招かれざる者

作者:文月遼

●殺戮の予兆
 閑静な公園に、一人の青年が立っていた。顔立ちは醜く、ぎょろりとした蛙のような眼に、潰れた獅子の鼻。ただでさえ醜いその相貌は赤黒い血に覆われて、出来の悪いスプラッタホラーの怪物のようにも見える。加えて、その身の丈は3メートル近い。エインヘリアル。そう呼ばれている種族の男は、ごきりと首を鳴らして辺りを見渡した。
 見れば、足元には数人の男女が転がっている。彼らは小さく呻き声を上げているものの、手足はあり得ない方向に捩じれ曲がっていた。
「へへっ。さあさあ、逃げろ逃げろ。十秒間は待ってやる。ほら、行けよ。行けってば。いーち、にーぃ……」
 エインヘリアルはしゃがみ込んで、芋虫のように這って逃げる男女を見ながら指を折って数える。その速度は緩慢であるものの、四肢を砕かれた人間が大男から逃げるにはあまりにも短い。
「じゅーう……さて、時間切れだ。もうちょっと踏ん張れよ。つまんねぇな……」
 エインヘリアルはゆっくりと巨大な斧を、男の頭上へと振り下ろした。

●執行代理人
「アスガルドで罪を負ったエインヘリアルが地球に放逐された。このまま見過ごせば、連中の手によって、虐殺事件が引き起こされる」
  集まったケルベロス達を前に、フィリップ・デッカード(ハードボイルドヘリオライダー・en0144)は簡潔に切り出した。これによって引き起こされる影響は、単なる人的被害に留まらない。地球に進行して長いエインヘリアルは、定命化に少しずつであるが近付いてきている。定命化の先に待つのは、デウスエクスたちにとっての死に他ならない。しかしながら、彼らの手によって残虐な事件が引き起こされ続ければ、地球上に住む人間、定命の者からの憎悪と恐怖を向けられ、拒絶されればされるほど、それを遠ざけることが出来る。
「アイツらもタチが悪いよな。つまり、あたしらに殺させて、楽しようって魂胆じゃん」
 棒付きの飴をガリガリとかみ砕きながら ザビーネ・ガーンズバック(ロリポップヴァルキリー・en0183)は忌々しげにぼやく。コギトエルゴスムとして縛りつけるよりも、そうやって消耗品にする方がエインヘリアル側にとっては都合が良いと言う理屈だ。
「しかし、止められる被害を見過ごす理由はない。お前達には罪人のエインヘリアルの始末を頼みたいって訳だ」
 軽く肩を竦めて、フィリップはそうまとめた。
「場所はこの公園辺り。深夜だからあんまり人はいないはず。と言っても、そう言う場所にたむろってる人は巻き込まれてるだろうけどね。けど、ギリギリ殺される前には間に合うはず」
 ザビーネはフィリップの持っていた航空写真をひったくり、ケルベロスの前に広げる。町の外れにある寂れた市民公園。時間もあれば、彼女の言う通り好んで人が来る場所ではないだろう。
「敵のエインヘリアルは荒くれものだ得物は巨大な斧を一本。実力は本物だろうが、人格はお前たちの言葉で言えばチンピラ、チーマーって奴か。自分の実力に過剰な自信を持っている。そんな連中からすれば、ケルベロスってのは『いい玩具』だろうな」
 そうでないことは、フィリップが、そしてケルベロス達自身が良く知っている。エインヘリアルはアスガルドを追われた身だ。その認識が間違いであったとしても、撤退することは出来ないだろう。
 ヘリオンの用意に取り掛かったヘリオライダーを背に、ザビーネはにいと屈託のない笑みを浮かべる。
「凶悪な犯罪者っしょ? そんな奴、放ってはおけないからさ、よろしく頼むぜ!」


