量産型ガンドロイド殲滅作戦

作者:陸野蛍

●エクスガンナー計画の副産物
「ケルベロス確認。排除任務スタート。総員一斉射撃」
 警帽を深く被り表情の見えない同じ姿をしたダモクレス達は、ケルベロスを確認すると一斉に手にした小銃を構えると、引鉄を引く。
「うわあっと!? なんだよ、あいつ等!?」
「ここに、あんな奴等が出るなんて聞いてないよ!?」
「取り合えず、みんな、一旦退こう! 状況が分からなくちゃ、話にならない!」
 新たなダモクレスの戦力に状況の把握が出来ないケルベロス達は、反撃を止め、踵を返して撤退していく。
 それを見ると、号令を出していたダモクレスがもう一度声をあげる。
「ケルベロス撤退確認。総員、射撃止めー。各自、巡回モードに移行。引き続きケルベロスを確認次第排除。信号を受け取り次第、ケルベロス殲滅モードに移行。各自、持ち場待機続行」
 正確な指示が……いや、彼等のAIの中でマニュアル化されているプログラムが復唱されると、彼等『新型量産ガンドロイド』達は、銃をホルスターにしまうと、それぞれの持ち場へと戻って行った。

●マザーの計画を阻止せよ!
「依然『6基』の指揮官型ダモクレスの本格的地球侵攻が続いている訳なんだけど、今回、みんなには、そのうちの1体『マザー・アイリス』がダモクレスのミッション支配地域である『三重県四日市市』に新しく配備した、量産型ダモクレスの殲滅をお願いしたい」
 資料を見ながら、大淀・雄大(太陽の花のヘリオライダー・en0056)は、ケルベロス達を見回し言う。
 何でも、その新型の量産機は、ミッションを終わらせ消耗し撤退しようとしているケルベロス達を多くの機体で襲い、追撃を仕掛けて来るらしい。
 低レベルのケルベロスを中心に狙っているらしく、既に少なからず被害も出ているとのことだ。
 その時、実際にその量産型ダモクレスの被害に遭った者が手を挙げる。
 金髪の大男、低レベルケルベロスの野木原・咲次郎(金色のブレイズキャリバー・en0059)である。
「わしが襲われたのは、ミッション地域の外縁部じゃった。その周辺に、複数機潜伏しとる筈じゃから、そこに踏み入れば自然と戦闘が開始されるんじゃなかかのう?」
「俺の、予知でもそんな感じだ。1機見つけるもしくは、こちらが見つかれば、1分もしない内に周辺に居る量産機、全てが集まって来る筈だ。それらを全て迎撃撃破するって言うのが今回のお仕事になる」
 咲次郎の言葉に付け足しながら、雄大が依頼内容を伝える。
「じゃあ、肝心の撃破対象の説明に移るな。撃破対象は新型のガンドロイド……つまり、エクスガンナー計画と同じラインで進められていた、エクスガンナーより能力は低いけれど、コストパフォーマンスとその生産性で開発が進められていたモノの、上位互換になる」
 頭をわしゃわしゃと掻きながら、雄大は説明を続ける。
「以前、指揮官型のエクスガンナー達が連れていたガンドロイドは、所謂SP型で拠点防衛を主任務として設計されていたんだけど、新型は捜索や敵地制圧に比重を置いた設計みたいだな。エクスガンナー達が集めたデータを元に再設計された可能性が高いな」
 エクスガンナー達が集めたデータが次世代型の量産機を作り出してしまったという事実は、地球側にとって良い傾向とは言えず、雄大も渋顔になる。
「撃破をお願いしたい機体数は16体。あくまで量産型だから、戦闘能力はそこまで高くないけど、数が揃っている間は、ガンドロイドの方がどうしても手数が多くなるから、何らかの対策を講じないと苦戦する事になると思う」
 ヘリオンで送り出せるケルベロスの数を考えれば、16体と言う敵の数は、けして少なくない。
「ガンドロイドは、全てリボルバー銃を装備していて、ヘッドショット、クイックドロウ、制圧射撃を使用可能。それぞれ機械的に、ポジションに応じた戦い方をしてくる。量産型故に、マザー・アイリスの命令を実行するだけの機械と考えてもらっていい」
 感情で動く事は無いが、どんな危機的状況に陥っても命令を完遂するまで、攻撃は止まないと言うことだ。
「今回のガンドロイドの配備は、マザー・アイリス的には試験配備なんだろうけど、こんなものを大量に地球に送り込ませる訳にはいかない。配備された、四日市市がミッション地域であると言うのも大いに問題だ。ミッション参加中のケルベロスが危険に晒されるだけでなく、いずれ完了させなければいけないミッション破壊作戦の障害にもなりかねない。だから、マザー・アイリスの計画を挫く為に、しっかり頼むぜ、みんな!」
 ケルベロス達に強く声をかけると、雄大は冬晴れの空を一度見上げ、ヘリオンへと駆けて行った。


