魔障試作機は淡々と……

作者:なちゅい

●襲い来るメイド少女
 長野県某所。
 街中に現れたのは、一見するとメイド服姿の少女だった。
「――任務を開始します」
 ぼそりと呟いた彼女は全身からミサイルを発し、周囲の破壊を始める。
 それがダモクレスと知ったこの地の人々は慌てて逃げ出すが、メイド少女は胸部からエネルギー光線を発射させて人々を背中から撃ち抜いていく。
「えっ……?」
 隣りを走っていた人がいきなり絶命してしまったのに気を取られた男性の背後へ、いつの間にか少女が背中から近づいてきていて。
 眉一つ動かさず、メイド少女は右腕を大きく竜の腕のように変形させ、鉤爪で一般人の体を肉塊へと変えていく。時折、彼女は手を止めて周囲を見回す。何かが来るのを待っているようにも見える。
「――ケルベロスの反応なし。作業を続けます」
 少女は再び、逃げる一般人へと竜にも似た腕で薙ぎ払い、また1人の命を奪い去るのだった。

 ヘリポートへと駆けつけたケルベロス。
「来てくれてありがとう……ダモクレス軍団がまた現れるようだね」
 すでに、リーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)がヘリオンの離陸態勢を整えた状態で、ケルベロスを待っていた。
 すぐにでも現地に向かいたいと主張するケルベロスもいたが、初めて作戦に臨む者、詳細を知りたい者もいるようだ。この為、リーゼリットは手早く説明をと口を開く。
「現状、指揮官型ダモクレスの地球侵略が開始されているよ」
 指揮官型の1体、『踏破王クビアラ』は自分と配下のパワーアップの為、ケルベロスとの戦闘経験を得ようと配下……ダモクレスの試作機を送り込んできた。
 クビアラ配下のダモクレスはケルベロスの全ての力を引き出して戦う事で、より正確なケルベロスの戦闘データを引き出そうとする。
 データの為ならば、このダモクレスは人質を取ったり、一般人を惨たらしく殺したりなどする行為も平気で行なってくるようだ。
「ケルベロスの力を測る為とはいえ、こんなこと許されないよ」
 すぐにでも現地に向かい、このダモクレスを止めてしまいたいところだ。
 ダモクレスは長野県某所へと襲来してくる。
 予知によれば、昼間に繁華街へと来襲したメイド少女の風貌をしたダモクレスは現地で破壊活動を開始し、虐殺を行いながらケルベロスの来訪を待つのだという。
「でも、そんなことはさせない。彼女が人を襲う前にはヘリオンを到着させるよ」
 到着は、ダモクレスが破壊活動を始めた直後。人を襲う前くらいだとリーゼリットは想定している。
 ケルベロスが戦闘を望めば、ダモクレスは現地の人々からケルベロスへと攻撃対象を切り替えるはずだが、ケルベロスが周囲の人々の避難に当たったり、手を抜いて戦おうとしたりすると、敵はこちらの戦意を高める為に一般人の殺害を優先させる可能性がある。
「アイカというダモクレスは、コアブラスター、マルチプルミサイルといった武装の他、右腕を竜のように変形させて襲ってくることがあるようだね」
 かなりの力を持つダモクレス試作機。その狙いはケルベロスのデータ収集のようだ。
 これを防ぐのであれば、可能な限り短い時間で敵を撃破したい。交戦時間が短いほど、敵が取得するデータは少なくなるからだ。
「逆に、敢えて手を抜いて戦う手段も取れるわけだけど、敗北してしまわぬよう気遣う必要があるよ」
 場合によっては、ケルベロスが本気を出していないと察した相手が、一般人を優先して襲う可能性もある。こちらの作戦を取るなら、細心の注意が必要だろう。
「あるいは、皆が普段とらないような斬新な戦略で、戦うといいかもしれないね」
 これなら、敵が得られるデータの信憑性を下げると同時に、ケルベロス側も様々な戦術を試すことが可能となる。勿論、敗北したら元も子もないのは同じなので、行うならば戦術について充分な検討が必要となるだろう。
 報告によれば、踏破王クビアラはケルベロスの情報を集めてから、「魔障」という力を利用するとのことだが……。
「ともあれ、まずは魔障試作機に襲われる人々を救いに向かわないとね。……行こう」
 リーゼリットはそうして、ケルベロス達に現地へと向かうよう促すのである。