参加者
狗上・士浪(天狼・e01564)
長篠・樹(紋章技工師・e01937)
如月・シノブ(蒼の稲妻・e02809)
鳴神・命(気弱な特服娘・e07144)
白銀・ミリア(ドワーフのガンスリンガー・e11509)
砂星・イノリ(ヤマイヌ・e16912)
四月一日・憂咲(ルクアトミー・e27580)
佐伯・誠(シルト・e29481)

■リプレイ

●薄明りの下
 足や腕を、あり得ない方向にねじ曲げられた男女は、痛みのあまりに喚くことも出来ず、すすり泣くように呻いて、無事な四肢のどれかを使って冷たい地面を這っていた。
 大男は指を折りながら数字を数える。座り込んでいるベンチはその体格のせいでちゃちな折りたたみいすのようなサイズ比になっている。
「そらそら。残り半分。ちっとも進んでないじゃねぇか。ほら、動け。動けよ。ろーく、なーな」
 片手の指を折りながら大男――エインヘリアルは無造作に立ち上がる用意を始める。空いている手で斧を掴み、軽くぶんと振る。それだけで風が舞う。これから踏み潰すための力加減を考えるように足踏みをする。
「はーち、きゅーう……」
 エインヘリアルの視界の隅で、赤い光が踊るのが見えた。とっさに斧を構えると同時に、白銀・ミリア(ドワーフのガンスリンガー・e11509)の緋爪が激しく斧の表面を削る。
「最近はちょっとは話せる奴も多かったが、忘れてたよ。お前らはそういう奴らだってな」
「あぁ? 何をごちゃごちゃ言ってやがる」
「こっちの話だ。気にすんな」
 着地と共に、ミリアは静かに呟いた。その言葉にはふつふつと湧き上がる怒りが滲んでいる。
「丈夫な玩具を探していると見えた。気は乗らないが、付き合ってあげよう」
 夜目の効くドワーフの少女の後に続いて、長篠・樹(紋章技工師・e01937)は周囲に小型のドローンを侍らせながら、怪我人との間に割り込んだ。エインヘリアルに微笑みかけるその眼には冷たい光が宿っていた。
「そうか。この連中は脆すぎてなぁ。それで、お前らみたいな連中が相手に――」
 エインヘリアルはニヤリと笑いながらもう一方の斧へと手を伸ばす。しかし、その寸前に、手元で小さな閃光が爆ぜる。鳴神・命(気弱な特服娘・e07144)はふんと鼻を鳴らす。
「相手してやるよ、お前にとって最後の戦いになるだろうからな。派手に始末してやる」
 命は人差し指を立て、クイクイと曲げる。ケルベロス達の一挙動一挙動が、エインヘリアルの注意を惹き付けるように。
「これ以上好きにはさせないよ。喰らいついてでも止める!」
 地面を低く駆け、砂星・イノリ(ヤマイヌ・e16912)は自身の数倍の体躯を持つエインヘリアルにも怯まず、懐に飛び込んでその足元を突き崩すような下段蹴りを繰り出す。イノリはそのからすくい上げるように蹴りを繰り出す。瞬間的な二連の蹴りがエインヘリアルに反応する隙を与えない。
「ちょっと辛抱だ、すぐ戻る! 人がこれだけいりゃ、安全に運べるってもんだ」
「だよね! ちょっと……じゃなくて、けっこー痛むけど、我慢してよね!」
 如月・シノブ(蒼の稲妻・e02809)とザビーネ・ガーンズバック(ロリポップヴァルキリー・en0183)は、「月光」の支援――それはシノブらと共に怪我人を担いだり、ターゲットを引き付けるためのや応急手当であったりと様々だが、彼らと共に怪我人を攻撃の届かない場所まで避難させる。
「さんきゅ! レッドのにーさんに、「月光」。こんだけそろえば百人力だ」
「ああ。奴に手出しはさせんよ」
「此方は任せろ。手出しをさせるつもりもないが、それは砂星達が倒れなければの話だ」
 手厚い支援もあり、避難にはそれほどの時間はかからない。ザビーネは運びながらお礼を言うが、達也やレッドレークは冷静に答える。戦線の抜けは最小限に抑えられる。けれども、それは最小限で合ってゼロではない。シノブ達は怪我人を寝かせると、すぐに踵を返して戦線へと戻るために駆けだした。