参加者
モモ・ライジング(鎧竜騎兵・e01721)
星野・光(放浪のガンスリンガー・e01805)
姫百合・ロビネッタ(自給自足型トラブルメーカー・e01974)
結城・八尋(その拳は護るために・e03795)
霖道・裁一(残機数無限で警備する羽サバト・e04479)
アップル・ウィナー(キューティーバニー・e04569)
滝・仁志(みそら・e11759)
水無月・香織(地球人の鹵獲術士・e30250)

■リプレイ

●Aチーム
「最近……ダモクレスがやたら暴れてるの、気になってたんだ。ダモクレスの狼藉は見逃しちゃおけないからね。今回もきっちり片付けないとね」
 緩い微笑みを湛えながら誰に言うでもなく、滝・仁志(みそら・e11759)が呟く。
 ケルベロス達は、此処『三重県四日市市』に来ていた。
『マザー・アイリス』が新しく実験的に配備した『新型量産ガンドロイド』を殲滅する為である。
『ガンドロイド』は、依然その全容が明らかにされていないが、計画自体はストップしていないであろう『エクスガンナー計画』における、副産物でありサポート機体だ。
『エクスガンナー計画』がどんな形で地球に牙を剥くか分からない以上、放っておけるものでは無い。
「それにしても、量産型ガンドロイドかぁ……。ようじょ型のダモクレスなら楽しくお仕事できたのになー。量産型幼女とか想像するだけで幸せだよね。楽園じゃね?」
 そんなのんきな事を、爽やかな笑顔で言う仁志を相棒のテレビウム『カポ』がポコスカと叩く。
『ボクの相棒なら、ボクに恥をかかせない様に真面目にやれ』とでも言いたいのだろう。
「……うわ、痛いカポ痛い! ちゃんとマジメにやるから!」
「それにしても、探してみれば簡単には出て来ないものなのね」
 ケルベロスコートのポケットから一口サイズのチョコを取り出し頬張ると、モモ・ライジング(鎧竜騎兵・e01721)がそう口にする。
「ミッション破壊作戦を妨害する相手なのなら、私達はその企みを妨害させてもらわないとね」
「ですが、デウスエクスが、この地を……さも、取り締まってるかの様に跋扈しているのは中々、癪ですね」
 モモの言葉に応える様に、霖道・裁一(残機数無限で警備する羽サバト・e04479)も言う。
 今回の彼のコスチュームはと言うと、リア充を呪い燃やし尽くすサバト風衣装では無く、ミリタリー系の軍服である。
 あくまで、地球を警護するのはケルベロスという意識の表れだろうか。
「それにしても、居ないね。外縁部に潜んでるって話だったけど、Bチームの方が先に接触しちゃうかな?」
 茶の髪に姫百合の花を咲かせた少女、姫百合・ロビネッタ(自給自足型トラブルメーカー・e01974)が身を低くしつつ、周囲を警戒しながら仲間達に聞く。
 ケルベロス達は索敵範囲を広げる為に、チームを2チームに分けていた。
 だが、索敵範囲の距離はあまり遠くせず、片方がガンドロイドと接触次第、すぐに駆けつけられる距離を保っている。
 その時、仁志のアイズフォンにBチームのアップル・ウィナー(キューティーバニー・e04569)から通信が入る。
『……ザザ……こちらBチームデス。タリホー、目標発見デス。場所はそこから東……』
 仁志は仲間達に頷くと戦闘を切って走りだした。