参加者
水守・蒼月(四ツ辻ノ黒猫・e00393)
御門・心(オリエンタリス・e00849)
ヴィンチェンツォ・ドール(ダブルファング・e01128)
御門・愛華(魔竜の落とし子・e03827)
ククロイ・ファー(鋼鉄の襲撃者・e06955)
緋色・結衣(運命に背きし虚無の牙・e12652)
ルルド・コルホル(揺曳・e20511)
トープ・ナイトウォーカー(影操る戦乙女・e24652)

■リプレイ

●情報を探るダモクレスの見た目は……
 現地を目指すヘリオン内。
 ケルベロス達は今か今かと現場の到着を待っている。
「中々に、熱烈なお呼び出しだね?? あんまり嬉しくはないけど」
 今回の相手はなんでも、ケルベロスの来訪を待っているという。だからといって、大きな青い目が印象的な水守・蒼月(四ツ辻ノ黒猫・e00393)は一般人を傷つける敵に困惑する。
「虐殺を放っておくことはできん。……敵が取っている作戦は有効だ、忌々しいことだがな」
 軍服を纏い、軍人気質なトープ・ナイトウォーカー(影操る戦乙女・e24652)はバスターライフルを手に、外を見やる。真下は高い山々が連なっており、間もなく現場へと到着するようだ。
「またダモクレスか」
 そう言い捨てるのは、スタイリッシュな格好の緋色・結衣(運命に背きし虚無の牙・e12652)だ。
 ダモクレス軍団の来襲は3度目。こう何度もデータを集めているのならば、いい加減に無駄だということも理解して欲しいものだと、結衣は毒づく。
「そういえば、こちらの情報を収集か……」
 ヴィンチェンツォ・ドール(ダブルファング・e01128)は別の依頼で、螺旋忍軍がケルベロスの情報収集していたことを思い出す。さすがに、今回の依頼とは関係ないだろうが……。
「データを収集するだけで、学習する能力は無いらしいな」
 そんなダモクレスの思考に、結衣は呆れてしまっていた。
 そこで、元ダモクレスであるククロイ・ファー(鋼鉄の襲撃者・e06955)へとメンバー視線が集まるが。仮面を被った彼はぼさぼさの灰色の髪を震わせ、大きく首を振る。
「いや、今の俺は、ダモクレスに死を齎す漆黒の鴉『レプリクロウ』!」
 ククロイの軽いノリにも、他のメンバーは至って冷静に反応する。ちなみに、元ダモクレス指揮官の彼は、データが送られると色々と面倒だからという理由で仮面をつけているらしい。
「しかし、同じような存在が敵に、というのは空恐ろしいものがあるな」
 ヴィンチェンツォの言葉に、今度は御門・愛華(魔竜の落とし子・e03827)へと皆の視線が集まる。
 レンテンローズの花を頭に咲かせたオラトリオの御門・心(オリエンタリス・e00849)は、同じ苗字の愛華へと何か懐かしさにも似た感情を覚える。それだけに、彼女のことが気になるようだが……。
「……大丈夫」
 仲間達へとそう返すものの、愛華が複雑な表情を崩すことはなかった。