●業炎
 怪我人が運び去られると、エインヘリアルは痛めつけた人間にはすっかり興味を失くしたように、退治するケルベロス達を見て分厚い唇を舐めた。
「さて、自信満々に来てもらったが、お前らがどこまでやれるか……試させてもらおうか!」
 両手に握った巨大な肉厚の斧。刃物と言うよりは叩き潰すための鈍器ともいうべきそれを、エインヘリアルは無造作に振り上げた。
 樹はその刃の下に飛び込んで、重たい一撃を受け止める。まっとうな人間ならば血煙になるような一撃。けれどもケルベロスはそうならない。
 斧の下で、彼女は不敵に笑う。そうすることでエインヘリアルの微かなプライドさえも砕こうとしているように。
「戦線は俺が支えよう。存分に奮って来ると良い……無抵抗の者を嬲る犯罪者に遠慮は不要だ。はなまるもな」
 受けた攻撃の傷を癒すため、そしてケルベロス達をさらに奮い立たせるためと、佐伯・誠(シルト・e29481)はエインヘリアルと対峙するケルベロス達の周囲に華やかな爆発を轟かせる。微かに眉をひそめる主と同じように、はなまる号も唸り声を上げている。
 誠がしゃがみ込んで軽く撫でると、弾丸のように飛び出して口の刃でかく乱する。
「厄介払いたぁ、何をしてそうなったんだか……最も、格下相手に粋がってるようじゃ程度も知れるか」
 狗上・士浪(天狼・e01564)はエインヘリアルを睨みながら薄く笑う。一撃一撃こそ重たく、激しいものの。それ以上では無い。そして、その一撃さえ数度であれば樹やミリア、チェシャが凌ぐことのできるもの。やりようはいくらでもある。
 士浪は軽く跳躍して電灯を蹴り、その勢いで加速して、三次元の機動でエインヘリアルをかく乱し、すれ違いざまに鋭い飛び蹴りを見舞って離脱する。
「貴方が向こうで犯した罪が何かは知らないわ。けれど、罪は貴方の血で贖いなさい」
 四月一日・憂咲(ルクアトミー・e27580)は穏やかに、けれども冷たい声で告げる。チェシャがケルベロス達の怪我を清めているのを横目に、手にした鎚を巨大な砲身に変え、士浪が離れると同時にエインヘリアルの周囲に執拗な砲撃を叩き付ける。
 砲撃が晴れた直後には、友樹や光理の遊撃が飛ぶ。
 炎の中で、エインヘリアルはゴキリと首を鳴らした。全身に煤が出来、あちこちに切り傷こそ作っているものの、ほとんど飛び出さんばかりのぎょろりとした眼は煌々と輝いてケルベロス達を見つめている。
「ああ……久しぶりだ。やっぱりこうでなくちゃな。ちょっとくらい反撃してくれなきゃ、やり応えもねぇ」
「うさ、もうちょっと痛がってくれると思ったけど。野蛮で悪趣味なのね」
「お褒めに預かり光栄だ。ちゃんと殺してやるから安心しろ。いい年した野郎が泣き喚くのも良いが、年端のいかないガキのピーピー泣く声も嫌いじゃなくてな」
 無数の攻撃を受けて尚獰猛に笑うエインヘリアルを見て、憂咲は感心とも軽蔑ともつかない言葉を投げかける。ケルベロス達から向けられる視線に、不快に思われていることそれ自体が快感であるように、エインヘリアルは下卑た笑みを返した。
「分かっちゃいたがゲス野郎だな」
「安心しな。あんたを送り込んだ奴らの思惑通り、きっちり終わらせてあげるよ」
 醜く歪んだエインヘリアルの顔を見て、ミリアと命は吐き捨てるように言葉を返した。正当な戦いの上で破れるのならば、それは仕方のないことだ。けれども、そうした覚悟の無いものを一方的に傷つけることは、彼女達にとってはあってはならないことだった。