●Bチーム
 時間は少し巻き戻る。
「……新型ガンドロイド、か。『エクスガンナー計画』手広く捻じ込んでくるねえ。この計画範囲の広さ……ヤバいもんを感じるよ」
 星野・光(放浪のガンスリンガー・e01805)が、テンガロンハットのつばを深く抑え、呟く。
 光は、つい先日も新型のエクスガンナー指揮官機『エクスガンナー・クリム』と戦っている。
 指揮官機だけでは無く、それを補助する量産機まで『エクスガンナー計画』は同時進行で開発を進めている。
 グランネロス……そして、9体のエクスガンナー指揮官機を倒して、まだ半年と経っていない。
 ダモクレス側の計画進行のスピード、改良強化の技術……『エクスガンナー計画』自体を根本から叩かなければ、地球側にとって大きな脅威になるかもしれない。
「まあ、なんにせよ。ミッション帰りに襲われたら、たまったもんじゃねぇな。とっとと片付けて、安心して働けるようにしようぜ」
 巨漢の狸獣人である、結城・八尋(その拳は護るために・e03795)が仲間達を鼓舞する様に、豪快に言う。
「あ! あれじゃないかな? 2機編成で巡回しているみたいだよ」
 腰を屈め、水無月・香織(地球人の鹵獲術士・e30250)が指差す先には、情報通り警察風の服装に警防を被った2機のガンドロイドが居た。
「近くに、他の機体もいる筈なんだよね? なら、あの2機に攻撃を仕掛ければ集まって来るよね。とりあえず、アップルさんAチームに連絡お願いだよ」
「了解。私にお任せデス♪」
 香織の言葉にアップルは笑顔で答えると、Aチームの仁志に通信を行う。
 アップルはスーパーGPSで自分達の位置情報を確認するとウサミミセンサーで情報を統合し、Aチームへと最短距離を伝える。
「今、目の前に居るのは2機。奇襲いっとくかい?」
「だな、2機なら俺達だけでも落とせるかもしれねえ。どうせ増えるんだ、ちょっとでも減らしとこう。……そら、援護してきな!」
 光の言葉に八尋は頷くと、仲間達に紙兵の加護を与える。
「咲次郎、回復よろしくデース♪」
 最後衛に居る、野木原・咲次郎(金色のブレイズキャリバー・en0059)にそう声をかけると、アップルは大地を跳ねるように跳び出すと、ガンドロイドに一気に接敵し、魔を降ろした拳を打ちつける。
「ケルベロスはっけ……!?」
 アップルの拳を受けたガンドロイドが体勢を崩す中、もう1機のガンドロイドが仲間達に通信を行おうとするが、眼前に現れた香織の風の魔力を凝縮した弾丸で通信を阻害される。
「すぐに救援を呼ばなくてもいいんだよ。まあ、私達は呼んだんだけどね。君達は救援が来る前に倒れてもらうよ」
 言って香織が射線を開く様に身体を右に移すと、狙い澄ました光の特殊弾が爆発音と共に、炸裂する。
「量産型には勿体ない、お高い特殊弾だ……こいつは効くよ!」
 光の言葉通り炸裂弾を受けたガンドロイドは左手が吹き飛んでいる。
 その時、アップルと対峙していたガンドロイドの体内から非常ブザーの様な警戒音が鳴り響く。
「通信しなくても異常が起こったら、警報が鳴るシステムか。面倒くせえな……まあ、全部叩き潰しに来たんだ。何も問題はねえ!」
 言うと、八尋は右手の緑のガントレットを『ガチャン』と鳴らした。