 ヘリオンから降下したケルベロス達が降り立ったのは、長野県某市の市街地。
 ダモクレスの襲撃を受けた人々は、必死になって逃げ惑っている最中だった。
「悪いが、手を貸してやれる程の余裕はない。巻き込まれない内に全力で走れ!」
 結衣が叫ぶが、本格的に避難誘導を行うわけにも行かない。なぜならば、ダモクレスがすでに訪れたケルベロス達を注視していたからだ。ケルベロスとの交戦を望む敵の前で避難に当たれば、敵はこちらの気を引く為に人々を殺してしまいかねない。
「え~っと、そこなメイドさん! 破壊活動はただちにお止め下さいだよ!」
「お望み通り、来てやったぞ。全てが貴様らの思い通りになるとは思わんことだ」
 飛び出した蒼月が先に声を掛けて敵の手を止め、トープがバスターライフルを突きつけ、威嚇するように呼びかける。隙あれば銃弾を叩き込むと暗に示して。
 エネルギー光線やミサイルを放つのを止め、振り返るダモクレスはメイド服を着た少女。その顔は事前情報の通り、御門・愛華その人と瓜二つだった。
「姿は愛華ちゃんそっくりだが……、何故メイド?」
 ククロイとしては、クビアラのダモクレスとの戦闘データの採取、そして、友人の手伝いと一石二鳥と考えていたのだが。まずは、その服装について聞いてみたかったらしい。
「貴女を造ったのは誰ですか?」
 そして、愛華が静かに、アイカへと問いかける。
「――その問いに、応える必要はないと、判断します」
 抑揚のない無機質な声。同じ姿であっても、アイカはダモクレスだとククロイは再認識して。
「瓜二つでも、容赦なく倒すぜ! ロボアイカちゃんよォ!」
「そっくりとは聞いたが、こうも似てると間違えて愛華を攻撃しちまいそうだな」
 ぼそりと口にしたルルド・コルホル(揺曳・e20511)をケルベロス達が見つめる。
「……冗談だから、そんな目で見るなって」
 やや決まりが悪そうに、ルルドは敵に警戒するよう手で仰ぐ。
 このやり取りの間も、アイカはじっとケルベロスの観察を続けている。愛華へ返答する素振りは微塵も感じられない。
「……質問は無駄ですか。なら、追及はまず貴女を止めてからにします」
 愛華が言い放つと、彼女を守るべく前に出た心が左翼と左脚から地獄の炎を発し、表情を引き締める。
「さあ、全力で相手しようじゃないか」
「外見だけは似せてあるようだが……」
 戦闘態勢に入るヴィンチェンツォ。結衣も両手に武器を構え、敵の出方を窺う。
「所詮は紛い物、与えられた命令に従うだけの哀れな操り人形。……今、その糸を断ち切ってやるよ」
「貴女を倒して製作者を倒す……。やることに変わりはありません」
 形見のガントレットを両腕に装着した愛華は左目、左腕の地獄を燃え上がらせる。その左腕は竜のようにも見えた。
「わたしの姿とヒルコの力で、みんなを傷付けさせはしない!」
「――ケルベロスの迎撃に移ります」
 対するアイカは淡々とその右目でカメラのように敵を捉え、ドラゴンのように変形させた右腕で襲い掛かってきた。