●共鳴
「テメェも斧なら、こっちだって!」
 ミリアは手にした二本の斧を構えて跳躍。落下の勢いを乗せて一気に振り下ろす。エインヘリアルが振り払おうとした時には、小柄な体躯を活かして即座にその射程から逃れている。
「さっきの一撃、それで全力か?」
「そうかい。じゃあ、遠慮しねぇぞ!」
 樹が首を軽く回す。それに合わせて回路を思わせる幾何学模様が浮かび上がり先程の一撃で負ったダメージを修復していく。完全とは行かないまでもその様子にエインヘリアルはニヤリと笑って再び斧を振り下ろす。
「あんまり、気合入れ過ぎてもダメよ」
 主である憂咲に同意するようにチェシャがその間に割り込んで振り下ろされた斧を受け止める。その衝撃に耐え切れず吹き飛ばされるものの、フーッと唸り声を上げて闘志を見せる。
「随分と単調な攻撃じゃないか。これでよく戦闘種族を名乗れるもんだ」
「ごちゃごちゃと、口は達者じゃねぇか、女ァ!」
「口だけかどうか、それさえ分からないかい!」
 声を張りながら、命は手にしたグレイブを袈裟懸けに振り下ろす。そのまま足元を払い、すくい上げ、流れるような連撃を叩き込む。
「ちょこまかと……」
「おっと! 待たせたな、繋げるぜ!」
 エインヘリアルがしびれをきらし、まとめて薙ぎ払おうとした所で、シノブとザビーネが戦線に戻って来た。命の間に青年が割り込むと両手で握り締めた斧を振り上げて、エインヘリアルのそれの軌道を強引に逸らし、がら空きになった胴にめがけて一気に振り抜く。不意を突かれた形とはなったものの、重たい一撃にエインヘリアルは目を見開く。
「気合の入れ方が違うんだよ!」
 すれ違いざまに振り返り、シノブは不敵に笑う。
「アイツに聞かせてあげよう。光の意志と希望の歌を!」
「光? えへへ、そんな御大層なもんじゃないけど……悪い気はしないかな!」
 イノリの静かで、けれども力強い意志を湛えた歌声が辺りに響く、味方を癒すためではなく、エインヘリアルを動揺させるために。その歌声を引き立てようと、ザビーネもギターを静かにかき鳴らす。
「どうだ、これでもちょっとの反撃と言えるか? お前にとって俺達は過ぎた玩具ってことだ」
 誠は冷静に戦況を把握する。攻撃の要であるシノブが復帰したことでケルベロス側の攻撃力は大きく増える。予断を許さないとは言え、流れはケルベロス達の元に引き寄せつつある。仲間を鼓舞し、けれど慢心を出さぬよう、誠は静かにそう告げる。
「ああ。そういうことなら――ッ!」
 士浪もその言葉に従って、エインヘリアルに突撃する。振り払おうとがむしゃらに振り回す斧を足場に跳躍し、その顔に鋭い掌底と共に霊力を放出し、相手を絡め捕る。
「生憎と貴方の手に掛かって死ぬ気はさらさらないの」
 先ほど飛んできた下品なラブコールに、憂咲は少しだけ顔をしかめる。そのまま少女がエインヘリアルにめがけて手を伸ばし、力強く握りしめる。それに合わせて御業が召喚され、その身を力強く握りしめる。