●ケルベロスVS新型量産ガンドロイド
「あ、Bチーム、居た居た。敵もまだ揃ってないみたいだし、俺達も戦闘に加わろう」
 青い瞳の目尻を少し下げ言うと、仁志は仲間のグラビティ・チェインの守護として、星の聖域を創りだす。
「この距離なら、もういけるでしょう。こっちの弾丸は少し特殊ですよ! 凍て付くべし!」
 足元を蹴りながら、裁一は時をも凍らせる弾丸をBチームが相手取っている2機の内の1機に撃ち放つ。
「ガンドロイドの方も集まり出したみたいね。……私はそちらを牽制するよ」
 赤き瞳をスッと細めるとモモは雰囲気を一変させ、静かにアームドフォートを構えると、ミサイルポッドから焼夷弾をばら撒き、一気に4機のガンドロイドを炎で包む。
「逆からも来たー! 今度はロビィがやっちゃうよっ!」
 ロビネッタは『シェリンフォード改』を構えると、ガンドロイド達の足並みを乱す様に、銃弾をばら撒いていく。
「よしっ! Aチームも来たな。ガンドロイドも集まって来た! 陣形整えて、総力戦だ! 全てを砕け、鋼の手よ!」
 男気溢れる言葉と共に八尋は、眼前のガンドロイドに猛スピードで突撃し、全力で貫手を繰り出す。
 崩れ落ち、爆発するガンドロイド。
「護りは私も援護します。アメジスト・シールド、最大展開!!」
 紫の髪を風に靡かせ、フローネが前を固める者達に向け、アメジストに輝くレーザーシールドを展開する。
「俺もエクスガンナーとは、ちょっとした縁があるもんでな! 加勢させてもらうぜ! 旋風斬鉄脚!」
 全身のグラビティ・チェインを高め、旋風と一体化すると泰地は、鮮烈な光の軌跡を描きガンドロイドを蹴り飛ばす。
「さっさと数、減らさないとね。『FerriSeptentrion」お前の力、最大限に使わせてもらうよ」
 愛銃に語りかけると光は、押し寄せるガンドロイドの一機に照準を合わせ引鉄を引く。
「私にお任せデス♪ 炎の舞を見せまショウ」
 言ってアップルは、舞い踊る様に紅蓮の炎を宿した『ダンス・ウィズ・ラビッツ』を回転させると、一気に敵軍を薙ぎ払う。
「私のカスタム如意棒も負けて無いよっ!」
 使用者の魂の力で威力が左右される如意棒を一気に伸ばすと、香織はガンドロイドを突き上げる。
「取り合えず、ディフェンダーには、全員ご退場願いましょうか――2XXX年、リア充は嫉妬の炎に包まれた……」
 裁一の嫉妬の炎は熱く熱く燃え上がり、辺りを大炎上させる。
「フハハ、纏めて焼却してやります! これぞ警備!」
「けど、この子達本当に警察だねっ。探偵の時には、仲間でありライバルであり……今回はライバルだねっ! 警察の人海戦術より、名探偵の頭脳だって証明してみせるよ!」
 ロビネッタの放った銃弾は、地面や倒壊物を跳ね回ると、正確にガンドロイドの眉間に命中する。
「アップル、下がって!」
 ガンドロイドの銃弾がアップルを捉えたかと思った瞬間、モモがすかさずカバーに入り、肩口に銃痕を作る。
「私がいる状態で、仲間達を傷つけられると思っているのかしら?」
 冷やかに言うとモモは、両手のバスターライフルから巨大な魔力の奔流を放ち、ガンドロイド達にダメージを与える。
「俺の気力を分け与えるね。女の子に傷が残っちゃ駄目だよね」
 柔らかい笑みを保ちつつも戦況を把握しながら、仁志は自身のオーラをモモに注ぐ。
「ケルベロス掃討、一斉射撃!」
『バラララララララララ!!』
 最後衛のガンドロイドが号令を与えると、ガンドロイド達の小銃から一斉に銃弾が吐き出された。