●映し身の様な魔障試作機へ……
 愛華と姿形は瓜二つのダモクレス、アイカ。
「多少のデータはやむを得ん。確実に仕留めるぞ」
 敵はこちらのデータ収集を行う。ならば、少しでも早く撃破をと、トープは構えたバスターライフルから氷の螺旋を発射する。
 多少凍った程度では、ダモクレスは止まらない。敵はドラゴンのように変形させた右腕を殴りかかってきた。
「その右腕、本物か試します。いくよ、ヒルコ!」
 愛華は左腕のガントレットを解き放つ。現れる竜の腕は獄竜ヒルコの力だ。対するアイカの腕は、変形させて竜を模した機械の右手だ。
 そこへ、心が飛び込んでくるオルトロス。グラッグがアイカの腕を抑える。しかし、アイカの腕はなおも愛華へと振るわれて。
「ヒルコ、負けないで!」
 愛華とアイカ、2つの鉤爪がぶつかり合い、膨大なエネルギーが発した。
 アイカの力が本物かどうかまでは、愛華には確認できない。自身と違って右腕なのも、紛い物である証明なのか……。
「いずれにせよ、その力をこれ以上使わせるわけには行きません」
 その間にも、他メンバー達がアイカに襲いかかる。
 グラックは着地した後に地獄の瘴気を浴びせかけ、その間にルルドがマントを翻し、軽やかな動きで敵の正面へと躍り出る。それは、パルクールと呼ばれる全身を使った移動術だ。
「よーしいい子だ、そのまま離すんじゃねぇぞ」
 ルルドはそうして、狼の形のブラックスライムをけしかけた。敵に食らいついた影狼はアンカーのように敵の体内へと突き刺さり、影の中へと引きずり込もうとする。影狼の主であるルルドへ、アイカは注意を向けていたようだ。
 そんなアイカの挙動を後方から観察する蒼月は高く飛び上がり、流星の蹴りを叩き込んで敵の脚を鈍らせる。黒猫のウェアライダーらしく、蒼月は軽い身のこなしで着地して見せた。
 そこで、敵の攻撃に備えていた心が、バスターライフルから凍結光線を発射した。浴びせかけられた光線によって、アイカの体に凍りつく領域を増やす。
 ケルベロス達は、普段はあまり取らない戦法をとっていた。異常攻撃メインでの戦略。ジャマーが3人というチーム編成だ。
「何故、給仕の衣装なのか気になるところだが、シニョリーナ。返答は得られないだろうな」
 飛び込むヴィンチェンツォが敵へと拳を叩き込んだ後、愛用のリボルバー銃から銃弾を叩き込む。グラビティの伴う一発は着弾した左太ももを凍りつかせる。
(「BSまみれ戦法……。どう反応してくれるかな?」)
 とにかく、敵のジャミングを繰り返すのがチームの作戦。ククロイも具現化した光の剣でアイカへと斬りかかり、同時に威圧してみせる。
(「『魔障』の力……何か分かればいいが」)
 敵の動きを見定めながら、結衣は炎を迸らせた蛇腹剣と斬霊刀を両手に構えて迫る。
「天は砕け虚無なる大地に炎は奔る。我、誘うは悲憤の劫火――塵も残さず葬る、抱えた小さな世界と共に散れ」
 連続して斬撃を浴びせ、地面から上がる火柱で宙を舞った敵。同じく、宙を舞う結衣が爆発力を込めた刃を真上から叩き込む。
「――任務、続行」
 まともに受けて地面へと激突したアイカ。ただ、まるで表情を変えることなく、彼女は淡々とケルベロスへと対してくるのである。