●灰は灰に
 手当てを終えて合流した「月光」を始めとする援護。そして手厚いフォローの陣形も相まって、無傷とは行かないまでもケルベロス達はエインヘリアルを追い詰めつつあった。
「クソッ……テメェら、いいのかよ。言って見りゃお前らは他人のケツを拭いてるようなもんだ。いいように使われてるんだぜ?」
 斧を握り、エインヘリアルは鼻で笑うように呟いた。それは命乞いのためと言うよりも、不毛にも思えるケルベロス達の行動を嘲るためだった。
「どうだろうと、相棒共々犯罪者は放っておけない職業なんでな」
 誠の答えはシンプルだった。ジャケットの肩のバッジがある以上、見過ごす道理は無い。弓をつがえて、エインヘリアル目がけて放つ。狙い澄ました弓は弾かれたものの、その隙にはなまる号が弓を燃やす。眼前で燃え上がる炎にエインヘリアルが怯む。
「環境保護だ。サッパリさせなきゃ、気分悪いだろうが……只管に、喰らい尽くせ!」
 士浪の答えも明快だ。ポイ捨てされたゴミを放置すれば、自然とそこにはゴミが増える。士浪はそれが我慢ならないだけだ。全身にグラビティ・チェインを漲らせて吶喊。限界を超えて強化した肉体をフルに使って掌底、肘、全身を使った強引な格闘術で追い込みをかけていく。
「罪を負った神の血は、どんな花を咲かせるのかしら?」
 憂咲のかざしたカードに映るのは、13の逆位置。そこに描かれた黒いローブをまとう死神がぼうとエインヘリアルの背後に浮かび上がり、艶の無い黒の鎌を振り下ろす。刃の先に滴るそれは、朽ちた薔薇のような細かな花弁だった。
「何だろうと他人を痛めつけて悦に入る奴に遠慮する必要があるかよ!」
「犯した罪の重さを、味合わせてやる!」
 ミリアが叫ぶと共に、攻撃に備えて負った怪我の痛みを、殴られた衝撃で残っていた震えを吹き飛ばす。命が間合いを詰めると共に、アームドフォートに装填した散弾を至近距離でぶちまける。
「そう、こなくちゃな! ウジウジ悩む奴より、お前らの方が楽しいぜ!」
「お褒めに預かっても、あまりうれしくは無いな」
 前進に赤い回路が浮かび上がる樹の皮肉を意に介する様子もなく、エインヘリアルは手にした斧を振りかざした。それを見てシノブは得物を構える。
「なあ、お前……誰に解放してもらったんだ? 死ぬ前に教えてくれよ」
 投げかけられた問い。エインヘリアルは一瞬だけ黙り込み、そして笑った。
「道連れにしてやる。話はそれからだ。あの世でじっくり教えてやる」
「やらせないよっ!」
 エインヘリアルが分厚い斧を振り上げる。避けることもままならない距離。けれどもすんでのところでイノリが斧の腹に攻撃を加える。武器として、時には盾として乱暴な使い方をしていたこともあってか、斧が刃の半分で割れてシノブの肩を浅く裂いた。
「先に行っててくれ。閻魔様がいたら、よろしくってな」
 斧を捨てた青年の腕に、グラビティ・チェインが折り重なって無数の大蛇が生まれる。突き出した腕に、蛇にエインヘリアルは呑まれ、後には兜や鎧と言った残骸だけが残された。
「裁判にもかけられず、死刑しか選ばせてやれないが……仕事は果たした。はなまる、ごくろうだった」
 静まり返った公園。誠はぽつりと呟いて相棒の背中を軽く撫でる。はなまる号は、舌を出して全身の熱を発散していた。
「使い捨てされる程度の奴だった。ってことか……」
 残された得物や鎧を眺め、命は静かに呟く。
「襲われた人は、大丈夫なの?」
「長門たちが面倒を見ているが、じきに彼らも撤退する。心配なら見に行くと良い」
 レッドレークの言葉に憂咲はコクリと頷いてそちらのほうへと歩き出した。
 静けさを取り戻した公園で、イノリは静かに空を見上げる。地上の喧騒とは無縁であると主張するように、夜空はいつも通りに輝いている。少女は目を閉じ、少しの間だけ祈りを捧げる。人を傷つけられたと言う憎しみや怒りに負けて、自分を見失う日が来ないようにと。

作者:文月遼 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年3月13日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 7/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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