげに霧夜が笑うと、可愛いウサギに変身した白兎が怖がらせようと少年に飛びついた。
「わっほんとに出たー!」
驚いた少年がそのままビルの外へと逃げだしていった。
「これでもう夜に出歩いたりしないといいんだけど」
白兎が人に戻りその後姿を見送る。
子供の好奇心を抑えるのは難しいと、苦笑しながらケルベロス達もまた廃ビルを後にするのだった。
作者:天木一 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年3月7日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 1
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