 愛華の姿を模した、ダモクレスのアイカ。
 オリジナルである愛華は基本、近距離で攻め立てるタイプだが、アイカはダモクレスとしての武装も使いこなし、遠距離もこなす。
 主立って、それを受け止めるのはルルドだ。彼はアイカの射撃や竜の腕を受けながらも、敵の体を石と化すべく指で突き、さらにククリナイフで傷口を斬り広げていく。
 抑えられぬ部分は、心がカバーする。時に、ククロイが光の盾を展開し、結衣が蛇腹剣を地面に展開することで、仲間を癒してくれてはいたが、回復役メインで動くメンバーがいないこともあり、心はほぼほぼ仲間の治癒に当たることとなる。
「結べ、アカイイト」
 先ほど、操りの糸を断ち切るなどという言葉があったが、心はグラビティを帯びた紅い糸を使い、自らやルルドの傷を塞いで行く。
 そして、アイカがボディパーツを変形させ、エネルギー光線を放つ形態となれば、心はすぐに仲間を庇う為に前線で身構えていた。
「束縛は嫌なものだ。だからこそ、それを積み上げてやろう」
 先ほど、糸について口にしていたヴィンチェンツォが銃口を敵へと突きつける。
「Numero 2 Tensione Dinamica」
 彼の発した弾丸は白銀の光を放ち、それを撃ち込まれたアイカの体を締め上げていく。それはまるで、雷神の腕が縛りつけているかのようだ。
 抗おうとその身をよじらせるアイカ。その身には魔障の力があるはずなのだが……、敵のメイド服を切り裂くククロイはこれという効果を実感することが出来ない。
「緩やかに朽ちていけ――その魂を擦り減らしながら」
 ともあれ、手早く撃破するに越したことはない。トープがバスターライフルから発したのは、楔状の魔力塊だ。それを撃ち込まれたアイカは、傷口を強引にこじ開けられるような感覚を覚える。
 魔障について探りつつ、斬霊刀に空の霊力を纏わせた結衣もまたアイカの体へと切りかかり、その感覚をより大きなものとしていく。
「一杯見て逝けばいいよ。見たいだけね」
 蒼月もまた、目に見える形になってはいない魔障が気になってはいたものの。仲間がつけた傷へと重ねるように、惨殺ナイフを振るって傷を深くしていく。
「……ん、ミサイルくるよ!」
 蒼月は敵が体の左右にミサイルポッドを現したのに気づき、仲間に注意を促す。
 アイカの狙いは中衛のジャマー陣へと向いていたが、グラック、心がすかさず仲間のカバーに向かう。ディフェンダー陣のカバーが間に合わなかったククロイは、光の剣で切り払ってミサイルの直撃を避けて見せていた。
 気づけば、敵の体はかなりの部分が凍りつき、ケルベロスの攻撃が効果的に通っている。動きを完全に封じるとまでは行かなかったが、思った以上に早くアイカを追い込んでいたようだ。
「どんな気分だ? 最悪だろ? そんままくたばれ」
 口を吊り上げて笑うルルドもまた、ククリナイフで敵の傷を抉った。
 さらに、ケルベロスは畳み掛ける。
「コード『オラトリオ』ォッ! 触診の時間だァ!!」
 特殊なプログラムを起動させたククロイ。聖なる光を纏わせた拳で、彼は敵の体を殴りつけた。
「――機能、低下」
 アイカは自らの体が持たなくなってきている事を察しながらも、身を竦めてしまう。ケルベロスの攻撃の影響で、脚が竦んで動かないようだ。
「愛華ちゃん! 弱らせといたぜ! 後はぶちかませェ!!」
 頷く愛華は、目の前のアイカに以前の自分を重ねていた。
 人間はいつだって、成長している。自身は目の前の少女のように留まっているわけではない。
「断華さん、力を貸して」
 彼女は右拳のガントレットに希望の魔法を込めて……目の前の相手へと大きく振るう。
「これが私の、人の持つ未来の可能性だよ!」
 愛華の渾身の一撃にアイカは大きく吹き飛ばされ、地面をもんどりうつ。
「ご主人――、申し、訳――――」
 かすれた電子音を発し、ダモクレスはそのまま動かなくなったのだった。

●倒れたダモクレスへ……
 落ち着きを取り戻しつつある、長野県某市の街。
 人々が戻ってきつつある中、心は怪我人がいないかと気に掛ける。自身も仲間も無事だし、現地の人々も大事に至ったものはいない様子だ。
 ケルベロス達はダモクレスによって、または戦闘の余波で破壊された町の補修に当たる。ククロイが癒しの雨を降らせる中、作業の補佐を行っていたルルドはいつの間にか姿を消していた。
 数人のメンバーは、機能停止したダモクレスに興味を抱いていたようだ。
「試作機って言ってたよね。重要そうなパーツとか部品とか調べてみたいな」
 蒼月は通信系の機器がないかと探りを入れるが、特別なものを発見することが出来ない。
 トープは魔障について尋ねられればと思ったが、事切れた敵から直接聞くことはできず。ククロイもクビアラに繋がるものがないかどうかと考え、その遺体を探るが……。どれが魔障に繋がるのかは分からず、これといった成果は得られなかったようだ。
 そんなメンバーの傍らで、敵とはいえシニョリーナだからと、ヴィンチェンツォはその遺体を弔い、煙草に火を点して捧げていた。
「魔障か、厄介なものだな」
「どういう方法かは知らんが、データを持っていかれたのは間違いないか」
 ヴィンチェンツォの言葉に、トープがそう返す。
「まぁ、その集めたデータが無駄になるよう、我輩達は努力していくしかあるまい」
「持ち帰って調べたいけど、無理そうなら……!」
 トープの言葉を聞き、蒼月は後を考えてダモクレスの破壊も提案していたが、愛華が前に進み出た。
「貴女は私のコピーじゃなくて……貴女自身なんだよ」
 降魔の力を持って、愛華はその魂を食らう。
 そして、そのダモクレスの傍らに落ちていた黒い宝石を拾い上げた彼女は、自身に似て、それでいて全く異なる相手から背を向けたのだった。

作者:なちゅい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年3月4日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 8
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