●WINNER
「打ち砕け! 渾身の一撃!!」
 香織が生成した風の魔力をガンドロイドに撃ちつけ、そのまま地面に押し倒すとそのガンドロイドは沈黙する。
「12体目! まだまだ、ガンガンいくよー!」
 仲間達に聞こえる様に、強く強く香織は叫ぶ。
 ケルベロスとガンドロイド達の戦闘は開始から既に十分以上が経過していたが、終始ケルベロス優勢で戦況は進んでいた。
 理由としては、両者全ての戦闘員が揃う前に、ガンドロイドを減らす事に成功したこと。
 そして、前のめりすぎると言えなくもない、ケルベロス達の攻撃的編成にガンドロイド達の守り、そして陣形が崩された事が要因だろう。
 勿論、回復の面でも仁志を中心としたメンバーが、どうしても傷が多くなる、八尋やモモを支え続けたのも大きい。
「ホント、勢いに乗って一気に制圧する編成だよね。武器の威力を殺して厄介な敵の無力化まで出来るし。……感心しちゃうなあ。装備も統一してるから、欠けた分はポジション替えるだけで補充出来るでしょ? なんか、やだなー……だけど、あたし達、ケルベロスのオンリーワンの輝きには勝てないんだからっ!」
 ロビネッタは、構えた銃の撃鉄を起こすと、ガンドロイドに照準を合わせ、弾丸を連射していく。
「よーし、ここにサインを印そう!」
 ロビネッタの銃弾が空ける穴は、ロビネッタのイニシャルの軌跡をなぞって行くが、ガンドロイドが銃弾によろければ、そのサインも形を崩していく。
 サインでは無く、幾つもの銃痕を受けたガンドロイドは膝を付く。
「ダモクレスには、人間の心の強さなんて伝わらないかな……? こんな風に爆発したりもするんだよね」
 グラビティを高めた光がそう呟くと、ガンドロイドの足元が爆発し、衝撃でガンドロイド自身も宙に舞う。
「淡雪、もう一度、ヒールじゃ! みんなの力を万全にすれば、もう負けは無い!」
「分かりましたわ、咲様♪」
 咲次郎に言われれば、淡雪は流し目からのウインクで答える。
(「今回は……ヒーラーさんが少ない状況で、沢山の敵と皆様、戦闘ですもの。お役に立ちたいですわ」)
「この身が朽ち果てようとも彼の者達を守りなさい! 『ひゃっかおうりゃん!!』あぁごめんなさい 噛んじゃったわ♪」
 淡雪の詠唱の元、生まれたピンク色の桜の花弁は、舞い散るとケルベロス達の傷を淡く癒していく。
「カポ、応援動画はもう大丈夫。俺達も攻撃に移ろう」
 カポに仁志がそう伝えれば、カポは思いっきりジャンプし、手にした凶器をガンドロイドの脳天にぶちかます。
「回復とカバーだけでストレス溜まってたのかな? じゃあ、俺も。行くよ、狂ってく連鎖反応に耐えられるかい?」
 仁志の呼び出した、何頭もの不思議な『白いくじら』の形をしたエネルギー体は、ガンドロイドに触れると破裂し、次々と連鎖の爆発を起こすと、ガンドロイドの思考をショートさせていく。
「あなた達じゃ、私達の相手にはならないよ。……だからと言って、野放しにしておく気も無いけれど」
 モモは桃色の飴を口に含み『ガリッ』と噛むと、アームドフォートの主砲を一斉発射し、ガンドロイドの周囲ごと一気に崩しにかかる。
「そろそろ、終わりにしてぇんだ。せぇぇぇいっ!」
 ガンドロイドを獣の瞳で睨むと、八尋は腕を獣のそれにして一気に爪を立てるとガンドロイドを引き裂く。
「どっちの警備能力が上か、もう分かったでしょう? だったらちゃんと燃え尽くされて下さいよ。リア充の様に!!」
 裁一の若干、偏った怒りの炎はガンドロイドを燃やし尽くしていく。
 その中、1機だけ残った――最後衛で指示を出していた機体だ――ガンドロイドは地に根を張った様に立っており、最後の抵抗……小銃を眼前に突き出した。
「ゴメンネ♪ これでフィニッシュ、ゴット・アイ・ラブ・ユー! この愛を、貴方に刻み付ける!!」
『ブレイズモード!』に変身したアップルは、猛る情熱の炎を身に纏い、豪兎槌を溢れる愛の力で最後のガンドロイドに叩きつける。
 あまりの衝撃に爆発する、最後のガンドロイド。
 アップルは、その爆風に乗り一回転し着地すると、仲間達を振り返り、最高の笑顔を見せるのだった。

●デウスエクス・マキナクロス
「今回は量も質もそれなりだったね。こんなのが、大量生産されちゃったら……ちょっときついかもね」
 笑みを零しながらも、香織はダモクレスの将来的な戦力に不安を感じてしまう。
「……これ、正式採用されたら、ずっと現役に居座るタイプじゃないかな?」
 量産性と戦闘力、そしてコストパフォーマンス……ロビネッタから見ても今回のガンドロイドは有用に思えた。
「ホント……これが、ようじょの警備隊だったら……うそうそ!」
 仁志の言葉にカポがディスプレイを真っ赤にする。
「……仁志、警備と言うのは、リア充を爆破してこそでしょう」
 裁一の言葉を聞いていた咲次郎は『それもなんか違うんじゃなかろうか?』と思ったが、口にはせず、ご褒美が欲しいわんこの様な瞳で自分を見つめる淡雪の頭を撫でこ撫でこし続けた……その光景を、裁一がどんな思いで見ていたかは分からないが。
「トラップとかは、残ってなさそうデスネ。ミッション攻略後にトラップ発動なんて嫌デスカラ♪」
 アップルの言葉に、モモもチョコレートを口にしながら穏やかに頷く。
「あー……今日もよく働いたっと。近辺でいい酒でも飲んで帰りてぇな」
 伸びをしながら八尋は仲間達に向けて笑みを見せる。
 そして……誰ともなく戦場をあとにしていく。
 戦場の埃をさらう様に風が『サーッ』と吹いた。
 舞う、落ち葉……。
「『エクスガンナー計画』の真相には何時になったら辿りつけるのかな? 真相が分かったら、私の銃で撃ち抜いてやるのにさ……」
 呟くと、光は銃を水平に構え……一発だけ銃弾を放つのだった……。

作者:陸野蛍 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年3月8日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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